Transfer Talk – Pedro Henrique Perottiを知ってみよう〜後編

FC東京への移籍の噂がある選手をチェック

前回の投稿では、プロも注目するというサッカーゲームFootball Manager 2023のデータを使ってPerottiのプレースタイルを能力面から想定してみました。

今回投稿では実際にプロのスカウトも利用しているWyscoutを使用して、これまでのプレースタッツを用いてプレースタイルの想定をしていきたいと思います。

Football ManagerはJリーグのデータを有していないため、FC東京の選手との比較ができませんでしたが、WyscoutはJリーグのスタッツも取得していますので、FC東京の現有選手との比較も見ていきたいと思います。

ヒートマップから見る役割

Perottiが現在所属しているシェペコエンセの基本戦術は4−2−3−1です
時に4−3−3も使用していますが、基本的には4-2-3-1の配置で進められることが多く、Perottiはその1トップでプレーすることが中心になっています。
時に左ウィングでのプレーすることもあるようですが、センターフォワードとしてワントップをプレーすることがほとんどなのは、別のスタッツサイトでもあるTransfermarktでご覧いただくとよくわかると思います。

それでは、2022シーズンのPerottiのヒートマップを見てみましょう。

2022シーズンのPerottiのプレイングヒートマップ

ワントップ、と言ってもボックス近くに張ってボールを待つだけのタイプではないことがこのヒートマップからも分かります。
ピッチの幅を広く移動してボールを受けるタイプの選手であることが想像できます。
(センターサークルでのプレーが高くなっているのは、シャペコエンセが失点が多くキックオフすることが多いためこのようになっていますので、この点は無視して良いと思います。)

では、2022シーズンのFC東京で4-3-3のワントップを担っていたディエゴ・オリヴェイラのヒートマップと比較してみましょう。

2022シーズンのディエゴ・オリヴェイラのプレイングヒートマップ

比較してみると、ディエゴの方がより広範にピッチを動いているのに比べて、ペロッティはボックス内、サイドに流れてのプレーが多いことがわかります。
このことから、運動量でディエゴのように勝負するより決まった場所に張って攻撃の起点になるようなプレーが多いことがわかります。

そのため、前回投稿の能力値からも想定できるようにポストタイプの選手として、ピッチワイドにボールを受ける役割が期待されることが想定できます。

スタッツから見る役割

それでは、Perottiのブラジル2部セリエBリーグ戦でのスタッツをみていきたいと思います。
2022シーズン、PerottiのセリエB出場は26試合1,827分です。
この時間内のプレーを90分平均にしたものが以下に示すスタッツとなっています。
一般的なスタッツ(General)、攻撃に関連するもの(Attacking)、パスに関連するもの(Passing)の順に上から並べています。

Perotti 2022ブラジルSerie Bでの90分平均スタッツ

このスタッツを見る中でも比較対象がないと想定が難しいので、ここでも同じスタッツを2022年のJ1リーグに絞ってディエゴのものを表記したいと思います。

ディエゴ・オリヴェイラ2022J1での90分平均スタッツ

両者のそれぞれの項目を比べてみましょう。
総体的にみると、いかにディエゴが多くの仕事をこなしているのか、ということがよく分かります。

最上段のGeneralの項目で見ると、90分あたりのパス数(Passes)クロス数(Crosses)はほぼ倍です。
しかし、空中戦数(Aerial Duels)は倍以上の数をPerottiがこなしています(勝率はほぼ同じ)。

中段のAttacking項目を見るとシュート数と枠内シュート率(Shots / on target)はPerottiが上回っています。
また、ペネルティエリア内でのタッチ数(Touches in penalty area)数、オフサイド数の比較から、ディエゴよりも相手ペナルティ内に侵入したり、相手DFの裏を狙う動きが多いことが見て取れます。

最後に下段のPassingの項目を見ると先に述べたようにディエゴの仕事量の多さがよく分かります。
Passes、Through passes、Passes to penalty area、Received passes、Forward passesと、あらゆる項目でディエゴがPerottiを上回っています。
このことはディエゴがいかにユーティリティなプレーヤーかということを表すと共に、ディエゴに多くの仕事を任せすぎていたことも同時に表しています。

話がディエゴが主語の流れになってしまいましたが、4−3−3という戦術の特性を考えると、ワントップがこれだけ多くの役割を担うことは本来狙うべきサッカーになっていないことを示してしまっています。
その意味では、Received Passesに対してBack Passesの比率が高い(73.9%)というポストの役割を厭わないPerottiの方が、ワントップとして適任であり、このことはよりディエゴを本来の役割で活用できることを示していると思います。

フェリッピではダメなのか

ここまでディエゴ・オリヴェイラとの比較で見てきましたが、では2022年シーズン後半からFC東京に加入したルイス・フェリッピ選手と比較をした場合、フェリッピではダメなのか、ということを最後に考察したいと思います。

フェリッピの場合、1,000分以上の試合出場を果たしたのがスポルティングでの2019/2020シーズンまで遡らないといけないことから、単純にスタッツで比較することが正しいのかどうかという疑問点が残ります。
それを除してあくまでもFC東京でプレーした12試合451分というスタッツに限ってみると、以下の通りになります。

フェリッピ2022J1での90分平均スタッツ

プレー時間の差異を考えてみても、先に示したPerottiのスタッツと大きく変わるポイントがない、というのがご覧いただけるかと思います。
つまりは、フェリッピに求めた仕事をPelottiもこなせる、ということがスタッツ的にもみてとることが出来ますし、逆を言えば2022シーズン少ない時間でフェリッピがこなした仕事をペロッティはシーズン通してやってきた、ともいえます。

各々の選手が活躍したフィールドの差異を数値的に表せないために、この比較に意味を持たせることは非常に難しいのですが、あくまでも直近の数値比較にJリーグファンという考えを加えると「Jリーグというサッカーを理解したであろうフェリッピが、獲得候補と同じ数値を出しているならフェリッピでいいのではないか?」という疑念も湧いてきます。
もちろん、巷間に噂される2億円超というフェリッピの獲得オプション行使をするのであれば、新たな選手をレンタルで獲得することのほうが財務的なインパクトが少ないとも言えます。
さらには、新外国人選手が日本という国、さらにはこの治らないコロナ禍に馴れる時間を考えると、フェリッピの買取検討を夏まで伸ばすことはできなくはないのではないか、という思いが頭を擡げるとも言えます。

もちろん、24歳と29歳、左利きと右利き、スタッツでの違い以上に違うポイントも多い上に、性格上の違いなどもあるためにどちらの選手が良いとか悪いとかは一概に言うことはできません。

しかし、ここまでみてきた中では、Perottiに期待される役割は

  • 高いフィジカルを活かして全線での起点となる
  • ディエゴの負担を軽減する
  • ゴール前での高い枠内シュート
といったポイントを期待されているように思います。
本日現在、まだレアンドロの去就が明らかになっていませんが、極めて個人的な意見を言うならば、Perottiが左サイドもできると言うことを考えると、レアンドロの去就如何ではフェリッピも残しての前線ハイタワーもオプションに入れながらの比較検討でもいいのではないかと思います。
フェリッピの足元の柔らかさとフィジカルの強さはJリーグでは驚異になりますし、Perottiの枠内シュート数の高さ、起点となれるであろう力量も魅力的です。
前線に二つの起点がある、というのは相手DFにとっても試合終盤に非常に厄介になる可能性も高いですし、これまでにそんなサッカーを見たことがない、という興味も含めて。
ただ、これでPerottiがFC東京に来なかったら、この分析は他サポーターさんの参考にして頂ければと思います・・・。

Transfer Talk – Pedro Henrique Perottiを知ってみよう〜前編

FC東京への移籍の噂がある選手をチェック

相変わらずの全然管理されてないブログ。
なんとかしないとなんとかしないと、で10ヶ月。あー。
とはいえ、なんとかする気はあるので時間を見つけて積極的に何か更新したいと思います。

今回は2022年12月28日現在FC東京加入の噂となっているPedro Henrique Perotti選手に関して、これまでのStatsなどを使って考察したいと思います。

本人について知る前に思い出すべきこと

Perotti選手本人について考察する前に、彼が所属するChapecoense(シャペコエンセ)について思い出しておくべきことがあります。
ご記憶の方も多いかと思いますが、2016年11月28日に発生したラミア航空2933便墜落事故です。
詳細は上記リンクWikipedia 他に譲りますが、当時このニュースを聞いた際にいったい何が起こったのか、(一応)航空ファンでもある僕はあちこちのニュースサイトを掘っくり返して、この事故の背景にあった人為的なミスに憤ったのを今でも覚えています。
この燃料不足の件は、事故後かなり早い段階で現地報道では問われていましたが、公式な見解が出たのは上記リンクの通り2018年4月までの時間を要しました。
この事故で主力の大半を失い2部降格もやむなしと言われたシャペコエンセは、1年後の16/17には1部リーグ9位、17/18シーズンは14位、18/19シーズンは19位で2部(セリエB)降格、19/20シーズンは2部で首位となり1シーズンで1部返り咲き。
現在は再びセリエBとなっていますが、元来磐石とは言えない財政基盤をローン移籍や選手の売買で乗り越え、悲劇の後もブラジル国内で確かなチームとして活動しています。
そしてこのPerottiは、正に悲劇の直後の16/17シーズン1月に、シャペコエンセU20からトップチームに昇格し、以来ポルトガル2部のCDナシオナルへのローン移籍を含めたシーズンをシャペコエンセで過ごしています。
いわば、シャペコエンセでは「我がチームの希望」としてファンから愛されていたであろうことは想像に難くありません。

プレースタイルを想像してみる - Football Manager 2023編

そんなシャペコの星(であろう)Perottiとはどんな選手なんでしょうか。
能力を数値化する、というのは世界数多あるリーグで基準を設けることは容易にはできませんし、主観が入ります。
Youtubeの動画も代理人事務所が売りに出したい良いシーンを編集しているに過ぎませんので、弱みを観てとることはできません。
そんな時に、極めて客観性が高く、能力値を数値化しているのがゲームのFootball Managerシリーズです。
数値化の詳細は明らかにされていませんが、プロも舌を巻くほどに若手選手までしっかりと押さえており、尚且つその能力を数値化していることを考えると、これを使って想起するのがまずは容易かと思います。

各数値の満点は20点です。
この満点から見ていくと、概ね60%ぐらいの数値を叩き出している「平均よりちょっと上」の選手と言えます。
ただ、この数値が良いのか悪いのか、Perotti選手の数値ではイメージができにくいので、先のW杯でも活躍した堂安選手の数値も載せておきます。

堂安選手のプレースタイル、W杯でのプレーぶりを思い返すと、なんとなくPerottiのプレースタイルが想像できるのではないでしょうか。

堂安選手がテクニック(First TouchとTechnique)及び俊敏性(Agility)で勝負するのに比べて、Perottiはその点が欠けています。
しかし大きく遅れをとっているわけでもありません。
例えば、堂安選手のFirst Touchが15に対してPerottiは12、前者のTechniqueが16に対して後者は12。
こう見ていくと、フィジカルの強さ(Heading,Jumping Reach)と共に決定力(Finishing)を持ち合わせた、典型的なポストタイプの選手または前線で体を張ってボールを守る選手と想像することができます。

本日のところはゲームではあれど、プロも注目するデータの数値化を実践しているFootball Manager2023 の能力値を見てどんな選手なのか、を想像してみました。
明日は実際のシャペコエンセでのスタッツを使って、今回見てきたプレースタイルの裏付けを見ていきたいと思います。

Match Review 2022.2.18 川崎フロンターレ vs FC東京

2022年シーズン開幕。

監督、コーチ陣のみならずフロントも変わり、今シーズンのFC東京がどんなサッカーを見せてくれるのか。
昨シーズンまではポゼッションを放棄したカウンターサッカーをやっていたFC東京が、”ポジショナルプレー”、一言で言うなら”常に良い位置を取る”サッカーで”ボールを愛する”サッカー、と言う真逆のサッカーを志向していくことが果たしてできるのか。

恐らく多くのFC東京ファンの方々がそんな心配を胸に、リーグチャンピオンとの開幕戦となるこの試合を観たと思います。

僕自身と同様に、その多くのFC東京ファンの方は「川崎相手だし、今シーズンの方向性が感じられればいいかな」と思っていたのではないでしょうか。
いやはや。そんな思いを抱いていた自分が恥ずかしくなるほどの胸躍る試合でした。
試合終了後に等々力に集まったFC東京サポーターを煽ったアルベル監督の姿に、こんな甘い考えで観戦した自分を恥じたほどでした。

11秒間で8本のパスを繋げた試合序盤のメッセージ

試合が進むにつれ、FC東京のポゼッションの高さに目を見張りました。
試合開始後15分は、監督、選手が語ったようにバタバタとして、ボールを扱う精度も川崎との間には雲泥の差があるように思えました。
しかし、今シーズンのFC東京は面白いかもしれないぞ!そう僕が目を見張るシーンは試合開始早々にやってきました。

そのシーンは、両軍ボールが落ち着かず主導権争いが口火を切った前半1分36秒に、エンリケ・トレヴィザンが川崎レアンドロ・ダミアンへの楔のパスをカットしたところから始まります。
ここからボールは、青木→小川→青木→安部→永井→青木→安部と繋がり、1分47秒にディエゴ・オリヴェイラへの楔のパスがカットされる形で一連の流れが終わります。
各選手が三角形を構成して、ワンタッチでボールを繋ぎ、11秒の中で8本のパスが交わされました。
このプレーに、昨シーズンまでとこれは本当に違うぞ!という端緒を見た気がしました。
これまでチームのリリースや各種報道で言われてきた今シーズンのFC東京のスタイルというものは、本当なんだ、選手もこういうサッカーをやろうとしているんだ、というメッセージが画面を通して伝わってくるようでした。

試合開始直後だっただけに、このシーンでどれだけの人が心動かされたかはわかりませんが、DAZN加入者の方は是非見直してもらいたいと思います。
90分を通して試合を支配したFC東京でしたが、ディエゴにこそボールは通りませんでしたが、僕はこのプレーがこれから磨かれて行くであろうチームの方向性を如実に表した美しいプレーとして印象に残りました。

カウンターアタック0というメッセージ

ここでデータを幾つか提示してみます。
データ元はプロも活用しているwyscout.comから抜き出します。

チーム全体及び選手個々のパフォーマンスを、General、Attacking、Defending、Passingの大項目から見ることができるのがWyscoutの大きな特徴ですが、試合後にデータを眺めていて目を引いたのがAttacking項目配下の”Counter Attack 0″という数値です。

カウンターアタックと言えば、前任長谷川監督指揮下でのFC東京の代名詞と言っても良い戦術でした。
新チーム始動から1ヶ月程度、開幕戦ということを考えれば、ビハインドな状況などでは慣れ親しんだ戦術に選手が頼ってしまうこともあるでしょうし、更には選手個々にもその感覚を捨てきれないだろう、と思っていました。
ゆえに、カウンターアタックが0というのは、個人的には軽く頭を殴られたような衝撃でもありました。

 

 

Wyscouticデータ一部Screen Shot

一応ここでWyscoutが定義するCounteattackを記しておくと
A transition of the possession from the opponent team, where the team is transitioning quickly from defensive to attacking phase, trying to catch the opponent out of their defensive shape.
と記載があります。
つまりは、ボールのポゼッションが相手チームから移り、相手チームディフェンスの体制が整わない間に素早く攻撃に転じること、ということです。
98分間を通して、FC東京はこういった攻撃がなかったということをこのデータは表しています。

これが何を意味するのか、はもはや説明する必要もないと思いますが、いかに2022のFC東京が相手からボールを奪っても、慌てて相手DFの裏側に蹴り出すような非効率な攻撃をするよりも、しっかりと繋いで自分達が動いて良いポジションを取りながら(ポジショナル)、ボールを繋いで攻撃をして行くのか、ということを意味するほかありません。

ちなみに、過去はどうだったかというと、2021シーズンはカウンター0が7試合あり、3勝3敗1引分でした。
相手のある話ですので、カウンター0で抜き出しても結果が変わってくるのは当たり前ですが、ポゼッションやポジショナルアタッキング(ボールを握って攻撃した回数とシュート数)といったデータと並べてみると、この試合でFC東京が表現したものがいかにこれまでと違った質のものだったのか、が分かると思います。

 

 

2021~2022シーズンのカウンターアタック0のチームデータ抜粋(Wyscoutデータを元に筆者作成)

平準化という課題

その他、この試合で語りたいことは多くありますが、色々なメディアやファンBlogで多く論じられている通り、人を魅了する試合だったことは間違いないと思います。
注目の超高校級スター松木のデビュー戦とその新人とは思えないプレーぶり、また新戦力新戦力スウォビィク、木本、エンリケのシュアなプレーぶりなども含めて、Jリーグファンの正月でもある開幕戦に相応しいものが見れた夜であったと思います。

一方で、果たしてこの試合でできたことが、メンバーが変わっても質を落とさずにできるのか、という課題にチームはこれから直面して行くと思います。

この試合、コロナの影響もあるのでしょう、何人かのスタメンクラスの選手が不在でした。
そのため急遽出場した選手もいたかと思いますが、この試合が今シーズンの基準になります。
アルベル監督が言うように、まだまだ道半ば、20%の出来だということであれば今後よりこの質が向上して行くことは間違いないでしょう。
一方で昨シーズンまでも多く感じたことですが、控え選手が入ると同じことができない、選手交代策の意図が見えにくいといった、チーム全体を平準化するという部分が極めて不足していました。
この点をアルベル監督がどうレベルの高い平準化ができるのかが大きな鍵になるかと思います。

この記事をこうして書いている間にも、コロナによりチームが1週間活動を停止すると言うニュースが入ってきました。
変異をし続けるこのウィルスとは、我々はこの先も長く付き合っていかなくてはならないのでしょう。
そうした場合に、コロナにより機会を得る選手、失う選手が出てくることもまだまだ続くと思います。
その時に、チームの高い水準を維持する平準化ができるのかどうかが問われてくると思います。

川崎フロンターレは少ないチャンスを活かして勝利しました。
確かに試合はFC東京が主導権を握っていましたが、交代で入った選手がしっかりと仕事をし得点に絡んだと言う意味では、やはりフロンターレはチャンピオンとして高い次元でチームの水準を維持出来ているとも言えます。

魅力的なサッカーをし、多くの人々の注目を集めた開幕戦。
首都東京のチームとして、さらに多くの人々から注目されるためにも、この試合のフロンターレのように、誰が出ても結果が伴う試合をして勝利しなくてはならないでしょう。
そのためにも、松木ばかりが注目されますが、同年代の若手選手にはもっと奮起してもらわなければなりません。

アルベルサッカーの熟成と共に、チーム全体の底上げを実感できる。
そんな2022シーズンになってくれること、そしてチーム内罹患者の皆さんが早期に回復することを祈っていきたいと思います。

Match Review 2021.5.15 柏レイソル vs FC東京

5連敗、という結果を受けた瞬間から思い出すのは、15年前の2006年のこと。
8月26日の清水エスパルス戦から10月15日のサンフレッチェ広島戦までの8連敗のことです。

当時既に千葉県に住まいを移していましたので、9月30日味スタでのアルビレックス戦に敗れ6連敗となった試合後の帰路の腹立たしさに任せて、帰宅した瞬間に持っていた荷物を廊下の壁に打ちつけました。

その時妻に「負けて悔しいのは分かるけど、選手の方がもっと悔しいんだから、あんたが怒ったってどうにもならないわよ!」と怒られたのを今でも覚えています。

以来、応援しているチームが連敗しても、良い部分を探してそこをチームが気づいてくれることを信じていこう、そんなふうに考え方を変えました。
その結果が多くの方に目を通して頂いた”FC東京の窮状を考えてみる”と”FC東京の窮状を考えてみる2~補強策の成否について”であったりします。

応援している、愛しているチームの連敗というのはファン・サポーターにとっては辛いものです。
しかし、そこを自分なりに理屈を持って納得し、信じることで突破してくれた時の喜びは一入と言えます。

15年前の闇を抜けた時は、77分から84分でガンバ大阪から3点を奪った3-2の勝利だったことを考えると、FC東京というチームは派手に突破口を見出すチームだな、などと独りごちながらベランダで飲んだスーパードライと赤ワインは至極の味でした。

上記を見ていただくと、橋本の数値を上回る結果を青木が出していることが分かります。
「いやいや、そう言っても橋本は海外の厳しい環境でやってるでしょ」というご意見もあるかと思いますが、橋本自身がロシアに行ってから各スタッツが大きく下がっていることはなく、むしろキャリア全体の数値を採用しているので、割合の少ないロシアの数値は全体に比して誤差程度です。

このダイアグラムから読み取れるのは、橋本と青木の数値は非常に似通っており、シルバは彼ら二人に比べると守備的MFに必須なデュエル能力で彼ら二人の後塵を拝すということが分かります。

では守備的なスタッツを比較するとどうでしょうか。

 

札幌戦のレビューを書かないとな、と思っているうちに時間は過ぎていき、業務やコーチ業で疲弊してあっという間にフロンターレ戦当日を迎えました。
と同時に札幌戦のレビューは放棄する、という安易な選択肢を選んだわけですが、「別にレビュー書いて給料もらっているわけでもなし。」と思っているわけではなく、単に1日が48時間あったらいいよね、ぐらいに思っているワーカホリックです。

さて、あらゆるところで触れられていることですので今更言及する必要もないのですが、FC東京が勝てなかった理由はその過程が全てであり、川崎の勝因はその誤ったFC東京の過程を見逃すことなく楽に自分達のペースを維持できたことでしょう。
そのくらいFC東京のプロセスは酷かったです。
「結果良ければプロセスが悪くてもOK」であったのはシーズン序盤によく言われる言葉ですが、シーズン中盤に突入するこの時期にあのプロセスでは先が思いやられる、というのが正直な感想です。
一方で自分を宥めているのはその「シーズン序盤」という言葉です。
まだ9節。今シーズンは残り29試合あるわけです。
4分の1が終わったこのタイミングを序盤とするのか中盤とするのか、これによって見え方は大きく変わってくると思います。

柏 - スターティングメンバー選出に失敗

後半20分の間にFC東京はよく失点をしなかった、と言えるほどに柏レイソルの重圧は非常に厚いものでした。
逆を言えば、後半のプレーを本来は試合開始後から展開したかったのかと思いますが、公式戦4試合でうまく結果が出ていなかった上に、その内の3試合が横浜FC、ベガルタ仙台、アヴィスパ福岡とレイソルから見れば「格下」とも言えるチームに対してクリーンシートを喫しているということが焦りにも繋がったスタメンだったように思います。

上記の試合を振り返ってみても、ポゼッションでは相手を圧倒しながらも決め手にかけて結果に繋がらなかった、という事から考えると新加入選手を一気に使ってチームバランスを崩すリスクをこの試合で取る必要があるのだろうか、というのがスターティングメンバーを見た時に感じました。

具体的にはエメルソン・サントス、ドッジ、アンジェロッティという3選手が加入後初先発しました。

エメルソン、ドッジは非常に良いパフォーマンスを局面局面で見せていましたが、殊更エメルソンについてはここで先発させるというのは総体的難易度をあげてしまったのではないかな、と振り返ると思います。
特にレイソルが志向している3-4-3のフォーメーションは、全体をコンパクトにして攻守の切り替えを早くするサッカーを目指したものになります。
すなはち、DFラインの上下動は3人のDFが細かくコミュニケーションを取るだけでなく、時には阿吽の呼吸で「ここは下がるべきだな」「ここはあげておこう」というバランスを保つ必要がある戦術とも言えます。

個の対応で強さを所々見せていたエメルソンではありますが、このラインコントロールの部分で他選手との呼吸が合っていたとは言えず、DFラインがバタバタとしているうちにFC東京のDFライン裏を狙う動きで失点を重ねてしまいました。
3失点してからは、GKのキムがDFラインの裏をケアする動きが多くなり、なんとか全体的なバランスを保ちましたが、このキムの動きがなければあと2点ぐらいは失っていたかと思います。

思うに、レイソルの場合はここ数試合の状況がそんなに悪いわけでもないにも関わらず、結果が出ていないことに囚われてチームの背骨となるセンターバックからトップまでを全て変えてしまったことが敗因のように思えます。
後半20分間見せたように、圧倒的なポゼッションとスペースを突く動きはできているので、まずはDFラインは日本人選手で構成しながら、ドッジの運動量を活かしていくと、そして江坂を始めとする中盤より前の選手とアンジェロッティティのタイミングを合わせていけば上手くハマる日が早晩に来るように思います。
エメルソン・サントスが良い選手なのはこの試合のディエゴ・オリベイラへの対応やデュエルでよく分かりましたので、焦らず少しずつ新戦力をフィットさせながら勝ち点を積み上げることを目指した方が良いように思います。

FC東京もそうですが、昨シーズンのカップ戦決勝を共に戦ったチーム、双方共に年明けまで戦った疲労をようやく乗り越え、新戦力のマッチに入れるフェーズだけに、焦らなければ結果はついてくるように思います。

東京 - 外からの目がもたらした勝利

FC東京を救った選手の筆頭は間違いなく高萩でしょう。
ハイプレスで襲い掛かるレイソルのプレッシャーをいなすように、ワンタッチでシンプルにボールを動かしながら、効果的にピッチの幅を取る動きを繰り返し、レイソルDFラインの裏を狙うパスを繰り出すなどここ数試合で見られない「繋ぎを担う」動きをFC東京のピッチ内で展開してくれました。

スタッツだけを眺めると特段良い数値ではないのですが、このスタッツに表れないピッチを動き回る姿勢というのがこれまでの東京に不足していたものを与えてくれたと言えます。

 

高萩Heat Map

FC東京を救った選手の筆頭は間違いなく高萩でしょう。
ハイプレスで襲い掛かるレイソルのプレッシャーをいなすように、ワンタッチでシンプルにボールを動かしながら、効果的にピッチの幅を取る動きを繰り返し、レイソルDFラインの裏を狙うパスを繰り出すなどここ数試合で見られない「繋ぎを担う」動きをFC東京のピッチ内で展開してくれました。

スタッツだけを眺めると特段良い数値ではないのですが、このスタッツに表れないピッチを動き回る姿勢というのがこれまでの東京に不足していたものを与えてくれたと言えます。

図=ヒートマップ

本人も試合後のインタビューで語っている通り、

“勝つことができていない中でリーグ戦の出場機会が少なかったので外から客観的にチームの試合を見ていた”

という外からチームが苦しい状況を見て、自分ならどう動くのか、ということを考えそれを実践できるというベテランらしい動きがこの試合の好結果に結びついたと言えます。

その上にこれまでに指摘されていたDFラインが下がる、という課題に関しても意識を高く持ち、常にDFの選手に声をかけていました。

後半反則でレイソルにFKを与えたシーンでも、

「おい!下がるな。さがるなよ!」

とDFの選手にかけた声がマイクに拾われていましたし、試合の最中でも首を振ってはDFに対して、前に前に、と手で示すシーンが何度も見られました。

外からサッカーを見たベテラン選手が窮状にあるチームを救う、というのはよく聞くストーリーでもありますが、代表、海外チームなどで経験を積んだベテランがこのタイミングで目に見えない形でチームを救ってくれたことは非常に価値が高いと思います。

この高萩の姿を受けて他の選手がどう振る舞うのか。

ピッチにいた選手は刺激を受けた部分も多いのではないか、と思います。

フィットし始めた中盤の底

前回投稿で橋本の後継としての青木獲得は間違いでない、ということを述べました。

この試合でも青木はその力量を見事に示していたと思います。

Wyscoutのスタッツ的にはチーム全体で150/269(勝率55.76%)のデュエルの内、約15%に及ぶ23回のデュエルで15回の勝率をあげています(ちなみに守備時のデュエルだけなら13回で77%の勝率)
チーム全体で言えば、高萩が38回(勝率34%)、安部28回(同50%)、アダイウトン24回(38%)に次ぐデュエル回数を考えると、その勝率の高さも出色です。

ボールリカバリーも森重(19)、渡辺(11)、小川(10)に次いで8と中盤の底としては十分な数字を示している事からも、目立たないところでしっかりと守備面で貢献してくれていることがわかります。
いよいよ東京の中盤の底を任せるに相応しい結果を出し始めています。
運動量豊富な安部とダブルボランチを組む形でのこの試合でしたが、相互に補い合うことで押されている時間帯もきっちりと守備面で安定をもたらしていました。

5連敗という闇の中にありましたが、あの惨敗であった鹿島でもデュエル勝率80%というパフォーマンスを出していた事からも、青木を中盤の底に固定する流れができたようです。

印象的に地味(失礼)な選手ではありますが、目立たずともきちんと結果を出す縁の下の力持ち、という意味でも貴重な選手がようやく本領発揮となったようです。

これから安定したパフォーマンスを出してくれることでしょう。

勝って兜の・・・

 

前半20分までの3得点で終わらずに4点目を取り、尚且つクリーンシートで終えられたというのは選手にとっても非常に自信になる勝利だったのではないかと思います。

ただ、気になるポイントがなかったわけではありません。

攻撃面では左サイド偏重になってしまっていたために、右サイドの田川、内田が守備的なプレーになってしまっていた点が非常に気になります。
全体的なバランスを取る、という意味では左偏重な分右は下がってバランスを取る、というのはわからないでもないですが、逆を言えば左を抑えられた時に右からどうやって崩していくのか、というアイディアが見られなかった点が今後の課題になるのではないかと思います。

終盤に中盤でボールを奪った内田がそのままゴール前に上がりシュートまで繋げたしシーンがありましたが、あのシーン自体は右サイドで崩したのではないため、この勝利を今後につなげる意味でも右からの攻撃の形成をどうするのかは注意していかなければならないポイントかと思います。

ちなみに追記するとすれば、22分に内田がパスをカットされた直後に自陣に向けて走り出す動きを見せた点も気になったポイントです。

3点を奪って優勢な状況ではありましたが、あの場面は内田がボールホルダーに対してプレッシャーをかけるべきだったと思います。

田川が内田に代わって右サイドバックのポジションに入っていた事からも、内田がプレッシャーをかけにいくというイメージを持たないと、右サイドだけが下がり気味になって相手の攻撃の起点にされてしまいます。

本職右サイドバックではないのでその点では仕方がないかな、という思いはあれども、攻撃的にプレッシャーを掛けにいけていた全体感の中では違和感のあった瞬間だったと思います。

全体的には柏ボールになるとDFからFWまでの3ラインが形成され、10人のピッチプレーヤーが一つの画面に収まるコンパクトさが見られたことは非常に良かったと思います。

一方でボールを奪われた瞬間は、まだまだ前線の選手がプレスを掛けに行く一方で、全体が下がり気味になってしまい全体が間延びしてしまうシーンが散見されました。

レイソルが試合を支配した20分間もそのような状況の繰り返しでしたので、奪われた瞬間にFWがプレスに入るのか、それとも1枚行かせてボールを追わせながら他は引くのか、など決め事をしていかないと上位チームと当たった時にそのポイントを容易に使われてしまうかと思います。

厳しい言い方をしてしまえば、レイソルの出来が良いとは言えなかった中でその弱点をついて早々に試合を決めたことは大きな評価ポイントですが、一方で戦術的には粗さが見られた試合でもありました。

この勝ちに甘んじることなく、更なる選手間コミュニケーションを重ねてチームとして上昇気流に乗ってもらえるように願っています。

FC東京の窮状を考えてみる2 ~補強策の成否について

前回投稿ポストFC東京の窮状を考えてみるがこんな大っぴらに宣伝もしてないBlogにも関わらず700を超えるページビューを頂きました。
そんな中、以下のようにTwitterにて@matsu さんよりご感想とご質問を頂きました。
@matsuさんのご了承を頂いた上で引用致します。

非常に多くの東京サポーターが感じている室屋、橋本の穴埋め、という問題について問われています。
他チームが良い補強をしている(ように見える)ということもあり、このようなご質問を頂いたと思いますが、このポイントを考察してみる貴重な機会になるとも思いましたので、僕なりにご回答というか、考えを述べさせて頂ければと思い予定外の第2弾投稿です。
※マリノスやフロンターレの補強戦略については長くなるので今回は省きます。

 

2020年夏を振り返る

まず、大前提として、日本代表までになった実力を持つ選手の穴埋めをすることは至難の業である、ということを我々も冷静に捉えないといけないと思います。
この手の大きな穴埋めを行うに当たっては、大きくは3つの対策があると思います。

  1. 相応の力量を持つであろう外国人選手を補強する
    • ただし、この場合は当該選手が日本やJリーグに馴染めるか、というリスクがある
  2. 相応の力量を持つ日本人選手を補強する
    • この場合は候補選手が他チームの主力であるため、簡単に交渉が進まない可能性が高い
  3.  いわゆる”下位互換”型の選手を獲得し、使いながらチーム力を相応のレベルまで上げていく
    • この場合、多くのケースでは即戦力新人補強が主体
      • 新人選手の獲得またはアカデミーからの昇格で賄う
    • ただ、サテライトリーグの終了やFC東京のJ3参加が終了してしまったことからも、若い選手をJ1の試合使いながら育てなければならないという難しさがある

この観点で考えると、橋本や室屋がJリーグシーズン途中での移籍であったことから考えると、上記1と2の補強というのは難しかったと思います。
またその背景には受け取る移籍金が相応でなかったことからも、適当な補強資金を投入することができなかったこともあり、補強を先送りして置かなければならなかった台所事情があったかと思います。
加えて予期しなかったコロナ禍であったことからも、取りうる策は3の一択であったと思います。

しかも先述の通りシーズン中であることからも現有戦力で賄うしかありません。
室屋の穴は、左サイドバックとして試合に出ていた中村穂高が主力となり、左の小川と共にサイドバックを構成しました。
そのバックアッパーとして中村拓海が左右を適宜担当する形式でなんとか事なきを得られたシーズンであったといえます。

橋本の穴が難しかったと言えます。
ここは後述をしますが、当時の戦力では若い品田や荒削りなシルバを使いながら育てるしかありませんでした。
ただし、この二人では勝負がかかったポイントで不安があったため、森重のアンカー起用という、ある意味で最終ラインの強度を下げるというリスクを取る奇策で乗り切りました。
この背景には森重の代役で起用したオマリが出色の出来を見せた、ということもありました。
こうしてみると、非常に幸運とも言える要素があったと今振り返ると思えます。

2021年本当に穴埋めはできていないのか

冒頭に頂いたコメントの中にもあったように、「橋本、室屋の穴埋めができていない」ということはネット上でも多く見られる意見です。
ではそう感じるのは何故でしょうか?
恐らくこう質問させていただくと、「チームのスカウティングが悪い」「他チームで控えにしかならない選手しか取れない強化部」などなどのご意見が出てくることと思います。

ここで冷静に考えてみようと思います。
補強した選手が退団した選手と相応の実力を持っている選手のようだ、ということが客観的に示されたとしたら、どんな風に思考が変わるでしょうか。
選手の評価というのは見ている我々ファンの印象で変わります。
では冷静に選手を評価する尺度があったら、さらにその印象も変わるのではないでしょうか。
そのために現在は多くのスカウティングツールがプロ向けに開発・提供されており、大半のプロチームはそれらを複数使用して選手を客観的に分析し、必要な補強策を検討しています。
プロが使うスカウトツールにどんなものがあるのか、は以下の記事を読んでいたくのが良いかと思います。

サッカー界もマッチングアプリの時代に? 名将ビエルサ率いるリーズが明かす移籍市場でのデジタル戦略とは (Number Web)

そこで今回は上記にも記載されているWyscoutのWriter Editionから選手の統計データを使って比較を行いました。

ちなみに、個人の趣味でやっている限りですので、係る費用も持ち出しです。
なので全てのサービスは契約できませんので、あくまでもWyscoutで限定して提供されるデータを使用している点はご了承ください(宝くじでも当たれば契約できるサービスは全て契約したい・・・)。

橋本の代わりは青木、が正しい

ではWyscoutのデータを使って橋本、青木、そして橋本退団後にアンカーポジションで起用されていたシルバを比較してみましょう。

とはいえ各選手のキャリアや出場試合レベルもまちまちのため、出来る限り均等に数値を比較できるように、プレーの正確性を示すプレーの成功率で比較をしましょう。

以下はプレーアクションを起こした結果の成功率を示すTotal Action、枠内シュート率、パス、ロングパス、クロス、ドリブルの成功率、デュエル及び空中戦の勝率、自陣でのボールロスト率、相手人内でのボール回収率といった一般的指標をレーダーチャートにしたものです。

Figure 1

上記を見ていただくと、橋本の数値を上回る結果を青木が出していることが分かります。
「いやいや、そう言っても橋本は海外の厳しい環境でやってるでしょ」というご意見もあるかと思いますが、橋本自身がロシアに行ってから各スタッツが大きく下がっていることはなく、むしろキャリア全体の数値を採用しているので、割合の少ないロシアの数値は全体に比して誤差程度です。

このダイアグラムから読み取れるのは、橋本と青木の数値は非常に似通っており、シルバは彼ら二人に比べると守備的MFに必須なデュエル能力で彼ら二人の後塵を拝すということが分かります。

では守備的なスタッツを比較するとどうでしょうか。

 

Figure 2

空中戦とボールロスト、リカバリーは先述の項目と同様ですが、ここでは守備時のデュエル勝率とスライディングタックル成功率を加えています。
ここでもやはり青木の出している結果は橋本と大きく変わりません。

Figure 3

最後にパスのスタッツ比較です。
橋本と青木で顕著に違うのは、ロングパスの成功率とペナルティエリアへのパス成功率です。

ここの選手が置かれている状況は様々ですが、抜けた穴を埋めるには同様の特性を持った選手を補強したい、と考えた時にはその選手同士の何らかのデータを比較し検討することが必要です。
ゲームのようにそれぞれの選手のスタミナやスピードが同じ基準で数値化されたものがない以上、パスなどの正確性から獲得を検討しているのは先に挙げた記事からもわかるかと思いますし、そのプロが使っているデータを利用して客観的に比較した結果がここまでのものです。

つまりは、選手個人の能力を推測するデータから判断すると、橋本の穴は青木で十分に埋められたことが分かります。

ただ難しいのは、データを取得するチーム=条件が全く異質なのでその変数を数値化できない限り正確な判断はできないでしょう。
けれども、それが出来たらどのチームも獲得移籍には失敗しません。
つまりは、その数値化できない変数があるからこそ、同様のスタッツを持ち、同様のプレーが期待できる選手が期待通りのプレーをできない、のはチーム戦術や起用法、チームに馴染めているか、などの要素によるものとも言えるでしょう。

言うなれば、この吉と出るか凶と出るか、が移籍の面白いところでもあります。

じゃあ室屋の穴はどうなのか

では全く同様の比較を、室屋、中村穂、中村拓でも行ってみました。
このケースではGeneral StatsとDefensive Statsのみを用いています。

Figure 4
Figure 5

どんな印象でしょうか。
僕個人は、サンプル数が少ない、という前提はありながらも、中村拓はよくやっているじゃないか、という印象を強く持ちました。
「拓海の守備は心許ない」という印象を多くの方がお持ちと思いますが、デュエルでは室屋と同等、守備面でのデュエルでは室屋を上回る数値であることからも、視覚で見る印象というのがどれだけデータと乖離があるのかがよくわかると思います。

ここでも青木の項目と同様に、数値化できない経験値やプレー環境というものはありながらも、穴埋めは十分にできるだけの能力を持った選手がいてくれることは分かるかと思います。

FC東京の補強策は的確

前項で見たように、データ(各々の選手の環境因子は勘案していないが)を比較してみると、橋本の穴は青木、室屋の穴は二人の中村でうめられている、つまりはFC東京の補強策は的確である、というのが僕の結論です。

ではなぜ彼らがいた時と同じような印象を持った試合が見られないのでしょうか?
ここが重要なポイントだと思います。
データに写らない部分から考えると以下のように思います。

    • 中村帆の怪我、中村拓の経験不足と体力面の問題
      • ハードな環境の連続に耐えうるフィジカルを有していない
    • 青木のコンディション?チームへの馴染み度合い?

 原因は外からでは分かりませんが、外野言えることは「我慢して使って馴染ませる」ということがシーズン開幕後から必要だったのではないか、ということです。
推測されるものは以下の通りです。

  • せっかく青木を補強したが「慣れていない」ということで森重アンカー策に拘泥してしまった。
    • 攻撃面では森重の展開力が活きる場面が多かったが、アジリティが不足する分を周囲がカバーせざるを得ず、DFラインにギャップが生じてしまうことがあった。
  • 結果全体がアンバランスになり、失点が重なったことでDFラインが下がり全体が間延びする結果に
  • 室屋の穴は中村帆の成長で埋まったとところに、不運にも彼の怪我となってしまった。
  • 中村拓を起用したものの、フロンターレ戦での失点に繋がるミスがあり、以来一番手としての選択肢から外れてしまった。
    • 若い選手を起用すれば、経験不足からミスはつきもの。確かにフロンターレ戦でのミスは反撃の狼煙を上げたチームに水を刺した格好になった。
  • 結果、本職ではない選手起用も含めて右サイドの守備が固定されずさらに不安定な状態に陥っている。

確かに、中村拓は幾つか決定的なミスを犯してしまったのは確かです。
でもミスをしない選手はいません。
データから見ても、室屋や穂高とは違う特徴を持っており、経験値の割には高いレートを出しています。
ミスをしたからといってメンバーから外してしまっては、選手が持っている良さを失って「ミスをしないためのプレー」に終始してしまい、結局成長のスピードを止めることになってしまうかもしれません。
チーム全体が上手く行っていれば、DFラインおよび中盤で中村拓を助けてあげよう、という機運も生まれやすいかもしれませんが、悪い状況ではそういった選手同士の「前向きな」フォローへの意識は低下するものです。

チーム全体を見れば、フロンターレ戦の敗戦までは良くはないものの、悪い流れではなかっただけに、同じメンバーでもう一度組み直せばよかったとというのが僕の思いです。
しかしながら「負けたからいじろう」と起用する選手を変えてしまったことで、「下手を打つと出してもらえない」という意識を選手に与えてしまった可能性も否定できません。

苦しい日程の中で、選手に疲労が出ることは考慮の上でしょう。
しかしながら若くフィジカル面もまだ十分ではないながらも、変えの効かない存在となってしまった中村拓をミスという結果で変えてしまった事からチーム全体のバランスが崩れたと思います。

せっかく良い選手、的確な補強を行ったとしても、一つの悪手で局面は大きく変わってしまい、それを挽回しようとするが故にさらに悪手を重ねる。
ビジネスでも良くある営業最悪の局面だったり、ボードゲームや将棋、果てはギャンブルまでこのようなことは起こり得ます。
選手の問題、というよりも前回も述べた通り、ベンチの問題が大きいと考えます。

どう仕切り直すのか

ここからどう立て直すのが良いのでしょうか。
現状ではウヴィニのコンディションが想像以上に良いこともあり、次節からは3-5-2でスタートする可能性が高いかもしれません。

しかし、チームとして(比較的)成熟度が高い(であろう)4-3-3で再び仕切り直すというのも一つの選択肢であると思います。
要は見失った時こそ基本に立ち返ろうよ、という事です。
今季のFC東京の基本は、あくまでも4-3-3で縦に速いサッカーをする、ということではなかったでしょうか。

基本に立ち返りながらも、ここまで見てきたように、アンカーに適任の青木、右サイドバックには中村拓を起用することで肚を決めて、今できる本来あるべき姿に向かってチーム全体で動くべきでしょう。

その上でインサイドハーフにはボールを動かせる三田と運動量でDFのカバーまで出来る安部を。
運動量とアジリティに優れる三田や阿部が中村拓を守備面で助けてあげることもできると思います。

前線はトップにディエゴ。
その近くでトップ下〜サイドまでを動くレアンドロか田川を置き、ウィングは個で局面を打開できる推進力アダイウトン。

永井は怪我の影響か少々鋭さを書いている感じもあるため、スーパーサブとして起用する方が良いでしょうし、東は一度外から試合を見せた方が良いと思います。
プレーを見ていると、どうも客観的に現在の問題を認識できていないように思えます。
元来サッカー観は鋭いものを持っていますし、それが故に気の利いたスペースを埋めたりというプレーができる選手です。

ここで「センターバックは質が高いのでとにかくゴール前に鍵をかけよう」と安易に3-5-2にして「負けないサッカー」を選択すると、ここまでやってきたことを全て否定することになりかねません。

開幕からここまでの中で、この5連敗で新たなチーム作りに失敗してしまっただけに、立て直しは少なくとも残っている土台を活かして、もう一度開幕からやり直すつもりで戦うべきだと思います。

FC東京の窮状を考えてみる

様々に指摘されている事項がなぜ修正できないの?

川崎戦のレビューを最後になかなかサイト更新をできない状況にいましたが、試合については全て観ています。
このリーグ5連敗もしっかりと自分の目で確認をしていますし、各種媒体でどのようにその敗戦が評されているのかも可能な限り目を通しています。

いつもは試合のレビューですが、今回はリーグ5連敗の背景にどんなことがあるのか、を自分なりに、4種とはいえどもコーチ陣を従え監督をしている身も踏まえて考えてみました。

今回の考察は「どうして各種媒体=外から見ている人間が一様に指摘しているポイントをチームが修正できないのか」という僕に内在する疑問に端を発っしたものです。
また、チームの選手起用などについて思う部分は除しています。
6連敗したら怒りに任せてぶちまけるかも・・・。
そんなことにならないように祈ってます。

縦長なチームバランス

各種媒体やファンの評価として言われている連敗の要因は「全体の陣形が縦に長い」ということです。
この点は僕自身も感じる部分です。
とはいえ、縦長になるとどんなデメリットがあるのか、について論じられたものを目にしたことがないので、自身の整理の意味も含めてまとめてみます。

縦に長い、というのは一般的にはDFからFWまでの距離が長いということです。
これによって、守備時にMFとDFが形成する4-4の2ラインでボールを絡め取ったとしてもトップまでの距離がないため、ボールホルダーはどうしてもボールの出しどころを探してしまうことになります。
その間に相手のカウンタープレスが開始され、苦し紛れなパスになり再び自陣でボールを奪われる結果となってしまい、どうしても相手陣内に押し込めない結果となります。
こういった問題はどんなカテゴリーのチームでも起こるものです。

ではこの解決はどうすべきかのでしょうか。
答えとしては非常にシンプルで、前線(FW)と守備陣(最終ライン)の距離を40m前後(いわゆるコンパクトな陣形)でプレー出来るようにトレーニングをすることです(ただでさえ長いのがさらに長くなるので、トレーニングメソッドについてはここでは言及しません)。

ただし、この場合いわゆる「ファストブレイク」と称されたカウンターを繰り出すには、前線の選手が走る距離がこれまでに以上に長くなり、相手DFが深いポジショニングを取っている場合は数的優位を築けないというリスクが立ちはだかりますが、長中距離のパスに比べると短距離のパスの方が成功率が高いことを考えれば、カウンターができない理由にはなりません。

縦長が修正できないのはなぜか

修正ポイントを指摘することは非常に簡単なのですが、実際にその修正を施すためには、意外と骨が折れるものです。
なぜならば縦長になってしまう理由には、それぞれの選手の意識が介在するからです。
では、その選手の意識を考えてみます。

守備面においては以下のような負の連鎖が起こっていると思います。

  • 守備が硬い、という印象のFC東京が失点を重ねているがために、守備陣は失点をしないこと、が第一義になっている
  • それが故にラインを上げることよりもしっかりとリトリートしてペナルティエリア前で最終ラインを形成することが最初の意識になる
  • 失点をしないことが優先されるだけに、ゴール前を強固にすることに意識が行っているため、相手サイドのボールに対してのチャレンジがサイドバックまたはサイドハーフでの対応となっており、DF陣全体がボールサイドにスライドして守備ができていない
  • 全体がスライドして守備をしていないため、いわゆる「ボールの逆サイドを捨てる守備」ができず、守備の横の幅も自ずと長くなってしまう
  • 守備幅も広がることで、ピッチ中央部からサイドにあるボール自体に意識が行ってしまい、センタリングに対するペナルティエリア内の相手選手マークが甘くなりズレて失点機会に繋がる
  • せっかくボールを奪ってもトップへのロングパスが通せずにセカンドボールも相手に吸収されてしまい、シュートまでに繋がらないので、ショートパスを繋ぐ意識が高くなり、さらにラインを押し上げられなくなる

守備陣が失点をしないように、しないように、と意識をすればするほどこのような負の連鎖が生じて全体のバランスが崩れることはよくみられます。
負けが込んでいるチームでは尚更です。

では、最前線であるFWや中盤の意識はどうなのでしょうか。

  • 「ファストブレイク」の要である最前線からのプレスは実践しなければならない
  • しかし、先述の通り守備陣のラインを上げる意識が希薄になっているがために、最前線がプレスをしてパスコースを限定しても相手中盤選手がフリーでボールを受けやすい状況となっている=いわゆるFWとMFでのプレスに連動性がなくなっている
  • 連動すべき中盤の選手も守備意識を持つメンバーと、FWのプレスに追従するメンバーとが存在してしまうため、どうしても中盤にスペースが出来てしまう。
  • そのため、相手選手が最前線のプレスを掻い潜るだけの余裕があるため、ポゼッションを求めないFC東京のサッカーとしては、さらにポゼッションが低下して苦しい状況に陥る

といったことが起こってしまいます。
つまりは、個々のポジションにおいて個々に割り当てられているタスクをしっかりとこなしてはいるものの、それぞれの意識差によって全体として連動できないという事態陥ります。
この事態によって、それぞれのポジションでは「余計なタスク」が増えることになります。

  • サイドバックの場合
    •  守備から攻撃までの長い距離を走り、攻守にサポートをすることがタスク
    • 非コンパクトが故に最前線までの距離が長くなれば、必然的に走る距離は長くなる
    • その長い距離をスプリントする、ということは体力的な消耗が激しくなる
    • その上後方からのロングパスが相手守備陣に引っかかると、前に出ては戻る、という動きが増えてしまう
  • FWの場合
    • も守備陣がボールを奪った瞬間に動き出しを行い、攻撃の起点を作ることがタスクになっている
    • ロングパスが届かなければ、距離的に一番近いFWの選手がプレスバックしに戻らなければならない
    • そのため、本来のポジションから離れることを強制され、ボールを奪えた時にパサーからすると「会いたい時にあなたはいない」状態に
  • 中盤の場合
    • 守→攻への展開と前への推進力 がタスク
    • 最前線と最後尾のギャップが広がると、そのギャップを埋める中盤の運動量も飛躍的に増加する
    • 間延びしているために自分達も適切なポジションを取れずセカンドボールを拾えないがために、ボールを奪うことに必定以上の体力を使ってしまう。
    • 守備に追われるために精神的にも守備面のタスクが占められてしまい、ボール奪取しても過度に攻撃への意識が働き無理なパスをトライしてしまう

こんな感じで各々のタスクに不要なタスクが付加されてしまい、本質的なタスクをこなすよりも目の前のタスクをこなすことに懸命になり過ぎてしまう、という状況に陥っているように捉えています。

現状では解決できないのでは?

と、ここまでみてきたように、メディアやファンが見ても明らかな縦長な状況についての解決策は何か、というと、それを修正するように選手の思考を解きほぐして、戦術トレーニングを積み重ねるしかありません。

ただ、それがこの5連敗の中で全く改善されない、むしろ酷くなっているということから考えると、「そういうトレーニングをしていない」というのが現実的な想像なんだと思います。
なぜできないのでしょうか?
恐らく、原因であるポイントを指摘し、トレーニングに落とし込めるコーチングスタッフの不足に行き着くかと思います。

なぜそういう考えに至るのか、というと、監督の特性というかキャラクターに起因する部分があると思います。
世界各国、色んなカテゴリーで監督という人はいますが、大別すると根元は以下の2パターンになるかと思います。

  • 自身で戦術に基づいたトレーニングを仕切り、選手の動きにも細かく注文をつけるタイプ
    • 過去のFC東京の監督で言えば大熊、城福、フィッカデンティ
  • 大まかに目指すサッカーとコンセプトを定義し、具体的なトレーニングはコーチングスタッフに(ある程度)任せるタイプ
    • 過去の監督では原、ガーロ、ポポヴィッチ(ポポヴィッチは両者の特性を持ち合わせているタイプかもしれませんが)

前者は選手とも直接的にコミュニケーションを取るタイプで、良いプレー、悪いプレーも選手に直接伝えるタイプです。
つまりは選手との距離感は割と近いタイプでしょう。

後者は選手との間に一定の距離を置いて、コーチングスタッフを通して自分の考えをを伝えてもらうタイプと言えます。

僕自身のイメージとしてですが、長谷川監督が後者のタイプと捉えると、必要になるのは選手と監督の間を取り持つコーチングスタッフだと思います。

カップ戦を勝った2020シーズンは安間、長澤コーチの両コーチがその役目を担っていたと思われます。
特にFC東京での経歴が長く、選手からの尊敬を集めていた長澤コーチは、練習後も選手と語り合う姿が見えたりと、選手に対してのアドバイザーとしての役目を担っていたように思います。
悪いプレーや失敗があればその原因を選手に説明し、居残りでトレーニングに付き合うなどのケアを行なうことで、選手個々の意識とプレーレベルをチームに必要なレベルに上げることに大きく貢献したと思います。

そういった、いわゆる「監督との間の緩衝材」となるコーチがいなくなった2021は、恐らく、恐らくですが、選手が監督に対して直接意見を言い難い環境になっているのではないかと思わざるを得ません。

そう考えると今チームに必要な要素は

  • 選手のコンディションや意見について、上司である監督にしっかりと状況を報告し、対策を進言できるだけのサッカー観を持っている
      • いわゆる上司である監督の視点を持って実直に討議ができる軍師タイプ(原監督にとっての倉又コーチ)

 この軍師的存在がいない、というのは、試合と並行してYoutubeでキャストされている青赤Parkからも感じるところです。
当該プログラムでは羽生、石川の両氏もチームがうまくいっていない原因を直接的に言及しています。
フロントスタッフでもありますが、選手経験値も高い二人が言及しているにも関わらず、その指摘ポイントが数試合にわたって改善されていない、ということは監督までその意見が届いていないのでは?と思わざるを思えません。
よしんば届いていたにしても、長谷川監督自身が抱え込んでしまう形になり、結果的に判断を下すに際して孤立してしまっているのではないかとも言えます(いわゆる「管理職の孤独」という問題)

こう考えると、必要なことは監督交代という短絡的な対処ではなく、選手と監督の間にある見えない溝を解消する策だけでチームが立て直せるようにも思います。

もっと細かいことを言えば、5人となったブラジル人選手と日本人選手の関係性についても同様にパイプ役が不在なのでは、と思います。

解決に向けた想い〜監督交代よりも

ここまで述べてきたように、とにかく選手に対して問題を落とし込んで伝えられ、のかつ選手の声を拾えるコーチの採用または登用が必要になると思います。
現状のスタッフからすると、佐藤由紀彦コーチがその担い手なのかもしれませんが、イメージ含みで適任と思う方を想起すると、選手からも尊敬を集めてており、実績も兼ね備え、率直に意見を言える主将タイプかと思います。

そう考えると、適任は羽生氏でしょう。
忖度なく率直に意見を言う性格、オシムに鍛えられた戦術眼、代表での経験値は個々の選手に対しても、長谷川監督に対しても十分に説得力があります。

次点を挙げるなら、中村忠U18監督です。
長谷川監督とは6つ離れてはいるが東京というチームでの長きに渡る指導経験、及び自身の手で育てた選手も多いことからトップチーム選手の兄貴分になれると思います。加えて、DF出身でもあるので守備面での改善を的確に捉えて上申できる可能性もあるでしょう。

現状での監督交代のリスクを考えると、長谷川監督で乗り切るしかない
通常のシーズンであれば、監督交代という策に対して切れるカードはいくつもあるかもしれません。
しかし、コロナ禍のシーズン途中という状況を踏まえると、国内指導者に目を向けるしかないのが現状です。
その背景を考えると、現状の在野の指導者で長谷川監督以上の経歴を持った指導者はいません。
頼りのカードとして使ってきた大熊氏もFC東京から離れて久しいですし、過去の経緯を考えると再び戻ってくれる可能性は低いと思います。
現状を変えるカードは戦術変更もありますが、まずはチームの状況を変えられて、かつ失われているピースを埋められるカードを切ることでしょう。

また、プレー面を含めて批判を全身で受けることが多いですが、主将である東が今この状況でこそ主将としてどう振る舞えるのか、も試されているタイミングでもあります。
気づいていること、わかっていること、に対してFC東京というチーム全体が取り組んでいけるのか、が問われています。

とはいえ、今我々ファン・サポーターができることはこの球場から一日も早く脱してくれることしかありません。
やまない雨はない。
そう信じて諦めずに頑張りましょう。

Match Review 2021.4.11 FC東京 vs 川崎フロンターレ

過程が示した結果

札幌戦のレビューを書かないとな、と思っているうちに時間は過ぎていき、業務やコーチ業で疲弊してあっという間にフロンターレ戦当日を迎えました。
と同時に札幌戦のレビューは放棄する、という安易な選択肢を選んだわけですが、「別にレビュー書いて給料もらっているわけでもなし。」と思っているわけではなく、単に1日が48時間あったらいいよね、ぐらいに思っているワーカホリックです。

さて、あらゆるところで触れられていることですので今更言及する必要もないのですが、FC東京が勝てなかった理由はその過程が全てであり、川崎の勝因はその誤ったFC東京の過程を見逃すことなく楽に自分達のペースを維持できたことでしょう。
そのくらいFC東京のプロセスは酷かったです。
「結果良ければプロセスが悪くてもOK」であったのはシーズン序盤によく言われる言葉ですが、シーズン中盤に突入するこの時期にあのプロセスでは先が思いやられる、というのが正直な感想です。
一方で自分を宥めているのはその「シーズン序盤」という言葉です。
まだ9節。今シーズンは残り29試合あるわけです。
4分の1が終わったこのタイミングを序盤とするのか中盤とするのか、これによって見え方は大きく変わってくると思います。

川崎 - 当たり前のことを当たり前に

フロンターレのポゼッションを観ていると、前夜に観たマンチェスターシティーのボール回しを彷彿とさせるな、と思いました。
いみじくもその試合は(僕が応援する)リーズ・ユナイテッドとの試合であり、試合内容もボールを持って相手の隙を狙っていくシティと、とにかく耐えて一旦マイボールにするとポゼッションをよりも前に進むことを選択するリーズ、とこのJリーグの試合を予習したかのような内容でした。
さらに言えば、その試合の解説は中村憲剛氏でしたが、氏が注目していたのはシティの動きであり、ペップ・グアルディオラの一挙手一投足でした。
このことからも、川崎の元選手としてもシティのサッカーというのは強く意識しているということがよく分かりましたし、解説の端々からフロンターレが参考としているであろうポイントがよく分かりました。

「いやいや、流石にシティに比べたらやり方も全然違うでしょ。」
という意見が大半を占めるかもしれませんが、まあ落ち着きなさいな、と。
両者に共通するのはインサイドキックを主体とした近距離の早いパス、ボールを浮かせない正確なトラップ、2タッチ目でのパスとそのスピード、その受け手の動き、この当たり前のことを当たり前にやっていること、そしてその連続性が大きな共通項です。
小難しい5レーン理論やら、カウンタープレスやらという言葉を使う以前の部分が高い次元で実現されていることが両者の共通点です。
(だからってシティに川崎が勝てるとは言ってませんよ。個の力量が大きく違うことはいうまでもありません。)

これは風間前監督がとにかく拘った部分であり、その後を受けた鬼木監督もその部分を決して緩めることなく続けているため、他チームに比べてもパススピードとそれを受けるトラップのミスでのボールロストが極めて少ないのでしょう。
そのため相手チームは川崎がボールを保持するとしっかりブロックを作ってミスが起こるのを待つのか、激しくプレスを賭けに行くことを選択するしかありません。
すでにこの時点で川崎の術中に嵌ってしまっているわけですから、川崎が主導権を握り続ける試合になってしまうことは仕方のないことです。

そしてもう一つ川崎とシティの共通点は、ボールを失った時のトランジションスピードの速さです。
失った瞬間から周囲の選手まで含めてボールを奪うことに意識がいっていることが観ていても分かります。
その際、後方との間に距離・スペースが出来てしまう事も両者の共通点で、観ている側からすればそのスペースを使えば反撃のチャンスと思いがちですが、ボールホルダーからすればプレッシャーが速過ぎてそのスペースを使うまでの判断に至れません。
川崎とシティ、両チームはその弱点を補う意味でも奪われたその瞬間を非常に大切にしているのだと思います。

逆を言えば、ここが川崎を攻略する唯一のポイントと言えるでしょう。
相手チームはボールを奪い、川崎にプレッシャーをかけられる状況であっても、しっかりとボールを動かすことが必要になってきます。
ボールホルダーに対してしっかりと2つ以上のパスコースを作る、それがダメならボールホルダーがプレッシャーを1枚剥がして素早く縦パスに移行する。
高いレベルでの守備者のポジティブ・トランジションが必要となりますが、高い次元で完成された川崎の戦術を破る第一歩でしょう。

東京 - 曖昧さがもたらした失点の山

前述した数少ない川崎の弱点を突く、という意味ではFC東京は決して対応できていなかったわけではありません。
19分のディエゴ・オリヴェイラのバックヘッド、1点目、2点目、全てにおいて起点となっていたのはフロンターレからボールを奪った後に出来たFWとMFの間のスペースです。
ここからスペースに動いた前線の選手にパスを出したことで、ゴール前にボールを入れることができました。
なので、この日のFC東京は決してフロンターレの攻略法を実践できていなかったわけではありません。
問題はフロンターレに最もボールを持たせてはいけない、ピッチを縦に三分割した際の中央部でのミスに尽きます。
1失点目は安易な縦パスを洗濯したことでボールを失い、シンプルに繋がれたもの。
2失点目も同様で、受け手が攻守の切り替えについていけていない=チームとしての統率が取れていない状態でのパスミス。
3失点目は言わずもがなで、自陣ボール前での繋ぎのボールを相手が狙っているにも関わらずトラップをピッチ中央に向けて行い奪われました。
4失点目は疲労が出始めるタイミングで全員がボールウォッチャーになってしまっていたことなので、上記の3失点とは意を異にします。

これらの失点は全て「ミス」です。自滅と言っても過言はないでしょう。
こういったミスが生じることは無論選手個々の問題もあるでしょう。
しかし、それ以上に選手が変わるとこれまでの試合で出来ていたことが出来なくなる、という課題が見えます。
これを言い換えると、チーム全体で「FC東京のサッカー」というものが共有認識になっていない、という異に繋がると思います。
これまでの試合では、森重がアンカーポジションに入ることで、ビルドアップの際には森重を経由して幅を取ったり、状況に応じてバックパスからサイドを変えるパスを選択したりと、確実なビルドアップを行いながら、効果的に長いボールを入れて相手DFラインを押し下げるシーンが見られました。
しかし、森重がセンターバックに入ったこの試合では、そのビルドアップのポイントが最終ラインに入ってしまっているため、青木を使うのか安部を使うのかが不明確でした。
その一方でDFラインの選手はこれまでの流れで一列前にいるべき森重を探しますので、パスミスをしたり苦し紛れなロングパスを出しては川崎にボールを渡してしまっていました。
後半3-5-2にしてワイドに選手が広がることでボールの出し先が見つかったので、「3-5-2の方が良い」という声がネット上でも多く見られますが、僕自身は3-5-2は結果論でしかないと思います。
4-4-2でも4-1-2-3であっても、先にあげた川崎の弱点を突くことは出来ますし、システム的には川崎が採用する4-3-3に対して3-5-2は5バック的に臨まないと噛み合いません。
大事なことは青木と安部を起用したこの日の布陣において、中盤のビルドアップを誰が担うのか、もしくは中盤を廃して高い位置に一気ボールを送る、何がトランジションの時点での狙いだったのかが不明確であったことでしょう。

非常に曖昧な状態で試合に入ってしまったが故に、前半20分という早い段階で選手にもスタジアムにも敗色が浮き出てしまったとも言えると思います。

たらればを言えるなら、どうしてセンターバックにオマリじゃなかったのか。
首位チームを追い込むために必要だったのが森重アンカーではなかったのか・・・。

外からダイアゴナルに・・・

札幌戦のレビューを考えていた際に、ディエゴ神の他に非常に印象的だった得点機としてピックアップしようと思っていたのが、21分の中村拓のクロスをアダイウトンがヘディングシュートしたシーンでした。
これまではクロスを入れる際にどうしても田川とディエゴの2枚、もしくは2列目からペナルティに入ってくる選手の3枚という、点と直線的な動きに合わせる動きが多かった印象です。
しかしこのシーンでは一番遠いところからダイアゴナル(斜め)にゴール前に入ってきたアダイウトンが合わせて得点機を作りました。

川崎戦でも2得点はボールから遠いサイドのアダイウトン、内田が斜めにゴール前に入ってきてのものでした。
斜めに入る、というのはパスする側からしても面でパスを出すポイントを探すことが出来ます。
縦に入ってくるとどうしても点を探す必要がある異に比べるとパサーにとっても非常に優しい動きになります。
一方で守備側からするとボールと選手という2点を監視したいのに面で守る必要性が出てしまうので、ダイアゴナルに入られるのは非常に厄介です。

イメージがつかない方は、机の上でスーパーボールでもビー玉でも(そんなもん令和の時代に家にあるか知りませんが)右手の指先におき、左手の指をボールに対して縦に動かすピンポイントで弾くのと、遠いところから斜めに入ってくる左手の指に向かって弾くのと、どちらが合わせやすいのかを試していただくと印象が大きく違うと思います。

攻撃においてはこれまでもディエゴや田川がダイアゴナルに入ることでゴールを決めたシーンがありました。
この形にワイドの選手であるアダイウトンや内田が加わったことは、FC東京の得点機を増やす意味でもあります。
この試合で連発したミスはミスとして受け止めざるを得ません。
中村拓に関しては、反撃の狼煙をあげたチームを奈落の底に落とすようなミスをしてしまったのは確かです。
ただ、怪我人続出の中で中村拓には経験を積み「強く」なってもらう必要があります。
それこそがチームとしての基盤であり、底上げに繋がります。
個人的には次の試合、中村拓を外すようなことがあれば長谷川監督を見る目が変わるでしょう。
このレビューでも、長谷川監督を批判するような言葉が増えてしまうかもしれません・・・。

まだ序盤、と考えれば、中村拓はまだまだここからではないでしょうか。
岡崎も同様です。

Match Review 2021.4.3 名古屋グランパス vs FC東京

相似か相同か

3月下旬から4月初旬にかけてのプライベートな忙しさが久々に帰ってきました。
仕事が年度末(弊社は4月末)なのもそうですが、チームの解団式そして新たな選手の体験練習と、コーチ陣も新しい環境に向けた高揚感と寂寥感に浸る時期でもあります。
そんな状況でもあるので結果試合のチェックは4月4日(日)深夜近くになってしまいました。

言い訳はさておき、非常に締まった良い内容のゲームだったと思います。
0-0という結果であるからこそ「良い内容」という言葉でもありますが、双方共にいんてんしてぃ(強度)が高く集中力も最後まで途切れることのない試合でした。

この両チームの試合を見るにあたっては、どうあってもマッシモ・フィッカデンティ名古屋監督の存在を無視することはできないでしょう。
すでにFC東京を離れてから5年が経とうとしていますが、FC東京の礎を築いた監督と言っても差し支えはないでしょう。
「攻撃」というキーワードを中心にしてきたFC東京において、「守備」に重きを置いた戦術をすり込んだ、という意味ではフィッカデンティと共にした2年間はチームにとってもサポーターにとっても大事な時間であったと思います。
一方で名古屋にとっても、トヨタ自動車の資金力を背景にして強力な補強作を繰り返しながらもなかなか結果が出なかった近年において、しっかりと守備から組み立てるサッカーによって優勝を争うまでに古豪を復活させた手腕は確かなもので、この試合を迎えるまでは6連勝という期待の持てるシーズン序盤となっています。

「高い位置から相手にプレッシャーをかけ速い攻撃を繰り広げる。」という似た形でがっぷり四つに組んだ試合。
これは相似なのか、それとも相同なのか。
双方が今展開するサッカーの起源がフィッカデンティという一人の指揮官によるものなのか、それともこの5年で辿った別々の道によるものなのか。
そんなことを考えると、酒が止まらない夜となりました。

名古屋 - 手数の少なさをどう補うのか

今シーズン名古屋の試合は開幕の福岡、4節の神戸との2試合を観て、この試合が3試合目でした。
守備に関しては彼の愛弟子とも言える丸山と米本を中心として、しっかりと整備をされた、いわゆる「背骨の通った」チームであるというのが強い印象です。
チームというのはGK〜センターバック〜センターハーフ〜フォワード、1本の筋がしっかりとしている必要がある、というのがフィッカデンティの哲学であると考えています。
僕自身も何がしかのチームを構成する際も、この「背筋」をどうやって通すのかを重視することもあり、フィッカデンティのチーム作りというのは非常に興味深く観ています。
チームバランスという意味では、川崎に対抗し得るチームだと思っています。

蛇足ですが、この「背筋」がチームに通っているのかどうか、というポイントを考えて色々なチームw見てみると、わかることが多くあります。
バルセロナ、マンチェスター・シティ、バイエルン、PSG、ユベントスなど、チャンピオンズリーグなど世界を席巻するチームは必ずと言っていいほど、この背筋がしっかりとしています。
直近ではポルトがユベントスに勝利をしましたが、やはりDFからFWまでしっかりと筋が通ったチーム作りがなされています。
ボランチが大事、と言われる現代サッカーですが、GK、CB、CH、FWに強力かつ献身性の高い選手が揃っており、縦の連動が成されているチームは簡単に負けない、というのが印象です。

で、名古屋の話に戻ります。
CB、CH(ボランチ)は代表クラスの強力な選手を並べていますので、人間で言えば言わば腰から下の足元がしっかりしていると言えます。
3試合観てきて、名古屋にとってはあとは背中から首、頭に繋がるポイントをどう定めるのか、ではないかと思います。

一例を挙げれば、この試合でもマテウスの献身性は非常に高かったと思います。
ピッチの場所にこだわらずに、左右、真ん中と激しく動き回り守備も厭いません。
しかし、このマテウスの動きというのは、人間の体で言えば肩や腕の動きとも言えます。
そのための頸椎、つまりは頭や肩をつなぐ重要な骨になる選手はいったい誰なのか。
ここが判然としないのが名古屋、という印象です。
本来であればシャビエルがその役割であると思いますが、ここを抑えられてしまうとこの試合のようにマテウスという強力な腕力も発揮できずに終わってしまいます。
そのためにも「頭」の役割にもなる強力なFW、過去を振り返っても仕方がないですがジョーのような相手DFにとって脅威になり得る選手がいた方が良いように思います。

恐らくは名古屋フロントとしては柿谷にその役目を担って欲しいのかもしれません。
が、柿谷は純粋な9番というよりは8番タイプの選手です。
高いテクニックで相手を釣り出したり、スペースに飛び出てゴールを取るタイプの選手で、年間で20点取れるようなタイプではありません。
どちらかといえば左右のワイドに置いて自由にシャビエル、マテウスとポジションを入れ替えさせた方が効果を発揮する「腕」のタイプです。
そのため、マテウスが動き回りボールを保持しても、最後の局面での「なんか1枚足りないぞ」という間を拭い切れませんでした。

ここまで長々と訳のわからない生物学的サッカー論を打(ぶ)ってきましたが、名古屋はもう1枚「頭」ができれば手数の少なさが解消されるのではないかと思います。
この試合でもフィッカデンティは縦への速さや個で仕掛けられる選手を入れて局面を変えようとしましたが、最終的には力量としては少々不足する山崎に「頭」としての役割を担うより仕方がなくなった感があります。

ランゲラック〜丸山/中谷〜米本/稲垣〜シャビエルと強固な背筋を持つだけに、川崎に対抗するには一番手になり得るだけの戦力を持ったチームです。
柿谷をどう使うのか、どう手数を増やすのか。
夏場の補強次第ではありますが、そのタイミングまで攻撃面をどうやって担保していくのか。
このポイントが名古屋にとっては課題になりそうに思います。

東京 - 縦横斜め

背筋が通る、ということいえばFC東京のシーズン序盤はなかなかその背筋が見えなかったと言えます。
その要因としてはこれまでのレビューでも触れてきたように、3月いっぱいぐらいを目処に選手の見極めを行いローテーションを多用してきたから、というのもあるでしょう。
その過程でようやくこの試合でFC東京の一本筋が見えたと言っても良いでしょう。

児玉ー渡辺ー森重ーディエゴというラインが出来上がり、それぞれが調子を上げてくることで守備から攻撃への流れや力強さが垣間見えた試合だったと思います。

序盤のチャンスではディエゴとアダイウトンの縦のワンツーからディエゴがペナルティに侵入し、最後には田川のシュートまで行きつきました。
27分にも小川を起点にディエゴを経由して1タッチ、2タッチでの早いパス回しから小川のシュートに至っています。
36分の三田がシュートしたシーンは、肉体で言えば肩から腕とも言えるアダイウトン、田川、三田でシュートまで持っていっています。

得点には至りませんでしたが、このような2列目の選手まで連動してシュートまで繋がる動きをどれだけ増やせるのかがこれからのFC東京の課題と言えるでしょう。
例えて言えば、上記に挙げた前半3度の頭、肩、腕が連携したシュートチャンスまでに至る動きが倍出てくれば自ずとゴールに繋がるのではないかと思います。
個人的には観ていて最も面白かった45分間がこの名古屋線の前半でした。

縦の一本筋が出来上がってきたFC東京ですが、後は両腕、両足とも言えるサイドやインサイドハーフの構成をどうしていくのか、が悩ましいところです。
ボールを持った時の推進力、という意味ではここまで出色の出来を見せている三田は当確でしょう。
日本代表入りで奮起が見られる小川も同様です。
三田とのバランスでいえばスペースを埋めてリスクマネージメントに長ける東も重要なピースですが、本来彼に求められる前に向かうという点ではまだまだ本領が発揮されておらず、謹慎明けの安部という手もあるかもしれません。
両ワイドについてはレアンドロの状況が気になりますし、頭角を表しつつあった渡邊凌の長期離脱も痛いところです。
肩の状況が気になる永井も長い時間使えるのかが疑問、と考えると好調の田川を軸に起用機会も多くフィジカル的にも充足しているアダイウトンで両翼をになっていく、ことでしばらくメンバー起用がなされると思います。
サイドバックが中村帆の怪我で少々不安が残りますが、その点は中村拓が軸になり得ますので、新たな選手起用も含めたチームの底上げを行っていくものと思われます。

いずれにしても、ほぼ固まったメンバーの中で変化をつけられるような選手起用がどうできるのか、は変わらず今後の注目点になると思います。
この試合前半45分はこれまでの試合の中でも最も迫力のある攻撃を見せた一方で、後半は交代選手を送り込むまでは手詰まり感が出てしまったのは明らかです。
永井やレアンドロは然り、内田など若い力まで含めた交代選手が、後半の流れを変えるピースとしてどう一本筋、幹の枝葉となり花を咲かせるのかが非常に重要な要素になってきます。
次節からはこの交代策にも注目をして見ていくと面白いかと思います。

新守護神誕生なるか

2選手のプロトコル違反に関してはサポーターの間でも色々な意見があるでしょうし、僕自身も思うところはありますがここでは控えておきます。
いずれにせよ、その謹慎期間にGKに関しては児玉がポジションを得て非常に良いプレーを見せているのは事実です。
昨シーズンは林の牙城もあり仙台戦1試合の出場に留まりましたが、そのパフォーマンスも決して良いと言えるものではなかったので、今回も個人的には心配をしていました。
しかし、カップ戦、リーグ戦2試合ずつ計4試合で3つのクリーンシートはGKとして十分な結果を出しています。
これまでローテーションによりチームが定まらなかったことを割り引いたとしても、ライバルである波多野が5試合クリーンシートなし、という結果と比較しても今後もしばらくは児玉がゴールマウスを守ることになると思います。

この日も何気ないプレーでしたが、40分のCKからマテウスがシュートを狙ったシーンでも安易に飛び出さずしっかりとボールの軌道を見極めて弾き出したシーンや、70分のクロスへの対応でもボールが蹴られるまでしっかりとステップを踏んで準備して反応した点など、準備を怠らない姿勢が見て取れました。
試合中も非常に細かくポジションを修正していることからも、ゲームの展開を読んでそれに応じたポジションを取ることを意識していることが分かります。

僕自身はGKについては指導においても門外漢なので細かいところは分かりませんが、それでもこういった児玉が見せる小さいことの積み重ねがクリーンシートに繋がっているということは感じ取れます。
今週の札幌、川崎との2試合でどういった結果を出すのか、によって林が帰ってくる場所もない、という状況にも繋がるかもしれません。

プロトコル違反というきっかけではありましたが、代役がしっかりと主役級の活躍をしていることはチームにとって本当に心強い状況です。
今週の2試合、注目ポイントは児玉といっても良いかもしれません。

たった1つしかないポジション。今週の出来如何では新守護神誕生と言える瞬間に出会えるかもしれません。

Match Review 2021.3.21 FC東京 vs ベガルタ仙台

模索の続く両チーム

春の嵐の影響で朝から激しい頭痛に襲われました。
薬を飲み布団に横たわるだけの日曜日。
眠りに落ちて目が覚めたら16:11。「ああ、試合は終わってしまったな。」と思いながら再び眠りに落ちて、試合の結果を確認するよりも前にFC東京の2選手が内規を破って会食に参加したという残念なニュースを知りました。
これについては特に論じるつもりもありませんが、ただただ残念でした。

そして改めて22日の終業後にDAZNで観戦。
ベストメンバーを模索しながら2勝2敗1引分のFC東京、同様にメンバーを変えながら初勝利を求める1分3敗の仙台。
違う立場で各々のあり方を模索するこの試合、結果は分かりながらもどんな違いが出るのか、楽しみに90分間を観ました。

仙台 - 手をつけるべきは切り替えの意識か

手倉森監督が復帰した仙台。
3連敗と非常に厳しい状況でこの試合を迎え、「もう一度開幕を迎えるんだ」とコメントした通りなんとか巻き返しをしたい、という意識は見えました。序盤の失点を避けるために非常にコンパクトな陣形を保ったことがこの意識を表していたと思いますし、局地的に非常に強度の高い守備をすることからもその意識は手倉森さんらしいサッカーだな、と感じるものでした。

ただ、仙台の試合は開幕戦の広島戦しか観ていないのですが、どうにも守備から攻撃への切り替えの意識が統一されていないように感じられてしかたありません。
この試合でもDFラインでFC東京のボールを奪うシーンがあったとしても、守備と中盤の間に距離があるシーンが多く見られましたし、逆に攻撃から守備に転換する際も、中盤2枚が前線に取り残されてしまい、DFラインとの間のスペースをFC東京にいいように使われてしまっていました。
60分に真瀬がシュート打ったシーンのように、ボールを握れている際は全体がコンパクトになっていて、3人目の動きも多いので非常にダイナミックな攻撃を展開できますが、カウンターに対しての備えと自分達のカウンターチャンスでの切り替えの意識がツーテンポぐらい遅い感じがします。
特にこの試合のように3-4-2-1というか5-4-1のような3センターバック方式を採用する場合は、切り替えのタイミングで中盤だけでなく最終ラインもしっかりと上がって行かないと、どうしても引きこもり方の守備にならざるを得ず、バイタルを自由にさせてしまいます。

65分にDFでビルドアップしているシーンが非常に分かりやすいのですが、東京がボールを奪ってカウンターを仕掛けたところを上手く奪いましたが、DFラインでボールを回している時に戻ってきている中盤は1枚だけです。
結局その中盤1枚へのパスコースを防がれて苦し紛れにロングパスを出して、再び東京にカウンターを与えてしまったのは、全体の切り替えの意識とハードワークがまだまだ浸透していない証ではないかとも思えてしまいます。

仙台も選手を入れ替えながらなんとか自分達のサッカーを形作ろうと模索していると思います。
先にも述べたように、自分達のボールになった時の攻撃の形はやりたい事が見えるサッカーですので、後は攻守の切り替えのところでテンションが上がってコンパクトな陣形を保ち続けられるようになれば初勝利は遠くないように思えます。

東京 - 田川の意識の変化

今日は珍しく一人の選手にフォーカスして見たいと思います。

先制された直後の26分に田川が決めたゴールの形は先にハイライトで観ていました。
アタッキングサードでボールを持ったらゴールに対して最短コースを進む。
右サイドから中にカットインする形でドリブルしてからの見事なゴールでした。

このシーンの残像が残っている状態で試合を観てみると、これまでの試合とは違った田川の意識の変化に気づきます。

そのきっかけは5分の段階でも観ることができます。
このシーンは渡辺が中盤で奪ったボールをドリブルしファールをもらいました。
得点シーンでは森重とのワンツーで相手中盤の裏に飛び出すと、5分と同様にゴール前に入っていき左足を一閃しました。

この二つのシーンを踏まえると、FC東京に不足していた動きを田川が意識していることがよく分かります。
これまでの5試合では田川に限らずFC東京の選手はボールを受けると縦に縦にの意識が非常に強く、それがために相手DFが中心を固めてしまってクロスを入れられない、というシーンが続出していました。
しかし、この田川の動きというのは非常にDFからすると厄介で、斜め(ダイアゴナル)に入ってこられると、一発で取りに行って中にカットインされる可能性もありますし、左利きの田川が相手と考えると、DFから見ると奥の足でボールを持たれていますので、出した足が田川の右足に引っかかる可能性が高いので容易にはボールを取りにいけません。
プレスバックする中盤の選手にとっては、田川の後ろからボールを取りに行く形になりますので、これもまた簡単に足を出してFKを与えるわけにはいきません。
得点シーンにおいては5分のプレーが呼び水となっていることもあり、仙台のDFからすると対処を迷って田川に時間を与えてしまったことは悔やんでも悔やみきれないでしょう。

得点シーン直後の30分には、ディエゴ・オリベイラにボールが入った瞬間に、田川が追い越して真っ直ぐペナルティに入っていくことで、仙台DFはラインを下げざるを得ず、その隙に右サイドを上がった中村帆にボールが渡りチャンスを迎えました。
試合直後に田川が見せた動きが仙台DFに強い印象を与え、その後の同点弾はもちろんのこと、東京が得た数々のチャンスにおいてしっかりと効いていました。

このような田川の動きは、センターに入ったディエゴが仙台センターバックの間にポジショニングを取ることで仙台のDFと駆け引きをしてくれることで出来るギャップを突く、という新たな攻撃の形にも繋がります。
あまり目立たないプレーでしたが、40分に田川がバイタルでボールを受けてDFラインの裏に飛び出た三田にパスを出したシーンも、真ん中でディエゴが存在感を示しているがために田川が少しポジションを落としたところでプレーできるがために観られたシーンでした。

ディエゴと田川。お互いが付かず離れず、守備陣にとっては非常に嫌な距離感で質の違ったプレーをすることで、仙台守備陣を撹乱した良い連携が観られたことはこの試合での大きな収穫だったと思います。
レアンドロの状態が分かりませんが、田川はこの試合でポジションをしっかりと掴んだと思います。

東京はほぼメンバーが固まったか

よもやよもやのチーム・プロトコル違反で2選手が出場できなかったこの試合が怪我の功名となるか、ここまでの試合の中で最も良いサッカーを展開していたと思います。
前節のレビュー最後で、森重アンカーだと中盤は安部が当確としましたが、この試合で見られた三田と東のコンビが望外によかったと思います。
ボールを運ぶ事ができる三田の相手はボールを奪う力のある安部、と思いましたが、三田が動いて出来るスペースのマネージメントを東がきちんとこなしていましたし、その分そのスペースで東がボールを受けると、効果的に深い位置でボールを収めていました。
このコンビネーションに森重が絡むことで、仙台の攻撃を早い段階で潰せていたとおもいます。

攻撃陣も非常に良い形になってきたと思います。
この試合では田川、ディエゴが決めましたが、途中出場渡邊凌もいきな絶好機を迎えましたし、非常に良い動き出しとどのスペースに入るべきか、が良く見える選手だということを改めて示しました。
繰り返しとなりますが、レアンドロの状況がわからないこともありますが、ディエゴを真ん中に両ワイドを田川と渡邊凌でも面白いと思いますし、その交代でアダイウトン、永井というオプションもありでしょう。
ただ、渡邊凌の怪我はちょっと心配です・・・。

守備面ではセットプレーの守備が、と思いますが、そこは割と簡単に修正が効くポイントなので今回は言及せずにおきましょう。

双方模索が続くチーム同士の戦いでしたが、仙台はもう少し時間がかかりそうな印象を受けました。
一方の東京は恐らくはもうスタメン含めてゲームプランの基礎が出来たように感じます。

いずれにせよ、リーグ戦としては1週間以上時間が開く名古屋戦がそのお披露目であろう、という僕の考えは変えずにおきたいと思います。

Match Review 2021.3.17 FC東京 vs 湘南ベルマーレ

「あ、勝った」

本業は来年2022年1月までの在宅勤務が早々に決まっており、なかなか外出機会もないのですがこの日はお客様先へ。
その後同僚と軽くビールを煽っていたため帰宅後当日に観れたのは前半のみ。
就寝前に思ったのは「まあまあ酷いよね」ということでした。
試合後FC東京長谷川監督も「大丈夫かなと思った」と言っていましたが、本当に前半をリードで折り返せたのはラッキーだったかなと思いますし、そういうラッキーをしっかりと勝点3に繋げられることが大事とも言えるでしょう。
前節のレビューでも記載の通り、FC東京はローテーションをしながらシーズンを進めてチームを固めていく、ということを長谷川監督も公言していますので、それを前提としてこの試合を振り返ってみたいと思います。

湘南 - お手本のような得点

第3節の対戦相手神戸と同様に湘南がすごく良かった、というのはあまり感じませんでした。

FC東京がよく言えばゆったりと試合に入ったことを考えると、もっと前半の段階でいろいろなことがやれたのではないかな、と思います。
後述しますが全体が間延びして試合に入ったFC東京ということもあって、ミドルサードでボールを握れるシーンが非常に多かった前半でしたが、湘南もどうしても「早く前に」の意識が強くミドル〜ロングパスで局面を優位にとしては2ラインでブロックを作ったFC東京に跳ね返されて、という繰り返しでした。
遅攻になった時にどう組み立てるのか、そこはFC東京と似たプレースタイルを持つチームだけに課題を同じものだな、というのが正直な感想です。

むしろ後半の選手交代を境にしてチーム全体に推進力が生まれ、ボールをしっかりと握りながら最短のルートを探して早く東京ゴール前に向かっていく、という意識が感じられました。
リードを許していた状況であることもありますが、3人目、4人目の動きがしっかりと見て取れるようになり、攻撃に迫力が生まれたことは今後の試合にも繋がる収穫だったのではないかと思います。

その中で2点目の高橋諒の得点は湘南にとって、また同時にFC東京にとってもお手本になる素晴らしい形での得点だったと思います。
それまでは高橋諒へパスが出ると縦に縦にの攻撃が多い状況でした。
縦に、という意識は相手DFラインを押し下げ、そこからのクロスによって相手DF陣はボールと人を同時に見ることを難しくさせられるので、非常に効果的ではあります。
同時にしっかりとペナルティエリア内にブロックを作られてしまうと単に跳ね返されてしまいシュートに繋がらない、というマイナスポイントもあります。
なので僕個人的には縦に縦にの攻撃の連続というのは得点の期待値を下げるものだと思っています。

本題に戻しましょう。
ただ高橋諒の2点目が素晴らしいのがその「縦に、縦に」でマッチアップする中村拓に完全に自分の意識を植え付けたことに始まります。
これまでサイドで起点となっていた高橋がダイアゴナル(斜め)にペナルティアーク近辺まで走り込んだことによって、「マッチアップ、マークするのは俺だ」と意識づけられた中村拓も釣られて一緒にポジションを絞ってしまいました。
この動きによりペナルティエリア左サイド(FC東京にとっては右)がガラ空きの状態となり、高橋のポストプレーからそのスペースを見事に使われることとなりました。
このスペースを使われた時点で「詰んだ」と言えるプレーでした。
しかもこの形は湘南にとっては得意の速攻ではありませんでした。
ファイナルサードに入るところから一旦下げ、繋げた状況からミドルパスで高橋に楔のボールが入っています。
要は速攻かつ縦がダメなら中を使ってみよう、更にはダイアゴナルに中に入ってプレーしてみよう、その高橋の意識が非常に美しい崩しを生みゴールへと繋がりました。

湘南にとってもFC東京にとってもこのダイアゴナルに動いて相手を撹乱させながらパスを引き出す。
それによって空いたスペースを使って崩し切る、つまりは不均衡を生み出すという意味で今後に繋がる非常に重要なプレーだったと思います。
この試合で生まれた5点の中で最も美しいゴールだったと思います。

あとは客観的に欲を言えば、FC東京の同点弾の場面、渡邊凌のシュートに対してGKの谷にはしっかりと倒れてセーブをして欲しかったですね。
DFがブラインドになった可能性はありますが、手でセーブに行くことで不用意なところにボールがこぼれることとなってしまいました。
まだまだ若いGKですし、ミスをしない選手はいませんので、あのプレーを振り返って日本代表への道を歩んで欲しいと思います。

東京 - 別の選手、別のサッカー

個人的にはシーズン序盤にローテーションを重ねてチーム全体のコンディションをあげる、という作戦には異論はありません。
次元の違う話になりますが、僕はFootball Managerというサッカーシュミレーションゲームが昔から好きでして、好きなチーム(大体ラツィオからリーズ)の監督になっては移籍市場での選手獲得から戦術までを懸命に考えてゲーム内でのシーズンを過ごします。
この場合においても、チームを構成する際には「この選手が怪我でダメならこの選手。それでは弱いからここは補強をしよう。」とか「この選手は決定力は高いけどスタミナがないので、この選手と後半に交代させるまたは逆を基本にしよう」とかを考えるわけです。
このゲームには選手のコンディションやマッチシェイプ(試合に臨むだけの力)があるか、などのパラメーターがかなり細かく設定されていますので、そう考えルトやっぱり試合の中で出来る限り多くの選手を使いながら一試合でも早く全体のコンディショニングを向上させよう、という思考になります。

ゲームとリアルじゃちげーだろうがよ、と思われるとは思いますが、やっぱり相手があって勝ちたい、それが38とか34とか試合を重ねて優勝を取りに行く、ロングスパンで考えると早期のローテーションによるコンディショニング工場というのは理解をできますし、むしろ同意です。

しかしながら僕が冒頭に述べたように「まあまあ酷いよね」と感じたのは、前節大分戦と比較してです。
前節はインサイドハーフに三田と安部を起用して臨みましたが、この二人が豊富な運動量を武器に相手陣内高い位置でのプレスの原動力になっていました。
それと同期を取るようにディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトン、渡邊凌が連動してハイプレスをかける姿は「ああ、そうそう。FC東京のサッカーってこういうスタイルだよね。」と思えるものでした。
それがメンバーが変わると全く異質のサッカーとなってしまい、田川、ディエゴ、渡邊の3人がフォアチェックに行っても後ろが全く連動をしない上に、DFラインが押し上げてこないため全体が間延びして中盤にスペースが生まれてしまっていました。
そこに入るルーズボールを湘南に拾われては主導権を渡すというのが前半の大まかな流れだったと思います。
意図して相手にボールを持たせてサイドに追い出して絡め取る、ということが意図されたポゼッション放棄であれば納得もできます。
ただ、この日のFC東京の試合への入り方は「失点しないようにしよう」という守備陣と「いつものサッカーをしよう」という先述の3選手との意識の乖離が見えるものでした。
これを感じた段階で僕は「選手が変わるとサッカーが違うってのは、ローテーション云々以前の問題じゃないか?」と思ってしまうのです。
これは大分戦後半の選手交代後に全く違ったサッカーになってしまったことにも繋がります。

ディエゴ、田川、渡邊凌の頑張りを中心に勝利することができた試合だったので、ローテーション、コンディショニングを重視した中で結果としては良かったと思います。
ただ、それとやるサッカーが異なるというのはまた別の次元の話です。
このポイントをコンディショニングと共に統一させていかないと、結局起用する選手によってサッカーがまちまちになってしまい、個人の技量で勝てるか勝てないか、というこれまでのFC東京の「ブラジル人よろしく!行ってきて!」から脱することはできないでしょう。

そして先述したように、この日湘南の高橋諒に喰らった同点弾のような形をワイドの選手がつくり、そこにインサイドハーフの選手が絡んでいければ、得点60という目標も絵空事にはならないでしょう。
ただ、コンディショニングを進めながらもこの日の前半のような試合をしていると、他のチームだってコンディションは同様に上がるんです。
どうなるかは自ずと分かることかと・・・。

4月3日に何が観れるのか

3月21日には仙台戦が行われます。
調子の上がってこない仙台に対してはFC東京は勝利を期待されるでしょう。
ただ、ここまでの5試合を見る限り、長谷川監督はここまではこれまでのスタイルを崩さずにローテーションで臨むものと思われます。
それはこの試合後のインタビューでの「次の試合で厳しい連戦も終わります。」という言葉からも覗くことができます。

それを前提と考えると、厳しい連戦が終わった後の4月2日アウェイ名古屋戦から本腰を入れ流、つまりは今シーズンを戦っていくスターティングメンバーが誰なのかが姿を表すものと予想します。
前線はディエゴ、レアンドロが当確だとすると、残り1枚を渡邊、田川、アダイウトンで争うのでしょう。
中盤は長谷川監督の諸々のコメントから森重のアンカー起用はどうやら大前提として、安部は当確。
残り1枚を東と三田、シルヴァで争う形か。
最終ラインは渡辺剛とオマリを中心にしながら、蓮川、岡崎、まだ見ぬウヴィニの争い。
サイドバックは代表選出された小川が一歩リード。W中村の争いもあるでしょうし、蓮川、岡崎の可能性も残るかと思います。

いずれにせよこのローテーションでコンディショニングを高めたチームが2週間弱の期間でどこまで研ぎ澄まされるのか。
3月28日のルヴァンカップも一つの材料として使うことを考えると、今季のFC東京の真価を問うのは4月3日豊田スタジアムと言っていいのではないかと思います。

あと2週間以上あると考えるか、あと2週間ちょっとしかないと考えるか。