Transfer Talk – Pedro Henrique Perottiを知ってみよう〜後編

FC東京への移籍の噂がある選手をチェック

前回の投稿では、プロも注目するというサッカーゲームFootball Manager 2023のデータを使ってPerottiのプレースタイルを能力面から想定してみました。

今回投稿では実際にプロのスカウトも利用しているWyscoutを使用して、これまでのプレースタッツを用いてプレースタイルの想定をしていきたいと思います。

Football ManagerはJリーグのデータを有していないため、FC東京の選手との比較ができませんでしたが、WyscoutはJリーグのスタッツも取得していますので、FC東京の現有選手との比較も見ていきたいと思います。

ヒートマップから見る役割

Perottiが現在所属しているシェペコエンセの基本戦術は4−2−3−1です
時に4−3−3も使用していますが、基本的には4-2-3-1の配置で進められることが多く、Perottiはその1トップでプレーすることが中心になっています。
時に左ウィングでのプレーすることもあるようですが、センターフォワードとしてワントップをプレーすることがほとんどなのは、別のスタッツサイトでもあるTransfermarktでご覧いただくとよくわかると思います。

それでは、2022シーズンのPerottiのヒートマップを見てみましょう。

2022シーズンのPerottiのプレイングヒートマップ

ワントップ、と言ってもボックス近くに張ってボールを待つだけのタイプではないことがこのヒートマップからも分かります。
ピッチの幅を広く移動してボールを受けるタイプの選手であることが想像できます。
(センターサークルでのプレーが高くなっているのは、シャペコエンセが失点が多くキックオフすることが多いためこのようになっていますので、この点は無視して良いと思います。)

では、2022シーズンのFC東京で4-3-3のワントップを担っていたディエゴ・オリヴェイラのヒートマップと比較してみましょう。

2022シーズンのディエゴ・オリヴェイラのプレイングヒートマップ

比較してみると、ディエゴの方がより広範にピッチを動いているのに比べて、ペロッティはボックス内、サイドに流れてのプレーが多いことがわかります。
このことから、運動量でディエゴのように勝負するより決まった場所に張って攻撃の起点になるようなプレーが多いことがわかります。

そのため、前回投稿の能力値からも想定できるようにポストタイプの選手として、ピッチワイドにボールを受ける役割が期待されることが想定できます。

スタッツから見る役割

それでは、Perottiのブラジル2部セリエBリーグ戦でのスタッツをみていきたいと思います。
2022シーズン、PerottiのセリエB出場は26試合1,827分です。
この時間内のプレーを90分平均にしたものが以下に示すスタッツとなっています。
一般的なスタッツ(General)、攻撃に関連するもの(Attacking)、パスに関連するもの(Passing)の順に上から並べています。

Perotti 2022ブラジルSerie Bでの90分平均スタッツ

このスタッツを見る中でも比較対象がないと想定が難しいので、ここでも同じスタッツを2022年のJ1リーグに絞ってディエゴのものを表記したいと思います。

ディエゴ・オリヴェイラ2022J1での90分平均スタッツ

両者のそれぞれの項目を比べてみましょう。
総体的にみると、いかにディエゴが多くの仕事をこなしているのか、ということがよく分かります。

最上段のGeneralの項目で見ると、90分あたりのパス数(Passes)クロス数(Crosses)はほぼ倍です。
しかし、空中戦数(Aerial Duels)は倍以上の数をPerottiがこなしています(勝率はほぼ同じ)。

中段のAttacking項目を見るとシュート数と枠内シュート率(Shots / on target)はPerottiが上回っています。
また、ペネルティエリア内でのタッチ数(Touches in penalty area)数、オフサイド数の比較から、ディエゴよりも相手ペナルティ内に侵入したり、相手DFの裏を狙う動きが多いことが見て取れます。

最後に下段のPassingの項目を見ると先に述べたようにディエゴの仕事量の多さがよく分かります。
Passes、Through passes、Passes to penalty area、Received passes、Forward passesと、あらゆる項目でディエゴがPerottiを上回っています。
このことはディエゴがいかにユーティリティなプレーヤーかということを表すと共に、ディエゴに多くの仕事を任せすぎていたことも同時に表しています。

話がディエゴが主語の流れになってしまいましたが、4−3−3という戦術の特性を考えると、ワントップがこれだけ多くの役割を担うことは本来狙うべきサッカーになっていないことを示してしまっています。
その意味では、Received Passesに対してBack Passesの比率が高い(73.9%)というポストの役割を厭わないPerottiの方が、ワントップとして適任であり、このことはよりディエゴを本来の役割で活用できることを示していると思います。

フェリッピではダメなのか

ここまでディエゴ・オリヴェイラとの比較で見てきましたが、では2022年シーズン後半からFC東京に加入したルイス・フェリッピ選手と比較をした場合、フェリッピではダメなのか、ということを最後に考察したいと思います。

フェリッピの場合、1,000分以上の試合出場を果たしたのがスポルティングでの2019/2020シーズンまで遡らないといけないことから、単純にスタッツで比較することが正しいのかどうかという疑問点が残ります。
それを除してあくまでもFC東京でプレーした12試合451分というスタッツに限ってみると、以下の通りになります。

フェリッピ2022J1での90分平均スタッツ

プレー時間の差異を考えてみても、先に示したPerottiのスタッツと大きく変わるポイントがない、というのがご覧いただけるかと思います。
つまりは、フェリッピに求めた仕事をPelottiもこなせる、ということがスタッツ的にもみてとることが出来ますし、逆を言えば2022シーズン少ない時間でフェリッピがこなした仕事をペロッティはシーズン通してやってきた、ともいえます。

各々の選手が活躍したフィールドの差異を数値的に表せないために、この比較に意味を持たせることは非常に難しいのですが、あくまでも直近の数値比較にJリーグファンという考えを加えると「Jリーグというサッカーを理解したであろうフェリッピが、獲得候補と同じ数値を出しているならフェリッピでいいのではないか?」という疑念も湧いてきます。
もちろん、巷間に噂される2億円超というフェリッピの獲得オプション行使をするのであれば、新たな選手をレンタルで獲得することのほうが財務的なインパクトが少ないとも言えます。
さらには、新外国人選手が日本という国、さらにはこの治らないコロナ禍に馴れる時間を考えると、フェリッピの買取検討を夏まで伸ばすことはできなくはないのではないか、という思いが頭を擡げるとも言えます。

もちろん、24歳と29歳、左利きと右利き、スタッツでの違い以上に違うポイントも多い上に、性格上の違いなどもあるためにどちらの選手が良いとか悪いとかは一概に言うことはできません。

しかし、ここまでみてきた中では、Perottiに期待される役割は

  • 高いフィジカルを活かして全線での起点となる
  • ディエゴの負担を軽減する
  • ゴール前での高い枠内シュート
といったポイントを期待されているように思います。
本日現在、まだレアンドロの去就が明らかになっていませんが、極めて個人的な意見を言うならば、Perottiが左サイドもできると言うことを考えると、レアンドロの去就如何ではフェリッピも残しての前線ハイタワーもオプションに入れながらの比較検討でもいいのではないかと思います。
フェリッピの足元の柔らかさとフィジカルの強さはJリーグでは驚異になりますし、Perottiの枠内シュート数の高さ、起点となれるであろう力量も魅力的です。
前線に二つの起点がある、というのは相手DFにとっても試合終盤に非常に厄介になる可能性も高いですし、これまでにそんなサッカーを見たことがない、という興味も含めて。
ただ、これでPerottiがFC東京に来なかったら、この分析は他サポーターさんの参考にして頂ければと思います・・・。

Transfer Talk – Pedro Henrique Perottiを知ってみよう〜前編

FC東京への移籍の噂がある選手をチェック

相変わらずの全然管理されてないブログ。
なんとかしないとなんとかしないと、で10ヶ月。あー。
とはいえ、なんとかする気はあるので時間を見つけて積極的に何か更新したいと思います。

今回は2022年12月28日現在FC東京加入の噂となっているPedro Henrique Perotti選手に関して、これまでのStatsなどを使って考察したいと思います。

本人について知る前に思い出すべきこと

Perotti選手本人について考察する前に、彼が所属するChapecoense(シャペコエンセ)について思い出しておくべきことがあります。
ご記憶の方も多いかと思いますが、2016年11月28日に発生したラミア航空2933便墜落事故です。
詳細は上記リンクWikipedia 他に譲りますが、当時このニュースを聞いた際にいったい何が起こったのか、(一応)航空ファンでもある僕はあちこちのニュースサイトを掘っくり返して、この事故の背景にあった人為的なミスに憤ったのを今でも覚えています。
この燃料不足の件は、事故後かなり早い段階で現地報道では問われていましたが、公式な見解が出たのは上記リンクの通り2018年4月までの時間を要しました。
この事故で主力の大半を失い2部降格もやむなしと言われたシャペコエンセは、1年後の16/17には1部リーグ9位、17/18シーズンは14位、18/19シーズンは19位で2部(セリエB)降格、19/20シーズンは2部で首位となり1シーズンで1部返り咲き。
現在は再びセリエBとなっていますが、元来磐石とは言えない財政基盤をローン移籍や選手の売買で乗り越え、悲劇の後もブラジル国内で確かなチームとして活動しています。
そしてこのPerottiは、正に悲劇の直後の16/17シーズン1月に、シャペコエンセU20からトップチームに昇格し、以来ポルトガル2部のCDナシオナルへのローン移籍を含めたシーズンをシャペコエンセで過ごしています。
いわば、シャペコエンセでは「我がチームの希望」としてファンから愛されていたであろうことは想像に難くありません。

プレースタイルを想像してみる - Football Manager 2023編

そんなシャペコの星(であろう)Perottiとはどんな選手なんでしょうか。
能力を数値化する、というのは世界数多あるリーグで基準を設けることは容易にはできませんし、主観が入ります。
Youtubeの動画も代理人事務所が売りに出したい良いシーンを編集しているに過ぎませんので、弱みを観てとることはできません。
そんな時に、極めて客観性が高く、能力値を数値化しているのがゲームのFootball Managerシリーズです。
数値化の詳細は明らかにされていませんが、プロも舌を巻くほどに若手選手までしっかりと押さえており、尚且つその能力を数値化していることを考えると、これを使って想起するのがまずは容易かと思います。

各数値の満点は20点です。
この満点から見ていくと、概ね60%ぐらいの数値を叩き出している「平均よりちょっと上」の選手と言えます。
ただ、この数値が良いのか悪いのか、Perotti選手の数値ではイメージができにくいので、先のW杯でも活躍した堂安選手の数値も載せておきます。

堂安選手のプレースタイル、W杯でのプレーぶりを思い返すと、なんとなくPerottiのプレースタイルが想像できるのではないでしょうか。

堂安選手がテクニック(First TouchとTechnique)及び俊敏性(Agility)で勝負するのに比べて、Perottiはその点が欠けています。
しかし大きく遅れをとっているわけでもありません。
例えば、堂安選手のFirst Touchが15に対してPerottiは12、前者のTechniqueが16に対して後者は12。
こう見ていくと、フィジカルの強さ(Heading,Jumping Reach)と共に決定力(Finishing)を持ち合わせた、典型的なポストタイプの選手または前線で体を張ってボールを守る選手と想像することができます。

本日のところはゲームではあれど、プロも注目するデータの数値化を実践しているFootball Manager2023 の能力値を見てどんな選手なのか、を想像してみました。
明日は実際のシャペコエンセでのスタッツを使って、今回見てきたプレースタイルの裏付けを見ていきたいと思います。

J1 League Match Review 2021.2.27 浦和レッズ vs FC東京

積み上げと再構築と

やっぱりJ1開幕がやってくるとワクワクしてしまう。
キックオフ前にはテレビの前に陣取って、両チームのメンバーを見て今季はどんなサッカーをするのかと想像する。
欲を言えばビールがあれば尚ワクワク感に花を添えてくれるのだけど、嫁の目を気にして回避。

FC東京は昨年までの積み上げでリーグ制覇を狙うシーズン。
堅牢な守備と縦に速い攻撃を特徴に、どうやって浦和ゴールを陥れいるのか。

一方の浦和はチーム再構築のシーズン。
徳島をJ1に昇格させたロドリゲス監督の下、コロナ禍もあるだろうけど、外国人選手に頼らず日本人選手だけで新たなチーム像を作っていく。
コロナの影響もあり例年以上に各チームのキャンプ情報が少ない中、特にレッズがどうトランスフォームをするのかの情報は少なかった。
どんな新しいチームになるのか。

FC東京の開幕戦としては申し分のない相手。
楽しい気持ちでキックオフのホイッスルの音を聞いた。

浦和レッズ - インテンシティとタフネスと野心と

試合が15分を経過した段階で(極めて個人的かつ生まれて初めて)「これは確かに浦和のサッカーは面白いぞ」と思った。
ヨーロッパの監督らしいトレンドを追った高い位置から相手ボールにプレッシャーを掛けてボールを奪いにいく姿勢。
FC東京ゴール前から自陣ゴール前まで、ピッチのあらゆる場所で強度の高いプレーが連続される。
往々にしてこの手のサッカーは70分あたりからがくりと運動量が落ちるが、そのようなこともなく10人の選手がピッチ上を動き回るタフさも見せた。
そしてこの中心にいたのは、間違いなくJ2から移籍してきた小泉と明本の二人だった。
J1の舞台を夢見て戦ってきた二人の選手にとって、浦和レッズという看板を背にJ1開幕戦のピッチに立つことはプロ選手としての新たな野心を抱くに十分な瞬間だっただろう。
特に小泉はその野心を表現するかのように、後退するまでの75分間攻守にわたり豊富な運動量と的確なポジショニングで浦和の甲種のスイッチを担っていた。
これまでは他所からトッププレーヤーを獲得することがチーム強化の根幹となっていたが、下部リーグから自チームに合う選手を獲得し、しっかりと結果を出させることからも「浦和は面白い」と他チームサポーターに思わせるには十分だった。

逆を言うと、浦和のこのサッカーに適応する選手を獲得するというのは非常に難しいとも言える。
恐らく外国人選手はコロナがひと段落し、ロドリゲスの出身でもあるヨーロッパの移籍市場が開く夏の段階で補強するのだろうが、これだけの運動量と強度を求められる上に、Jリーグが総体的に持つアジリティをも有する選手となるとかなり選択肢も限られてくるだろう。
その分日本人選手にも多くのチャンスがあるだろうから、純国産レッズがリーグを騒がせる存在になるのもまた面白いかもしれない。

最後に付け加えるならば、山中も非常に良かった。
スペイン人監督がよく好む偽ラテラル(サイドバック)のように、攻撃時にピッチ中央に入って来てプレーする姿が今日以上に増えると、新レッズの新たな攻撃の形にもなるだろう。

FC東京 - 効果的なプレーをどう生むか

FC東京からすれば「引き分けられて良かった」という思いが選手もサポーターも多いだろう。
僕自身はこの引き分けはよく言われる表現を使えば「フェアな結果」として受け止めている。
もちろん東京自体は決定気を全く演出できず、前半に至っては2本のシュート止まり。
攻撃においては浦和のプレスを掻い潜ることもできず、淡白なプレーが続き攻撃の糸口を掴むことも出来なかった。
その一方で守備面は後半には大きく改善されて、真ん中でしっかりブロックを作って浦和のパスをサイドにサイドにと押し出し、決定機を作らせていなかった。
この点から考えると、少々アンラッキーとも言える形で先制されたが、同様に一撃必殺とも言えるセットプレーから追いついたのは、フェアな結果であったと感じる。

ファスト・ブレークと言う言葉で表現されることが多いFC東京だが、今日のような形で相手からプレッシャーを受け続けてしまうと、やはりこれまでと同じく中盤の駒が不足していることが如実に現れてしまった。
シルバ、安部、東の3人は守備面においてはそれぞれが違った個性を持っており安定した力を見せるが、攻撃面においては状況を打破するパスやドリブル、という点では不足が感じられる。
今日のような試合になると、中盤の選手がシンプルなプレー(ファーストタッチやパスやドリブル)でプレッシャーを1枚剥がせるかどうかで局面が大きく変わるので、ベンチも含めてその役割を誰に担わせるのかが優勝を目指すには不可欠になってくるだろう。

本来であればワンタッチのパスで局面を変えられる高萩が適任ではあるが、守備の強度面で先の3人に劣るだけにスタメンでは使いにくい。
となると今日もセットプレーからアシストした三田が鍵を握る選手になるかとは思う。
5人の交代枠を使える今シーズンだけに、中盤の構成を変えることでどうゲームの流れを変えることができるのか、ベンチワークが問われるシーズンとも言える。

個人的には今日の引き分けは満足と言える結果だった。

あと付け加えておくならば、新加入の渡辺凌は十分にやっていたと思う。
浦和の小泉ほどのインパクトではなかったが、ワンタッチで日本代表歴もある山中を交わしてドリブルするシーンなど、変化を作れる選手である可能性を見せてくれたし、守備面でもサボらずによく上下していた。
チームとの連携もこれから上がってくるだろうが、中にカットインするような動きが増えてくると、攻撃に迫力を与えられるようにもなるので、これから自由度も上げてプレーしていって欲しい。
この試合で見れた唯一の良い攻撃ポイントだったかな、という感じだった。