Match Review 2021.3.17 FC東京 vs 湘南ベルマーレ
「あ、勝った」
本業は来年2022年1月までの在宅勤務が早々に決まっており、なかなか外出機会もないのですがこの日はお客様先へ。
その後同僚と軽くビールを煽っていたため帰宅後当日に観れたのは前半のみ。
就寝前に思ったのは「まあまあ酷いよね」ということでした。
試合後FC東京長谷川監督も「大丈夫かなと思った」と言っていましたが、本当に前半をリードで折り返せたのはラッキーだったかなと思いますし、そういうラッキーをしっかりと勝点3に繋げられることが大事とも言えるでしょう。
前節のレビューでも記載の通り、FC東京はローテーションをしながらシーズンを進めてチームを固めていく、ということを長谷川監督も公言していますので、それを前提としてこの試合を振り返ってみたいと思います。
湘南 - お手本のような得点
第3節の対戦相手神戸と同様に湘南がすごく良かった、というのはあまり感じませんでした。
FC東京がよく言えばゆったりと試合に入ったことを考えると、もっと前半の段階でいろいろなことがやれたのではないかな、と思います。
後述しますが全体が間延びして試合に入ったFC東京ということもあって、ミドルサードでボールを握れるシーンが非常に多かった前半でしたが、湘南もどうしても「早く前に」の意識が強くミドル〜ロングパスで局面を優位にとしては2ラインでブロックを作ったFC東京に跳ね返されて、という繰り返しでした。
遅攻になった時にどう組み立てるのか、そこはFC東京と似たプレースタイルを持つチームだけに課題を同じものだな、というのが正直な感想です。
むしろ後半の選手交代を境にしてチーム全体に推進力が生まれ、ボールをしっかりと握りながら最短のルートを探して早く東京ゴール前に向かっていく、という意識が感じられました。
リードを許していた状況であることもありますが、3人目、4人目の動きがしっかりと見て取れるようになり、攻撃に迫力が生まれたことは今後の試合にも繋がる収穫だったのではないかと思います。
その中で2点目の高橋諒の得点は湘南にとって、また同時にFC東京にとってもお手本になる素晴らしい形での得点だったと思います。
それまでは高橋諒へパスが出ると縦に縦にの攻撃が多い状況でした。
縦に、という意識は相手DFラインを押し下げ、そこからのクロスによって相手DF陣はボールと人を同時に見ることを難しくさせられるので、非常に効果的ではあります。
同時にしっかりとペナルティエリア内にブロックを作られてしまうと単に跳ね返されてしまいシュートに繋がらない、というマイナスポイントもあります。
なので僕個人的には縦に縦にの攻撃の連続というのは得点の期待値を下げるものだと思っています。
本題に戻しましょう。
ただ高橋諒の2点目が素晴らしいのがその「縦に、縦に」でマッチアップする中村拓に完全に自分の意識を植え付けたことに始まります。
これまでサイドで起点となっていた高橋がダイアゴナル(斜め)にペナルティアーク近辺まで走り込んだことによって、「マッチアップ、マークするのは俺だ」と意識づけられた中村拓も釣られて一緒にポジションを絞ってしまいました。
この動きによりペナルティエリア左サイド(FC東京にとっては右)がガラ空きの状態となり、高橋のポストプレーからそのスペースを見事に使われることとなりました。
このスペースを使われた時点で「詰んだ」と言えるプレーでした。
しかもこの形は湘南にとっては得意の速攻ではありませんでした。
ファイナルサードに入るところから一旦下げ、繋げた状況からミドルパスで高橋に楔のボールが入っています。
要は速攻かつ縦がダメなら中を使ってみよう、更にはダイアゴナルに中に入ってプレーしてみよう、その高橋の意識が非常に美しい崩しを生みゴールへと繋がりました。
湘南にとってもFC東京にとってもこのダイアゴナルに動いて相手を撹乱させながらパスを引き出す。
それによって空いたスペースを使って崩し切る、つまりは不均衡を生み出すという意味で今後に繋がる非常に重要なプレーだったと思います。
この試合で生まれた5点の中で最も美しいゴールだったと思います。
あとは客観的に欲を言えば、FC東京の同点弾の場面、渡邊凌のシュートに対してGKの谷にはしっかりと倒れてセーブをして欲しかったですね。
DFがブラインドになった可能性はありますが、手でセーブに行くことで不用意なところにボールがこぼれることとなってしまいました。
まだまだ若いGKですし、ミスをしない選手はいませんので、あのプレーを振り返って日本代表への道を歩んで欲しいと思います。
東京 - 別の選手、別のサッカー
個人的にはシーズン序盤にローテーションを重ねてチーム全体のコンディションをあげる、という作戦には異論はありません。
次元の違う話になりますが、僕はFootball Managerというサッカーシュミレーションゲームが昔から好きでして、好きなチーム(大体ラツィオからリーズ)の監督になっては移籍市場での選手獲得から戦術までを懸命に考えてゲーム内でのシーズンを過ごします。
この場合においても、チームを構成する際には「この選手が怪我でダメならこの選手。それでは弱いからここは補強をしよう。」とか「この選手は決定力は高いけどスタミナがないので、この選手と後半に交代させるまたは逆を基本にしよう」とかを考えるわけです。
このゲームには選手のコンディションやマッチシェイプ(試合に臨むだけの力)があるか、などのパラメーターがかなり細かく設定されていますので、そう考えルトやっぱり試合の中で出来る限り多くの選手を使いながら一試合でも早く全体のコンディショニングを向上させよう、という思考になります。
ゲームとリアルじゃちげーだろうがよ、と思われるとは思いますが、やっぱり相手があって勝ちたい、それが38とか34とか試合を重ねて優勝を取りに行く、ロングスパンで考えると早期のローテーションによるコンディショニング工場というのは理解をできますし、むしろ同意です。
しかしながら僕が冒頭に述べたように「まあまあ酷いよね」と感じたのは、前節大分戦と比較してです。
前節はインサイドハーフに三田と安部を起用して臨みましたが、この二人が豊富な運動量を武器に相手陣内高い位置でのプレスの原動力になっていました。
それと同期を取るようにディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトン、渡邊凌が連動してハイプレスをかける姿は「ああ、そうそう。FC東京のサッカーってこういうスタイルだよね。」と思えるものでした。
それがメンバーが変わると全く異質のサッカーとなってしまい、田川、ディエゴ、渡邊の3人がフォアチェックに行っても後ろが全く連動をしない上に、DFラインが押し上げてこないため全体が間延びして中盤にスペースが生まれてしまっていました。
そこに入るルーズボールを湘南に拾われては主導権を渡すというのが前半の大まかな流れだったと思います。
意図して相手にボールを持たせてサイドに追い出して絡め取る、ということが意図されたポゼッション放棄であれば納得もできます。
ただ、この日のFC東京の試合への入り方は「失点しないようにしよう」という守備陣と「いつものサッカーをしよう」という先述の3選手との意識の乖離が見えるものでした。
これを感じた段階で僕は「選手が変わるとサッカーが違うってのは、ローテーション云々以前の問題じゃないか?」と思ってしまうのです。
これは大分戦後半の選手交代後に全く違ったサッカーになってしまったことにも繋がります。
ディエゴ、田川、渡邊凌の頑張りを中心に勝利することができた試合だったので、ローテーション、コンディショニングを重視した中で結果としては良かったと思います。
ただ、それとやるサッカーが異なるというのはまた別の次元の話です。
このポイントをコンディショニングと共に統一させていかないと、結局起用する選手によってサッカーがまちまちになってしまい、個人の技量で勝てるか勝てないか、というこれまでのFC東京の「ブラジル人よろしく!行ってきて!」から脱することはできないでしょう。
そして先述したように、この日湘南の高橋諒に喰らった同点弾のような形をワイドの選手がつくり、そこにインサイドハーフの選手が絡んでいければ、得点60という目標も絵空事にはならないでしょう。
ただ、コンディショニングを進めながらもこの日の前半のような試合をしていると、他のチームだってコンディションは同様に上がるんです。
どうなるかは自ずと分かることかと・・・。
4月3日に何が観れるのか
3月21日には仙台戦が行われます。
調子の上がってこない仙台に対してはFC東京は勝利を期待されるでしょう。
ただ、ここまでの5試合を見る限り、長谷川監督はここまではこれまでのスタイルを崩さずにローテーションで臨むものと思われます。
それはこの試合後のインタビューでの「次の試合で厳しい連戦も終わります。」という言葉からも覗くことができます。
それを前提と考えると、厳しい連戦が終わった後の4月2日アウェイ名古屋戦から本腰を入れ流、つまりは今シーズンを戦っていくスターティングメンバーが誰なのかが姿を表すものと予想します。
前線はディエゴ、レアンドロが当確だとすると、残り1枚を渡邊、田川、アダイウトンで争うのでしょう。
中盤は長谷川監督の諸々のコメントから森重のアンカー起用はどうやら大前提として、安部は当確。
残り1枚を東と三田、シルヴァで争う形か。
最終ラインは渡辺剛とオマリを中心にしながら、蓮川、岡崎、まだ見ぬウヴィニの争い。
サイドバックは代表選出された小川が一歩リード。W中村の争いもあるでしょうし、蓮川、岡崎の可能性も残るかと思います。
いずれにせよこのローテーションでコンディショニングを高めたチームが2週間弱の期間でどこまで研ぎ澄まされるのか。
3月28日のルヴァンカップも一つの材料として使うことを考えると、今季のFC東京の真価を問うのは4月3日豊田スタジアムと言っていいのではないかと思います。
あと2週間以上あると考えるか、あと2週間ちょっとしかないと考えるか。