Marcelo Bielsa Post Match Press Conference – West Ham United vs Leeds United

60分は良かったが、30分が悪かった

先制されて厳しい試合となったウェストハム戦。後半に渡って総攻撃を仕掛けたが、前半に悪い時間帯を続けてしまったことを振り返ったビエルサの試合後記者会見。
いつも通りチームの悪い部分を示すのではなく、試合全体をどう捉えるのかという授業のような記者会見。
悪かった30分の間にウェストハム攻撃陣に自由を与えてしまったことが敗因とコメントしました。
Leeds Liveのプレスカンファレンス記事を拙訳)

ウェストハムが良いサッカーをしたというわけではなく、リーズが勝利をプレゼントしてしまったということについてどのように思われますか?

前半最初の15分間は我々が試合をしてきた中で最も良いプレーをしたと思う。よく守りよく攻めた。
前半の最後の30分、上手く守る事ができず、守備をしていない時には上手く攻めることができなかった。
後半は全体に渡ってよく攻め、よく守った。
前半と後半に渡って60分間は良いサッカーをしたと思う。彼ら(ウェストハム)が攻めてきた30分の間、彼らは危険なシーンを作り上げなんとか2得点した。
あなたが前後半を比較するのであれば、彼らの30分間に比べて我々は60分間を支配した。我々は上手く守るべきチームだ。なぜならば我々はバランス、平衡感覚を失ったのだから。

つまりは、監督にとっては何かを得られる価値のある試合だったという事でしょうか?

今、私が説明した中に答えがある。後半我々は試合を支配していたし、前半開始時点で得点をするべきだった。
30分後、ウェストハムを無力化することは難しかったが、全般的に試合を見ればなんらかのものを得られるべき試合だったと思う。

今日の試合にパブロ・エルナンデス、パスカル・ストライク、キコ・カシージャを怪我で加える事ができなかったことについて説明いただけますか?

エルナンデスは筋肉にちょっとした問題があった。ストライクはさしたる問題ではない怪我だが、この試合には出られなかった。カシージャについては、私がカプリーレをベンチに決めたからであって、怪我ではない。

最初の15分後にチームが守備を怠ったことについて説明してください。何をしなかったのでしょうか?

(ウェストハムの)フォワードを捉まえる事ができなかった。彼らの元にきっちりと詰める事ができなかった。
彼らのアタッカーはスペースではなく足元でボールを受ける。我々は彼らを捉まえようとはしていた。
試合の中で1時間はきちんと捉まえられていたが、最初の30分は詰めきれなかった。ターンさせないように出来なかったんだ。
彼らを一旦(ゴール方向に)振り向かせてしまうと、コンビネーションを使って攻められてしまい、それを防ぐ事ができなかった。
試合を振り返ってみると、ウェストハムの攻撃陣は一旦試合の調子に乗らせてしまうと、非常に強度が高く攻撃的で我々のバランスを崩すチームだった。
ただ、その30分間のような難しい時間を過ごさなかった60分間があっただけに、あなたに説得力のある答えをする事ができない。
なぜならば、我々がファイナルサードでボールを失えばその分守備は楽になる。
我々が相手のファイナルサードに入る前にボールを失えば、我々のバランスは崩れてしまう。
私が説明したことは、60分間のうちでは解決されていただろう。

スターティングメンバーに代えて投入した選手に何を期待していましたか?

ダラスをクリヒに代えて中盤に、アリオスキをダラスに代えて左サイドバックに入れた。ハリソンはエウデル(コスタ)、ロドリゴはタイラー・ロバーツと代えた。
彼らは同様の個性を持った選手だ。それぞれの個性を持った。アリオスキが左サイドにいることで外で起点を作る事ができるようになり、ペナルティエリアにクロスを入れられるようになった。タイラーは悪くなかった。彼のいい時のようにプレーできていたと思う。
タイラーとは違った何かをロドリゴからは30分で引き出せると思う。

ダラスを中盤に入れたのは、彼には試合に必要だった強度があるからで、それがこの試合に必要だった。ソーチェクとライスに対して試合全体を通してチャレンジし、挑み続けることは難しい。
相手に対してチームとしての質を保つためには、ロドリゴ、タイラー、ダラス、クリヒの間で時間を配分する事が必要だったと考えている。

Match Review 2021.3.9 West Ham United vs Leeds United

似た者同士の異質なサッカー

一部ネット上では、ビエルサもモイーズも一流の監督として評価され難い。
それはどちらの監督もいわゆる一流と言われるチームで結果を伴っていないからだろう。
モイーズはマンチェスターユナイテッドで、ビエルサはアルゼンチン代表で。

とはいえ、両者ともに1.5流〜2流ぐらいのチームを率いさせると、世の中をびっくりさせるような結果を出す。
恐らくは両者共にチームに求める規律(ディシプリン)が非常に強く、その強度がチームから自由度を与えられるようなスーパースターには耐え難いものであり、全体的なチームのバランスが崩れてしまうのではないかと思われる。

そう考えると、二人の監督は非常に似たタイプであり、その似たタイプが全く違ったサッカーを志向するもんだなぁ。
90分を通して試合を観ながらそんなことを考えていた。

役割分担が明確なハマーズ

当たらない試合予想ではリーズが先制点を取られないこと、それからハマーズのダブルボランチに注目と述べた。
ある意味では展開と注目ポイントについては当たっていたのではないかと、結果が当たってもいないのに自画自賛するのだけど、ハマーズの守備戦術はなるほど上位には破られるが下位には破るには難しい守備だな、と感じた試合だった。

ウェストハムは守備時はDF4枚+中盤2枚がしっかりとブロックを作って相手の攻撃を遅れさせ、そこに遅れてトップ3枚のうち2枚が下がって最大8枚+GK1枚で守るのが基本。
試合を通して選手交代を行なってもこの基本が変わることはなかった。

DF4枚は横の並びを崩すことなくペナルティエリアの幅で守備をし、サイドについてはワイドのMFが下がりながらスペースを埋めて、中盤2枚と連携する形での守備は、コンパクトに陣形を形作るというよりは、いかにゴール前を固めるかという思想からによるもので、非常に強固な守備網を簡単に構築できる。
その一方できちんと勝点を重ねていくためには、ボールを奪われた際の帰陣の速さと、高い位置からプレスをかけて最悪でも中盤の底でボールを奪い切るという、ハイプレスな戦術も求められる。
ウェストハムというチームは、このハイプレスの部分でも非常に規律の取れたチームだ。

攻撃ではボールを奪うと前に残った3人に早く繋げて、その3人の個人力でゴール前まで運んでフィニッシュまで持っていくカウンター型。
守備と攻撃で役割を完全に明確にしながら、チームとしてはハイプレスをかけて、なるべく相手を自由にさせないという戦術は、高い技術力で2、3枚の守備陣を剥がしてしまうような選手が複数いるトップチームには破られやすいが、それだけの高い技術力を持った選手が複数いないチーム(=この日のリーズのようにラフィーニャしかいなチーム)に対しては、十分に対応できる力を持っている。
そのため上位には敗れても下位には敗れない、という中堅チームとしては必要十分な力量を備えているのがウェストハムと言えるのかもしれない。

前後の役割をしっかりと分担しながら、というと前後分断サッカーのように思われるが、自陣でボールを奪って攻撃に転じる際には、しっかりとフォルナルスやベンラーマが中盤まで下がってきて、攻守の繋ぎの役割を行う。
そのような中に動いてボールを受けられるリンガードが加入したことで、速攻のみならず遅行になった際でも繋ぎ切ってシュートを打って終わるところまで持って行けるようになったのは大きなポイントだろう。

モイーズがエバートンを率いた終盤、選手の入れ替わりはありながらもリーグ中堅としてのポジションを獲得していた時代、そんな安定感を持つチームに生まれ変わりそうな予感を感じる試合だった。

求むBox To Box MF

前節アストンヴィラ戦では「試合に不均衡を作れる選手が不足」としたが、この試合でも新たに不足が目についてしまった。

この試合では中心選手となるフィリップスが怪我から復帰し、中盤の安定感を取り戻したかに思われたが、怪我明けから騙し騙しで使ってきたクリヒの代役が必要な状況となってきた。
これまではアンカーにストライクを使ってみたり、4-1-4-1を4-4-1-1とフォーメーションを変えてなんとか乗り越えてきたが、フィリップスが復帰したこの試合では4-1-4-1でフィリップスをアンカーに据えた。
しかし、フィリップスがサイドに寄った際に、昨シーズン同様その空いたスペースをカバーするクリヒの帰陣が遅れてしまい、この日はベンラーマやフォルナルスに上手くそこを突かれてしまっていた。
クリ自身も腰の怪我で欠場後、復帰してからは交代するケースが多くなっており、年齢的にも怪我の影響からの復帰が遅れてしまう状況にもあるのだろう。
自陣から相手陣内まで、いわゆるBox To Box MFとして激しく動き回るダイナモの不調はチームの不調にもリンクしてしまっている。
フィリップスが復帰すれば万事OK、と言えるほどアマイリーグでもないため、このBox To Boxのポジションを誰が補えるのか、ここが今後のリーズのポイントにもなってくる。
事実、クリヒに替えて左サイドバックのダラスを中盤に持ってくると、前半とは打って変わってボールも人も動くリーズらしいサッカーが展開された。

結果としてはハマーズ最終ラインの組織的な守備を突破することができずに0-2の敗戦となってしまったのは、前節に見えたラフィーニャ以外の違いを産める選手と、クリヒの不調を補える選手の不足と言えるだろう。
限られた予算でのプレミア復帰初年度だけに、いきなり理想が叶うわけでもない。
この週末に行われる次節も調子を取り戻したチェルシー相手だけに敗戦の公算が高いが、まずはこの連敗から1日でも早く脱してしっかりと残留を決め、来期に向けた動きを取れるようにすることが大事になってくる。

とはいえ、ポジティブな話題がないわけではない。
この試合ではロドリゴが怪我から復帰し30分プレー。
相手バイタルでボールを受けたりと、「差を生むプレー」をいくつか見せてくれた。
ポストになる選手がバンフォードしかいなく、どうしても厳しいマークを受けて孤立するシーンが多くなっていたが、ロドリゴが入ることで起点が複数にすることができる。
守備面ではエイリングの疲労が心配な中で、ベラルディが長い怪我から復帰しバックアッパーが揃ってきた。
ラフィーニャも相変わらずの好調ぶりを見せており、厳しい相手となるチェルシー戦を前に好材料が揃ってきている。

コッホももうすぐ復帰できると言われているだけに、シーズン後半に向けて万全の布陣で残留とトップハーフの目標に邁進してもらいたい。

ファンとしては贅沢は言えない。
今は我慢の時だ。

2

0

得点

ジェシー・リンガード(21′)

クレイグ・ドーソン(28′)

得点

In/OutPos.WolverhamptonLeeds UnitedPos.In/Out
GKウカシュ・ファビアンスキイラン・メリエGK
LBアーロン・クレスウェルスチュアート・ダラスLB
CBイッサ・ディオップリアム・クーパーCB
CBクレイグ・ドーソンディエゴ・ジョレンテCB
RBウラディミル・コーファルルーク・エイリングRB
DMデクラン・ライスカルヴィン・フィリップスDM
DMトマシュ・ソウチェクエウデル・コスタLMOut(46')
Out(73')LAMモハメド・ベンラーママテウシュ・クリヒCMOut(46')
Out(87')CAMジェシー・リンガードタイラー・ロバーツCMOut(60')
RAMパブロ・フォルナルスラフィーニャRM
CFマイケル・アントニオパトリック・バンフォードCF
SubSub
GKデイヴィッド・マルティンエリア・カプリーレGK
GKネイサン・トロットリーフ・デイビスDF
DFファビアン・バルブエナガエタノ・ベラルディDF
In(87')MFベン・ジョンソンナイアル・ハギンスDF
MFマヌエル・ランツィーニエズジャン・アリオスキDFIn(46')
MFマーク・ノーブルジャック・ジェンキンスMF
MFアデミボ・オトゥベコジャック・ハリソンMFIn(46')
In(73')FWジャロッド・ボーウェンロドリゴFWIn(60')
イアン・ポヴェダFW

Match Prediction / Premier West Ham United vs Leeds United

Footballic Match Preview

Premier League ウェストハムユナイテッドvsリーズユナイテッド

前節のウェストハム戦は「勝てる要素がない」と結果だけは当たったものの得点まで当たるには至らず。
簡単に当てられたら今頃大金持ちになる可能性があるわけで、当たらないからこそ面白いし、予測と実際の試合での差分を目にして、新たなサッカー観が得られると考えると、こういうことをやっているのは自分のためには無駄ではないかな。と思います。

前節から9日間あると余裕しゃくしゃくでいたらあっという間に試合当日。
かいつまんで予想します。

出張がリーズ贔屓の当サイトが、なるべく平たく試合を予想していきます。

データ、ここ最近の両チームの調子などを見ながら、当日の予想を展開します。

振り返り

前回の両者対戦は昨年末12月10日、エランドロードの試合。
リーズが圧倒的にポゼッションをするも、効果的な攻撃からウェストハムが2ゴールを決め1-2でウェストハムが勝利。
選手個々の技術力とプレミアでの経験値の差が出た試合でした

ウェストハムは年明け以降上位陣にこそ敗れていますが、中堅以降のチームには負けなしで現在7位。
一方のリーズは相変わらず出入りの激しい試合が続き、目標でもあるトップハーフ陥落の11位。
今節もトップハーフに向けた戦いとなります。

予想

直近のリーグ戦5試合を比較してみると、
 ・ウェストハム:WDWWL
    ・リーズ:WLLWL

ウェストハムの強みはトップハーフアンダーのチームからは確実に勝点を獲得できるしないところだろう。
前節も堅守の首位マンチェスター・シティと好ゲームを展開しながらもサイドを崩されて決勝点を奪われてしまいました。
とはいえ失点シーンでもしっかりとゴール前の人数は揃っていましたので、シュートに対しての寄せを早くということが90分継続出来ればかなり手強いです。
失点平均もリーグ戦で1.19、ホームでは1.15ということで、ホームでより手強い相手ということがわかります。

一方のリーズは大味な試合が多く、失点平均はリーグ戦で1.69、アウェイでは2.08。
得点はウェストハムのリーグ平均/ホーム平均は1.54/1.62、リーズは1.65/1.85。

前節のアストンヴィラ戦同様、両チームともに失点する可能性が高いのが今節と見ます。

データを見ていくと、ウェストハムの得点の60%は後半と偏っており、その内の半数は75分〜90分となっています。
一方のリーズは0-15分の得点が19%で、70%が後半となってこちらも偏っています。

失点に関してはウェストハムの失点の半数以上が61分以降となっており、リーズは半数近い43%が0-30分となっています。

これらから見ると、リーズが優勢に試合を運ぶには前半30分まで持ち堪えられ、かつ先制点を早い時間に取れることが条件になりそうです。
逆を言えば前半30分までの攻防がこの試合の趨勢を決することになるかもしれません。

で予想と言うと・・・

◎本命:2-2 ドロー
○対抗:2-1 ウェストハム勝利
▲大穴:1-2 リーズ勝利

いずれにせよ、追う形のゲームになるとリーズの迫力は増しますが、ウェストハムを逆転するまでは厳しいのではないかと思います。

観戦ポイント

リーズは最終ラインにジョレンテが戻ってきてからは守備がだいぶんと安定しました。
今節フィリップスが戻って来れれば、ジョレンテとフィリップス、自陣深いところからのビルドアップの起点がふたつできるようになりますので、攻撃へのトランジションでもかなりの安定が見込まれます。
しかしながら、フィリップスの怪我が完調なのか、と言う点については細かな情報がない上に、この週末のU23の試合に出てもいないため、この試合で出場させるのか、という点が攻守において大きなポイントになりそうです。

ウェストハムは相手なりに採用フォーメーションも変えて臨んできますが、不動なのはライスとソウチェクの2セントラルMFです。
攻撃において彼らがパスの起点になる、というよりは守備面でのクレバーさが光るコンビという印象です。
両者がバランスをとって中盤の左右をしっかりとカバーし合う形で中盤でのフィルターとして機能します。
最終ラインの構成が3枚であろうが4枚であろうがこの二人の組み合わせは盤石なので、いかにしてこの中盤のフィルターをかい潜れるかがポイントになりそうです。
攻撃面ではこの冬補強したリンガードが5試合3得点としっかり結果を残しており、持ち前の運動量で攻守両面で大きく貢献しています。
4-4-2の使い手として評されることが多いモイーズ監督ですが、ここ最近は3-5-2でしっかりと守って速攻で相手を陥れる堅守速攻型で結果を出しているだけに、この試合も守備からしっかりと入ったサッカーを展開するものと思われます。

ウェストハムのバイタルでライス、ソウチェクのポジションをずらすような動きをバンフォード、ロバーツが取れるのか。
そこにクリヒやラフィーニャが入ってボールを受けられるのか。
中盤の駆け引きが注目ポイントになりそうですが、リトリートの速いウェストハムだけに、守備を整える前にどれだけ早く展開ができるのか、という点も注目になりそうです。
その点では、リーズ側の視点ではフィリップスの出場可否と出来如何で流れが大きく変わりそうです。

Match Review 2021.3.6 FC東京 vs セレッソ大阪

強力な飛び道具で決着した打ち合い

FC東京、C大阪、双方のサポーターにとって心臓に良くない試合だった。
互いに点を取り合い2-2になると、試合の主導権を握るFC東京が続け様にチャンスを作り出し、それを身体を張って守ったセレッソがカウンターからチャンスを作る。
まさにボクシングの最終ラウンドに二人の拳士が殴り合うかのように互いがパスを繰り出し合い相手ゴールに向かう終盤は手に汗握る展開となった。
結果的にはレアンドロのセットプレーから2点を奪ったFC東京が勝利した試合となった。
冷静な考え方は後に回すとして、試合が終わった後にふと声をついて出たのは、「凄い試合だったな。こういう試合を毎試合観たいよ。」という言葉だった。

今日のこの試合をスタジアムで観ることができたFC東京サポーターは本当に幸運だったと思う。
現地だテレビだ、という一部で戦わされるサポーター論議に興味はないが、今日のこの試合はスタジアムで観た人々を羨ましく思った。

悲観することはないセレッソ

セレッソにとっては、望外の塊のような試合だっただろう。
ポジティブな意味では戦力になるのか疑問だった大久保が1G1Aで望外の活躍。
ネガティブな意味ではキム・ジンヒョンのミス、センターバック森重がアンカーになったことで潮目が変わったこと、そしてレアンドロのFKがハマりまくったこと。

確かに勝点がすり抜ける形の敗戦となったが、個人的にはセレッソに悲観材料は少ない試合だったと思う。
キム・ジンヒョンのミスは確かに致命的だったが、GKとしてミスをしない選手はいないし、ああいったプレーは年に何度も繰り返される類のミスではない。
またFC東京に崩されて失点をした形もなかったので、飛び道具にやられたと考えれば大きく破綻した部分はなかったとも考えられるだろう。

その上に大久保の活躍ぶり、奥埜、原川と運動量の多い二人を含めて構成される中盤の構成力は高いし、ゴール前にも5人の選手が飛び込んでいく形が多く見られて迫力満点の攻撃だった。
最終ラインでは瀬古と西尾という若いセンターバックが身体を張ることも含めてしっかりと守備ができていたので、後は最終ラインから中盤の守備の連携が取れてくれば、バランスの良いサッカーが出来るように思えた。

特に西尾は非常によかった。
ゴール機会を2度にわたって阻止したが、その状況も含めてこの試合全体で「ゴールとボールを結んだライン上に立つ」というセンターバックの基本を高いレベルで守っていた。
なんだ当たり前じゃないか、と思われるだろうが、最終ラインで相手の攻撃を堰き止める役割のセンターバックにとっては、人なのかボールなのかの対応に悩まされることが多い。
相手のドリブルに対しても、その線をずらされて一瞬でシュートを打たれることも多い。
しかし西尾の場合はドリブルでボールが晒されている状況でも簡単に取りに行ったりすることはなく、しっかりと相手を見て対応し、ゴールとボールを結んだ線を決して空けないような守備が徹底されていた。
この基本の徹底こそがFC東京の決定機を2度に渡って阻止したプレーにも繋がっており、先に述べたように中盤との連携が向上していけばさらにセンターバックとして成長出来るだろうと感じさせた。
怪我を含め出遅れている進藤やダンクレー、鳥海を差し置いてポジションを確保する格好の機会だけに今後の活躍を期待したい。

一方で課題としては大久保が退いてからはFWがボールを引き出すような動きが減ってしまい、カウンターからしか東京ゴールに近づけなかったことかと。
先制点の場面も然りだが、大久保はボールを引き出すための動きが本当にうまい。
そこにボールを出せる選手がいれば、今なおその力が十分に通用するものということを3試合でしっかりと証明して見せた。
大久保と同様に相手DFラインと駆け引きし、間延びをさせられるような動きのできる選手が交代で入れるかどうか。
中盤の駒はしっかり揃っているだけに、FWの動きが整理できれば得点機会は向上するだろう。

オプションがオプションでなくなる日?

今日の試合は何につけてもレアンドロと森重に尽きる。

他の選手が何もしていなかったわけではないが、停滞していたチーム状況に好転のスイッチを入れたのは間違いなくアンカーにポジションをあげた森重だったし、そこから出来たセットプレーでしっかりと結果を出したのはレアンドロだった。

応援するチームであり、チームが優勝と発言しているだけに敢えて厳しいことを言うのであれば、3点入ったが結局流れからの得点はなかったというポイントは大きな課題になる。

先に述べた通り、身体を張って守ったセレッソ西尾の好守がなければ流れからの得点にもなり得たが、それを排除してでも流れからゴールを奪えなかったことは事実として残る。
たらればで西尾の守備がなければ、と言っていいのであれば、キム・ジンヒョンのミスがなければ同点弾はあり得なかったわけで、試合の結果も大きく変わっていた。
結局のところ2点目もポストプレーで潰れたアダイウトンのところから流れたルーズボールに安部が追いついてくれた、と言うことからのFKだったし、決勝点も個人技で強引に割って入ったアダイウトンが倒されなければ発生しなかったが、実際あの場面でアダイウトンは孤立してしまっていた。
個の力、個の判断力が良い方向に転がったからチャンスを演出できたが、個の集合体として得点機を演出したシーンを振り返ってみると思いのほか少ない。
外にボールを回す以外に特に攻め手が皆無と言っても良い状況だった前半を考えると、中盤にポジションを移した森重と言う策がなかったらどうなっていたか、と思わざるを得ない。
そう考えると、やはり中盤でどうゲームを構成するのか、というところは引き続き課題と言わざるを得ない。

アンカー森重については、もともと足元の技術に定評のあった森重なので、アンカーのポジションもなんなくこなせてしまうので、昨シーズンのルヴァンカップ然り、守備強度とボールを散らすと言う観点ではアンカーでのプレーは期待を持たせてくれる。
特に今シーズンは同タイプでボールを動かすことに長け、昨シーズンからの連携が取れるオマリが残留したことで、森重アンカーというオプションが定常的に使えるという点は大きなポイントにもなる。
実際に1点めのキム・ジンヒョンのミスに繋がるシーンでは、森重の強烈な縦への楔のパスがあったことでセレッソ陣内の深いところまで入れた結果でもある。
その他にも手詰まった左サイドから右サイドへのサイドチェンジなど、森重だからこそのパスが幾つも見られた。

昨シーズン来ファンの間でも話題となってきたアンカー論に終止符を打つのは森重、というのをこの試合でも改めて表してくれた。

ただ、この森重アンカーというオプションがオプションではなく常態化してくることでまた課題と対応点が増える。

・森重を経由できないと攻撃の形がいつものブラジル人+永井の「よろしく行ってこい」しか手段がなくなってしまうため、中盤でボールを動かせる攻撃的な人材をもう1枚投入しておかなければならない。それにより、中盤から前線の守備強度が下がってしまうこと(この試合での三田の役回りの選手が必要だが総体的な守備強度は下がってしまう)。

・オマリはスピードでは後手を踏むため、最終ラインで相手FWのアジリティにかき回されることが増えるため、サイドバックがそのカバーをしなければならなくなりサイド攻撃の攻め手が減ること。(この試合ではセレッソの2点目は完全に大久保にオマリが置いていかれた)。

この試合のように勝ちに行く、追いつきに行くという局面ではアンカー森重は非常に大きな効果をもたらすが、セレッソがなんとか森重に対して手を打とうと原川を対策に回したことでパス回しを鎮静化されてしまった時間帯もあった(その意味では72分の三田投入は絶妙なベンチワークだった)。

このように森重を抑えられた時にどう対応するのか、失点できない状況下でズレが生じてしまう守備面をどうカバーするのかという課題が表出化する。
恐らく他のチームは今日のセレッソ戦をしっかりと分析し、FC東京がオプション行使をした際の打ち手は検討済みで臨んでくるだろう。
ルヴァン、この試合とアンカー森重作戦で好結果を得られたが、同時にベンチワークが試されることにもなる。
細かいズレの連続が失点につながりやすいだけに、その部分の手当なしにオプションをオプションじゃなくなるすることは、今後勝利を重ねることを目指すのであればかなり危険にも思う。

とはいえ、プロセスはどうであれこの勝ちは爽快だったし、1-0よりは3-2の勝利が面白いのは確かなので、残り少ない週末の時間は美味い酒を飲んですごそう。

Match Review 2021.3.3 FC東京 vs 徳島ヴォルティス

ミスした方が負けの典型的な試合

在宅勤務になって1年。
今までだと観ることの出来なかった18時キックオフの試合も普通に観れるようになったのは幸せと思う反面、やはり一日中家にいる生活というのは息が詰まるものです。
その中で爽快な試合が観たいな、と思ってもそうはいかず(苦笑)。
Jリーグ公式スタッツではシュート2本で1得点のFC東京が勝利。
双方のチームがレギューラー選手を温存し、お互いの色を出し合った試合は双方決定機に欠け、ミスをした方が負け、の流れの中で進んだ試合。
結果としては徳島DFのクリアミスを突いた田川のゴールでFC東京が勝利も、FC東京サポーター的にはもう少しピリッとして欲しいという辛口な感想の試合でした。

一画面に10人が映り込む徳島の色

ライター活動をさせて頂いていた7年前、徳島には何度も取材に行かせて頂きましたので、なんとなく思い入れ的なものは残っていたりします。
とは言え、現浦和監督のロドリゲス監督就任の遥か前ですから、当時の徳島サッカーと今の徳島サッカーは大きく違っていたりして、その辺も面白く眺めていました。

新任のポヤトス監督がコロナ禍で未だ来日の見通しが付かない中での徳島のサッカーは、ロドリゲス指揮下のサッカーを継承しながら新指揮官の到着を待つ流れにせざるを得ない状況ですね。
ロドリゲス時代に物凄く試合を観ていたわけではありませんので、詳細を語ることは出来ませんが、この日の徳島を観て感心したのは、守備時のその陣形の美しさとコンパクトさでした。

画面で見るだけでも必ず4-4-2の陣形をしっかりと組んで、その陣形がFC東京のパス回しに応じて前後左右と動く様は、チーム全体の意識が統一された素晴らしい規律が出来上がっているということの表れでもあります。
そのブロックをどう崩すのか、のアイディアはこの日のFC東京ではなかなか見られませんでしたが、あれだけ統率が取れた守備網を崩すというのは、効果的な縦パスを起点にワンタッチで連続してパスを通す、いわゆるティキ・タカ・サッカーかサイドチェンジを繰り返して陣形を横に伸ばすか、果てはメッシ(Jリーグ的に言えば川崎の三苫)のような個で突破できる選手を使って崩すしかやりようがないと思いながら観ていました。
悪い言い方になりますが、いわゆる昇格チームや相手に対して力が劣るチームが、引きこもるのではなくきちんと攻撃も視野に入れて失点しないことを考えた場合、コンパクトに全員で守り、規律を持って戦うという徳島のサッカーは非常に理に適っており、このサッカーの中に攻撃のパターンが増えてくれば非常に厄介な存在になりそうです。

攻撃面においては、特に先制された後はパスを繋げるもののサイドに押し出されてしまい、無理なところからのクロスに終始してしまい、FC東京守備陣に跳ね返されるシーンが多くなってしまいました。
そんな中でシュートには繋がりませんでしたが、終了間際に垣田選手が中盤からFWに当てた楔のパスは、FC東京守備陣を崩す起点になり得るもので、攻撃のスイッチを入れる、というよく言われる言葉を体現するパスでした。
ああいった縦パスを怖がらずに入れ、それを合図に4-4-2の陣形を可変させて2-4-4-、2-3-5と相手ファイナルサードに攻撃陣が雪崩れ込むような形にできれば、昨年J2で見せた旋風をJ1でも巻き起こせるのではないかと思います。

全国的には無名な選手の集合体としてのチームではありますが、ああいった規律が徹底されていけば、中長期的に十分にJ1で戦えるチームになり得るでしょう。
今シーズンはなんとかJ1に残留し、4年かけてロドリゲスと共に成熟させた徳島のサッカーをさらに昇華させて欲しいと思います。

迫力に欠けたFC東京

カップ戦初戦でもあるので、個人的にはある程度メンバーを入れ替えて臨むことは想定していました。
ですので、スタメンを見たときにはそんなに驚きがなかったのが正直なところです。

そんな中で僕が注目したのは2つのポイントで、1つ目はオマリのプレースタイルを改めて確認するということ。
これは過日の投稿でもあるBruno Uviniを知ってみようでスタッツ的に明らかになった前に出すパスの多さやロングパスというのがオマリからどれだけ出るのか、を改めて確認してみようという意図です。
結果、この日のオマリは個人平均を上回る10本のロングパスを出し50%の成功確率でした。前方へのパスも24本(成功は19本)と、やはりこの選手はDFラインから前にパスを出す選手なんだな、ということを改めて確認でき、スタッツを眺める面白さを改めて確認することができました。

2つ目のポイントは、青木をアンカーに据えた中盤から前の選手がどのように動いて徳島を崩していくのか、というところでしたが、ここに関しては「ブラジル人がいないときついな」と感じたのが正直な感想です。
41.16%のポゼッション時のパスの大半は自陣からミッドサード(中盤域)で、ファイナルサードに向けた縦パスも少なく、徳島のDFライン前で止められるケースがほとんどでした。
このようなメンバー構成の試合では、いわゆるサブメンバーの意地みたいなものが見えて、「この選手を次の試合に見たい!健太さん使ってくれ!」という気持ちを醸成したいものですが、どうしてなかなか、この日の東京イレブンではオマリ、青木の主力級の安定感ぐらいしかそういった気持ちを抱くことができませんでした。

ただ、僕自身はこの試合でやはり三田の持つ力量というのは苦しい時にFC東京を救ってくれそうだという期待感を持つことはできました(とはいえ三田も主力選手ですが)。
浦和戦で同点に追いついたプレースキックの質は当たり前ですが、90分間に渡って中盤を幅広く動いてボールを引き出す動きも多かったですし、縦に入れるボール、ペナルティエリアを狙うパスも多く見られました。

www.wyscout.comでのスタッツを見てみると、ボールに対するアクション回数は86回でチーム1。青木が81回、内田が76回と続きます。アクションの成功率を見てもそれぞれ53回(61.6%)、52回(64.1%)、36回(47.3%)となっており、三田のポジションが敵陣でアクションを起こすことが多いことを考えるとこの試合においては出色の出来であったことが分かります。
以下の図は、三田がこの試合で起こしたアクションの成否を表したwhyscoutのスクリーンショットです。
右サイドだけではなく、左サイドまで幅広くアクションを起こしていることが分かります。

ペナルティエリアに向けたパスも青木が4回(成功率75%)に次いで三田が3回(成功率66%)と、青木と三田でこの試合の攻撃を構成していました。
それぞれチーム内で与えられた役割がある、ということを前提に置いたとしても、こういった攻撃に絡むプレー回数が主力級選手だけで占められるというのは、逆を言えばそこに付け込む若手の力量と欲が少ないということにもなります。
ルヴァンカップはこういった若手が公式戦で活躍する姿を見せやすい大会ですし、そこをきっかけにリーグ戦のベンチ、スタメンを勝ち取るための登竜門でもあります。
まだ初戦だから、ではなくて若手選手には是非とも「この1回で次のリーグ戦のベンチを掴み取ってやる」という強い気持ちと欲望を持って臨んで欲しい、それこそがFC東京に必要な違いを生む力の礎になるものだと思います。

 次なるチャンスは3月28日のヴィッセル神戸戦。
ここでは違った形で攻撃を形作る若い力の躍動を期待したいと思います。

Transfer Later Talk – Bruno Uviniを知ってみよう

コロナ禍に来てくれる助っ人を事前チェック

このコロナ禍ももう1年が経ちましたね。
外国人の入国が制限される中でも、新たにFC東京が獲得したブルーノ・ウヴィニ選手。
ブラジル年代別代表経験者で、サンパウロFCからヨーロッパへと渡り、その後中東でキャリアの中心を送り、この度サウジアラビアのアル・イテハドからFC東京へと移籍が決定しました。

今回はこのセンターバックの補強となるウヴィニ選手をキャリア平均スタッツから他センターバックと比較をして、その起用法を妄想したいと思います。

輝かしいキャリアから推測するその実力

まずはウヴィニ選手のこれまでのキャリアを見てみましょう。

パッと見ると長い経歴でいわゆる「渡鳥」と言われるキャリアのように見えます。
しかし、ここで重要なポイントが3つあります。

一つは1991年生まれのウヴィニが2008年(17歳)にGOオウダックスからサンパウロに移籍した点。
当時のオウダックスというクラブは14歳から17歳の子供達にサッカーをする機会を与えよう、という社会事業として運営されていたチームです(現在は完全にプロ化)。
そこからブラジルトップチームのサンパウロに移籍を果たしてプロとしてのキャリアをスタートしている点。

そして2点目は、そのサンパウロから一旦トットナムにレンタル移籍しているという点。この移籍には370万ユーロでの買取オプションが付帯されていた、とのことで、いわゆる青田買いの対象としてヨーロッパトップチームから注目をされていたということがわかります。
トットナムへの移籍は叶いませんでしたが、2012年(20歳)UEFAチャンピオンズリーグの常連イタリアセリエAのナポリへ5年契約で移籍します。
年齢的な面もあり、シエナ、母国サントスなどのチームで経験を積むためにレンタル移籍に出されますが、思うような出場機会を得るには至りませんでした。

3つ目のポイントは、2015/16シーズン(24歳)にオランダのトゥエンテへ移籍したポイント。
ここで34試合に出場し、ついにウヴィニのキャリアが花開きます。
ここからは推測ですが、レンタルで34試合出場しトゥウェンテの主力となりながらも翌年にサウジアラビアのアル・ナスルに移籍することになる背景には、ちょうどこのシーズンにトゥウェンテがライセンス剥奪・財政破綻の危機に陥ってしまい(のちに裁判でトゥウェンテが勝訴)、ウヴィニを獲得出来なかったであろうという推測が成り立つ点です。

これにより花開いたウヴィニのキャリアは、欧州の舞台から中東へと舞台を移すことになります。
その後中東で78試合に出場、トゥウェンテからの5年間で112試合に出場し、ユース年代で培った実力をプロとしてのキャリアに刻むことになります。

ここまででウヴィニが相当のバックグラウンドを持った選手、ということは分かると思います。

どんなセンターバックなのか?

では一体どんなセンターバックなのでしょうか。
今シーズン開幕前はオマリの去就も分からず、センターバックは主力の森重、渡辺の2人のバックアッパーは若手の岡崎と、優勝を口にするにはかなり心許ないメンバー構成でした。
そこにこのウヴィニ獲得とオマリの残留が決まり、主力級のセンターバックが一気に4人になりました。
これで森重、渡辺を休ませながらシーズンを進めることが出来ます。

とはいえ、4バック主体のFC東京においてどのような組み合わせが想定できるのでしょうか。
そもそもウヴィニはどんなタイプの選手なのでしょうか。
本稿の後に掲載しているYoutubeなどでそのプレーぶりはわかりますが、もう少し深く彼のプレーを早期することはできないか。
そこでここからは統計データを用いて紐解いてみたいと思います。

まずは一般的な選手としてのこれまでのキャリア平均値でセンターバック4人を比較してみましょう。
※公正に比較する意味でも、各選手のこれまでのデータ平均を使用してみていきます。
※掲載データは欧州およびJリーグでも使用されているwww.wyscout.comのデータを限定版として筆者が取得したものであり、公開についても同社に確認/許諾を得ています。

どんなセンターバックなのか?

では、サッカー選手としてよく比較材料とされる以下のスタッツを使って見ていきましょう。

 

少々見難い表組みですみませんが、上から一試合平均で、パス本数/成功率、ロングパス本数/成功率、ドリブル回数/成功率、デュエル回数/勝率、空中戦回数/勝率、インターセプト回数、イエローカード、レッドカードです。

パッとみると、渡辺と非常に似通った数値が並んでいるのが分かります。
その一方で森重とオマリが似通った数値です。
特に着目すべきは、ウヴィニと渡辺、森重とオマリの組み合わせを比較した際のロングパスの数とドリブルの回数です。

上記のスタッツからは、プレースタイルとしてはロングパスを出したり、ドリブルでボールを前に運ぶ仕事よりも、デュエルで相手を止める役割を担うタイプなのではないかということが朧げに見えてきます。

では、上記を踏まえて守備的なスタッツを見ていきいます。

 

 

こちらの表は、上から守備時のデュエル回数/勝率、ルーズボールに対するデュエル回数/勝率、スライディングタックル回数/成功率、ボールロスト回数/自陣でのロスト率、ボールリカバリー回数/相手陣内でのリカバリー率、クリア回数、となっています。

特筆すべきはディフェンス時のデュエル勝率が他の選手に比べ高いという点です。
また、ボールロスト回数が他二人に比べて低いのは、森重/オマリの両選手は中盤でのプレーがあるためその分が統計に含まれているという点もありますが、そこを押し並べて考えてみても、ボールを運ぶプレーが多い二人に比べてウヴィニはしっかりと後ろでデュエルに備える、いわゆるカバー型のセンターバックということが見て取れます。

このポイントは次のパスのスタッツを見ていただくとより明確になると思います。

 

 

こちらの表は、上から相手陣ファイナルサード(ゴール前)へのパス本数/成功率、相手ペナルティエリアへのパス本数/成功率、パスの受け取り本数、前方へのパス本数/成功率、バックパス本数/成功率です。

ここで注目して欲しいのは、ファイナルサード、ペナルティエリアへのパス平均値の差異です。
先に述べたように森重、オマリが中盤でプレーした経緯があるとしても、キャリアの大半はセンターバックの両者です。
彼らのファイナルサード/ペナルティへのパス平均値が7前後/0.8前後に比べ、ウヴィニはファイナルサードで30%程度、ペナルティエリアに至っては15%程度です。
また、前方へのパス本数という意味でも森重/オマリに比べると少ないことから、攻撃に繋がる最後尾からの役割よりも、先に述べたようにゴール前でしっかりと守りボールハンティングを行うということが想像できます。

また、ここまでの3つのスタッツを見ると、渡辺と非常に似通った数値になっている点もお分かりいただけたかと思います。
この点も非常に興味深いスタッツ分析となりました。

 

4枚のセンターバック組み合わせは・・・

ここまで読んでいただいた方には大方言いたいことは察しがついているかな、と思いますが・・・。

スタッツから見るに、ウヴィニの獲得は渡辺とのポジション争いになると想定します。
過去の2シーズン異なるタイプのセンターバックを組み合わせた森重/渡辺コンビが非常に良い結果をもたらしました。
しかしながらそのバックアップ確保が進まず、いずれかの選手が怪我をした際には守備力低下を懸念せざるを得ない状況でした。

昨シーズンはオマリが加入したことで、オマリ/渡辺を組み合わせ、森重をアンカーになどの新たな取り組みをすることも可能になりました。

今シーズンはウヴィニが加入したことでセンターバックのローテーション化が可能になり、森重/ウヴィニ、ウヴィニ/オマリという組み合わせを取ることがこの獲得の目的なのではないか、と推察しています。
この組み合わせであれば、更に守備強度をあげる目的として、ウヴィニ/オマリ+アンカー森重も可能です。
同様にウヴィニ/森重+アンカーオマリも可能です。

コロナ禍及びオリンピックでスケジュールがタイトになると負傷のリスクも向上します。
その点ではここまで無事是名馬で最後尾を支えてきてくれた森重/渡辺を適度に休ませ、ローテーションをする必要性が高くなります。
そこに渡辺と非常に似通ったスタッツを持っている上に、ブラジル代表経験、U20キャプテン経験、五輪経験と輝かしい実績を持つウヴィニをフリートランスファーで獲得出来たことは非常に大きいと思います。

ウヴィニの来日がいつになるのか、こればかりは政府の方針決定に依拠することになるので分かりませんが、合流してフィットネスが整えウヴィニと渡辺がポジション争いをしていくことになると思います。
その競争の中から、渡辺が新たな技術を身につける可能性がないとは言えません。

動画を見る限り、かなり吠えるタイプの選手でもあり、東京に不足してきたいわゆる軍曹タイプの選手になってくれる期待もあります。

ここまで示してきたスタッツを基に新たな東京ディフェンスラインを想像しながら、ウヴィニの合流を楽しみに待ってみるのも面白いのではないかと思います。

Match Review 2021.2.27 Leeds United vs Aston Villa

ゴールが生まれる気がしない反撃

Jリーグが開幕し、サッカーオタクの週末は多忙を極めることとなる。
何時からどの試合を診て、その次にはこっち、ご飯を食べて子供と遊んで、風呂に入れて寝かしつけたらこっちとこっちの試合を・・・。
そうやって週末に4~5試合をフルタイムで観ていると、なんとなく試合の流れが予知できるような能力が身につく。

この日はFC東京、リーズユナイテッド、ラツィオと応援しているチーム全てが同じ展開になり、更には興味で観ていたFC琉球vsジュビロ磐田でもジュビロが同じ展開になった(特にジュビロを応援しているわけではないのだけど、元J1覇者がJ2というのは寂しく少々肩入れしてみていた)。

全てのチームが先制され、うちリーズ、ラツィオ、磐田は前半早々に、それを追いかけて圧倒的なボール支配で攻撃を仕掛ける。
ボール支配を行わなかったFC東京だけがセットプレーから追いつき、他の3チームは試合を支配しても最後まで追いつくことは愚か得点すらあげられなかった。

見ていると自然と口走る。
「あー、相手がこれだけブロックを作っては単純にクロスを上げるだけじゃダメだ。」
「シュートも苦し紛れに遠目からになりがちだよ。」
なんとか追いついて欲しいものの、見れば見るほどピッチ上の選手の必死さとは逆の精神状態に陥る。
「ダメだこりゃ。このままじゃゴールは生まれんよ・・・。」

上手く穴を突いたヴィラ

キックオフ直後はアストヴィラペースだった。
通例通り4-1-4-1でスタートしたリーズに対してアストンヴィラも4-1-4-1の布陣を敷いた。
通常通りの4-2-3-1だとどうしてもトップ下のバークリーがストライクにマンマークで付かれてしまい攻撃が手詰まりになる、という判断なのだろう。
合わせ鏡のような形で序盤の主導権を握ると、両ワイドのトラオレ、エル・ガジがストライクの脇にできるスペースに飛び出し、そこにラムジーやマッギンの両セントラルミッドフィールダーが絡んでいくことで、リーズ守備陣はマーキングを見逃さざるを得なくなった。

特にエル・ガジの動きは秀逸で、サイドに張るばかりではなくトップ下の位置に入ったりと、本来のマーカーであるエイリングを混乱させ、最終ラインから上手く引き摺り出すことに何度も成功していた。

アーセナルに4-2で敗れた時も同様だが、マンマーキングで対応するリーズの守備を混乱に陥れには、こういったスペースにワイドの選手がダイアゴナル(斜め)に走り込んでボールを受け、シンプルに次のパスを出すことを繰り返されると、対応するディフェンダーは行き先に迷い混乱が生じる。
その虚を突いてゴール前に選手がなだれ込む、というのがリーズ攻略の最も効率的な手段だ。
この日のヴィラも同様の形で容易にリーズゴール前を陥れ、ビエルサは意図したゴールではないと記者会見で評したが、いずれにせよ自由自在に動かれたエル・ガジのボックス内侵入を簡単に許し、ゴールを演出されてしまった。

この日のヴィラにとってはこの早い段階での先制点で十分だったのかもしれない。
試合前予想でも述べた通り、アストンヴィラの前後半でのクリーンシート率は高く、失点数もマンチェスターシティ、チェルシーに次ぐ26失点でリーグで3番目の少なさだ。
得点数が上がればトップ5入りも狙えるだけの守備力を持っているだけに、先制さえ出来れば守り切れるという公算はあったかもしれない。

ディーン・スミスは地味な監督ではあるが、守備から計算してチームを上手く構築していると思う。
守勢に回らせると非常に厄介なチームであることをこの試合で改めて表現しつつ、しっかりとリーズの穴を突いて勝点3をもぎ取っていったことは悔しいが当たり前の結果であったとも言える。

不足が浮き彫りになったリーズ

開幕前、そして冬の移籍市場においても中盤の攻撃的な選手の補強が噂をされては実現しなかった。
その不足がこの試合でも露呈したと言える。
これまでの敗戦はどちらかといえば「リーズらしい殴り合い上等」の戦い方で評価を上げてきたが、この試合のラストパスの精度の著しい低さはこの補強ポイントを改めて中盤の質向上を表現するものだった。

無論クリヒもロバーツもいつも通りよく走り、タフにデュエルを挑んでいた。
しかし、アストンヴィラに2ラインのブロックをしっかりと構築され、両者が中央からペナルティエリアを目指すパスは完全封鎖され、完全にバンフォードが孤立を強いられる形となった。

リーズの期待は個人技に秀でたラフィーニャだけとなり、チームのラストパスが通らなければ通らないほど、ラフィーニャのドリブル力に期待を寄せるばかりに。
もはやビッグクラブのターゲットとも噂され始めたラフィーニャの力量を認識しているアストンヴィラ守備陣はラフィーニャに対して3人をぶつけ止めに掛かる。
それでもなおラフィーニャはその状況を打開してしまうのだから頭が下がるのだが、残念ながらその後のパスもヴィラがゴール前に展開した城壁を破るには至らなかった。

懸命にサイドから、中央から崩しにかかるリーズだったが、ラフィーニャ以外にビエルサがいうところの「守備の不均衡」を引き起こせる選手がおらず、ただただクロスもパスも弾き返されるばかりだった。
ボールロスト総数102回のうち実に半分の51が相手ファイナルサードでのものだというデータから考えても、ビエルサが記者会見で繰り返し述べたように、このファイナルサードでの正確性を欠いたことは明らかだ。
攻め込んでいても入る気がしない。シュート総数12に対してオン・ターゲットは3本のみ(アストンヴィラは7本で4本が枠内)。ポゼッションしての攻撃回数が38回のうちシュートまでいった攻撃は4回(アストンヴィラは19回で4回)。
いかにポゼッションという数字や主導権を握る、ということだけでは価値に結びつかないかがよくわかる試合だった。

0

1

得点

得点

アンワル・エル・ガジ(5′)

In/OutPos.LeedsAston VillaPos.In/Out
GKイラン・メリエエミリアノ・マルティネスGK
LBスチュアート・ダラスマットターゲットLB
CBリアム・クーパータイロン・ミングスCB
CBディエゴ・ジョレンテエズリ・コンサCB
RBルーク・エイリングアーメド・エル・モハメディRB
Out(53')DMパスカル・ストライクマーヴェラス・ナカンバDM
LMラフィーニャアンワル・エル・ガジLMOut(88')
CMマテウシュ・クリヒジェイコブ・ラムジーCMOut(79')
Out(71')CMタイラー・ロバーツジョン・マッギンCM
Out(64')RMエウデル・コスタベルトラン・トラオレRM
CFパトリック・バンフォードオリー・ワトキンスCF
SubSub
GKキコ・カシージャトーマス・ヒートンGK
DFリーフ・デイヴィスニール・テイラーDF
DFナイアル・ハギンズビョルン・エンゲルスDF
In(53')DFエズジャン・アリオスキートレゼケMFIn(88')
DFチャーリー・クレスウェルモーガン・サンソンMFIn(79')
MFジャック・ジェンキンスドゥグラス・ルイスMF
In(64')MFジャック・ハリソンロス・バークリーMF
In(71')MFパブロ・エルナンデスケイン・ケスラー・ヘイデンMF
FWジョー・ゲルハートキーナン・デイヴィスFW

Marcelo Bielsa Post Match Press Conference – Leeds United vs Aston Villa

多くのチャンスがあったが最後のところでのパスの正確性を欠いた

非常に厳しいサウサンプトン戦からの連勝を狙ったアストンヴィラ戦。終始試合の主導権を握りながらも決定機を作れず0-1で敗戦した試合について「パス、クロス、ボックス内全てにおいてパスの正確性に欠けていた」と評した。
また、「本来は引き分けが妥当な結果だったが、誰が勝者になるべきかと言われればリーズだ」ともコメントしており、この試合の結果に関して珍しく悔しさを直接的に表現した。
Leeds Liveのプレスカンファレンス記事を拙訳)

今夜はあなたのチームからは印象的なパフォーマンスがありませんでした。なぜ今日はトップギアにあげられなかったのでしょうか?

試合の中では、我々は相手チームよりも良いプレーをしたと思っている。我々は大半の時間を支配し、支配される時間も極めて少なかった。前半は相手が得点をしたが、我々は相手よりも多くのチャンスを作った。

あのゴールは意図したものではなかった。シュートを打った選手がスリップしてボールを要求していない選手へのパスになった。
一般的には前半は我々は与えられたチャンスを活かすべきだった、しかし我々は後半のように前半はうまく守ることができなかった。
後半は我々は非常によく守備ができた。後半の大半でボールを握っていたが、(相手にとって)危険なシーンを作れなかった。

常に相手のペナルティボックスで攻撃を終えていた。カウンターアタックは仕掛けていない。我々は相手のファイナルサードでボールを失ってしまっていた。全てのワイドからの中央へクロス、パスが不正確だった。多くの機会があったセットプレーでは相手のバランスを崩すことができなかった。

まとめるならば、我々が負けるに値しない試合だっただろう。引き分けというのが妥当な結果だと思っている。そして勝者を決めるならばそれは我々だったと思う。

あなたの意見には同意で、支配率が高いことで前半に6度のゴールチャンスがあり、それはチャンスの数としては良い数だった。後半には完全に支配をしたが、1度しかゴールチャンスを作れなかった。

エウデル・コスタが久々の先発でしたが、彼についてどう思いますか?彼のパフォーマンスには喜んでいますか?

攻撃において相手のバランスを崩すことは非常に難しかった。彼は前半の攻撃には完璧に絡んでいた。後半の最初の15分に我々は相手を危機に陥れるのが難しかったので、ハリソンを入れることにした。

後半に相手が強固な守備をしたことをどのように捉えていますか?

二つの考え方で答えたい。私がアストンヴィラの守備を評価しなければならないのであれば、彼らはよくやったということだ。しかし私は我々の攻撃の仕方を検証したい。我々、たくさん、たくさん、たくさん攻撃を仕掛け、それはポジティブなことだだが、ただ我々はファイナルサードでボールを失った。

ファイナルサードでボールを捨てるということは、ファイナルサードでの正確なパスが必要だということだ。ペナルティのサイドからであろうが、外側であろうが、中であろうが関係ない。それは相手チームが我々の最終パスをよく守ったとも言い換えられるだろう。もしくは最後のパスにおいて創造性と正確性が欠けていたとも言えるだろう。

私たちはハーフタイムであなたが変更を加えると考えていましたが、そのつもりはありましたか?

ない。

ハリソンを先発から外した理由はなんですか?なぜこの試合で彼をスターティングメンバーから外そうと思われたのでしょうか?

いや、サウサンプトン戦の後半でのエウデル(コスタ)が彼をスタートから使うことが良いと私に思わせただけだ。

(アストンヴィラGK)エミ・マルティネスと試合前会話されていましたが、どんな言葉をかけたのでしょうか?

ただ挨拶をしただけた。同郷だから。

次節のウェストハム戦まで9日あります。怪我をしている選手が戻ってくるということはありますか?

この先9日間について話すということは少々リスクがあるだろう。

チームにとってプレミアリーグで一貫性を保っていくというのはどれほど大事なことでしょうか?

私は我々の全ての試合を分析している。今日は連勝するためには素晴らしく良い機会だった。我々は負けるに値しない試合をしたのだから。 大事なことはきっちりと試合に勝つことだ。試合に勝たなければ勝利を積み上げることはできない。我々の連勝を妨げるものは我々が今日やってしまったこと、ということそだと説明したい。

次の試合まで長い時間があります、9日です、ここ数週間多くの仕事量をこなした選手たちにとってはどのようにこの時間を使うのが最良でしょうか?

多くの目的がある。怪我から回復している選手をチームに戻したい。イライラしているような選手であればそのことを解決しなければならない。概して言えば、この9日間でチームは少々の休みを取ることになるだろう。

ヴィラの左サイドバック、マット・ターゲットが警告後にもピッチに立ち続けられたことはラッキーだったからだと思いますか?

君が言ったことにコメントするということは、審判のパフォーマンスについて私が評価をしなければならないといことなので、これ以上首を突っ込みたくはない。

アストンヴィラの2人のセンターハーフですが、どんな印象を受けましたか?そして彼らはリーズの「ファイナルサードでの難局」にどれだけ貢献していたのでしょうか?

既にこの質問には答えている。私がアストンヴィラに責任を持っているのであれば、彼らは非常によく守った。しかし今日起こったことについてリーズの監督という立場から言えば、対戦相手のことではなく自チームの長所を見極めるのが当然のことだ。これまで行ってきたように、我々には最後のところでのパスが足りなかった。最後のところで相手を崩す想像力に欠けていた。.ペナルティエリア内にクロスを入れるべきところでの正確性に欠けていた。通常の場合、私自身は試合で起きた特定の事柄について語ることは好きでない。特にそれらが相手の長所であるなら尚更だ。明確なのは、彼らが後半はよく守ったということだ

J1 League Match Review 2021.2.27 浦和レッズ vs FC東京

積み上げと再構築と

やっぱりJ1開幕がやってくるとワクワクしてしまう。
キックオフ前にはテレビの前に陣取って、両チームのメンバーを見て今季はどんなサッカーをするのかと想像する。
欲を言えばビールがあれば尚ワクワク感に花を添えてくれるのだけど、嫁の目を気にして回避。

FC東京は昨年までの積み上げでリーグ制覇を狙うシーズン。
堅牢な守備と縦に速い攻撃を特徴に、どうやって浦和ゴールを陥れいるのか。

一方の浦和はチーム再構築のシーズン。
徳島をJ1に昇格させたロドリゲス監督の下、コロナ禍もあるだろうけど、外国人選手に頼らず日本人選手だけで新たなチーム像を作っていく。
コロナの影響もあり例年以上に各チームのキャンプ情報が少ない中、特にレッズがどうトランスフォームをするのかの情報は少なかった。
どんな新しいチームになるのか。

FC東京の開幕戦としては申し分のない相手。
楽しい気持ちでキックオフのホイッスルの音を聞いた。

浦和レッズ - インテンシティとタフネスと野心と

試合が15分を経過した段階で(極めて個人的かつ生まれて初めて)「これは確かに浦和のサッカーは面白いぞ」と思った。
ヨーロッパの監督らしいトレンドを追った高い位置から相手ボールにプレッシャーを掛けてボールを奪いにいく姿勢。
FC東京ゴール前から自陣ゴール前まで、ピッチのあらゆる場所で強度の高いプレーが連続される。
往々にしてこの手のサッカーは70分あたりからがくりと運動量が落ちるが、そのようなこともなく10人の選手がピッチ上を動き回るタフさも見せた。
そしてこの中心にいたのは、間違いなくJ2から移籍してきた小泉と明本の二人だった。
J1の舞台を夢見て戦ってきた二人の選手にとって、浦和レッズという看板を背にJ1開幕戦のピッチに立つことはプロ選手としての新たな野心を抱くに十分な瞬間だっただろう。
特に小泉はその野心を表現するかのように、後退するまでの75分間攻守にわたり豊富な運動量と的確なポジショニングで浦和の甲種のスイッチを担っていた。
これまでは他所からトッププレーヤーを獲得することがチーム強化の根幹となっていたが、下部リーグから自チームに合う選手を獲得し、しっかりと結果を出させることからも「浦和は面白い」と他チームサポーターに思わせるには十分だった。

逆を言うと、浦和のこのサッカーに適応する選手を獲得するというのは非常に難しいとも言える。
恐らく外国人選手はコロナがひと段落し、ロドリゲスの出身でもあるヨーロッパの移籍市場が開く夏の段階で補強するのだろうが、これだけの運動量と強度を求められる上に、Jリーグが総体的に持つアジリティをも有する選手となるとかなり選択肢も限られてくるだろう。
その分日本人選手にも多くのチャンスがあるだろうから、純国産レッズがリーグを騒がせる存在になるのもまた面白いかもしれない。

最後に付け加えるならば、山中も非常に良かった。
スペイン人監督がよく好む偽ラテラル(サイドバック)のように、攻撃時にピッチ中央に入って来てプレーする姿が今日以上に増えると、新レッズの新たな攻撃の形にもなるだろう。

FC東京 - 効果的なプレーをどう生むか

FC東京からすれば「引き分けられて良かった」という思いが選手もサポーターも多いだろう。
僕自身はこの引き分けはよく言われる表現を使えば「フェアな結果」として受け止めている。
もちろん東京自体は決定気を全く演出できず、前半に至っては2本のシュート止まり。
攻撃においては浦和のプレスを掻い潜ることもできず、淡白なプレーが続き攻撃の糸口を掴むことも出来なかった。
その一方で守備面は後半には大きく改善されて、真ん中でしっかりブロックを作って浦和のパスをサイドにサイドにと押し出し、決定機を作らせていなかった。
この点から考えると、少々アンラッキーとも言える形で先制されたが、同様に一撃必殺とも言えるセットプレーから追いついたのは、フェアな結果であったと感じる。

ファスト・ブレークと言う言葉で表現されることが多いFC東京だが、今日のような形で相手からプレッシャーを受け続けてしまうと、やはりこれまでと同じく中盤の駒が不足していることが如実に現れてしまった。
シルバ、安部、東の3人は守備面においてはそれぞれが違った個性を持っており安定した力を見せるが、攻撃面においては状況を打破するパスやドリブル、という点では不足が感じられる。
今日のような試合になると、中盤の選手がシンプルなプレー(ファーストタッチやパスやドリブル)でプレッシャーを1枚剥がせるかどうかで局面が大きく変わるので、ベンチも含めてその役割を誰に担わせるのかが優勝を目指すには不可欠になってくるだろう。

本来であればワンタッチのパスで局面を変えられる高萩が適任ではあるが、守備の強度面で先の3人に劣るだけにスタメンでは使いにくい。
となると今日もセットプレーからアシストした三田が鍵を握る選手になるかとは思う。
5人の交代枠を使える今シーズンだけに、中盤の構成を変えることでどうゲームの流れを変えることができるのか、ベンチワークが問われるシーズンとも言える。

個人的には今日の引き分けは満足と言える結果だった。

あと付け加えておくならば、新加入の渡辺凌は十分にやっていたと思う。
浦和の小泉ほどのインパクトではなかったが、ワンタッチで日本代表歴もある山中を交わしてドリブルするシーンなど、変化を作れる選手である可能性を見せてくれたし、守備面でもサボらずによく上下していた。
チームとの連携もこれから上がってくるだろうが、中にカットインするような動きが増えてくると、攻撃に迫力を与えられるようにもなるので、これから自由度も上げてプレーしていって欲しい。
この試合で見れた唯一の良い攻撃ポイントだったかな、という感じだった。

Match Prediction / Premier League Leeds United vs Aston Villa

Footballic Match Preview

Premier League リーズユナイテッド vs アストンヴィラ

出張があったとはいえ、1日4投稿ってやっぱりだめね。
投稿も仕事も先延ばしにせず少しずつでも前に進めましょう・・・。

リーズ贔屓の当サイトが、なるべく平たく試合を予想していきます。
データ、ここ最近の両チームの調子などを見ながら、当日の予想を展開します。

振り返り

前回の両者対戦は昨年10月24日、アストンヴィラホームの試合。
あれよあれよとバンフォードが後半にハットトリックを決めて3-0でリーズが勝利。
ただしヴィラはその後立て直して堅実な守備から現在8位。
リーズは出入りの激しい試合が多く、その後塵を排して10位。
リーズにとってはトップハーフを確実にするための戦いが続きます。

予想

直近のリーグ戦5試合を比較してみると、
 ・アストンヴィラ:WLWDL
    ・リーズ:LWLLW

アストンヴィラの強みは連敗をしないところだろう。
今季ここまでの連敗は2連敗が2回のみ。
相手なりに戦える力があり、またきちんと修正して勝点を拾えるところが強み。
失点平均もリーグ戦で1.13、アウェイに限ってはしっかりと守備を固めて臨むことが0.83ということからもわかる。

一方のリーズは大味な試合が多く、失点平均はリーグ戦で1.72、ホームでは1.33となっている。
得点を見るとアストンヴィラのリーグ平均/アウェイ平均は1.61/1.42、リーズは1.72/1.58.。

基本的にはどちらも失点する可能性が高い、と読み取れる。

では今回はもう少し掘り下げてみて、それぞれのホーム、アウェイの5試合状況を見てみると、リーズは5試合で3勝2敗(8得点/3失点)でその3勝は全てクリーンシートと守備陣の状況が上向いている。
アストンヴィラはというと、アウェイ5試合は1勝1分3敗(3得点/7失点)でそのうちクリーンシートは2試合。
攻撃的に出るリーズと守備を固めて入るヴィラ、という構図が想像できる。

ではデータからもう少し見ていくと、双方の前半の得点確率はリーズ:ヴィラ=42%:50%、後半は58%:67%。
同様に前後半のクリーンシート確率を見ると、前半はリーズ:ヴィラ=42%:75%で、後半は57%:67%となる。

データ的にはリーズが勝つ見込みは極めて少ないように感じる。
勝てるとするのであれば、前半を無失点で切り抜け、後半先制点を奪って無失点で抑えるよりない。
ここ最近のホームでのクリーンシートが多いことを考えれば期待はできる。

ただ、ヴィラも上位以外には連敗しないことを考えると、拮抗した試合になるだろう。

ということで予想は・・・

◎本命:1-2 アストンヴィラ勝利
○対抗:1-1 ドロー
▲大穴:3-0 リーズ勝利

リーズが勝つなら複数得点しかなく、その勝負がつくのは後半になるかと。
逆に先制点を奪われると相当に苦しい試合運びを強いられることになりそう2

観戦ポイント

アストンヴィラが中5日で臨むのに比べてリーズは中3日。
このインターバルの差はかなり大きそう。

フォーメーションはアストンヴィラは4-2-3-1で、ジャック・グリーリッシュの出場が微妙。
前回対戦時にもフィリップスがいなかったことを考えると、リーズは4-4-1-1で中盤をストライクとクリヒで構成する形になるかもしれない。

ヴィラが両ワイドの攻撃的な選手をどう組んでくるのか、によってリーズの出方も大きく変わるだろう。
左のワイドに順応しつつあるトラオレを配してきた場合は、アリオスキとダラスを縦に並べてトラオレを封殺しにかかりにいくかもしれない。
その場合ヴィラの左ワイドはエル・ガジかグリーリッシュ。
どちらのパターンであっても相対するのはラフィーニャとエイリングで、ヴィラの左ワイドが上がった裏のスペースを、真ん中も使いながらラフィーニャで攻める、またはロバーツが流れて起点になるなどの構成が取れる。

リーズにとってみれば最終ラインにジョレンテが復帰し前節で90分こなせたことで、ストライクを前で使うこともできるし、最終ラインに入れてCBを3枚並べてブロックを作りながら前半を乗り越えて後半から勝負というオプションができた。
そのためこの試合で取れる方策は単純な4-1-4-1は取らずに、4-4-1-1のような形でスタートする可能性もあるし、前々節に結果を出したシャクルトンを起用して、ヴィラのダブルボランチの間を埋めてくる可能性もある。

この試合もやはり中盤からサイドの攻防から目を離せない試合になることは間違いないだろう。
中5日のヴィラはグリーリッシュの状況次第だが、どちらにせよトラオレがヴィラの攻撃の鍵を握るので、そこへの供給源をどう減らすのか。
対するリーズはラフィーニャが違いを生み出すだろうが、そのためには中盤でどう時間を作るかが重要になってくるので、誰を配置するのかが非常に重要になる。
クリヒかシャクルトンか、クリヒを休ませるのか使うのか。
ワイドはハリソンかアリオスキか。
用兵によってリーズの狙いは変わってくるが、鍵を握るのはヴィラのダブルボランチとそこに対峙するリーズの中盤になると予想する。