Marcelo Bielsa Pre Match Press Conference – Leeds United vs West Ham

最良の選手と対峙したい

2月27日のアストンヴィラ戦前のプレスカンファレンス。
相手キープレーヤーであるグリーリッシュの欠場予想について、自軍のフィリップス、コッホの怪我状況などについての質問をビエルサ節で一刀両断。

アストンヴィラとリーズの類似性についてはビエルサらしい表現で立場と状況の違いを語った。
Leeds Liveのプレスカンファレンス記事を拙訳)

マテウシュ・クリヒ、カルヴィン・フィリップス、ロドリゴとその他怪我人についての状況をお伺いできますか?

クリヒはの状態はいい。カルヴィンは今週末は使えない。

マテウシュは選出されるに十分だと思われますか?

わからんね。

ジャック・ハリソンはここ数試合で交代させられています。どおように彼をマネージメントしていますか?彼に個人的に話しかけのか、彼自身に乗り越えさせるのか、必要なことはなんでしょうか?

ハリソンは非常に強いメンタルを持った選手だ。晴れはプロとして献身的だし、必要な時は、他の選手と同様に彼と対話することをしている。

アストンヴィラは昨シーズン非常に苦戦していました。今シーズン彼られは良いシーズンを過ごしています。今シーズンにおいて、彼らの顕著な違いとはなんでしょうか?

最近の状況について語るのであれば、チームというのは上位の10位に入るのか、20位から10位なのか、もしくは10位から15位の間なのか、10位から5位の間なのかということでしかない。

アストンヴィラは彼らが行ってきた変革に値する状況にある。彼らは改善が必要だと思ったポジションに対しての解決策を見出した。彼らはこの大会でプレーするレベルにある選手をなんとか確保することができた。
彼らにはそのプロジェクトを補完することができる効率的な若い選手を有してもいる。

ジャック・グリーリッシュが今週末の試合に出場できるか微妙です。それはリーズの準備にどの程度影響するでしょうか。

彼は非常に素晴らしいプレーヤーであり、違いを生み出せる選手だ。例えどんなに我々のチームを強化したとしても、最高の選手は脅威を与え、対応することを難解にするものなので、私としては相手が最良の選手を選出することを望んでいる。

そういったことは我々にとっても刺激的なことだ。非常に良いプレーをする選手と向き合い、無力化し、相手の疲弊した選手ではなく、最高な選手に対峙する。以前に言ったように、彼らはどんな選手が欠場してもカバーできるチームだ。

リーズは10月に3-0で勝っています。今回はどんなことが待ち受けているでしょうか?

アストンヴィラは非常によいプレーをするチームだ。一貫している。その試合の時は我々は非常に良い状態だった。それから20試合もあれば我々も浮き沈みはある。

リーズとアストンヴィラは、間違いなく今季の予測を上回ったチームです。アストンヴィラとリーズの双方がと組んでいることで類似点はありますか?共通点はあるでしょうか?

(アストンヴィラは)プレミアリーグに戻って2シーズン目であり、彼らは修正をした。犯したミスから修正を行えるというのは利点だ。チャンピオンシップからプレミアリーグに上がってきて、間違いを起こさないなんてことは不可能だ。なぜならレベルが全く違うのだから。

それぞれのポジションでプレーする選手の特徴についてはある程度の類似性はあるだろう。それぞれの選手にいる選手は二人のフルバック、二人のセンターバック、ディフェンシブミッドフィルダー、Box To Boxにオフェンシブミッドフィルダーに二人のウィングにセンターフォワードということだ。
彼らは我々が持っているのと同様の特徴を持っている。
君がこれに似た何かを目撃したというなら、私も同様のものを見るんだろう。

ロビン・コッホはいつ練習に復帰できるでしょうか?

3月の1週目には戻ってくると考えている。

彼のリハビリがどの程度なのか教えていただけますか?重傷なだけに予定より早いのでしょうか?

彼の回復は期待通りだ。コッホは非常に前向きで、楽しく、勤勉で自分の取るべき責任に向けて真剣に取り組む選手だ。怪我をする以前と同じような力強さとパフォーマンスで戻ってくるだろう。

カルヴィン・フィリップスについてはどうでしょうか?彼の怪我を未だ引きずっているように見えるので。以前アーセナル戦以前に彼には復帰の機会があるとおっしゃっていて、彼も出場に近づいていたようですが、そこから3~4試合を経ています。思った以上に深刻なのですか?

よく使う言い回しがある。選手は進化の対象として戻ってくる、という言い回しだ。私が言ったように、彼が怪我をした際にはよく早く戻ってくるという選択肢はあったが、彼の怪我はふくらはぎの怪我だ。
再発は状況を悪化させるだけなので、再発を避けなければならない状況だ。なので我々は彼の復帰については非常に注意深くなっているが、彼は確実に戻ってくると思っている。

ニューカッスル戦後、その日に新たな怪我をしたディエゴ・ジョレンテの精神的な影響についてお話しされました。サウサンプトンとの試合を通して、彼にとってはその状況を乗り越えることはどれほど重要だったとお考えですか?

怪我をし、その怪我を繰り返した選手にとって90分を終えることは非常に重要なことだ。

先日のサウサンプトン戦での勝利によって、リーズはアストンヴィラ同様にトップ10に入りました。プレミアリーグのトップ10に留まる、ということが今の課題でしょうか?

目標は次の試合を乗り越えることだ。次の試合を乗り越えるために、通常はその位置を維持するのか、より良くなるのかを考える。無論我々は勝ちに値するようにプレーしていきたい。肯定的な血が与えられたときに、それが順位にどう影響するのかを考えたい。

Marcelo Bielsa Post Match Press Conference – Leeds United vs Southampton

3ゴールは両者のパフォーマンス以上の差

連敗を2で止めて、再びトップハーフの順位に上昇したリーズ。
怪我からの完全復活となったジョレンテ、大活躍が続くラフィーニャ、そして亡くなられたフィリップスの祖母ヴァルさんについて語ったビエルサの試合後記者会見です。
Leeds Liveのプレスカンファレンス記事を拙訳)

非常にタイトな前半でしたが、そのゲームを特に後半上手く運べた要因はなんですか?

後半はあっという間に得点することができて試合を始められた。3ゴールは両者のパフォーマンス以上の差になった。我々は我々がしたように、サウサンプトンが一瞬でも試合を支配しないように尽力しなくてはならなかった。例え我々の攻撃が相手の倍のチャンスを演出したようにうまく行ったとしても、試合自体はいつでも(状況が)変わるものなのだから。

今夜は非常に重要なクリーンシートでしたが、ディエゴ・ジョレンテの影響力はどの程度ありましたか?

我々は組織だった守備を行う。我々の攻撃陣は多くの仕事をこなすので、ディフェンダーがボールを回収するのを容易にしてくれる。ジョレンテはその一員であることを証明した。
今回のような試合では相手チームは異なるタイプのフォワードを使い、その多くは質の高い選手であり、彼の貢献というのは非常に有効だった。

ラフィーニャについて多くの事柄が言われていますが、上手い選手に対してあなたは何を教えるのでしょうか?彼に何か教えるべきことはありますか?

彼はアンバランスな選手と言えるだろう。非常に野心的で、とても競争力がある。一般的ではない複雑さを持っているのだが、彼は高いレベルで創造性があると同時にバランスを崩しかねない。私が彼にできること、というのは非常に少ないと思っている。自発的な選手に対して最善を尽くせるとしたならば、彼ららしくさせてあげる、ということだろう。

スチュアート・ダラスがカルヴィン・フィリップスの祖母への手向けとしてジャージを掲げましたが、その損失はチームにとってどの程度ショックなことでしか?

我々にとって、フィリップスは愛すべき選手だ。彼はリーズ・ユナイテッドの象徴だ。我々が昇格してから、カルヴィンのおばあちゃんの姿は公のものになったし、我々全員も彼女のことを気にかけるようになった。
あなたがいうように、カルヴィンにとっては愛する多くの理由をもった女性だった。彼女は、彼女のことを知らない人にとっても非常にカリスマ的で魅力的な人だった。
彼女が我々と一緒に居られないということは残念でならない。そしてもちろん、カルヴィンと彼のご家族にとってどれだけの損失を意味するのか、ということはもちろんのことだ。

ラフィーニャが非常に早く適応したことをお話になりました。能力のある選手が、性格や人格かつ謙虚にグループに溶け込むことはどれほど重要なことでしょうか?

リーズにいるグループは、人間性においては、本当に最高の経験(を提供してくれる人たち)だ。(リーズに)到着した全ての人は保護され、歓迎される。コーチング・スタッフも同様に扱われるし、我々も到着した時には同じように受け入れられ、歓迎された。選手自身の経歴とラフィーニャの人間的な側面から考えても、全ての事柄うまく溶け合ったと言える。

Match Review 2021.2.24 Leeds United vs Southampton

二度見て気付く絶妙な差配

いつもはリアルタイムでも後追いでも試合を1回観て自分なりの考えを構成するのだけど、この試合だけはたまたまリアルタイムで観ることとなり、眠気と戦いながらだったので珍しく2度観た。

ライブ視聴の時に
「前半はサウサンプトンペースでした。」
「前半のサウサンプトンペースの時に特典できなかったのが・・・」
中継の日本語コメンタリーで再三聞かれたのだけど、リーズ視点で観ていたのは確かだけど、本当にそうなのか?そんな違和感を覚えた。

2度目の試聴のときにその違和感の答えを探してみたところ、なるほどポゼッションもサウサンプトンだし、試合もリーズサイドで行われているから確かにサウサンプトンペースだし、リーズの攻撃は単調に見えたからサウサンプトンペースなんだろう、と合点がいった。

しかしながら、リーズの攻撃、時には守備においての絶妙な差配が行われいたことは初見では気づかなかった。
4-1-4-1なのか、3-5-1-1とかそういう数字の話ではなく、左右の入れ替えという単純な差配が後半開始早々のリーズ先制点の絶妙な撒き餌になっている、僕はそう感じたので、今回はリーズのポイントから。

また、冒頭に亡くなられたフィリップスの祖母ヴァルさんの名前が入ったユニフォームを試合後リーズメンバーで掲げ、ビエルサも記者会見で言及した。
チームからもファンからも愛されたおばあちゃんに改めて哀悼の意を表します。

 

香車と成金で撒き餌

試合立ち上がり、リーズは通常の右ラフィーニャ、左ハリソンという攻撃MFを逆に配した。
通常は左利きのラフィーニャ、右利きのハリソンがピッチ中央に切れ込んでいくことでサイドバックが上がるスペースを作り、それによって相手DFとGKの間にアーリークロスを入れていくのがリーズの定番となっていた。
この試合において両選手は、両者の利き足と同じサイドに配されることで、リーズのサイド攻撃は縦に縦に、となっていた。
無論これは前節で優れたスピードを見せたサウサンプトンのテラをケアするために長い距離をスプリン出来るハリソンを右に配して対応させたい、という意図もあったのだろう。

ただ、攻撃の際には、中盤深い位置から左右を操るパスを支えるフィリップスがいないため、この配置だとどうしてもDFラインから長いボールを蹴り込んでサイドを上がらせる、またはサイドバックから縦につけてサイドバックが追い越す時間を作って攻撃、と相手DFからすると守り易い状況での攻撃しかできない。
アクセントをつけるためいロバーツが下がってボールをもらってドリブルや左右に散らしてもう一度ボールをもらうというきっかけを作ろうとしていたが、これも決定的な状況を作るには至らなかった。

しかし、試合を振り返ってみると、巧妙な撒き餌が展開されていたとしか思えない。
右サイドはハリソンも右サイドバックのエイリングも縦に縦にの動きになり、さしづめ将棋で言えば香車を縦に2枚並べたような、上下の機動力を重視した攻撃しかできず、単調にならざるを得なかった。
これが撒き餌1。

その配置を前半途中に通常通り右ラフィーニャ、左ハリソンにポジションチェンジ。
このポジションチェンジからロメウの攻守に阻まれる決定機が生まれた。
ポジションチェンジが撒き餌2。

どういうことか。
撒き餌1では香車の2枚の動きによりサウサンプトンはサイドMF、サイドバックの同数に数的優位を加えるためにロメウとウォードプラウズのサウサンプトン中盤1枚を応援に出させる。
これでサイドの守備面は3-2でサウサンプトンの優位。
この撒き餌1でサウサンプトン中盤をサイドに誘き出すことに成功する。

撒き餌2ではラフィーニャをハリソンの立ち位置を変えることで、撒き餌1によって誘き出されたセンターハーフが開けたスペースにカットインができる。
その分センターバックが前に出ざるを得ないため、最終ラインからセンターバックを誘い出せる。
気付かずに香車は金に成っていて斜めにも動き出し敵陣に入り込でいた。

後半開始。
リーズウィングの位置は元に戻したうえに、右サイドのハリソンに代えてより香車感の強いコスタを投入。
この後半開始の策によって、サウサンプトン守備陣はそれぞれのマーキングの確認と対応を再度認識合わせすることを強いられた。
自身のチャンスから展開されたボールをリーズGKメリエが手にしたトランジション時に、サウサンプトンはこの認識合わせを十分にできずにぶっつけ本番するより仕方がなくなった。
サウサンプトの両ワイドは対抗となるリーズワイドを探す、センターハーフもバランスを確認、センターバックはセンターハーフがボール奪取に向かう際にできるスペースのカバーに。
それぞれが撒き餌によって刷り込まれた試合への対応に切り替わっていたはずだ。
その状況でボールはピッチ中央のロバーツへ。
サウサンプトン中盤がロバーツへターゲット変更することで、MFとDFの間の距離が一瞬離れる。
そこをケアすべくセンターバックが前に出た瞬間にロバーツがパスを出した。
バンフォードまでの距離を補うには弱いボールでのパスだったが、一瞬前に出かかったサウサンプトンDFを背走させるには十分な強さ。
足元に入れたバンフォードが落ち着いてゴール右隅にボールを蹴り込んだ。

長短のパスを折り混みながら香車を動かしたり、成金を動かすことで、サウサンプトン守備陣の潜在意識に迷いが生じていた。
そこをうまく一撃で突いた先制点。
見直してこの将棋のような緻密さを感じたのが、僕にとっての大きなハイライトだった。

この先制点の後は左右を入れ替えたり、サイドバックが偽ラテラルのように中盤に顔を出したりとリーズは可変を繰り返す。
先制点までで巧妙に仕掛けられた罠は時間が経てば経つほどサウサンプトンを蝕んでいた。

違和感の大きな理由はこれだったんだろう。

1枚、1手足りない

戦前予想でリーズの中盤が1枚浮く、と予想したが、割とのそのような展開になりロバーツはそこそこ自由にポジションを変えてプレーしていた。
この1枚浮く、または浮かせてしまうというのが攻守においてもサウサンプトンの課題だと感じた。
ウォード=プラウズの正確なキックと気の利いたスペースマネージメント、闘犬のようなロメウのボールハンティング、どちらも非常にレベルの高い中盤の選手ではあるが、攻撃においても中のポジションはこの二人で構成されており、DRラインを前にしたときにどうしても1枚足りなかったり、もう1手加えられれば決定機になったのでは、というシーンが多かった。
逆を言えばリーズファンにとっては冷や汗というシーンは数えるしかなかったということだ。

ハーゼンヒュットル監督の意図としては、強固な中盤2枚を中心に高い位置でボールを奪い、サイドの選手も中に入ってゴール前に迫ることが目的なのだろうが、ゴール前でDFラインを形成されるとどうしてもサイドにサイドに、とボールを動かさざるを得なくなる。
そこからサイドを深く抉っても、結果中の枚数が足りない上にブロックを作られてしまっているのでペナルティ外の選手にマイナスのパスを出さざるを得ない。

ポゼッションが高くてもブロックを作られるとどうしてもこういう動きになりがちになる。
その上先制されてリードされているから、後ろからも押し上げが強くなりスペースができやすく一発で裏を取られる。
時間が経つにつれてサウサンプトンはドツボにハマって行ったように思う。

そういった意味では、ボールとは逆サイドのウイングがしっかりトップ下の位置まで入り込んでくることがサウサンプトンには必要だろう。
後半投入された南野に託された役割はそうであるべき、と思っていたが、彼のプレーを見るにどうもそのタスクを任されていた感じはなかった。

怪我人も続出でなかなかそうは問屋が卸してくれないという側面もあるだろうが、この1枚がないともう1手が出せない。
ハーゼンヒュットルとセインツサポーターの苦悩は暫し続くだろう。

余録 ゲーゲン、ゲーゲンうるさいです

ハーゼンヒュットルに関わらず、ドイツサッカーに関しては採用戦術はゲーゲンプレスと言われて久しくなった。
果たしてそうなのだろうか。ゲーゲンプレスって戦術なんだろうか?
ゲーゲンプレスをしたところで、結局前項で示したようにサイドに押し出されて中でシュートが打てないのであれば、それは戦術ではない。
「ゲーゲンプレスから高い位置でボールを奪い、そこから2列目、逆サイドまでがペナルティに入りゴールを奪う戦術」
として戦術を構成しないと意味がない。
つまり、ゲーゲンプレスとは戦術の構成要素の一つであって、戦術そのものではない。
これはカウンターサッカーもそうだし、結局のところそのチームを分かりやすく類型化するために代表的な戦術構成要素を用いているに過ぎないので、ゲーゲンプレス、ゲーゲンプレス、げーげんぷれす、ゲーが出ますとやかましい。

ビエルサのサッカーが面白いのは、マンツーマンという代表的なキーワードが出るが、その実マークの受け渡しはするし、必要以上にゾーンを放棄してまでついていかない。
ゾーンとマンマークを高い次元で融合し、カウンターもあればポゼッションもある。
簡単に類型化できず、とにかく選手の運動量が多いサッカーなので「Murder Ball」と言われる。
むしろこのMurder Ballがビエルサの戦術であって、マンマークではない。

構成要素に囚われて、その監督を評価するのは本質からかけ離れたことでしかないと思う。
この辺は別項でくどくど言ってみたい。

3

0

得点

バンフォード(47′)
ダラス(78′)
ラフィーニャ(84′)

得点

In/OutPos.LeedsSouthamptonPos.In/Out
GKイラン・メリエアレックス・マッカーシーGK
CBパスカル・ストライクライアン・バートランドLB
CBリアム・クーパーモハメド・サリスCB
CBディエゴ・ジョレンテヤニク・ヴェステルゴーCB
LMスチュアート・ダラスヤン・ベドナレクRB
Out(59')CMマテウシュ・クリヒネイサン・テラLMOunt(58')
RMルーク・エイリングオリオル・ロメウCMOut(70')
Out(46')LAMジャック・ハリソンジェームズ・ウォード=プラウズCM
Out(75')CAMタイラー・ロバーツスチュアート・アームストロングRM
RAMラフィーニャネイサン・レドモンドFWOut(58')
CFパトリック・バンフォードチェ・アダムスFW
SubSub
GKキコ・カシージャフレイザー・フォスターGK
DFオリバー・ケイシージャック・スティーブンスDF
DFニール・ハギンズケイン・ラムゼイDF
In(59')DFエズジャン・アリオスキームサ・ジェネポMFIn(70')
DFチャーリー・クレスウェルアレクサンドラ・ヤンケヴィッツMF
MFジャック・ジェンキンスクガオゲロ・チャウケMF
In(46')MFエウデル・コスタダニー・イングスFWIn(58')
In(75')MFパブロ・エルナンデス南野 拓実FWIn(58')
FWジョー・ゲルハートダニエル・ヌルンドゥルFW

Match Prediction / Premier League Leeds United vs Southampton

Footballic Match Preview

Premier League リーズユナイテッド vs サウサンプトン

リーズ贔屓の当サイトが、なるべく平たく試合を予想していきます。
データ、ここ最近の両チームの調子などを見ながら、当日の予想を展開します。

振り返り

前回の両者対戦は2012年10月まで遡らねばならないため、今回の対戦に参考になる直近の対戦はなし。
過去2回と同様に当たらない予想を今シーズンのデータをベースに展開していきます。

ちなみにこの試合はDAZNで中継されますが、リーズにとっては珍しく日本語コメンタリが付くでしょう。
大方の注目ポイントは前節チェルシーから得点を奪ったサウサンプトンの南野選手が、「16年ぶりに昇格したビエルサの」リーズから得点するか、でしょう。

「16年ぶりに昇格したビエルサの」という枕詞はもういいよ、とファンながら思いながらもこれが事実ですから仕方がないですね(笑)。
恐らくいつもの試合よりも多くの方が視聴したり目にする試合になるので、「ビエルサのリーズが面白い」ともっと多くの方が認識してくれるような試合を期待しています。

予想

直近のリーグ戦5試合を比較してみると、
 ・サウサンプトン:LLLLD
    ・リーズ:WLWLL

リーグ戦7連敗の後に(監督交代でチームを立て直そうとしてはいるが)強豪チェルシーに対して引き分けたサウサンプトン。
一方で強豪アーセナルに4失点、トップハーフ(順位表10以上)を争うライバルウルブズに惜敗のリーズ。
チームの波はどちらかと言えばサウサンプトンの方が優位かもしれない。
加えて言えば、サウサンプトンは南野が加入後3試合で2得点。殊更チェルシー相手の得点はチームメイトの信頼を勝ち得るには十分だっただろう。

Home/Aeayでのデータ比較を見ると、Homeリーズのホーム勝率は36%(平均勝点1.27)、サウサンプトンのAway勝率は27%(平均勝点1.17)とリーズが優勢。

得点と失点を比較すると、ホームでのリーズの平均得点1.45/平均得点1.45であるのに対し、サウサンプトンのアウェイでの平均得点1.27/失点2.18となっている。

これだけのデータで見るとどっちもどっち。もう少し深くデータを見てみよう。

今季のリーズがクリーンシート(無失点)率は27%。一方のサウサンプトンは18%。
すなはち、どちらのチームも失点する可能性のが極めて高い。
じゃあ相互に得点するとして、何点ずつ取れそうか。何点失点しそうか・・・。

お互いのHomeとAwayでの得点可能性は以下の通り。
表の見方としては0.5点以上の得点を得る可能性、1.5点以上〜、見て欲しい。
*データはhttps://footystats.org/england/leeds-united-fc-vs-southampton-fc-h2h-statsより。

どちらも1点以上取れそうな気がしない・・・。

では同様に失点の側面はどうだろうか。

どちらも1失点する可能性は極めて高い。
また2失点する可能性も同じ。
ただデータ的にみると2.5失点以上=3点失点する可能性はサウサンプトンが倍のポイントになっている。
とデータから見る限りの競馬的予想は以下(当たらないので競馬的に予想・・・)

本命 : ◎ 1-1 リーズ勝利
対抗 : ○2-1 リーズ勝利
穴     : ▲3-2 リーズ勝利

結局リーズ勝利しか予想しないわけですが。

双方怪我人が多いチーム事情だが、どちらかと言えばサウサンプトンの方が怪我人も多く苦しい状況。
サウサンプトンは主力級を5人(ウォーカー=ピータース、ディアロ、ウォルコット、スモールボーン)。更には右MFのアームストロングも怪我の影響で微妙な模様。
ただ、ハーゼンヒュットル監督はアームストロングはエランド・ロードに行けると見込んでいるらしい。
一方のリーズは前節から引き続き、フィリップス、コッホ、ロドリゴの3人。

これら怪我人の穴埋めをするという意味ではサウサンプトンは攻撃面で鍵となるウォルコット、オバフェミの穴をなんとか南野で埋めて体裁を整えた状況だが、その南野が好調なので恐らくこの試合でも得点をする可能性があるだろう。

これらを踏まえてマッチアップを考えると、この試合の観戦ポイントがかなり面白く思えてくる。

観戦ポイント

恐らくお互いが取るフォーメーションはリーズはいつも通りの4-1-4-1。
サウサンプトンは4-4-2。
そう考えると大事になるのはまず中盤。
リーズ目線で見ると、前節でアンカーポジションで評価を高めたシャケルトンがサウサンプトンの中盤を仕切るウォードプラウズの面倒を見ることになるだろう。
残る中盤のキーマンロメウは守備的強度が売りのタイプなので、クリヒとの激しい戦いが見られるだろう。
ここから中盤は前節ウルヴズ戦と同様に激しい中盤の奪い合いになるだろうが、そこで双方にとって鍵になるのがローバーツ。
恐らくロバーツは前節同様にスタメンに名を連ねると予想しているが、サウサンプトンの中盤2枚が上記の通りシャクルトン、クリヒとのマッチアップを強いられると考えると、リーズの中盤に1枚余る選手が出てきそうだ。
それがタイラー・ロバーツ。恐らく今節もスタメンに名を連ねると思う。
リーズは1トップにバンフォードを配置するが、サウサンプトンのCBは2人でバンフォードを気にかけるはず。サイドは双方基本的に1対1を中心軸に展開されると考えるとやはり中盤のロバーツ(が出場したとして)がフワッと浮くことになる。

このロバーツ、または彼の代わりに入る選手がどう動くのかがポイントになる。
サウサンプトンからすれば、この「なんとなく数勘定に合わない選手」を出さないようにするかが重要で、そのためにはイングスとレドモンドのFW二人のいずれかがしっかりと下がってアンカー・シャケルトンとのマッチアップを担当できるかが重要になりそう。
策士ハーゼンヒュットルだけにその辺りの対応は十分だろう。

2点目には、南野のマークにつくであろうエイリングは運動量もスタミナも十分。南野はこのマーキングを振り切流には、エイリングとシャクルトンの間にできるギャップをしっかり突いてセンターバックを引き出せるかもポイント。
マンマーキングでしつこく追い回すリーズのDFを考えると、南野は縦方向ではなくてカットインするダイアゴナルな動きをどれだけ繰り返して、そこにボールが出てくるかが鍵になるのではないか。

南野がリーズの代名詞にもなりつつあるマンマーキングにどう対処するのか。
非常に楽しみですし、もし南野が得点を決めればそれに対して嫌味を言ったり、悔しがることもないのは確かでしょう。
なので南野には1点決めてもらう前提で考えた予想でした。

Transfer Later Talk – Michael Cuisance

移籍にまつわるエトセトラ

サポートするチーム、選手の移籍というのはファンにとっても大きな関心事だ。
それによって泣くこともあれば喜ぶこともある。
そしてその移籍を振り返ったときに悔やむこともあれば胸を撫で下ろしながら(獲得できなくて)良かったと思うこともある。
移籍とは不思議なもの。移籍に関して思う色々なことを後日談として語ってみようと思います。

順調なキャリアップを重ねたフランスの神童

今回は現在バイエルン・ミュンヘン(以下バイエルン)からフランスのオリンピック・マルセイユ(以下マルセイユ)に期限付き移籍しているミケール・キュイザンについて。

キュイザンスは1999年8月16日にストラスブールで生を受けた左利きの選手。
ストラスブールユースでその才能を開花させると、2015年にナンシーのU17へ移籍し順調にU19までのステップを駆け上がり、年代別代表の中心選手となった。

2017年にナンシーからドイツのメンヘングラードバッハに移籍するとその才能は一気に花開き、2017/2018シーズンはリーグ戦24試合、2018/2019シーズンはリーグ戦11試合に出場し合計3アシストを記録した。
この活躍に目をつけたバイエルンが2019年シーズンに獲得、勝利が決定付いた後に投入される”育成投入”で10試合に出場し、最終節のヴォルフスブルグ戦でフル出場すると1得点1アシストを記録し、フランスのみならずバイエルンの今後を背負う有望選手として名を上げた。
バイエルンファンはチームを去ったチアゴの後継者と胸を踊らせた。

バイエルンでの1年間を経て、フランスの神童のキャリアアップは極めて順調だった。

転換点となったメディカル・チェック

順調に進んできたキュイザンスの次なる目標は定常的に試合に出続け、さらに自身の力を伸ばすことに置かれることとなる。
2020/2021シーズン前の移籍市場、その若き欧州のホープに白羽の矢を立てたのがリーズ・ユナイテッドだった。
買い戻し権利付与の移籍金24億という、21歳の選手にとっては多額の移籍金だったが、欧州のホープを獲得できるとなれば、リーズにとってはこの移籍金は予算内であったし、後々に移籍することになれば安い投資にもなり得たものだっただろう。
リーズファンである僕自身も中盤の補強が必要と感じていたリーズの中盤に、今後の成長が大いに期待できる選手の加入は万々歳であったし、それがフランスの神童であるとなれば尚更だった。
当時の現地リーズファンもこの補強を楽しみにしていたようだ。

しかし、加入も決定的と思われた2020年10月1日、リーズは「メディカル・チェックによりキュイザンスに怪我が発覚した。」と発表。移籍はご破算となり、キュイザンスはその日のうちにソープ・アーチ(リーズの練習場)から踵を返さざるを得なかった。

その翌週10月7日、バイエルンとマルセイユからキュイザンスが期限付き移籍でマルセイユに加入することが発表された。
その記者会見でキュイザンスは

メディカル的には何の問題もないし、マルセイユとの間では全てがうまくいった。僕はプレーする準備ができている。リーズでは僕の立場からは何の問題もなかったんだ。

今となってはリーズがメディカル・チェックで何を見つけたのか、は分からないし、キュイザンスがマルセイユでプレーしていることを考えると、その「見つけた怪我」というのがプレーに支障をきたすものであったのかも分からない。
ただ推測するのであれば、本サイトのStaffの項でも触れているように、リーズのコーチ陣はプロ選手経験こそ持たぬものの、臨床医学や運動生理学を本格的に学んだコーチであり、そのコーチやフィジオの判断として、「地獄のトレーニング」と称されるビエルサのトレーニングを乗り越えられないと判断したのかもしれない。

本当の背景事情ばかりは今後も明らかにされることはないだろうが、このメディカル・チェックを起因としたマルセイユ行きがキュイザンスにとって重いものになってしまっているのは残念だが事実だ。

負のスパイラルの始まり

マルセイユにおいてキュイザンスの獲得を要望したのは前監督のアンドレ・ヴィラス・ボアス(以下AVB)と言われている。
事実AVBはキュイザンスの加入後3試合目となる第10節ストラスブール戦の後に以下のように語ったとSport1で述べられている

私はキュイザンスに関しては非常に幸せに思っているし、彼は今後もストラスブール戦のようにプレイするだろうし、期限付き移籍終了時には買取オプションを行使できれば良いと思っている。

この時点ではキュイザンスがマルセイユで更に高みへ達することが期待されていた。

しかしこのコメントから僅か1ヶ月程度で状況は大きく変わることとなってしまった。
チャンピオンズリーグでは僅か1勝で早々にグループリーグ敗退となり、更にはリーグ戦でも12月以降1月末まで9戦3勝2分4敗。首位リヨンとの勝点差は14(消化試合数は2試合少なかった)と、チームの状況は散々な状況に陥った。

一方でキュイザンスに目を移すと、加入後初先発した10月17日ボルドー戦から12月12日のボルドー戦まで、自身が出場したリーグ戦6試合は勝利(1アシスト)していたのだから、本人からすればチームの状況が下降気味であっても自身の在り方についてはそれなりの自身はあったのではないかと推測できる。

しかしながらチームの状況にサポーターの怒りが爆発。
2021年1月30日に過激派サポーター(ウルトラス)がマルセイユの練習場に乱入。発煙筒や爆竹の投げ込みに加え、車両破壊や窃盗を行うという事件が起きた。
(*僕としてはこの行為には思う部分が多々あるので、それは別の機会に述べたいと思います。)

そしてこの事態から3日後の2月2日、キュイザンスの後ろ盾でもあったAVBが突然の辞任宣言
経営陣との補強施策の相違が原因とされ、同日中にフロント陣がAVBの指揮権を剥奪するというお家騒動にも飛び火。
長友、酒井が所属し日本からも注目を浴びるマルセイユが置かれた事情は、完全に負のスパイラルに陥ることとなる。

 

スケープ・ゴート

AVB退任後、チームはコーチであるナセル・ラルゲとフィリップ・アンジアニが共同で暫定指揮をとっている。
それでもチーム状況が好転することはなく、2月3日以降の3試合は2分1敗。
マルセイユにとっては格下と評するランス、ボルドーに引き分けた上に、ライバルと目するパリ・サンジェルマンにホームで0-2と惨敗したのだからもはや目も当てられない。

このような状況ではサポーターの苛立ちを抑えることは出来ないのはフロントもチームも明らかだ。
チームの不調をどう説明し、少しでもサポーターの温度感を下げるのか。
もはやチームの惨状から逃げるように退任をしていったAVBに責任を負わせるしかないが、AVBはもはやはるか彼方。
そのAVBがフロントと衝突したのが補強選手についてならば、逆手を取ってAVBが希望した選手を貶めるしかない。

未ケール・キュイザンスがスケープゴートになった。
加入後1アシストに留まる若きフランスの神童は一転袋叩きに合うこととなる。

2021年2月14日のボルドー戦をスコアレスドローで引き分けた2日後の16日、ナセル・ラルゲがキュイザンスについて以下のようにコメントしたと報じられた

力強さも技術力もある。だが質というものはチームに取って有効なものであるべきだ。もしも彼がそれができるのであれば、彼はチームとって欠かせない存在になるだろう。例えて言うなれば、(左サイドバックの)アマヴィのように彼が勇敢であったならば。

攻撃的な中盤の役割を担うべき選手が、サイドバックの選手と比較され、更にはそれを公言されてしまうこと自体がナンセンスなことは常識的なサッカーファンであれば即座に理解してもらえると思う。
だが、チームを率いるコーチにさえここまで言わせてしまうチーム状況であるということも透けて見える。
ちなみにこの試合を63’で退いたキュイザンスに関して、フランスのL’equipe紙では10点満点中の2点がつけられたという。

キュイザンスはただ単なるバイエルンからやってきた将来有望株ではない。
フランスの期待を一身に受ける”フランスの神童”だ。
だからこそ、サポーターからもメディアからも厳しい目で晒されることは本人も承知の上であろう。だからこそ期待されたパフォーマンスを出せず、チームも下降線を辿っているからと言って、それを若い選手の双肩に担がせることは果たして正しい判断なのだろうか。
そんなことを僕が言ってもキュイザンスの立場が厳しくなっていることには変わりがない。

 

希望

一方で先に引用したラルゲのコメントを報じた90minuitesは記事をこう結んでいる。

 

そのミッドフィルダーはマルセイユのジャージを着たリーグアンの6試合で6つの勝利となっている。 それ以来、彼はスタメンから外れている。そしてマルセイユが出した結果はことさら悪くなっている。
単純に考えるなら、キュイザンスをキックオフ時点でいない場合、今シーズンの一試合勝点は0.3ポイントしか向上していない。キュイザンスがいた場合、1試合平均は2.2ポイントだ。
これは偶然なのだろうか?

厳しい状況は踏まえながらも、結果とデータが語る部分も多い。それを当該記事はきっちりと伝えている。

移籍という事象は僕らファンを一喜一憂させるし、その後は結果を求めてしまうのも事実である。
安くはない移籍金を掛けて我らがチームが獲得した選手なのだから、活躍してくれなければ批判の目はそこに向く、というのもサポーター目線では当然なのかもしれない。

ただ、間違いなく言えることチームというのは生き物であり、好調も不調も波があって然るべきだ。移籍というのは、その生物を構成する骨なり筋肉に変更を与えることであり、それを断行するのであればその要素がプラスにもマイナスにもなり得る。
冷静に考えれば誰でも理解できるであろうことさえも忘れさせ、誰かのせいにさせてしまう。
これもまたフットボール中毒の悪しきポイントなのかもしれない。

ただ、そんな中毒の中でもしっかりと事実と状況を見極め、若い選手の背中を押すような環境があっても良いのではないか。
キュイザンスという、僕にとっては不運にもリーズを通り過ぎていった選手をいつまでも忘れられないおっさんも気持ち悪い話であるが、そうやって移籍市場を見ていくのもまた一つの楽しみ方であり、深く底のないFootballic沼の楽しみ方なのではないか。

期待する選手の先に希望を見出せる限り、その選手を追いかけることで幅広くフットボールを知り、そしてまた別の悩みや喜び、希望を抱える日々こそが僕らの楽しみなのだろう。

長々とこの投稿を書き連ねながら横目で眺めていたDazn。
中継されていたナントvsマルセイユは1-1のドローに終わった。
マルセイユの負のスパイラルの終わりは見えないようだ。
キュイザンスはベンチに座ったままだった。

Marcelo Bielsa Post Match Press Conference -Wolverhampton vs Leeds United

運が結果における要素にならないようにそれを乗り越えるべき策がある

前節アーセナル戦とは全く違う形での敗戦となり連敗を喫したリーズ・ユナイテッド。
ファンとしては”不運”という言葉で片付けたくなるような失点について、マルセロ・ビエルサはその学者然とした回答で一刀両断にした。
Leeds Liveのプレスカンファレンス記事を拙訳)

引き分けにできなかったということからも、どれだけ不運だったと感じていますか?

もしもあなたが試合を振り返ったなら、我々が(試合の)大半を支配していた(とわかるだろう)。非常に僅かな時間だけ我々が試合を支配できなかった。

チャンスのシーンを見てみれば、我々は彼らが作った2倍のチャンスを作った。我々はよく守ったし、よく攻めた、つまりはこれが私が今している(今日の)試合の分析だ。

分析についてはよくわかりました。しかし、今日はあなた方(リーズ)の日ではなかったし、神が味方してくれなかったと感じるところもあって然るべきだったのではないですか?そう感じませんか?

我々は結果と運を紐付けないようにしている。私には運が結果における要素にならないようにそれを乗り越えるべき策がある。しかしはっきりしているのは、今日の結果は効率性によるものであると定義されるべきということだ。

もしも君が運と君が身を捧げたことをついて語るとするならば、時にはそれは一般的には受け入れられないこともある。

今夜のジェイミー・シャクルトンについて。彼が守備陣の前でプレーしたことについてどのように感じていますか?

彼は守備的ミッドフィルダーのように守った。しかし彼はナンバーエイト(攻撃的ミッドフィルダー)のように攻撃もした。彼とクリヒの間で、二人は守備的ミッドフィルダーとナンバーエイトの役割を分担していた。

(相手の)二人の守備的ミッドフィルダーとストライカーの間(のポジション)においては、攻撃的なミッドフィルダーという(役割は)ない(に等しい)。これは彼らにとってこなすには厳しい要求ではなかったということだ。

あなたはリアム・クーパーがプレミア・リーグに適応していることを評価していますか?

私の視点からすると、(彼には)不便はない。彼は非常に上手く守れる選手だ。彼は上手く対処しているし、彼は自分の背後もしっかりと守っている。
彼は空中戦でも輝いているし、ボールに対しても非常に良く(守備)できている。これらの面をほとんどのゲームで定常的に表現していると言える。

負けた試合にも関わらず、今夜のアウェイでの試合はかなりポジティブに感じるものでしたか?

君の言ったことに賛成だな。

Match Review 2021.2.19 Wolverhampton vs Leeds United

運か効率か

「我々は結果と運を紐付けないようにしている。私には運を結果における要素にならないように、それを越えるための考えがある。しかしはっきりしているのは、今日の結果は効率性によるものであると定義されるということだ。」
この試合の後の記者会見でビエルサはこのように語った。

ウルブズのアダマ・トラオレが左サイドで縦パスを受けるととそのまま対峙したエイリングを振り切ってカットイン。
カバーリングに向かったストライクを持ち前のスピードで交わして右足から力強く弾き出されたボールはそのままクロスバーに跳ね返り、反応後着地したキーパーメリエの背中にあたりゴールへ・・・(その刹那思わず「嗚呼、楢崎正剛!」と呟いてしまった。この意味はFC東京ファンの方なら記憶を呼び起こすと理解してもらえるかもしれない。)。

このオウンゴールのシーンを「不運」と片付けるのは、試合の大半を支配しながらも敗戦した我々ファンの気持ちを慰めるには最も適当な方法である。

しかし、ビエルサが語るように、運で片付けるということは効率性が悪かった自軍の結果に目を瞑ることにもなる。
簡単にトラオレを振り向かせてしまったこと。それにより右サイドのスペースをストライクがカバーしに出ざるを得なかったこと。そして結果トラオレがドリブルでカットインするだけのスペースを開けてしまい、右足を振り抜かせたこと。
決めきるべきところで決められなかったが故に、効率的に得点を奪ったウルヴズに軍配が上がった。

中盤の封鎖とn対nの狭間に

戦前の予想では中盤で激しいマッチアップが繰り広げられる分、双方のサイドが鍵になると予想した。
ウルヴズの注目選手として挙げたモウチーニョとネベスだったが、その二人をケアするためにアンカーポジションに配置されたリーズのシャクルトンが望外の活躍を見せ、二人にボールが入るところをことごとく潰しに行き、試合の局面を動かすようなプレーをほとんどさせることがなかった。
この意味からも、僕個人だけでなく、各種識者や海外メディアで予想された以上に、正にピッチの真ん中は「封鎖」された状況となり、ウルヴズのパス主体は3バックから両ワイドのセメド、カストロを経由するケースが多く、真ん中を使えてもシンプルに外に叩くという動きが大半となった。

3-4-3のウルヴズと4-1-4-1のリーズ、双方の戦術は拮抗するには噛み合わせが悪いようにも見えるが、中盤を共に潰しあったことでサイドでの2対2の構図がくっくりと浮かび上がり非常に迫力のある攻防戦を見ることができた。
例えば、ウルブズが右ワイドMFのセメドと3トップ右のネトで縦へ仕掛けようとする攻撃を、リーズはハリソンとダラスで対応し、そのバトルにウルヴズはFWのウィリアン・ジョゼ、リーズはCBのクーパーやクリヒが参加するといった数的同位でのバトルがそこかしこで見られた。

このような中で殊更ピッチ上での違いを植え付けるのは、やはりこの持つ力。
圧倒的なフィジカル能力を誇るアダマ・トラオレの存在感はウルヴズ左サイドで圧倒的だった。
冒頭にも記したように、得点シーンにおいても、左CBサイスからの縦パスがトラオレの足元に入った瞬間を狙ってリーズ右サイドバックのエイリングが一気に寄せたが、しっかりと体でエイリングをブロックしターンと一瞬の爆発力で抜き去ってシュートまで持ち込んだシーンは圧巻だった。
むしろリーズファン目線で言えば、あそこで一気に寄せてしまった守備をミスとして論うこともできなくはない。
しかし、そうなったとしても一旦終戦した中央の戦場の裏側にそれなりのスペースが空いていたことを考えると、遅らせたからといって効果的にウルヴズの攻撃を止められたとは限らない。

散々繰り返されたn対nの戦いがこの一瞬だけ1対1に陥れることができたウルヴズの攻撃が「効率的」なゴールを生んだ端緒であることに間違いはない。

ポジティブな敗戦

予想された通りに中盤にロバーツを配することで、リーズは中盤で時間を作ることができるようになっていた。
特に前半には、先に述べたようにモウチーニョとネベスというウルヴズのキーマン2人をシャケルトンが潰しに行き、そのカバーをクリヒが行うことで、ロバーツはトップ下のようなポジションでプレーすることができ、ウルヴズ中盤とDFラインの間を自由に動き回った。
これにより両サイドのラフィーニャとハリソンも上下動がしやすくなっただけでなく、サイドバックの上がりを待つ余裕も生まれていた。
ただ、後半になり左サイドのハリソンがセメドとネトの対応で疲弊するとロバーツも左サイドに流れることが多くなってしまい、リーズの攻撃がラフィーニャの右かロングボールでのDF裏狙いの2パターンに落ち込んでしまったことで、ロバーツの存在感も薄れてしまった。
ただし、前節アーセナル戦での途中出場から流れを変えることができたことで掴んだこのスタメンもポジティブに受け入れられたと思う。
あとはもう少しバンフォードに近い位置でプレーできれば、チームとしての得点機会も演出できるようになるだろう。

そしてもう一つは昨シーズンからビエルサの頭を悩ませてきたフィリップス欠場時の穴埋めに新たなオプションが加わったことだろう。
小兵のシャケルトンにフィリップスの代役が務まるのか、と試合開始時は後ろ向きに考えたが、ハイボールはCB2枚が尽く跳ね返し、シャケルトンは猛然とウルヴズ中盤2枚に襲いかかり、そのこぼれ球回収役をクリヒが担うことで、攻守のスイッチを切り替えていた。
これまでは中盤での空中戦対策も考えストライクを起用することが多かったビエルサだが、地上戦であればシャケルトンが十分にプレミアでもやれることを前節で本人が示したことで、ビエルサの頭の中にあったであろうオプションを具現化する機会を得られたのがこの試合だったのだろう。

この試合のベンチには怪我が重なるジョレンテも戻り、今後クーパーの相棒として確立されてくれば、アンカーオプションが増えたことも戦術の多様性に繋がってくる。
フィリップスが戻れればシャケルトンを起用することで怪我を抱えたままのクリヒを休ませることもできる。
怪我人が重なる苦しい状況をユース上がりの若手が一変させる可能性が見えたという意味でも、この試合の意義は大きかった。
スタンドに姿が見えたサウスゲートの目にもしっかりと印象は残したのではないか。

惜しむらくはセットプレーから再三迎えた決定機に決め切ることができなかった点と、英語でゴールポストを意味する「woodwork」が”work”してしまい、2試合連続でメリエに試練を与えたことか。

次節サウサンプトン戦は嫌でも日本で注目される。
そこでこの連敗を止めたい。

1

0

得点

オウンゴール(64′)

得点

In/OutPos.WolverhamptonLeeds UnitedPos.In/Out
GKルイ・パトリシオイラン・メリエGK
CBレアンデル・デンドンカースチュアート・ダラスLB
CBコナー・コーディーリアム・クーパーCB
CBロマン・サイスパスカル・ストライクCB
Out(60)LMヨナタン・カストロルーク・エイリングRB
CMルベン・ネベスジェイミー・シャクルトンDMOut(66')
CMジョアン・モウチーニョジャック・ハリソンLMOut(81')
RMネルソン・セメドマテウシュ・クリヒCMOut(81')
LWペドロ・ネトタイラー・ロバーツCM
Out(87')CFWウィリアン・ジョゼラフィーニャRM
RWアダマ・トラオレパトリック・バンフォードCF
SubSub
GKジョン・ラディキコ・カシージャGK
In(82')DFライアン・エイト・ヌーリナイアル・ハギンスDF
In(60')
Out(82')
DFマルサルディエゴ・ジョレンテDF
DFキ=ヤナ・フーフェルエズジャン・アリオスキDFIn(81')
DFマックス・キルマンジャック・ジェンキンスMF
MFモーガン・ギブス・ホワイトエウデル・コスタMFIn(81')
MFヴィトール・フェレイラパブロ・エルナンデスMFIn(66')
MFオーウェン・オタソウィージョー・ゲルハルトFW
FWファビオ・シウバ

Marcelo Bielsa Pre Match Press Conference -Wolverhampton vs Leeds

ウルヴズ戦にはフィリップスとロドリゴは不出場

2月20日のウルヴズ戦前のプレスカンファレンスでは怪我人の状況についての質問が大半を占めた。
ビエルサ監督は「チームのメンバー起用に関する予測については回答したくない」としながらも、怪我人を抱えるチームはいくつかのオプションを持ちながら進んでいくしかない、という決然とした態度を表明しウルヴズ戦に臨むチームを表した。
Leeds Liveのプレスカンファレンス記事を拙訳)

怪我の話題から始めてもいいですか?
カルヴィン・フリップス、ロドリゴ、ジョレンテ、クリヒ、彼らは今回のウルヴズとの試合に向けてどの程度回復していますか?また、こういった怪我の問題を抱えているとき、チーム全体のバランスを正すことはどれほど難しいですか?

クリヒとジョレンテは出場が可能だ。フィリップスとロドリゴはそうではない。すべてのチームが怪我の問題を抱えている。他チームよりも少々(怪我人が)多い。時々、同じ時期に多くの怪我人を抱えているチームはある。それらは我々が分かっていることであり、それらの解決策は見つけなければならない。

 

ウルヴズはその最たる例でしょうか?彼らはキープレーヤーであるラウル・ヒメネスなしで対戦せざるを得ません。今シーズン、ウルヴズについてどう理解をしていて、1つ上の順位に位置しているリーズについてどのように言及されますか?

 

チームを作るということはたった1年でする仕事ではありません。ウォルヴァーハンプトンのセンターフォワード(ヒメネス)の場合、彼の代わりとして彼らは良い経歴の選手を連れてきた。我々も何人かの選手と今年の初めに契約をした。我々はこれに大きな努力費やしてきた。我々は、メリエ、ハリソン、コスタを継続し、コッホ、ジョレンテ、ラフィーニャ、ロドリゴを連れてくるために多大な努力を払った。

(新たな選手を)チームに適応させることは難しく複雑な仕事だ。プレミアリーグの最初の年に完全なチームを持つことは非常に困難だと思う。そのため、何人かの選手の才能を伸ばしていくということは非常に重要になってくる。パスカル(ストライク)、シャクルトンの場合、良い右バック、良いナンバー8、良いセンターバック、または良いセンターミッドを探すすのであれば(良いオプションになる)。これらのポジションで優秀な選手を獲得するのにどれだけの費用がかかるかについて言及する必要があるだろう。例えば、リーズはベン・ホワイトを3000万ポンドで移籍させたいと考えていましたが、実現できなかった。我々は慎重にチームを進化させようとしなければならない。

 

イラン・メリエは、日曜日のアーセナル戦後、少々批判を受けました。彼は今シーズンも素晴らしい時間を過ごしてきました。プレミアリーグでプレーする若いゴールキーパーとしていくつかの間違いを犯すことは避けられませんか?それはすべて彼自身の学びの一部であると思いますか?

間違いを犯さないゴールキーパーはいない。ゴールキーパーは、自分が犯した過ちを乗り越えたときに自分自身を強化することができる。過去にやってしまったことへの批評は忘れて、現在に固執することが普通のことだろう。この件については私よりもリバプールのマネージャーが良い回答を持っているかもしれない。

 

明日のカルヴィンの不在にあたり、(引き続き)パスカル・ストライクに固執し(て起用)ますか?それともチーム内にその役割に適した他の選手がいると思いますか?

パスカルはオプションの一人ではあるが、他の考え方もある。しかし、しばらくの間、私はチームの予測については伝えたくないと思っている。

 

イアン・ポベダの(怪我の)状況に関する最新情報はありますか?

彼は怪我から回復しており、彼の復帰はこの怪我の回復状況に左右されるだろう。

Match Prediction / Premier League Wolves vs Leeds United

Footballic Match Preview

Premier League 第25節 ウォルバーハンプトン vs リーズユナイテッド

リーズ贔屓の当サイトが、なるべく平たく試合を予想していきます。
データ、ここ最近の両チームの調子などを見ながら、当日の予想を展開します。

振り返り

前回の両者対戦は20/21シーズン第5節、10月20日のエランドロードでの対戦。
リーズはボール支配率68%、シュート本数14vs7、パス本数883本(成功率83%)と圧倒的に試合を支配しながらも、ヒメネスが放ったミドルシュートをフィリップスがクリアミスする形で失点し、そのまま0-1で敗戦した。

双方の順位は前節終了時点でリーズが11位(23試合/勝点32)、ウルヴズが12位(24試合/勝点30)と、双方にとってはリーグ終盤戦の入り口に当たる今節で共に中位からトップハーフ入りの足場を築きたい試合。
過去の11度のHead to Headでの対戦では6勝1分4敗でウルヴズがリードをしている。

トップから激しいプレスでショートカウンターを狙うリーズと、守備陣系をしっかりと整えてカウンターを狙うヌーノ・エスピリト・サント監督のウルヴズ。
曲者同士の拮抗した戦いが予想される。

予想

直近のリーグ戦5試合を比較してみると、
 ・ウルヴズ:DLLWD
    ・リーズ:WLWWL
とリーズが調子良く見える。

しかし、ウルヴズがあげた勝点3はリーズが前節惨敗したアーセナルに2-1で勝利していることからも、アーセナルを定規にして考えるとその守備力の強さは推して図るべきだ。

Home/Aeayでのデータ比較を見ると、Homeのウルヴズのホーム勝率は33%(平均勝点2.33)、リーズのAway勝率は50%(平均勝点4.17)とリーズが優勢。
得点と失点を比較してみるとウルヴズはホームでの平均得点1.17/平均得点1.17であるのに対し、リーズのアウェイでの平均得点4.17/失点2.0となっている。

怪我人の観点を見てみると、ウルヴズはヒメネスが欠場の見込み。
しかしルベン・ネヴェスやジョアン・モウチーニョの中盤組がが持ち前の攻撃力で直近3試合でゴールしていることからも、持ち前のカウンターの切れ味は鈍っているとは言えない。

リーズはクリヒ、フィリップスが欠場見込み。無理を押してクリヒの出場はあるかもしれないが、ロドリゴが戦列復帰を見込めるとなると、無理使いはしてこないかもしれない。
その場合前節同様に右サイドバックにシャクルトンを使い、中盤の底にストライク、中盤にダラスを入れて、中盤のもう1枚をロドリゴかロバーツで組んでくるのではないか。

この辺りの材料を踏まえて予想すると・・・

      2-1 でリーズの勝利!
と予想。

ロドリゴまたはロバーツの攻撃力をピッチ真ん中で活かせれば、ラフィーニャとハリソンのサイドを活かせることにもつながるので、攻撃力としてはUpが望まれる。
守備面ではモウチーニョとネベスの対応をダラスとストライクで分断できれば、試合は優位に進めることができるだろうが、あまりにも前に掛かりすぎるとネベスの正確なパスで一気に形勢を逆転される可能性が高い。

観戦ポイント

ほとんど前項で触れてしまったが、ウルヴズの注目ポイントはモウチーニョとネベス。特にカウンターに切り替わった時の両者のプレーの正確性には要注目。
カストロ、セメドの両ワイドも攻守にハードワークができるので3-4-3システムの中盤4枚の働きが注目ポイント。

リーズはスタメンによって取り得る策が変わってくるが、ロバーツかロドリゴが入ってくればスピーディーな攻撃を期待できる。
守備面においてのバランスをストライクと誰で取るのか、によっては上手く相手を嵌めてボールを奪い、ウルヴズ両ウィングの後ろのスペースを使ってセンターバックを引き摺り出してゴールに迫る機会も増えよう。
なのでリーズは中盤の構成をどう図ってくるのかが注目ポイント。

共に中盤が注目ポイントだけにそれぞれのマッチアップでどのようなことが起こるのか、その中盤をどのように掻い潜って双方のゴールに近づくのか。
そんな視点でみると、タイプの違う双方の試合がさらに面白く思えるのではないか。

Match Review 2021.2.14 Arsenal vs Leeds United

2つの魅力2つの試合

前半というよりも50分までは完全にアーセナルが試合を支配したゲームだった。
50分以降は0-4というビハインドにもめげずにリーズが反撃し、試合の面白さを取り戻した。
この試合を良い意味で捉えれば両軍合わせて6点が入る、中立の立場のサッカーファンからすると非常にダイナミックな試合だっただろう。
一方で違う見方、否定的な見方をすれば、個の力でリーズと圧倒するアーセナルがリーズの組織力に押されてしまい完勝できる試合を苦しい試合にしてしまった、とも言えるのではないか。
ただ、個性豊かなアーセナルと組織力と規律のリーズという異質な魅力を持ったチーム同士のガチンコでのぶつかり合いが前後半で全く違った試合を見せてくれた、という非常にダイナミックな試合だった。

 

アーセナルらしい個の融合

どのポジションを見ても高い技術力とスピードを持ち合わせた選手がいる、それがアーセナルの印象だ。
その個の魅力に組織力が加わると、手に負えないほどの力を発揮し、相手を圧倒する攻撃力となり見るものを魅了する。これは過去長きに渡ってアーセナルがアーセナルたる所以でもある。
僕自身はアーセナルの試合を全て見ているわけではないが、古くはアーセン・ベンゲルが指揮した時代からシャンパン・サッカー〜ティキ・タカなどと言われる、いわゆるシンプルかつスピーディーなパス回しで相手を翻弄し攻撃するということがチームの文化として培われてきたのが特徴になっていると認識している。
この日のアーセナルは、立ち上がりからまさにこのパスサッカーでリーズを翻弄した。

リーズの戦術の特徴は、センターフォワードがファーストDFとして相手GKとDFのビルドアップのパスコースを消しながら守備のスイッチを入れ、それに連動して左右のウィングやセントラルMFが相手中盤やサイドの選手にマンツーマンでマークを行うというマンツーマンディフェンスが象徴的な言葉となっている。

アーセナルはこのリーズが採る守備戦術にしっかり対応し、ビルドアップから高い技術力で攻撃につなげ、マンツーマンで引き出されたリーズ守備陣が空けたスペースを活用してゴールを陥れた。

例えばアーセナルのビルドアップ時に、レノがダヴィド・ルイス、ベジェリンの両者からビルドアップをしようとすれば、そのラインをリーズのバンフォードが消しに行く。
そうなった場合にガブリエルがレノに寄ってパスコースを作るのだが、ガブリエウが動いた後のスペースにセバージョスが入ってボールを受けて素早くジャカや、または幅を取ってポジショニングしたスミス=ロウに繋ぐ、というシーンが何度も見られた。

これらに対応するためにセバージョスへのパスをリーズはダラスとラフィーニャ(またはクリヒとハリソンなど)が抑えに行くと、シンプルにルイスやガブリエウに下げられ、2人のMFが食いついた分空いたスペースに中長距離のパスを出され、そのケアにサイドバックや守備的MFが引き摺り出される。
このアーセナルのシンプルかつ素早い連動がリーズのスペースマネージメントを見事なまでに瓦解させた。
このような動き自体は、選手個々が持つ技術力が高くなければできない芸当であり、長年リーズを応援する身からしても、高速パスから高速FWが最終ラインを切り裂くという「これぞアーセナル!」という攻撃には感嘆の息を漏らすより仕方がなかった。

 

課題と収穫と

本来は自分達が相手に対してやりたいことを出だしからやられて面食らったのがこの日のリーズだったと言えるだろう。
先に述べたようにアーセナルが見せたビルドアップからの形を、オーバメヤン含めたアーセナル攻撃陣に封じられた上に、自分達の守備も後追いになってしまった。
この結果がオーバメヤンのPKでの得点につながるメリエの反則にも繋がったわけで、マンチェスターシティとリバプール戦を想起させるような素早い出足の最前線からの守備がリーズのゲームプランを根底から覆すことになっていった。

リーズにとってはこのような押し込まれる状況が続いている中で、個の力で局面を打開できるだけのスキルセットを持った選手がピッチにいなかったことは一つの課題だっただろう。
リーズの中ではラフィーニャ、ジャック・ハリソンの両ワイドがその力を持っているが、サイドでのこの打開はリーズに限らずどうしても独力にならざるを得ないため、孤立してしまっていた。
無論クリヒやダラスという中盤の選手もプレミアで十分にその力量を発揮しているが、技術力で相手を凌駕するというよりもハードワークで相手中盤からボールを奪ってゴール前に出ていく推進力を武器とするタイプのため、ラフィーニャやハリソンと連携して相手DFを崩しにかかるタイプではない。
そのため、どうしても自分達のプレスがはまらなくなると、両ワイドが孤立してしまいサイドバックとのパス交換で相手DFのズレを探すしか無くなってしまうという、負のスパイラルに巻き込まれてしまっていた。

その課題に対する解決策として一つの道筋を見出したのが、クリヒに代わって後半から入ったタイラー・ロバーツだろう。
若きウェールズ代表は良くも悪くも多くの外的評価を付されている。ストライカーという人も言えば、ドリブラー、トップ下などなど、彼のプレーを見た人によってポジション適正がバラバラという選手だ。
ただ、これも裏を返せば攻撃に関してはシュートも撃てる、パスも出せる、ドリブルもできるという万能選手でもある。
これは先に述べたような中盤で局面を変えるに当たっての適任の選手とも言える。
この交代策はばっちりと当たり、ロバーツがボールを受けてドリブルで一人交わして相手DFにズレを生じさせるとそこにラフィーニャが入り込んだり、ハリソンに代わったコスタが入り込んだりと、中盤とワイドが連携して相互にスペースに入り込んでいくリーズらしい攻撃を構成することができるようになった。
この後半の流れは今後の大きなオプションになる。
また冬の移籍市場で移籍リクエストを出していたと言われるロバーツにとっても、流れを変えられたこのアーセナル戦での出来はビエルサに対する大きなアピールにもなるはずで、今後の出場機会増加にもつながるだろう。

そしてもう一つ見えた光明は、疲れの見えたアリオスキに代えてハギンスが右サイドバックに入ったことで(左にはダラス)、右サイドバックで出場していたシャクルトンが中盤に移行したことだ。
本来は中盤を専門とするシャクルトンは、先の通りロバーツが入ったことで上手くアーセナルのダブルボランチとセンターバックの間に位置を取ったり、2センターバックのギャップでボールを受けたりと、攻撃におけるポテンシャルの一端を垣間見せた。

この二人の選手(ハギンスも含めれば3人)の及第点を与えるには十分な動きは、ラフィーニャやコスタといったサイドの選手を活かす大きな歯車になっていた。
この試合のように当初のゲームプランが狂って収まりが悪い場合に、取り得るオプションとして認識できたことは、この敗戦における大きな収穫だっただろう。

 

4

2

得点

オーバメヤン(13′)
オーバメヤン(41′)
ベジェリン(45′)
オーバメヤン(47′)

得点

ストライク(58′)
コスタ(69′)

In/OutPos.ArsenalLeeds UnitedPos.In/Out
GKベルント・レノイラン・メリエGK
LBセドリック・ソアレスエズジャン・アリオスキLBOut(53')
CBガブリエウリアム・クーパーCB
CBダヴィド・ルイスルーク・エイリングCB
RBエクトル・ベジェリンジェイミー・シャクルトンRB
DMグラニト・ジャカパスカル・ストライクDM
Out(89')DMダニ・セバージョススチュアート・ダラスCM
LMエミール・スミス=ロウマテウシュ・クリヒCMOut(46’)
Out(78')AMマルティン・ウーデゴールジャック・ハリソンLMOut(46')
RMブカヨ・サカラフィーニャRM
Out(62')CFピエール・エメリク・オーバメヤンパトリック・バンフォードCF
SubSub
GKマシュー・ライアンキコ・カシージャGK
In(89')DFロブ・ホールディングスナイアル・ハギンスDFOut(53')
DFカラム・チェンバースチャーリー・クレスウェルDF
DFパブロ・マリリーフ・デイビスDF
Out(78')MFモハメド・エルネニージャック・ジェンキンスMF
In(62')MFウィリアンエウデル・コスタMF
FWアレクサンドル・ラカゼットパブロ・エルナンデスMFIn(46')
FWニコラス・ぺぺジョー・ゲルハルトFW
FWガブリエル・マルティネスタイラー・ロバーツFWIn(46')