Match Review 2021.3.20 Fulham F.C vs Leeds United

手の内を理解し合った対戦

業務多忙とウィークデーにJリーグがあると、予想も試合前記者会見もサボらざるを得ない・・・。
しかもロードレースも好きなので、ミラノ=サンレモも観たい・・・。
だからと言ってレビューもサボっては意味がないので、ミラノ=サンレモを観ながらの「ながら仕事」ではあるけど頑張ろう・・・。

前節チェルシー相手にサッカーオタク垂涎とも言える高品質なドローゲームを展開したリーズ。
今節は今シーズン共にチャンピオンシップから昇格したフルハムとの対戦となった。

言うなれば昨シーズンもチャンピオンシップで昇格を争ったチームでもあるため、お互い手の内を理解しあった対戦だった。
その戦いは両者とも非常に似通った試合内容となり、両者共にDFラインからビルドアップして前線に眺めのボールを入れて起点を作る、というカウンターの撃ち合いとなった。

リーズにとってみれば前節がプレミアチーム同士の削り合いであるとするならば、今節はチャンピオンシップのような、悪く言えばゲーム内容としては品質の悪い殴り合いとなった。

スロースタートが悔やまれるフルハム

フルハムとってみればVARが採用されたことによって2度救われたと言えるかもしれない。
8分にタイラー・ロバーツに左サイドを破られてエイリングのプレミア初ゴール、と思われたゴールがオフサイド(ロバーツの頭がオフサイドラインを出ていた)で取り消され、その後も19分のラフィーニャのゴールも取り消された(これはVARというよりも目で見ても明らかだったが)。
この20分の間全くスイッチを入れられなかったことがフルハムにとっては敗戦に繋がったと言えるだろう。
その上、20分のコーナーキックから英語コメンタリーが「ピンボールのゴール前!」と評したゴール前の競り合いから振り向き様にマジャが放ったボレーをリーズGKメリエに片手で弾かれたことで、流れを引き寄せることができなかった。
その直後にスローインで気が抜けたところからハリソン→バンフォードと繋がれて失点をしたことから考えると、スロースタートだったが故にみすみすリーズに主導権を渡してしまったと言わざるを得ない。

総体的に見ればこの試合はフルハムが勝ってもおかしくない試合だった。
DFラインからしっかりと組み立てながら、ミッドサードの高い位置でアンギサが起点を作り、カバレイロ、ルックマンというハードワーカーを使って攻撃を組み立てるシーンが多かった。
ドリブルで崩したり、スルーパスで決定機を演出するわけではないが、ハードワークから高い位置でボールを奪って手間をかけずにゴール前に繋げよう、という姿勢は冒頭にも言ったようにリーズのそれと非常に似たサッカーになっていた。

とは言え、リーズと決定的に違うのは、DFから丁寧に組み立てるという点だった。
このポイントが勝負の分かれ目になったとも言える。
この試合の決勝点となったリーズの2点目は、中盤でしっかりとパスを繋げようとした結果リーズのフィリップスにボールを奪われてしまった。
直近でリバプール、マンチェスター・シティという格上と戦ったことでポゼッション出来ずにカウンター狙いで行かざるを得なかった試合を展開していた中で、ポゼッションを重要視するわけではないリーズと相対したことで必然的に「持てる」状況になってしまったこともあるだろう。
持てるが故にボールホルダーに対して激しくプレスをかけるリーズにとっては格好の的となってしまったと言える。

降格争いから少しでも頭を抜け出したいフルハムにとっては最低でも勝点1を獲得したかった試合だっただろう。
相手が昨年チャンピオンシップで昇格に向けた鎬を削ったリーズであれば尚更、勝点3を取りたかったという思いもあっただろう。
その相手を向こうに回して、普段と違うこと=ポゼッションサッカーで圧倒しよう、としてしまったことが結果に繋がってしまったのかも知れない。

とは言え、先に触れたアンギサ、また後半から入ったミトロヴィッチによってしっかりと攻撃の起点が作れるだけに、相手なりのサッカーを展開することができるチームであることは間違いない。
リバプールに圧倒されながらも勝利した前々節を考えれば、残留の可能性も見えてくるだろう。
鍵は自分達が今最も勝点奪取に必要なサッカーを追求するだけの「余裕」をこれからの試合で持てるか、つまり相手にある程度ボールを握らせるサッカーをできるか、になるだろう。

見事なカウンターパンチ2発

サッカーファンとしては自分が応援しているチームが相手DFを崩し切ってゴール、というのが最も興奮し、酒が美味い瞬間だ。
しかしながら、この試合はそういう酒の美味さを感じるゴールではなかった。
言うなれば、相手の隙を見逃さずに上手にカウンターパンチを当ててダウンをとったボクシングの試合のような感じだった。
観ている側からすれば「あれ?今何が起こった?」というぐらいの感覚を受けるゴールシーンだった。

ただ、ある意味ではそれもリーズらしい、ということが言えるだろう。
2点目のシーンは特にその最たる例で、中盤でパスを繋ぐフルハムに対してフィリップスが一気にプレッシャーを掛け、バックパスしたところをプレスバックしたバンフォードが奪ってラフィーニャに絶妙なパスを出してゴールへとつなげた。
僅か3人で5人の守備陣を切り裂く見事なカウンターだったと言える。
特にバンフォードにボールが入った瞬間に、ボールを奪う起点となったフィリップスが勢いそのままにスプリント、得点したラフィーニャも一気に加速してバンフォードの前に出たシーンは、非常に迫力のあるシーンで、このカウンターパンチこそビエルサが求める形なのではないかと思えるシーンだった。

とは言え、これまでに散々このサイトのリーズ表でも触れてきたように、この試合でも中盤でゲームを構成することができないために、たまたま決定的なカウンターパンチが当たってくれただけの勝利に過ぎない、というのが率直な感想だ。
メリエによる数々の神がかったシュートストップがなければ、フルハムの勝利であったとも言える。
たられば、を言っても仕方がないが、攻守のトランジションが激しすぎるが故に裏返されるとDFラインが止めることができず、最後の砦メリエに頼るシーンが多く見られる。
中盤にダラスがいることで非常にインテンシティの高いプレッシャーを相手にかけられるが、その分ボールを収める、相手がリトリートしている場合には無理に裏を取るようにしない、という形も取ることができる。
その意味では引き続きクリヒの復調と夏の移籍市場に向けた動きが期待されることとなる。
AZのクープマイナーズ、ウディネーゼのデ・パウルなど噂は出るものの、リーズが獲得するには少々高貴な名前が多く、実態を伴った補強の噂とは思えない。

とは言え、このフルハム戦の勝利で勝点は39となった。
過去10年間勝点40を得て降格したチームはないとのことで、残留に王手をかけたとも言える。
ここまで29試合で勝点39。
平均で考えれば残り9試合で12点を積んで、勝点51前後でシーズンを終えてしっかりと来季に向けて戦略を練ってもらいたい。

1

2

得点

ヨアヒム・アンデルセン(38′)

得点

パトリック・バンフォード(31′)

ラフィーニャ(58′)

In/OutPos.FulhamLeeds UnitedPos.In/Out
GKアルフォンス・アレオライラン・メリエGK
LBアントネー・ロビンソンエズジャン・アリオスキLB
CBトシン・アダラビオヨパスカル・ストライクCB
CBヨアヒム・アンデルセンディエゴ・ジョレンテCB
Out(72')RBオラ・アイナルーク・エイリングRB
Out(63')DMハリソン・リードカルヴィン・フィリップスDM
DMマリオ・レミナジャック・ハリソンLM
LAMアデモラ・ルックマンスチュアート・ダラスCM
CAMアンドレ・ザンボ・アンギッサタイラー・ロバーツCMOut(93')
RAMイバン・カバレロラフィーニャRM
Out(46')CFジョッシュ・マジャパトリック・バンフォードCFOut(77')
SubSub
GKファブリシオ・アゴストキコ・カシージャGK
In(72')DFケニー・テテロビン・コッホDFIn(93')
DFマイケル・ヘクトルガエタノ・ベラルディDF
DFデニス・オドイマテウシュ・クリヒMFIn(77')
DFティム・リアムジェイミー・シャクルトンMF
DFジョー・ブライアンジャック・ジェンキンスMF
DFテレンス・コンゴロエウデル・コスタMF
In(63')MWルベン・ロフタス=チークジョー・ゲルハルトFW
In(46')FWアレクサンデル・ミトロヴィッチイアン・ポヴェダFW

Match Review 2021.3.17 FC東京 vs 湘南ベルマーレ

「あ、勝った」

本業は来年2022年1月までの在宅勤務が早々に決まっており、なかなか外出機会もないのですがこの日はお客様先へ。
その後同僚と軽くビールを煽っていたため帰宅後当日に観れたのは前半のみ。
就寝前に思ったのは「まあまあ酷いよね」ということでした。
試合後FC東京長谷川監督も「大丈夫かなと思った」と言っていましたが、本当に前半をリードで折り返せたのはラッキーだったかなと思いますし、そういうラッキーをしっかりと勝点3に繋げられることが大事とも言えるでしょう。
前節のレビューでも記載の通り、FC東京はローテーションをしながらシーズンを進めてチームを固めていく、ということを長谷川監督も公言していますので、それを前提としてこの試合を振り返ってみたいと思います。

湘南 - お手本のような得点

第3節の対戦相手神戸と同様に湘南がすごく良かった、というのはあまり感じませんでした。

FC東京がよく言えばゆったりと試合に入ったことを考えると、もっと前半の段階でいろいろなことがやれたのではないかな、と思います。
後述しますが全体が間延びして試合に入ったFC東京ということもあって、ミドルサードでボールを握れるシーンが非常に多かった前半でしたが、湘南もどうしても「早く前に」の意識が強くミドル〜ロングパスで局面を優位にとしては2ラインでブロックを作ったFC東京に跳ね返されて、という繰り返しでした。
遅攻になった時にどう組み立てるのか、そこはFC東京と似たプレースタイルを持つチームだけに課題を同じものだな、というのが正直な感想です。

むしろ後半の選手交代を境にしてチーム全体に推進力が生まれ、ボールをしっかりと握りながら最短のルートを探して早く東京ゴール前に向かっていく、という意識が感じられました。
リードを許していた状況であることもありますが、3人目、4人目の動きがしっかりと見て取れるようになり、攻撃に迫力が生まれたことは今後の試合にも繋がる収穫だったのではないかと思います。

その中で2点目の高橋諒の得点は湘南にとって、また同時にFC東京にとってもお手本になる素晴らしい形での得点だったと思います。
それまでは高橋諒へパスが出ると縦に縦にの攻撃が多い状況でした。
縦に、という意識は相手DFラインを押し下げ、そこからのクロスによって相手DF陣はボールと人を同時に見ることを難しくさせられるので、非常に効果的ではあります。
同時にしっかりとペナルティエリア内にブロックを作られてしまうと単に跳ね返されてしまいシュートに繋がらない、というマイナスポイントもあります。
なので僕個人的には縦に縦にの攻撃の連続というのは得点の期待値を下げるものだと思っています。

本題に戻しましょう。
ただ高橋諒の2点目が素晴らしいのがその「縦に、縦に」でマッチアップする中村拓に完全に自分の意識を植え付けたことに始まります。
これまでサイドで起点となっていた高橋がダイアゴナル(斜め)にペナルティアーク近辺まで走り込んだことによって、「マッチアップ、マークするのは俺だ」と意識づけられた中村拓も釣られて一緒にポジションを絞ってしまいました。
この動きによりペナルティエリア左サイド(FC東京にとっては右)がガラ空きの状態となり、高橋のポストプレーからそのスペースを見事に使われることとなりました。
このスペースを使われた時点で「詰んだ」と言えるプレーでした。
しかもこの形は湘南にとっては得意の速攻ではありませんでした。
ファイナルサードに入るところから一旦下げ、繋げた状況からミドルパスで高橋に楔のボールが入っています。
要は速攻かつ縦がダメなら中を使ってみよう、更にはダイアゴナルに中に入ってプレーしてみよう、その高橋の意識が非常に美しい崩しを生みゴールへと繋がりました。

湘南にとってもFC東京にとってもこのダイアゴナルに動いて相手を撹乱させながらパスを引き出す。
それによって空いたスペースを使って崩し切る、つまりは不均衡を生み出すという意味で今後に繋がる非常に重要なプレーだったと思います。
この試合で生まれた5点の中で最も美しいゴールだったと思います。

あとは客観的に欲を言えば、FC東京の同点弾の場面、渡邊凌のシュートに対してGKの谷にはしっかりと倒れてセーブをして欲しかったですね。
DFがブラインドになった可能性はありますが、手でセーブに行くことで不用意なところにボールがこぼれることとなってしまいました。
まだまだ若いGKですし、ミスをしない選手はいませんので、あのプレーを振り返って日本代表への道を歩んで欲しいと思います。

東京 - 別の選手、別のサッカー

個人的にはシーズン序盤にローテーションを重ねてチーム全体のコンディションをあげる、という作戦には異論はありません。
次元の違う話になりますが、僕はFootball Managerというサッカーシュミレーションゲームが昔から好きでして、好きなチーム(大体ラツィオからリーズ)の監督になっては移籍市場での選手獲得から戦術までを懸命に考えてゲーム内でのシーズンを過ごします。
この場合においても、チームを構成する際には「この選手が怪我でダメならこの選手。それでは弱いからここは補強をしよう。」とか「この選手は決定力は高いけどスタミナがないので、この選手と後半に交代させるまたは逆を基本にしよう」とかを考えるわけです。
このゲームには選手のコンディションやマッチシェイプ(試合に臨むだけの力)があるか、などのパラメーターがかなり細かく設定されていますので、そう考えルトやっぱり試合の中で出来る限り多くの選手を使いながら一試合でも早く全体のコンディショニングを向上させよう、という思考になります。

ゲームとリアルじゃちげーだろうがよ、と思われるとは思いますが、やっぱり相手があって勝ちたい、それが38とか34とか試合を重ねて優勝を取りに行く、ロングスパンで考えると早期のローテーションによるコンディショニング工場というのは理解をできますし、むしろ同意です。

しかしながら僕が冒頭に述べたように「まあまあ酷いよね」と感じたのは、前節大分戦と比較してです。
前節はインサイドハーフに三田と安部を起用して臨みましたが、この二人が豊富な運動量を武器に相手陣内高い位置でのプレスの原動力になっていました。
それと同期を取るようにディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトン、渡邊凌が連動してハイプレスをかける姿は「ああ、そうそう。FC東京のサッカーってこういうスタイルだよね。」と思えるものでした。
それがメンバーが変わると全く異質のサッカーとなってしまい、田川、ディエゴ、渡邊の3人がフォアチェックに行っても後ろが全く連動をしない上に、DFラインが押し上げてこないため全体が間延びして中盤にスペースが生まれてしまっていました。
そこに入るルーズボールを湘南に拾われては主導権を渡すというのが前半の大まかな流れだったと思います。
意図して相手にボールを持たせてサイドに追い出して絡め取る、ということが意図されたポゼッション放棄であれば納得もできます。
ただ、この日のFC東京の試合への入り方は「失点しないようにしよう」という守備陣と「いつものサッカーをしよう」という先述の3選手との意識の乖離が見えるものでした。
これを感じた段階で僕は「選手が変わるとサッカーが違うってのは、ローテーション云々以前の問題じゃないか?」と思ってしまうのです。
これは大分戦後半の選手交代後に全く違ったサッカーになってしまったことにも繋がります。

ディエゴ、田川、渡邊凌の頑張りを中心に勝利することができた試合だったので、ローテーション、コンディショニングを重視した中で結果としては良かったと思います。
ただ、それとやるサッカーが異なるというのはまた別の次元の話です。
このポイントをコンディショニングと共に統一させていかないと、結局起用する選手によってサッカーがまちまちになってしまい、個人の技量で勝てるか勝てないか、というこれまでのFC東京の「ブラジル人よろしく!行ってきて!」から脱することはできないでしょう。

そして先述したように、この日湘南の高橋諒に喰らった同点弾のような形をワイドの選手がつくり、そこにインサイドハーフの選手が絡んでいければ、得点60という目標も絵空事にはならないでしょう。
ただ、コンディショニングを進めながらもこの日の前半のような試合をしていると、他のチームだってコンディションは同様に上がるんです。
どうなるかは自ずと分かることかと・・・。

4月3日に何が観れるのか

3月21日には仙台戦が行われます。
調子の上がってこない仙台に対してはFC東京は勝利を期待されるでしょう。
ただ、ここまでの5試合を見る限り、長谷川監督はここまではこれまでのスタイルを崩さずにローテーションで臨むものと思われます。
それはこの試合後のインタビューでの「次の試合で厳しい連戦も終わります。」という言葉からも覗くことができます。

それを前提と考えると、厳しい連戦が終わった後の4月2日アウェイ名古屋戦から本腰を入れ流、つまりは今シーズンを戦っていくスターティングメンバーが誰なのかが姿を表すものと予想します。
前線はディエゴ、レアンドロが当確だとすると、残り1枚を渡邊、田川、アダイウトンで争うのでしょう。
中盤は長谷川監督の諸々のコメントから森重のアンカー起用はどうやら大前提として、安部は当確。
残り1枚を東と三田、シルヴァで争う形か。
最終ラインは渡辺剛とオマリを中心にしながら、蓮川、岡崎、まだ見ぬウヴィニの争い。
サイドバックは代表選出された小川が一歩リード。W中村の争いもあるでしょうし、蓮川、岡崎の可能性も残るかと思います。

いずれにせよこのローテーションでコンディショニングを高めたチームが2週間弱の期間でどこまで研ぎ澄まされるのか。
3月28日のルヴァンカップも一つの材料として使うことを考えると、今季のFC東京の真価を問うのは4月3日豊田スタジアムと言っていいのではないかと思います。

あと2週間以上あると考えるか、あと2週間ちょっとしかないと考えるか。

Match Review 2021.3.14 大分トリニータ vs FC東京

目的がなんだったのか

ネット上で観れる限り東京サポーターのこの試合に関する感想を拝見すると、
「交代策がバランスを崩した」
という意見が大半ですね。
僕も同じ感想です。
失点シーンの直接原因はこれとは別ですが、その一方でこの交代策によって大分がボールを運ぶことができるようになり、その直接原因の根本原因ともなるコーナーキックに繋がったということは言えると思います。

この交代策の目的がなんだったのか。
こればっかりはFC東京の長谷川監督が言う「中盤でのビルドアップをしたかった」とのコメントを額面通りには受け取れないと思いました。
こう対策の目的を考えると、「アウェイで勝点1を取れた」という言葉の方が説得力を持つのかもしれません。

ダブルミーニングというか裏の裏は表という考え方もあるのかもしれません。

大分 - 自陣でのボール扱いが巧い!

FC東京の交代策で自ら組み立てたバランスを崩すまでは、大分は耐え忍ぶ時間であったと思います。
ただ、そんな中でも「大分はどう守って攻撃に繋げるのだろう」とぼやっと見ていると普通にカウンターサッカー、ボールを奪うと自陣からボカンと蹴っ飛ばしているように感じました。
ただそのカウンターに至るまでの過程を見ると、自陣でボールを持った時の動かし方と扱いが凄く上手いんです。
FC東京の前線が激しくハイプレスをかけてもボールロストする機会が非常に少ない。ロストするにしても、ミッドサード=中盤に近いところでの繋ぎでロストするケースが多いように感じました。
言い換えるとこの自陣でのボールの動かし方の巧さ、というのはカウンターのみならず相手がリトリートして遅攻になった際にもきっちりとビルドアップすることが出来るという利点にも繋がります。

この点を踏まえて考えると、片野坂監督がシニシャ・ミハイロビッチ札幌監督の下で知見を積み、攻守での可変システムを踏まえながらも独自の守備からサッカーを計算するというサッカーを生み出したのだろう、ということが分かります。
単純なカウンターのように見えても3-4-3システムの前3枚にプラスして中盤も必ず2枚が入り込んでいって迫力のある攻撃を構成していました。
この可変性はミシャ式を踏まえながらも、予算と戦力に限りあるチームにおいて非常に効率的な独自の形を編み出したんだな、というように考えると大分のサッカーが非常に興味深いものになりました。

自陣でのボール扱いが上手い、ということを後付けで検証してみると、この試合における大分のボールロスト回数は96回。
自陣でのボールロスト回数は22回(22.9%)での残るボールロストは中盤で47.9%、相手陣内で27%ということも見ても、大分がいかに自陣内でボールを失う確率を減じようとしていたか、ということが分かります。
自陣で失う確率が低ければ、その分失点に繋がる可能性も減らすことができます。
逆の立場から見るとFC東京の大分陣内でのボールロストは全111回のうち69回(62.1%)。
これだけ自陣ないでしっかりとボールを失わせていれば、守備陣としては押し込まれていてもしっかりと仕事をした、と言えるでしょう。

片野坂監督の力量はガンバ時代のヘッドコーチとしての役割を見ても明らかです。
2016年のJ3での監督就任から3年でJ1昇格を果たし、2019、2020としっかりとチームを残留させた手腕は恐らく日本でも最高峰といえます。
その証拠が2019年のJ1最優秀監督賞ですし、その前年もJ2最優秀督賞を受賞していることでもあります。
大分は目標とする一桁順位に向かってまだまだ困難があるかと思います。
ただ、そんな時でも片野坂監督を信じ、自陣で無用なボールロストをしない守備陣を信じることで結果がついてくるサッカーをしていると思います。
とても楽しいサッカーを見ることができました。

東京 - 交代策のダブルミーニング

冒頭にも申し上げた通り、この交代策は勝点2を逃したという観点、勝利を積み重ね優勝戦線に早い段階で浮上したいというFC東京サポーターにとって悪夢のようなものであったと思います。

確かに初先発の青木は派手なプレーはないものの、猟犬の如く常にボールを追ってピッチを走り回る安部、三田の両インサイドハーフの動きを首を振って確認しては空いてしまいそうなスペースをきっちりと埋めていました。
スプリントの回数も目視する限りでは少なかったですし、90分を通して使うべき選手だったと思います。
その青木をアルトゥール・シルヴァに代えるということは同ポジションで交代させるというセオリー的には正しいことではありましたが、いざピッチに入ったアルが安部、三田と同様にボールを追い回してしまい、そのスペースを埋める役割が誰なのかが不明確になったことは東京ベンチにとっては誤算だったのかもしれません。
更なる誤算は「中盤でビルドアップしたかった」という意図があったとしても、サイドで攻守に躍動していた渡辺凌に代えて高萩を入れたことは合点が行きません。
この交代策によって結果として渡辺が見ていた左サイドをアダイウトンが担当することになり、結果としてはアダイウトンから交代したレアンドロが担当しました。
あれだけ安定して相手陣内に進んで行けた4-3-3を壊してまで4-2-3-1?、4-4-2と猫の目のように戦術を切り替えることに意味合いを見つけることは非常に難しいとしか言えません。

とはいえ、この流れを、育成年代ではありますが指導を行っている立場として考えた時に、
「自分のチームが優位に試合を進めているにも関わらず、あえて勝ちを逃してでもやりたいこと」
という視点で考えると、それはチームの相対的なコンディションアップや試合勘の養成に他なりません。
特にJリーグというかFC東京の場合は、その実戦を積むためのJ3からも撤退をしてしまいましたし、タイトなスケジュールの中で練習試合も組めません(育成年代の場合はたくさんの練習試合を組めますし(コロナ禍前ですが)、その中で選手個々の試合勘や度胸を養えます。)
今後の日程を見て行った時に、チームをローテションさせながらどう全体コンディションを上げていくのか、と考えれば起用の少ない高萩のコンディションを少しでも上げておく必要があったのかもしれません。
その点はスターティングメンバーからレギュラー筆頭の渡辺剛、森重を外したことからも推測できます。

こう見てくると長谷川監督の

(髙萩選手を投入した時にシステム変更した意図は?) 「もっとボールを動かしたかったという意図がある。 青木も頑張ってくれてはいたが、よりビルドアップの助けになる選手をいれたかった。 もっとボールを動かして追加点を奪いに行くという狙いで髙萩を入れた」

(アンカーの人選は手探りな部分があるのか?) 「答えは出ている。 連戦で今日は森重を使わなかったことや、品田が今ケガをしているということ。 青木は今シーズン加入をして、まだ完全にチームにフィットしたかと言われるとそうではないと思うので、プレーしながらさらにフィットしていってもらいたい」

というコメントがある種の説得力を持つことになります。
バランスを崩してでもこの先を見据えて(青木に限らず)選手をフィットさせていく、ということがこの日の交代策の目的としてあったのでしょう。

「高萩を入れてボールを動かしたかった」、と言いながらもこの日のパススタッツでは相手選手の間を抜く前方にに向けたパス(プログレッシブパス)は76本と今季最多で、その成功率も81.6%と、勝利したセレッソ戦(総計58本/成功率66.7%)と比較しても格段にボールが動いていたという矛盾もあります。
プロレベルのベンチでこういった状況判断が行われない、ということは有り得ないと思いますので、「苦しいアウェイでも勝点1が取れた」と試合直後に語った長谷川監督からすると、失った勝点2よりもチームのコンディションを上げたい、というのが本音のように思います。

言い換えれば長谷川監督からすれば、
「長いシーズン、中盤から後半にどう勝負するかなんだよ。焦んなよ。」
と伝えたいのかもしれません。

どうしたら勝点3に繋がるのかのヒントがあった

年始までタイトルを争って戦ったFC東京にとっては、キャンプインまでの休みの期間も短かったこともあり、怪我を避けるために強度の高いトレーニングもさほど数をこなしていないのではないかと思います。
その中で戦いながらどう全体のコンディションを上げていくべきか、というポイントは非常に難しい課題でもあります。

その一方でこの試合では得点に向けた鍵を握るディエゴ・オリヴェイラの復調が見えてきましたし、重戦車アダイウトンも変わらず健在です。
短い時間しかプレーができない(のではないか)永井が心配の材料ではありますが、前線の攻撃陣の状態は良い方向に向かっていると思います。
最終ラインも森重、オマリ、渡辺に加えてこの試合で蓮川も十分にやれる力量を見せてくれました。
あとは中盤の構成と、中盤からサイドばかりにパスを出すのではなく縦パスも織り交ぜられるかだと思います。
恐らく高萩の起用はそこを期待した部分もあるでしょう。
結果的に高萩が入る前の方が縦パス(プログレッシブ・パス)が多かったのは確かですが。

とはいえ、この試合を引き分けてサポーターが怒っている(僕もですが)のは、引き分けになったことです。
ただ、ポジティブに考えれば、プログレッシブ・パスが多く演出できたチャンスも多かったことからも、いかに中盤から縦に出すパスを多く出来るかがこのチームの課題であることはわかったのではないかと思います。

森重をアンカーに使うのであれ、青木であれ、まずは中盤の底から繰り出される縦パスの量の増加、及び三田、安部、東といったインサイドハーフからの縦へのパス、これらの増加は絶対的な課題であると思います。

次節湘南戦は走り負けないかどうか、というのがまずはポイントになると思います。
その中で選手のコンディションを優先するのか、勝点3を取りに行くことを重要視するのか。
次節は二つの観点で見ていきたいな、と思います。

ちなみに失点シーンについて申し上げますと、CKの跳ね返りにいち早く反応していたのはアルのみで、DFラインの押し上げ含めて後ろがついていけなかったことによって、大分の坂にフリーでアーリークロスをあげられたことが直接的な要因です。
無論真ん中で胸で落とした伊佐のプレーも素晴らしかったです。

Match Review 2021.3.13 Leeds United vs Chelsea FC

固唾を飲むドロー

チェルシーはトゥヘル監督就任以降9試合m負けなし(6勝3分)、その内クリーンシートは7試合。
ランパード政権時代が一試合当たり1.25の失点だった事を考えると、トゥヘルが就任して守備から改善が成されたという意味では格段の進歩だろう。
リーズ同様にチェルシーも応援する僕からすると、この進歩は驚きと共に安心を与えてくれているし、何よりランパード解任時9位だった事を考えれば、CL出場権獲得目前の状態までチームが浮上したことからも、トゥヘルが就任後に植え付けた強烈な守備の意識には感心と同様に感謝しかないほどの思いだ。
そんなチェルシーを向こうに回して連敗中のリーズがどこまでやれるのか。
今回は時間がなくてすっ飛ばしてしまった当たらない予想では0-2のリーズ負けの単騎勝負!と思っていたが、いやいやどうして。
リーズもチェルシー同様にハードな守備で結果的には0-0のスコアレスドローとなった。

まさに固唾を飲む90分間。
新旧の戦術家同士によるこのドローゲームは何度でも観られると言える好ゲームだった。

豊富な駒を十分に活用するトゥヘル

前節エバートン戦からチェルシーは大幅に選手を入れ替えてこの試合に臨んだ。
最終ラインにはリュディガー、左右のウィングバックにプリシッチとチルウェル、中盤にカンテ、前線はツィエクとマウントを配し、エバートン戦は3-4-3だったフォーメーションを、リーズの4-1-4-1を嵌めこむ意味合いで4-2-3-1にして臨んだ。

とはいえ、両翼のプリシッチととチルウェルのポジショニングによってはこの並びも3-4-3(3-4-2-1)のような形となり、この流動性がリーズを押し込む形になり試合は進行。
前半は完全なるチェルシーペースで試合が進んでいった。
特に守備力も高いチルウェルを攻撃的に使うことで、リーズの右ウィングでキーマンともなるラフィーニャを自陣深くに押し込み、ラフィーニャを起点にカウンターを仕掛けようとしてもチルウェルがリーズ陣内で即時に対応して奪い返す、というゲームプランは非常に良く練られている上に、それを事もなげに対応するチルウェルの戦術理解度と対応力の高さはこのゲームのハイライトの一つと言っても良いものだった。
更には中盤の底でボールウィニングを主たる目的としてプレーするカンテも頻繁に攻撃参加することで、リーズ守備陣に対して数的優位な場面を構築。
運動量豊富なカンテに対応するためにリーズはダラスをマークに付けて縦横無尽に走らせることで対応。
これによりリーズの攻守交替のスイッチを奪い、より相手陣内でボールを握るという効率的かつ絶対的なサッカーを展開。
ダイナミックなゴール前への雪崩込み、技巧的なビルドアップと新チェルシーの魅力とトゥヘルがやりたいサッカーが全部入りだった前半とも言える。

しかしこの前半に得点を奪えなかったことがチェルシーにとっては勝点2を逃すことに繋がったとも言える。
特に7分、リーズ陣内でボールを奪い右サイドのプリシッチ、ゴール前へのハフェルツへと繋いだ決定機を逸した場面を初め、リーズDF陣の体を張ったディフェンスを掻い潜ることが出来なかったのが痛かった。

この試合前まではトゥヘル就任後のチェルシーは1.78本/試合でしか枠内シュートを許していなかったが、この試合ではリーズに4本を許している。
その点から鑑みると、本来はがっちりと守りボールポゼッションを上げてゴールに襲いかかるというゲームプランだったものが、想定を上回るリーズの逆襲で可変システムで嵌めに行ったシステムが守備的にならざるを得なかった、という事も言えるだろう。

いずれにせよ堅牢なDFを構築したチェルシー、今後豪華攻撃陣をどのように組み立てていくのかによってこういった試合でも相手守備陣の壁に穴を開けることができるようになるだろう。

Murderballの結実

「これだけのハイプレスをしていると後半にどう響いてくるか」
リーズのようなハイプレスかつマンマーキングで相手を追い回す守備をしているチームだとどうしても解説者からこういったコメントが出てくる。
事実リーズファンとして今シーズン全ての試合を観ている僕としても、この試合でのリーズの運動量は不安になるばかりだった。

しかしこの不安はまさに杞憂に終わった。
恐らくチェルシーファンの目線から見ても、この日のリーズの選手達の運動量は「どこまでついてくるんだよ!」を忌々しく思うほどのレベルだっただろう。

リーズ=ビエルサの練習というのは非常に特徴的と言われる。
よく言われるのはポゼッションの練習は全くせず、ピッチを細かく区切ってどこからどこまで動くのか、相手についた場合はどこまで付いていくのか、ムーブメントの練習が大半だという。
しかもそれを最大のスピードで最大の強度で行うという”Murderball”と言われる練習セッションだという。
それだけの練習をこなせば、自ずと心肺機能は向上しスタミナが補完されることとなる。
このMurderballの結果がこの日のリーズの運動量に結実したとも言えるだろう。

運動量という観点で特に目を引いたのは中盤に起用されたダラス。
元々はサイドバックを主戦場として左サイドのアップダウンを特徴とした選手だが、中盤もこなせるだけの器用さも持っている。
それだけにMurderballの結実の代表例とも言えるように、この試合でもカンテのマーク役としてピッチを左右にカンテをどこまでもつけ狙った。
その分いつもの攻守のスイッチ役を担う、という観点での仕事が不足してしまうこととなったが、当日のプレイゾーンを確認してもホットゾーンが存在しない、という点ではダラスがいかに縦横無尽にカンテを追い回したかが良くわかる。

同様に目立たなかったが左サイドのアリオスキも試合の間足を止めることがなかった。
普段は積極的なオーバーラップで左サイドを駆け上がる10番を背負うこの左サイドバックも、プリシッチを向こうに回して自陣に釘付けにされるケースが多かった。

アディショナルタイムも含めて94分という試合時間、リーズの選手は守備に奔走しつつも、数少ないトランジションでも前線を目指してスプリントを繰り返し、ボールロストすればリトリートすべく全力疾走。
人によっては部活サッカーなどと昔懐かしい言葉で揶揄するかもしれないが、リーズの戦術を凌駕するためにトゥヘルが用意した作戦を人海戦術という戦術で乗り切った、という点でもMurderballの結果がまた新たな魅力を見せた試合だったとも捉えられる。

この引き分けを転換点と出来るのか。
全く異質の相手となる次節フルハム戦でどんなMurderballを見せることができるのか。

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得点

得点

In/OutPos.LeedsChelseaPos.In/Out
GKイラン・メリエエドゥアール・メンディGK
LBエズジャン・アリオスキベンジャミン・チルウェルLB
CBパスカル・ストライクアンドレアス・クリステンセンCB
CBディエゴ・ジョレンテアントニオ・リュディガーCB
RBルーク・エイリングセサル・アスピリクエタRB
DMカルヴィン・フィリップスジョルジーニョDM
LMラフィーニャエンゴロ・カンテDM
CMスチュアート・ダラスメイソン・マウントLAMOut(79')
CMタイラー・ロバーツハキム・ジエシュCAMOut(69')
Out(64')RMジャック・ハリソンクリスティアン・プリシッチRAMOut(68')
Out(35')CFパトリック・バンフォードカイ・ハヴェルツCF
SubSub
GKキコ・カシージャケパ・アリサバラガGK
DFロビン・コッホリース・ジェームズDFIn(68')
DFガエタノ・ベラルディマルコス・アロンソDF
In(79')MFマテウシュ・クリッヒクルト・ズマDF
MFジェイミー・シャクルトンエメルソン・ドス・サントスDF
MFジャック・ジェンキンスマテオ・コヴァチッチMF
In(64')MFエウデル・コスタティモ・ヴェルナーFWIn(69')
In(35')
Out(79')
FFロドリゴカラム・ハドソン・オドイFWIn(79')
FWイアン・ポヴェダオリビエ・ジルーFW

Match Review 2021.3.10 FC東京 vs ヴィッセル神戸

不思議な試合

業務都合で60分からDAZNで観戦。
東京サイドから見れば失点、得点、得点、失点、と忙しない30分。
夜中にビールとハイボール片手に90分間を通して観戦しましたが、全体を通してみると(負け惜しみではなく)神戸が良かったわけでもないし、FC東京が悪かったわけでもない。
試合後ネット上各所ではフォーメーション、個人のミス、チーム戦術と批判が湧き出していたが、そんな要素というよりも、細かいズレが敗因に思えてならない。
神戸は上手にFC東京のミスを見逃さずに得点したし、FC東京は得点こそ2点だったがチャンスの数は多かった。

このサイトの根幹には「試合を観た人が100人いれば100人の意見がある」なので悲観的な意見を否定する気は毛頭ないが、もう少し違った角度で状況を見ていくこともできるんじゃないかな、と思いました。

神戸 - ハードワークをどこまで継続できるのか

冒頭にも言いましたが、僕個人の感想として神戸がとっても良い試合をした、とは感じられませんでした。

ポゼッションは56.7%とFC東京に比して多かったですが、FC東京自体がポゼッションを重視するチームではないことからも、この数字がそのまま神戸が試合を圧倒したということを表しているわけでもありません。

圧倒的に試合を支配していれば、ボールロスト(ポゼッションの終わりの回数)も相手ゴール前での割合が増えるものですが、神戸がFC東京ゴール前(ファイナル・サード)でロストし回数は全137回のうち42回(30%)で、FC東京のそれ(65/123)と比較すると、どちらのチームが相手ゴールを脅かしていたか、が分かるかと思います。
自ゴールに近いポジションでは37回(27%)のロストを引き起こしていることからしても、全体的には中盤でボールを保持して相手の隙を狙っていた、ということが読めてくるかと思います。

試合全体を通してみると、神戸の大きな強みの一つは山口とサンペールの強度の高い守備ができてボールを繋げる事ができる高い能力を持ったCMFが2人揃っている事でしょう。
そこに稀代のパサーでもあるイニエスタが加われば、より守備から攻撃へのトランジションがスムースとなり、自ずと相手陣内でのボールロスト回数も増えてくることに繋がる=試合を支配できることに繋がるかと思います。
そういった意味では、バルセロナ的なサッカー(ティキ・タカ)と言われるパスを繋いで相手を圧倒するサッカーよりは、この日の神戸は攻守に全員がハードワークしてボールを確保する、ということを目指していたかと思います。
結果的にも走行距離、スプリント回数のいずれもがFC東京を上回っていることからも、チームとしてハードワークを止めない、という事が読み取れます。

イニエスタという中心選手の存在は神戸にとっては試合の内容を左右することにもなります。
いるといないのとでは相手人内に攻め込む工夫も変わってくるし、守備の仕方も変わってきます。
この日の神戸はハードワークから相手のミスにつけ入る形で勝利を手にしましたが、イニエスタが入ればそのハードワークをより強固にしないといけない場面も出てくるでしょう。
新外国人選手含め、バルサ的で魅力的なサッカーが(良くも悪くも)期待される中で、このハードワークを継続させながらどう内容を昇華していくことができるのか。
この辺りがこれからの神戸のチャレンジになってくるのではないかな、と感じた試合でした。

東京 - ミスの積み重ねで3失点

前節セレッソ戦のレビューで、森重のアンカーというのはオプションなのかオプションじゃないのか、ということに触れました。
この日オプションをスターティング戦術として起用したことで、完全にオプションというよりは一つの選択肢としてチーム戦術に組み見込まれた事が理解できました。

色々なこの試合の感想を見ていると「森重のアンカーの両サイドを使われた」という意見を見ますが、実態そこを使われてゴールを奪われることに繋がったシーンというのはなかったと認識しています。
確かに4-3-3のアンカーシステムを採用した場合、アンカーの両サイドはスペースとなりますから、使いやすそうに見えます。
ただ、FC東京の場合は相手陣内またはそれに近いところでボールロストをすると、4-4-2に可変して守備を行いますので、実態として森重の横を使われるというよりは、森重の横に入るべき安部だったり東の戻りが遅い、または釣り出されてしまっているというのが正しい表現になるかと思います。

これを踏まえて考えていくと、失点シーンは全てミスの積み重ねです。

1失点目はクリアに失敗したことですので、中村帆がどうしてあんなキックしちゃったのか、という個人のミスはどうしても避けられないものなので、あまり追求しても意味がないでしょう。
(個人批判をしたいのであれば恰好の材料ですが)

2失点目も同様にミスと言えるのですが、4-4-2で陣形を整えていたにも関わらず、神戸が左サイドでボールを持ってバックパスした瞬間に、中村帆が自分のスペースを空けて食いつきに行ってしまいました。
そのスペースを酒井に使われて失点に繋がります。
このシーンでは、右サイドで守備に入るディエゴ・オリヴェイラの戻りが一瞬遅れ、神戸の2選手との距離が中途半端になっている事がわかります。
しかし、4-4-2で守備のバランスを整えたところで、スプリントしてまで中村帆が食いつきに行く必要性はほとんど皆無で、どちらかといえばディエゴに対して周りが指示をしてボールホルダーに寄せるようにさせる方がよっぽど自然です。
0-1と負けていた状況なので、中村帆としてもなんとかボールを奪い返したいという意図は分かりますが、0-1という僅差の状況下において、ハイリスクに自分の担当エリアを放棄して前に出たこのプレーが試合の出来を左右したと言ってもいいのではないかと思います。
どうしてあの判断に至ったのか、この点は非常に不思議でなりません。

3失点目に関してもそれまでにきちんと対応出来ていたFC東京の守備がずれています。
中盤での激しいボールの奪い合いが82分あたりから連続しプレーが切れる事なく両チームにとって厳しい状況が続きますが、流れは神戸でした。
83分に左サイドで森重がボールロストし神戸ボールとなったところを運動量豊富な安部が止めに入ります。
その後もルーズボールの回収も含めて神戸がボールを握るようになると、84分に神戸が中盤で拾ったボールを左サイドへ展開。
この時、FC東京は中村拓、安部、三田の3人で対応に入り、神戸はトップのドウグラスが顔を出します。
右サイドには選手が二人残っていますので、小川もオマリもボールサイドにはスライドできない状況でした。
これに引っ張られたことにより、渡辺が右に引き摺り出され、渡辺とオマリの間にできた距離を埋めるために森重が最終ラインに入ってしまいました。
(右サイドには神戸の選手が二人残っていましたので、オマリと小川もボールサイドにスライドすることは難しかったかもしれません)
これにより今まで森重が鎮座していたバイタルエリアに広大なスペースが出来てしまいました。
*DAZNで視聴が可能であれば、83分30秒ぐらいから84分08秒ぐらいまでの森重の動きを見てもらえれば分かりやすいです。

この時点では危機的な状況ではありませんが、結果苦し紛れな神戸のクロスの跳ね返しを拾いにきた郷家に対して誰もプレッシャーをかけられずミドルを打たれてしまい、決勝点へと繋がってしまいました。
あれだけサイドで起点を作られても、しっかりと4-4のブロックを作って対応していたにも関わらず、この場面だけ森重がDFラインに吸収されてバイタルを空けてしまったのは非常に悔やまれるポイントです。
恐らく、この試合で神戸がFC東京の守備陣形を唯一ずらしたシーン、と言ってもいいぐらいでしょう。
試合終盤でチーム全体に疲労の色が滲んでいたこともありますが、2-2の状況から勝ちに行くために自ずと前後分断の作戦に出て、スペースを埋められてなかったことに原因は尽きます。
ブラジル人選手であっても、しっかりと自陣まで下がり守備に参加させる規律があれば、事実ディエゴが郷家に気付いて遅れて対応していたことも考えれば、防げた失点と言えます。
この失点は個人というよりも、チーム全体でそのズレに気付くことも解消することもできなかったミスと言えるでしょう。

結果的には神戸のファインプレー

FC東京にとっては今後勝点を積み上げていく中では拾う勝ち点もあるでしょう。
そうやって勝点を積み上げていった結果、優勝という文字が見えてくるものですが、ミスで失った2点を返し、勝点1をすくい上げられそうな状況下で、守備に回らされる時間帯に全体の統率を取ることができなかったことは残念でなりません。

逆を言えば、上記の3つのFC東京のミスにしっかりと付け込んでゴールを奪った神戸が勝者に相応しかったということでしょう。
特に最後のシュートを放った後にもゴール前まで詰め切った郷家の姿勢が完全に勝敗を決したことから考えると、決勝点を挙げたということと同じくらいその姿勢を評価しても良いのではないかと思います。

FC東京は強力な攻撃力を有することで、前線で得点の問題を解決することができるのが強みです。
しかし、守備面が疎かになれば攻撃における破壊力が持つ意味合いも半減します。
攻撃に戦術的意図を持たせないのであれば、守備時には通常以上の戦術性と規律を持たせて当たらなければならないでしょう。
その意味でも、今一度守備時の役割とパターンをブラジル人選手も含めて整理してもらえたらと思います。

Match Review 2021.3.9 West Ham United vs Leeds United

似た者同士の異質なサッカー

一部ネット上では、ビエルサもモイーズも一流の監督として評価され難い。
それはどちらの監督もいわゆる一流と言われるチームで結果を伴っていないからだろう。
モイーズはマンチェスターユナイテッドで、ビエルサはアルゼンチン代表で。

とはいえ、両者ともに1.5流〜2流ぐらいのチームを率いさせると、世の中をびっくりさせるような結果を出す。
恐らくは両者共にチームに求める規律(ディシプリン)が非常に強く、その強度がチームから自由度を与えられるようなスーパースターには耐え難いものであり、全体的なチームのバランスが崩れてしまうのではないかと思われる。

そう考えると、二人の監督は非常に似たタイプであり、その似たタイプが全く違ったサッカーを志向するもんだなぁ。
90分を通して試合を観ながらそんなことを考えていた。

役割分担が明確なハマーズ

当たらない試合予想ではリーズが先制点を取られないこと、それからハマーズのダブルボランチに注目と述べた。
ある意味では展開と注目ポイントについては当たっていたのではないかと、結果が当たってもいないのに自画自賛するのだけど、ハマーズの守備戦術はなるほど上位には破られるが下位には破るには難しい守備だな、と感じた試合だった。

ウェストハムは守備時はDF4枚+中盤2枚がしっかりとブロックを作って相手の攻撃を遅れさせ、そこに遅れてトップ3枚のうち2枚が下がって最大8枚+GK1枚で守るのが基本。
試合を通して選手交代を行なってもこの基本が変わることはなかった。

DF4枚は横の並びを崩すことなくペナルティエリアの幅で守備をし、サイドについてはワイドのMFが下がりながらスペースを埋めて、中盤2枚と連携する形での守備は、コンパクトに陣形を形作るというよりは、いかにゴール前を固めるかという思想からによるもので、非常に強固な守備網を簡単に構築できる。
その一方できちんと勝点を重ねていくためには、ボールを奪われた際の帰陣の速さと、高い位置からプレスをかけて最悪でも中盤の底でボールを奪い切るという、ハイプレスな戦術も求められる。
ウェストハムというチームは、このハイプレスの部分でも非常に規律の取れたチームだ。

攻撃ではボールを奪うと前に残った3人に早く繋げて、その3人の個人力でゴール前まで運んでフィニッシュまで持っていくカウンター型。
守備と攻撃で役割を完全に明確にしながら、チームとしてはハイプレスをかけて、なるべく相手を自由にさせないという戦術は、高い技術力で2、3枚の守備陣を剥がしてしまうような選手が複数いるトップチームには破られやすいが、それだけの高い技術力を持った選手が複数いないチーム(=この日のリーズのようにラフィーニャしかいなチーム)に対しては、十分に対応できる力を持っている。
そのため上位には敗れても下位には敗れない、という中堅チームとしては必要十分な力量を備えているのがウェストハムと言えるのかもしれない。

前後の役割をしっかりと分担しながら、というと前後分断サッカーのように思われるが、自陣でボールを奪って攻撃に転じる際には、しっかりとフォルナルスやベンラーマが中盤まで下がってきて、攻守の繋ぎの役割を行う。
そのような中に動いてボールを受けられるリンガードが加入したことで、速攻のみならず遅行になった際でも繋ぎ切ってシュートを打って終わるところまで持って行けるようになったのは大きなポイントだろう。

モイーズがエバートンを率いた終盤、選手の入れ替わりはありながらもリーグ中堅としてのポジションを獲得していた時代、そんな安定感を持つチームに生まれ変わりそうな予感を感じる試合だった。

求むBox To Box MF

前節アストンヴィラ戦では「試合に不均衡を作れる選手が不足」としたが、この試合でも新たに不足が目についてしまった。

この試合では中心選手となるフィリップスが怪我から復帰し、中盤の安定感を取り戻したかに思われたが、怪我明けから騙し騙しで使ってきたクリヒの代役が必要な状況となってきた。
これまではアンカーにストライクを使ってみたり、4-1-4-1を4-4-1-1とフォーメーションを変えてなんとか乗り越えてきたが、フィリップスが復帰したこの試合では4-1-4-1でフィリップスをアンカーに据えた。
しかし、フィリップスがサイドに寄った際に、昨シーズン同様その空いたスペースをカバーするクリヒの帰陣が遅れてしまい、この日はベンラーマやフォルナルスに上手くそこを突かれてしまっていた。
クリ自身も腰の怪我で欠場後、復帰してからは交代するケースが多くなっており、年齢的にも怪我の影響からの復帰が遅れてしまう状況にもあるのだろう。
自陣から相手陣内まで、いわゆるBox To Box MFとして激しく動き回るダイナモの不調はチームの不調にもリンクしてしまっている。
フィリップスが復帰すれば万事OK、と言えるほどアマイリーグでもないため、このBox To Boxのポジションを誰が補えるのか、ここが今後のリーズのポイントにもなってくる。
事実、クリヒに替えて左サイドバックのダラスを中盤に持ってくると、前半とは打って変わってボールも人も動くリーズらしいサッカーが展開された。

結果としてはハマーズ最終ラインの組織的な守備を突破することができずに0-2の敗戦となってしまったのは、前節に見えたラフィーニャ以外の違いを産める選手と、クリヒの不調を補える選手の不足と言えるだろう。
限られた予算でのプレミア復帰初年度だけに、いきなり理想が叶うわけでもない。
この週末に行われる次節も調子を取り戻したチェルシー相手だけに敗戦の公算が高いが、まずはこの連敗から1日でも早く脱してしっかりと残留を決め、来期に向けた動きを取れるようにすることが大事になってくる。

とはいえ、ポジティブな話題がないわけではない。
この試合ではロドリゴが怪我から復帰し30分プレー。
相手バイタルでボールを受けたりと、「差を生むプレー」をいくつか見せてくれた。
ポストになる選手がバンフォードしかいなく、どうしても厳しいマークを受けて孤立するシーンが多くなっていたが、ロドリゴが入ることで起点が複数にすることができる。
守備面ではエイリングの疲労が心配な中で、ベラルディが長い怪我から復帰しバックアッパーが揃ってきた。
ラフィーニャも相変わらずの好調ぶりを見せており、厳しい相手となるチェルシー戦を前に好材料が揃ってきている。

コッホももうすぐ復帰できると言われているだけに、シーズン後半に向けて万全の布陣で残留とトップハーフの目標に邁進してもらいたい。

ファンとしては贅沢は言えない。
今は我慢の時だ。

2

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得点

ジェシー・リンガード(21′)

クレイグ・ドーソン(28′)

得点

In/OutPos.WolverhamptonLeeds UnitedPos.In/Out
GKウカシュ・ファビアンスキイラン・メリエGK
LBアーロン・クレスウェルスチュアート・ダラスLB
CBイッサ・ディオップリアム・クーパーCB
CBクレイグ・ドーソンディエゴ・ジョレンテCB
RBウラディミル・コーファルルーク・エイリングRB
DMデクラン・ライスカルヴィン・フィリップスDM
DMトマシュ・ソウチェクエウデル・コスタLMOut(46')
Out(73')LAMモハメド・ベンラーママテウシュ・クリヒCMOut(46')
Out(87')CAMジェシー・リンガードタイラー・ロバーツCMOut(60')
RAMパブロ・フォルナルスラフィーニャRM
CFマイケル・アントニオパトリック・バンフォードCF
SubSub
GKデイヴィッド・マルティンエリア・カプリーレGK
GKネイサン・トロットリーフ・デイビスDF
DFファビアン・バルブエナガエタノ・ベラルディDF
In(87')MFベン・ジョンソンナイアル・ハギンスDF
MFマヌエル・ランツィーニエズジャン・アリオスキDFIn(46')
MFマーク・ノーブルジャック・ジェンキンスMF
MFアデミボ・オトゥベコジャック・ハリソンMFIn(46')
In(73')FWジャロッド・ボーウェンロドリゴFWIn(60')
イアン・ポヴェダFW

Match Review 2021.3.6 FC東京 vs セレッソ大阪

強力な飛び道具で決着した打ち合い

FC東京、C大阪、双方のサポーターにとって心臓に良くない試合だった。
互いに点を取り合い2-2になると、試合の主導権を握るFC東京が続け様にチャンスを作り出し、それを身体を張って守ったセレッソがカウンターからチャンスを作る。
まさにボクシングの最終ラウンドに二人の拳士が殴り合うかのように互いがパスを繰り出し合い相手ゴールに向かう終盤は手に汗握る展開となった。
結果的にはレアンドロのセットプレーから2点を奪ったFC東京が勝利した試合となった。
冷静な考え方は後に回すとして、試合が終わった後にふと声をついて出たのは、「凄い試合だったな。こういう試合を毎試合観たいよ。」という言葉だった。

今日のこの試合をスタジアムで観ることができたFC東京サポーターは本当に幸運だったと思う。
現地だテレビだ、という一部で戦わされるサポーター論議に興味はないが、今日のこの試合はスタジアムで観た人々を羨ましく思った。

悲観することはないセレッソ

セレッソにとっては、望外の塊のような試合だっただろう。
ポジティブな意味では戦力になるのか疑問だった大久保が1G1Aで望外の活躍。
ネガティブな意味ではキム・ジンヒョンのミス、センターバック森重がアンカーになったことで潮目が変わったこと、そしてレアンドロのFKがハマりまくったこと。

確かに勝点がすり抜ける形の敗戦となったが、個人的にはセレッソに悲観材料は少ない試合だったと思う。
キム・ジンヒョンのミスは確かに致命的だったが、GKとしてミスをしない選手はいないし、ああいったプレーは年に何度も繰り返される類のミスではない。
またFC東京に崩されて失点をした形もなかったので、飛び道具にやられたと考えれば大きく破綻した部分はなかったとも考えられるだろう。

その上に大久保の活躍ぶり、奥埜、原川と運動量の多い二人を含めて構成される中盤の構成力は高いし、ゴール前にも5人の選手が飛び込んでいく形が多く見られて迫力満点の攻撃だった。
最終ラインでは瀬古と西尾という若いセンターバックが身体を張ることも含めてしっかりと守備ができていたので、後は最終ラインから中盤の守備の連携が取れてくれば、バランスの良いサッカーが出来るように思えた。

特に西尾は非常によかった。
ゴール機会を2度にわたって阻止したが、その状況も含めてこの試合全体で「ゴールとボールを結んだライン上に立つ」というセンターバックの基本を高いレベルで守っていた。
なんだ当たり前じゃないか、と思われるだろうが、最終ラインで相手の攻撃を堰き止める役割のセンターバックにとっては、人なのかボールなのかの対応に悩まされることが多い。
相手のドリブルに対しても、その線をずらされて一瞬でシュートを打たれることも多い。
しかし西尾の場合はドリブルでボールが晒されている状況でも簡単に取りに行ったりすることはなく、しっかりと相手を見て対応し、ゴールとボールを結んだ線を決して空けないような守備が徹底されていた。
この基本の徹底こそがFC東京の決定機を2度に渡って阻止したプレーにも繋がっており、先に述べたように中盤との連携が向上していけばさらにセンターバックとして成長出来るだろうと感じさせた。
怪我を含め出遅れている進藤やダンクレー、鳥海を差し置いてポジションを確保する格好の機会だけに今後の活躍を期待したい。

一方で課題としては大久保が退いてからはFWがボールを引き出すような動きが減ってしまい、カウンターからしか東京ゴールに近づけなかったことかと。
先制点の場面も然りだが、大久保はボールを引き出すための動きが本当にうまい。
そこにボールを出せる選手がいれば、今なおその力が十分に通用するものということを3試合でしっかりと証明して見せた。
大久保と同様に相手DFラインと駆け引きし、間延びをさせられるような動きのできる選手が交代で入れるかどうか。
中盤の駒はしっかり揃っているだけに、FWの動きが整理できれば得点機会は向上するだろう。

オプションがオプションでなくなる日?

今日の試合は何につけてもレアンドロと森重に尽きる。

他の選手が何もしていなかったわけではないが、停滞していたチーム状況に好転のスイッチを入れたのは間違いなくアンカーにポジションをあげた森重だったし、そこから出来たセットプレーでしっかりと結果を出したのはレアンドロだった。

応援するチームであり、チームが優勝と発言しているだけに敢えて厳しいことを言うのであれば、3点入ったが結局流れからの得点はなかったというポイントは大きな課題になる。

先に述べた通り、身体を張って守ったセレッソ西尾の好守がなければ流れからの得点にもなり得たが、それを排除してでも流れからゴールを奪えなかったことは事実として残る。
たらればで西尾の守備がなければ、と言っていいのであれば、キム・ジンヒョンのミスがなければ同点弾はあり得なかったわけで、試合の結果も大きく変わっていた。
結局のところ2点目もポストプレーで潰れたアダイウトンのところから流れたルーズボールに安部が追いついてくれた、と言うことからのFKだったし、決勝点も個人技で強引に割って入ったアダイウトンが倒されなければ発生しなかったが、実際あの場面でアダイウトンは孤立してしまっていた。
個の力、個の判断力が良い方向に転がったからチャンスを演出できたが、個の集合体として得点機を演出したシーンを振り返ってみると思いのほか少ない。
外にボールを回す以外に特に攻め手が皆無と言っても良い状況だった前半を考えると、中盤にポジションを移した森重と言う策がなかったらどうなっていたか、と思わざるを得ない。
そう考えると、やはり中盤でどうゲームを構成するのか、というところは引き続き課題と言わざるを得ない。

アンカー森重については、もともと足元の技術に定評のあった森重なので、アンカーのポジションもなんなくこなせてしまうので、昨シーズンのルヴァンカップ然り、守備強度とボールを散らすと言う観点ではアンカーでのプレーは期待を持たせてくれる。
特に今シーズンは同タイプでボールを動かすことに長け、昨シーズンからの連携が取れるオマリが残留したことで、森重アンカーというオプションが定常的に使えるという点は大きなポイントにもなる。
実際に1点めのキム・ジンヒョンのミスに繋がるシーンでは、森重の強烈な縦への楔のパスがあったことでセレッソ陣内の深いところまで入れた結果でもある。
その他にも手詰まった左サイドから右サイドへのサイドチェンジなど、森重だからこそのパスが幾つも見られた。

昨シーズン来ファンの間でも話題となってきたアンカー論に終止符を打つのは森重、というのをこの試合でも改めて表してくれた。

ただ、この森重アンカーというオプションがオプションではなく常態化してくることでまた課題と対応点が増える。

・森重を経由できないと攻撃の形がいつものブラジル人+永井の「よろしく行ってこい」しか手段がなくなってしまうため、中盤でボールを動かせる攻撃的な人材をもう1枚投入しておかなければならない。それにより、中盤から前線の守備強度が下がってしまうこと(この試合での三田の役回りの選手が必要だが総体的な守備強度は下がってしまう)。

・オマリはスピードでは後手を踏むため、最終ラインで相手FWのアジリティにかき回されることが増えるため、サイドバックがそのカバーをしなければならなくなりサイド攻撃の攻め手が減ること。(この試合ではセレッソの2点目は完全に大久保にオマリが置いていかれた)。

この試合のように勝ちに行く、追いつきに行くという局面ではアンカー森重は非常に大きな効果をもたらすが、セレッソがなんとか森重に対して手を打とうと原川を対策に回したことでパス回しを鎮静化されてしまった時間帯もあった(その意味では72分の三田投入は絶妙なベンチワークだった)。

このように森重を抑えられた時にどう対応するのか、失点できない状況下でズレが生じてしまう守備面をどうカバーするのかという課題が表出化する。
恐らく他のチームは今日のセレッソ戦をしっかりと分析し、FC東京がオプション行使をした際の打ち手は検討済みで臨んでくるだろう。
ルヴァン、この試合とアンカー森重作戦で好結果を得られたが、同時にベンチワークが試されることにもなる。
細かいズレの連続が失点につながりやすいだけに、その部分の手当なしにオプションをオプションじゃなくなるすることは、今後勝利を重ねることを目指すのであればかなり危険にも思う。

とはいえ、プロセスはどうであれこの勝ちは爽快だったし、1-0よりは3-2の勝利が面白いのは確かなので、残り少ない週末の時間は美味い酒を飲んですごそう。

Match Review 2021.3.3 FC東京 vs 徳島ヴォルティス

ミスした方が負けの典型的な試合

在宅勤務になって1年。
今までだと観ることの出来なかった18時キックオフの試合も普通に観れるようになったのは幸せと思う反面、やはり一日中家にいる生活というのは息が詰まるものです。
その中で爽快な試合が観たいな、と思ってもそうはいかず(苦笑)。
Jリーグ公式スタッツではシュート2本で1得点のFC東京が勝利。
双方のチームがレギューラー選手を温存し、お互いの色を出し合った試合は双方決定機に欠け、ミスをした方が負け、の流れの中で進んだ試合。
結果としては徳島DFのクリアミスを突いた田川のゴールでFC東京が勝利も、FC東京サポーター的にはもう少しピリッとして欲しいという辛口な感想の試合でした。

一画面に10人が映り込む徳島の色

ライター活動をさせて頂いていた7年前、徳島には何度も取材に行かせて頂きましたので、なんとなく思い入れ的なものは残っていたりします。
とは言え、現浦和監督のロドリゲス監督就任の遥か前ですから、当時の徳島サッカーと今の徳島サッカーは大きく違っていたりして、その辺も面白く眺めていました。

新任のポヤトス監督がコロナ禍で未だ来日の見通しが付かない中での徳島のサッカーは、ロドリゲス指揮下のサッカーを継承しながら新指揮官の到着を待つ流れにせざるを得ない状況ですね。
ロドリゲス時代に物凄く試合を観ていたわけではありませんので、詳細を語ることは出来ませんが、この日の徳島を観て感心したのは、守備時のその陣形の美しさとコンパクトさでした。

画面で見るだけでも必ず4-4-2の陣形をしっかりと組んで、その陣形がFC東京のパス回しに応じて前後左右と動く様は、チーム全体の意識が統一された素晴らしい規律が出来上がっているということの表れでもあります。
そのブロックをどう崩すのか、のアイディアはこの日のFC東京ではなかなか見られませんでしたが、あれだけ統率が取れた守備網を崩すというのは、効果的な縦パスを起点にワンタッチで連続してパスを通す、いわゆるティキ・タカ・サッカーかサイドチェンジを繰り返して陣形を横に伸ばすか、果てはメッシ(Jリーグ的に言えば川崎の三苫)のような個で突破できる選手を使って崩すしかやりようがないと思いながら観ていました。
悪い言い方になりますが、いわゆる昇格チームや相手に対して力が劣るチームが、引きこもるのではなくきちんと攻撃も視野に入れて失点しないことを考えた場合、コンパクトに全員で守り、規律を持って戦うという徳島のサッカーは非常に理に適っており、このサッカーの中に攻撃のパターンが増えてくれば非常に厄介な存在になりそうです。

攻撃面においては、特に先制された後はパスを繋げるもののサイドに押し出されてしまい、無理なところからのクロスに終始してしまい、FC東京守備陣に跳ね返されるシーンが多くなってしまいました。
そんな中でシュートには繋がりませんでしたが、終了間際に垣田選手が中盤からFWに当てた楔のパスは、FC東京守備陣を崩す起点になり得るもので、攻撃のスイッチを入れる、というよく言われる言葉を体現するパスでした。
ああいった縦パスを怖がらずに入れ、それを合図に4-4-2の陣形を可変させて2-4-4-、2-3-5と相手ファイナルサードに攻撃陣が雪崩れ込むような形にできれば、昨年J2で見せた旋風をJ1でも巻き起こせるのではないかと思います。

全国的には無名な選手の集合体としてのチームではありますが、ああいった規律が徹底されていけば、中長期的に十分にJ1で戦えるチームになり得るでしょう。
今シーズンはなんとかJ1に残留し、4年かけてロドリゲスと共に成熟させた徳島のサッカーをさらに昇華させて欲しいと思います。

迫力に欠けたFC東京

カップ戦初戦でもあるので、個人的にはある程度メンバーを入れ替えて臨むことは想定していました。
ですので、スタメンを見たときにはそんなに驚きがなかったのが正直なところです。

そんな中で僕が注目したのは2つのポイントで、1つ目はオマリのプレースタイルを改めて確認するということ。
これは過日の投稿でもあるBruno Uviniを知ってみようでスタッツ的に明らかになった前に出すパスの多さやロングパスというのがオマリからどれだけ出るのか、を改めて確認してみようという意図です。
結果、この日のオマリは個人平均を上回る10本のロングパスを出し50%の成功確率でした。前方へのパスも24本(成功は19本)と、やはりこの選手はDFラインから前にパスを出す選手なんだな、ということを改めて確認でき、スタッツを眺める面白さを改めて確認することができました。

2つ目のポイントは、青木をアンカーに据えた中盤から前の選手がどのように動いて徳島を崩していくのか、というところでしたが、ここに関しては「ブラジル人がいないときついな」と感じたのが正直な感想です。
41.16%のポゼッション時のパスの大半は自陣からミッドサード(中盤域)で、ファイナルサードに向けた縦パスも少なく、徳島のDFライン前で止められるケースがほとんどでした。
このようなメンバー構成の試合では、いわゆるサブメンバーの意地みたいなものが見えて、「この選手を次の試合に見たい!健太さん使ってくれ!」という気持ちを醸成したいものですが、どうしてなかなか、この日の東京イレブンではオマリ、青木の主力級の安定感ぐらいしかそういった気持ちを抱くことができませんでした。

ただ、僕自身はこの試合でやはり三田の持つ力量というのは苦しい時にFC東京を救ってくれそうだという期待感を持つことはできました(とはいえ三田も主力選手ですが)。
浦和戦で同点に追いついたプレースキックの質は当たり前ですが、90分間に渡って中盤を幅広く動いてボールを引き出す動きも多かったですし、縦に入れるボール、ペナルティエリアを狙うパスも多く見られました。

www.wyscout.comでのスタッツを見てみると、ボールに対するアクション回数は86回でチーム1。青木が81回、内田が76回と続きます。アクションの成功率を見てもそれぞれ53回(61.6%)、52回(64.1%)、36回(47.3%)となっており、三田のポジションが敵陣でアクションを起こすことが多いことを考えるとこの試合においては出色の出来であったことが分かります。
以下の図は、三田がこの試合で起こしたアクションの成否を表したwhyscoutのスクリーンショットです。
右サイドだけではなく、左サイドまで幅広くアクションを起こしていることが分かります。

ペナルティエリアに向けたパスも青木が4回(成功率75%)に次いで三田が3回(成功率66%)と、青木と三田でこの試合の攻撃を構成していました。
それぞれチーム内で与えられた役割がある、ということを前提に置いたとしても、こういった攻撃に絡むプレー回数が主力級選手だけで占められるというのは、逆を言えばそこに付け込む若手の力量と欲が少ないということにもなります。
ルヴァンカップはこういった若手が公式戦で活躍する姿を見せやすい大会ですし、そこをきっかけにリーグ戦のベンチ、スタメンを勝ち取るための登竜門でもあります。
まだ初戦だから、ではなくて若手選手には是非とも「この1回で次のリーグ戦のベンチを掴み取ってやる」という強い気持ちと欲望を持って臨んで欲しい、それこそがFC東京に必要な違いを生む力の礎になるものだと思います。

 次なるチャンスは3月28日のヴィッセル神戸戦。
ここでは違った形で攻撃を形作る若い力の躍動を期待したいと思います。

Match Review 2021.2.27 Leeds United vs Aston Villa

ゴールが生まれる気がしない反撃

Jリーグが開幕し、サッカーオタクの週末は多忙を極めることとなる。
何時からどの試合を診て、その次にはこっち、ご飯を食べて子供と遊んで、風呂に入れて寝かしつけたらこっちとこっちの試合を・・・。
そうやって週末に4~5試合をフルタイムで観ていると、なんとなく試合の流れが予知できるような能力が身につく。

この日はFC東京、リーズユナイテッド、ラツィオと応援しているチーム全てが同じ展開になり、更には興味で観ていたFC琉球vsジュビロ磐田でもジュビロが同じ展開になった(特にジュビロを応援しているわけではないのだけど、元J1覇者がJ2というのは寂しく少々肩入れしてみていた)。

全てのチームが先制され、うちリーズ、ラツィオ、磐田は前半早々に、それを追いかけて圧倒的なボール支配で攻撃を仕掛ける。
ボール支配を行わなかったFC東京だけがセットプレーから追いつき、他の3チームは試合を支配しても最後まで追いつくことは愚か得点すらあげられなかった。

見ていると自然と口走る。
「あー、相手がこれだけブロックを作っては単純にクロスを上げるだけじゃダメだ。」
「シュートも苦し紛れに遠目からになりがちだよ。」
なんとか追いついて欲しいものの、見れば見るほどピッチ上の選手の必死さとは逆の精神状態に陥る。
「ダメだこりゃ。このままじゃゴールは生まれんよ・・・。」

上手く穴を突いたヴィラ

キックオフ直後はアストヴィラペースだった。
通例通り4-1-4-1でスタートしたリーズに対してアストンヴィラも4-1-4-1の布陣を敷いた。
通常通りの4-2-3-1だとどうしてもトップ下のバークリーがストライクにマンマークで付かれてしまい攻撃が手詰まりになる、という判断なのだろう。
合わせ鏡のような形で序盤の主導権を握ると、両ワイドのトラオレ、エル・ガジがストライクの脇にできるスペースに飛び出し、そこにラムジーやマッギンの両セントラルミッドフィールダーが絡んでいくことで、リーズ守備陣はマーキングを見逃さざるを得なくなった。

特にエル・ガジの動きは秀逸で、サイドに張るばかりではなくトップ下の位置に入ったりと、本来のマーカーであるエイリングを混乱させ、最終ラインから上手く引き摺り出すことに何度も成功していた。

アーセナルに4-2で敗れた時も同様だが、マンマーキングで対応するリーズの守備を混乱に陥れには、こういったスペースにワイドの選手がダイアゴナル(斜め)に走り込んでボールを受け、シンプルに次のパスを出すことを繰り返されると、対応するディフェンダーは行き先に迷い混乱が生じる。
その虚を突いてゴール前に選手がなだれ込む、というのがリーズ攻略の最も効率的な手段だ。
この日のヴィラも同様の形で容易にリーズゴール前を陥れ、ビエルサは意図したゴールではないと記者会見で評したが、いずれにせよ自由自在に動かれたエル・ガジのボックス内侵入を簡単に許し、ゴールを演出されてしまった。

この日のヴィラにとってはこの早い段階での先制点で十分だったのかもしれない。
試合前予想でも述べた通り、アストンヴィラの前後半でのクリーンシート率は高く、失点数もマンチェスターシティ、チェルシーに次ぐ26失点でリーグで3番目の少なさだ。
得点数が上がればトップ5入りも狙えるだけの守備力を持っているだけに、先制さえ出来れば守り切れるという公算はあったかもしれない。

ディーン・スミスは地味な監督ではあるが、守備から計算してチームを上手く構築していると思う。
守勢に回らせると非常に厄介なチームであることをこの試合で改めて表現しつつ、しっかりとリーズの穴を突いて勝点3をもぎ取っていったことは悔しいが当たり前の結果であったとも言える。

不足が浮き彫りになったリーズ

開幕前、そして冬の移籍市場においても中盤の攻撃的な選手の補強が噂をされては実現しなかった。
その不足がこの試合でも露呈したと言える。
これまでの敗戦はどちらかといえば「リーズらしい殴り合い上等」の戦い方で評価を上げてきたが、この試合のラストパスの精度の著しい低さはこの補強ポイントを改めて中盤の質向上を表現するものだった。

無論クリヒもロバーツもいつも通りよく走り、タフにデュエルを挑んでいた。
しかし、アストンヴィラに2ラインのブロックをしっかりと構築され、両者が中央からペナルティエリアを目指すパスは完全封鎖され、完全にバンフォードが孤立を強いられる形となった。

リーズの期待は個人技に秀でたラフィーニャだけとなり、チームのラストパスが通らなければ通らないほど、ラフィーニャのドリブル力に期待を寄せるばかりに。
もはやビッグクラブのターゲットとも噂され始めたラフィーニャの力量を認識しているアストンヴィラ守備陣はラフィーニャに対して3人をぶつけ止めに掛かる。
それでもなおラフィーニャはその状況を打開してしまうのだから頭が下がるのだが、残念ながらその後のパスもヴィラがゴール前に展開した城壁を破るには至らなかった。

懸命にサイドから、中央から崩しにかかるリーズだったが、ラフィーニャ以外にビエルサがいうところの「守備の不均衡」を引き起こせる選手がおらず、ただただクロスもパスも弾き返されるばかりだった。
ボールロスト総数102回のうち実に半分の51が相手ファイナルサードでのものだというデータから考えても、ビエルサが記者会見で繰り返し述べたように、このファイナルサードでの正確性を欠いたことは明らかだ。
攻め込んでいても入る気がしない。シュート総数12に対してオン・ターゲットは3本のみ(アストンヴィラは7本で4本が枠内)。ポゼッションしての攻撃回数が38回のうちシュートまでいった攻撃は4回(アストンヴィラは19回で4回)。
いかにポゼッションという数字や主導権を握る、ということだけでは価値に結びつかないかがよくわかる試合だった。

0

1

得点

得点

アンワル・エル・ガジ(5′)

In/OutPos.LeedsAston VillaPos.In/Out
GKイラン・メリエエミリアノ・マルティネスGK
LBスチュアート・ダラスマットターゲットLB
CBリアム・クーパータイロン・ミングスCB
CBディエゴ・ジョレンテエズリ・コンサCB
RBルーク・エイリングアーメド・エル・モハメディRB
Out(53')DMパスカル・ストライクマーヴェラス・ナカンバDM
LMラフィーニャアンワル・エル・ガジLMOut(88')
CMマテウシュ・クリヒジェイコブ・ラムジーCMOut(79')
Out(71')CMタイラー・ロバーツジョン・マッギンCM
Out(64')RMエウデル・コスタベルトラン・トラオレRM
CFパトリック・バンフォードオリー・ワトキンスCF
SubSub
GKキコ・カシージャトーマス・ヒートンGK
DFリーフ・デイヴィスニール・テイラーDF
DFナイアル・ハギンズビョルン・エンゲルスDF
In(53')DFエズジャン・アリオスキートレゼケMFIn(88')
DFチャーリー・クレスウェルモーガン・サンソンMFIn(79')
MFジャック・ジェンキンスドゥグラス・ルイスMF
In(64')MFジャック・ハリソンロス・バークリーMF
In(71')MFパブロ・エルナンデスケイン・ケスラー・ヘイデンMF
FWジョー・ゲルハートキーナン・デイヴィスFW

J1 League Match Review 2021.2.27 浦和レッズ vs FC東京

積み上げと再構築と

やっぱりJ1開幕がやってくるとワクワクしてしまう。
キックオフ前にはテレビの前に陣取って、両チームのメンバーを見て今季はどんなサッカーをするのかと想像する。
欲を言えばビールがあれば尚ワクワク感に花を添えてくれるのだけど、嫁の目を気にして回避。

FC東京は昨年までの積み上げでリーグ制覇を狙うシーズン。
堅牢な守備と縦に速い攻撃を特徴に、どうやって浦和ゴールを陥れいるのか。

一方の浦和はチーム再構築のシーズン。
徳島をJ1に昇格させたロドリゲス監督の下、コロナ禍もあるだろうけど、外国人選手に頼らず日本人選手だけで新たなチーム像を作っていく。
コロナの影響もあり例年以上に各チームのキャンプ情報が少ない中、特にレッズがどうトランスフォームをするのかの情報は少なかった。
どんな新しいチームになるのか。

FC東京の開幕戦としては申し分のない相手。
楽しい気持ちでキックオフのホイッスルの音を聞いた。

浦和レッズ - インテンシティとタフネスと野心と

試合が15分を経過した段階で(極めて個人的かつ生まれて初めて)「これは確かに浦和のサッカーは面白いぞ」と思った。
ヨーロッパの監督らしいトレンドを追った高い位置から相手ボールにプレッシャーを掛けてボールを奪いにいく姿勢。
FC東京ゴール前から自陣ゴール前まで、ピッチのあらゆる場所で強度の高いプレーが連続される。
往々にしてこの手のサッカーは70分あたりからがくりと運動量が落ちるが、そのようなこともなく10人の選手がピッチ上を動き回るタフさも見せた。
そしてこの中心にいたのは、間違いなくJ2から移籍してきた小泉と明本の二人だった。
J1の舞台を夢見て戦ってきた二人の選手にとって、浦和レッズという看板を背にJ1開幕戦のピッチに立つことはプロ選手としての新たな野心を抱くに十分な瞬間だっただろう。
特に小泉はその野心を表現するかのように、後退するまでの75分間攻守にわたり豊富な運動量と的確なポジショニングで浦和の甲種のスイッチを担っていた。
これまでは他所からトッププレーヤーを獲得することがチーム強化の根幹となっていたが、下部リーグから自チームに合う選手を獲得し、しっかりと結果を出させることからも「浦和は面白い」と他チームサポーターに思わせるには十分だった。

逆を言うと、浦和のこのサッカーに適応する選手を獲得するというのは非常に難しいとも言える。
恐らく外国人選手はコロナがひと段落し、ロドリゲスの出身でもあるヨーロッパの移籍市場が開く夏の段階で補強するのだろうが、これだけの運動量と強度を求められる上に、Jリーグが総体的に持つアジリティをも有する選手となるとかなり選択肢も限られてくるだろう。
その分日本人選手にも多くのチャンスがあるだろうから、純国産レッズがリーグを騒がせる存在になるのもまた面白いかもしれない。

最後に付け加えるならば、山中も非常に良かった。
スペイン人監督がよく好む偽ラテラル(サイドバック)のように、攻撃時にピッチ中央に入って来てプレーする姿が今日以上に増えると、新レッズの新たな攻撃の形にもなるだろう。

FC東京 - 効果的なプレーをどう生むか

FC東京からすれば「引き分けられて良かった」という思いが選手もサポーターも多いだろう。
僕自身はこの引き分けはよく言われる表現を使えば「フェアな結果」として受け止めている。
もちろん東京自体は決定気を全く演出できず、前半に至っては2本のシュート止まり。
攻撃においては浦和のプレスを掻い潜ることもできず、淡白なプレーが続き攻撃の糸口を掴むことも出来なかった。
その一方で守備面は後半には大きく改善されて、真ん中でしっかりブロックを作って浦和のパスをサイドにサイドにと押し出し、決定機を作らせていなかった。
この点から考えると、少々アンラッキーとも言える形で先制されたが、同様に一撃必殺とも言えるセットプレーから追いついたのは、フェアな結果であったと感じる。

ファスト・ブレークと言う言葉で表現されることが多いFC東京だが、今日のような形で相手からプレッシャーを受け続けてしまうと、やはりこれまでと同じく中盤の駒が不足していることが如実に現れてしまった。
シルバ、安部、東の3人は守備面においてはそれぞれが違った個性を持っており安定した力を見せるが、攻撃面においては状況を打破するパスやドリブル、という点では不足が感じられる。
今日のような試合になると、中盤の選手がシンプルなプレー(ファーストタッチやパスやドリブル)でプレッシャーを1枚剥がせるかどうかで局面が大きく変わるので、ベンチも含めてその役割を誰に担わせるのかが優勝を目指すには不可欠になってくるだろう。

本来であればワンタッチのパスで局面を変えられる高萩が適任ではあるが、守備の強度面で先の3人に劣るだけにスタメンでは使いにくい。
となると今日もセットプレーからアシストした三田が鍵を握る選手になるかとは思う。
5人の交代枠を使える今シーズンだけに、中盤の構成を変えることでどうゲームの流れを変えることができるのか、ベンチワークが問われるシーズンとも言える。

個人的には今日の引き分けは満足と言える結果だった。

あと付け加えておくならば、新加入の渡辺凌は十分にやっていたと思う。
浦和の小泉ほどのインパクトではなかったが、ワンタッチで日本代表歴もある山中を交わしてドリブルするシーンなど、変化を作れる選手である可能性を見せてくれたし、守備面でもサボらずによく上下していた。
チームとの連携もこれから上がってくるだろうが、中にカットインするような動きが増えてくると、攻撃に迫力を与えられるようにもなるので、これから自由度も上げてプレーしていって欲しい。
この試合で見れた唯一の良い攻撃ポイントだったかな、という感じだった。