Match Review 2021.2.27 Leeds United vs Aston Villa

ゴールが生まれる気がしない反撃

Jリーグが開幕し、サッカーオタクの週末は多忙を極めることとなる。
何時からどの試合を診て、その次にはこっち、ご飯を食べて子供と遊んで、風呂に入れて寝かしつけたらこっちとこっちの試合を・・・。
そうやって週末に4~5試合をフルタイムで観ていると、なんとなく試合の流れが予知できるような能力が身につく。

この日はFC東京、リーズユナイテッド、ラツィオと応援しているチーム全てが同じ展開になり、更には興味で観ていたFC琉球vsジュビロ磐田でもジュビロが同じ展開になった(特にジュビロを応援しているわけではないのだけど、元J1覇者がJ2というのは寂しく少々肩入れしてみていた)。

全てのチームが先制され、うちリーズ、ラツィオ、磐田は前半早々に、それを追いかけて圧倒的なボール支配で攻撃を仕掛ける。
ボール支配を行わなかったFC東京だけがセットプレーから追いつき、他の3チームは試合を支配しても最後まで追いつくことは愚か得点すらあげられなかった。

見ていると自然と口走る。
「あー、相手がこれだけブロックを作っては単純にクロスを上げるだけじゃダメだ。」
「シュートも苦し紛れに遠目からになりがちだよ。」
なんとか追いついて欲しいものの、見れば見るほどピッチ上の選手の必死さとは逆の精神状態に陥る。
「ダメだこりゃ。このままじゃゴールは生まれんよ・・・。」

上手く穴を突いたヴィラ

キックオフ直後はアストヴィラペースだった。
通例通り4-1-4-1でスタートしたリーズに対してアストンヴィラも4-1-4-1の布陣を敷いた。
通常通りの4-2-3-1だとどうしてもトップ下のバークリーがストライクにマンマークで付かれてしまい攻撃が手詰まりになる、という判断なのだろう。
合わせ鏡のような形で序盤の主導権を握ると、両ワイドのトラオレ、エル・ガジがストライクの脇にできるスペースに飛び出し、そこにラムジーやマッギンの両セントラルミッドフィールダーが絡んでいくことで、リーズ守備陣はマーキングを見逃さざるを得なくなった。

特にエル・ガジの動きは秀逸で、サイドに張るばかりではなくトップ下の位置に入ったりと、本来のマーカーであるエイリングを混乱させ、最終ラインから上手く引き摺り出すことに何度も成功していた。

アーセナルに4-2で敗れた時も同様だが、マンマーキングで対応するリーズの守備を混乱に陥れには、こういったスペースにワイドの選手がダイアゴナル(斜め)に走り込んでボールを受け、シンプルに次のパスを出すことを繰り返されると、対応するディフェンダーは行き先に迷い混乱が生じる。
その虚を突いてゴール前に選手がなだれ込む、というのがリーズ攻略の最も効率的な手段だ。
この日のヴィラも同様の形で容易にリーズゴール前を陥れ、ビエルサは意図したゴールではないと記者会見で評したが、いずれにせよ自由自在に動かれたエル・ガジのボックス内侵入を簡単に許し、ゴールを演出されてしまった。

この日のヴィラにとってはこの早い段階での先制点で十分だったのかもしれない。
試合前予想でも述べた通り、アストンヴィラの前後半でのクリーンシート率は高く、失点数もマンチェスターシティ、チェルシーに次ぐ26失点でリーグで3番目の少なさだ。
得点数が上がればトップ5入りも狙えるだけの守備力を持っているだけに、先制さえ出来れば守り切れるという公算はあったかもしれない。

ディーン・スミスは地味な監督ではあるが、守備から計算してチームを上手く構築していると思う。
守勢に回らせると非常に厄介なチームであることをこの試合で改めて表現しつつ、しっかりとリーズの穴を突いて勝点3をもぎ取っていったことは悔しいが当たり前の結果であったとも言える。

不足が浮き彫りになったリーズ

開幕前、そして冬の移籍市場においても中盤の攻撃的な選手の補強が噂をされては実現しなかった。
その不足がこの試合でも露呈したと言える。
これまでの敗戦はどちらかといえば「リーズらしい殴り合い上等」の戦い方で評価を上げてきたが、この試合のラストパスの精度の著しい低さはこの補強ポイントを改めて中盤の質向上を表現するものだった。

無論クリヒもロバーツもいつも通りよく走り、タフにデュエルを挑んでいた。
しかし、アストンヴィラに2ラインのブロックをしっかりと構築され、両者が中央からペナルティエリアを目指すパスは完全封鎖され、完全にバンフォードが孤立を強いられる形となった。

リーズの期待は個人技に秀でたラフィーニャだけとなり、チームのラストパスが通らなければ通らないほど、ラフィーニャのドリブル力に期待を寄せるばかりに。
もはやビッグクラブのターゲットとも噂され始めたラフィーニャの力量を認識しているアストンヴィラ守備陣はラフィーニャに対して3人をぶつけ止めに掛かる。
それでもなおラフィーニャはその状況を打開してしまうのだから頭が下がるのだが、残念ながらその後のパスもヴィラがゴール前に展開した城壁を破るには至らなかった。

懸命にサイドから、中央から崩しにかかるリーズだったが、ラフィーニャ以外にビエルサがいうところの「守備の不均衡」を引き起こせる選手がおらず、ただただクロスもパスも弾き返されるばかりだった。
ボールロスト総数102回のうち実に半分の51が相手ファイナルサードでのものだというデータから考えても、ビエルサが記者会見で繰り返し述べたように、このファイナルサードでの正確性を欠いたことは明らかだ。
攻め込んでいても入る気がしない。シュート総数12に対してオン・ターゲットは3本のみ(アストンヴィラは7本で4本が枠内)。ポゼッションしての攻撃回数が38回のうちシュートまでいった攻撃は4回(アストンヴィラは19回で4回)。
いかにポゼッションという数字や主導権を握る、ということだけでは価値に結びつかないかがよくわかる試合だった。

0

1

得点

得点

アンワル・エル・ガジ(5′)

In/OutPos.LeedsAston VillaPos.In/Out
GKイラン・メリエエミリアノ・マルティネスGK
LBスチュアート・ダラスマットターゲットLB
CBリアム・クーパータイロン・ミングスCB
CBディエゴ・ジョレンテエズリ・コンサCB
RBルーク・エイリングアーメド・エル・モハメディRB
Out(53')DMパスカル・ストライクマーヴェラス・ナカンバDM
LMラフィーニャアンワル・エル・ガジLMOut(88')
CMマテウシュ・クリヒジェイコブ・ラムジーCMOut(79')
Out(71')CMタイラー・ロバーツジョン・マッギンCM
Out(64')RMエウデル・コスタベルトラン・トラオレRM
CFパトリック・バンフォードオリー・ワトキンスCF
SubSub
GKキコ・カシージャトーマス・ヒートンGK
DFリーフ・デイヴィスニール・テイラーDF
DFナイアル・ハギンズビョルン・エンゲルスDF
In(53')DFエズジャン・アリオスキートレゼケMFIn(88')
DFチャーリー・クレスウェルモーガン・サンソンMFIn(79')
MFジャック・ジェンキンスドゥグラス・ルイスMF
In(64')MFジャック・ハリソンロス・バークリーMF
In(71')MFパブロ・エルナンデスケイン・ケスラー・ヘイデンMF
FWジョー・ゲルハートキーナン・デイヴィスFW

Marcelo Bielsa Post Match Press Conference – Leeds United vs Aston Villa

多くのチャンスがあったが最後のところでのパスの正確性を欠いた

非常に厳しいサウサンプトン戦からの連勝を狙ったアストンヴィラ戦。終始試合の主導権を握りながらも決定機を作れず0-1で敗戦した試合について「パス、クロス、ボックス内全てにおいてパスの正確性に欠けていた」と評した。
また、「本来は引き分けが妥当な結果だったが、誰が勝者になるべきかと言われればリーズだ」ともコメントしており、この試合の結果に関して珍しく悔しさを直接的に表現した。
Leeds Liveのプレスカンファレンス記事を拙訳)

今夜はあなたのチームからは印象的なパフォーマンスがありませんでした。なぜ今日はトップギアにあげられなかったのでしょうか?

試合の中では、我々は相手チームよりも良いプレーをしたと思っている。我々は大半の時間を支配し、支配される時間も極めて少なかった。前半は相手が得点をしたが、我々は相手よりも多くのチャンスを作った。

あのゴールは意図したものではなかった。シュートを打った選手がスリップしてボールを要求していない選手へのパスになった。
一般的には前半は我々は与えられたチャンスを活かすべきだった、しかし我々は後半のように前半はうまく守ることができなかった。
後半は我々は非常によく守備ができた。後半の大半でボールを握っていたが、(相手にとって)危険なシーンを作れなかった。

常に相手のペナルティボックスで攻撃を終えていた。カウンターアタックは仕掛けていない。我々は相手のファイナルサードでボールを失ってしまっていた。全てのワイドからの中央へクロス、パスが不正確だった。多くの機会があったセットプレーでは相手のバランスを崩すことができなかった。

まとめるならば、我々が負けるに値しない試合だっただろう。引き分けというのが妥当な結果だと思っている。そして勝者を決めるならばそれは我々だったと思う。

あなたの意見には同意で、支配率が高いことで前半に6度のゴールチャンスがあり、それはチャンスの数としては良い数だった。後半には完全に支配をしたが、1度しかゴールチャンスを作れなかった。

エウデル・コスタが久々の先発でしたが、彼についてどう思いますか?彼のパフォーマンスには喜んでいますか?

攻撃において相手のバランスを崩すことは非常に難しかった。彼は前半の攻撃には完璧に絡んでいた。後半の最初の15分に我々は相手を危機に陥れるのが難しかったので、ハリソンを入れることにした。

後半に相手が強固な守備をしたことをどのように捉えていますか?

二つの考え方で答えたい。私がアストンヴィラの守備を評価しなければならないのであれば、彼らはよくやったということだ。しかし私は我々の攻撃の仕方を検証したい。我々、たくさん、たくさん、たくさん攻撃を仕掛け、それはポジティブなことだだが、ただ我々はファイナルサードでボールを失った。

ファイナルサードでボールを捨てるということは、ファイナルサードでの正確なパスが必要だということだ。ペナルティのサイドからであろうが、外側であろうが、中であろうが関係ない。それは相手チームが我々の最終パスをよく守ったとも言い換えられるだろう。もしくは最後のパスにおいて創造性と正確性が欠けていたとも言えるだろう。

私たちはハーフタイムであなたが変更を加えると考えていましたが、そのつもりはありましたか?

ない。

ハリソンを先発から外した理由はなんですか?なぜこの試合で彼をスターティングメンバーから外そうと思われたのでしょうか?

いや、サウサンプトン戦の後半でのエウデル(コスタ)が彼をスタートから使うことが良いと私に思わせただけだ。

(アストンヴィラGK)エミ・マルティネスと試合前会話されていましたが、どんな言葉をかけたのでしょうか?

ただ挨拶をしただけた。同郷だから。

次節のウェストハム戦まで9日あります。怪我をしている選手が戻ってくるということはありますか?

この先9日間について話すということは少々リスクがあるだろう。

チームにとってプレミアリーグで一貫性を保っていくというのはどれほど大事なことでしょうか?

私は我々の全ての試合を分析している。今日は連勝するためには素晴らしく良い機会だった。我々は負けるに値しない試合をしたのだから。 大事なことはきっちりと試合に勝つことだ。試合に勝たなければ勝利を積み上げることはできない。我々の連勝を妨げるものは我々が今日やってしまったこと、ということそだと説明したい。

次の試合まで長い時間があります、9日です、ここ数週間多くの仕事量をこなした選手たちにとってはどのようにこの時間を使うのが最良でしょうか?

多くの目的がある。怪我から回復している選手をチームに戻したい。イライラしているような選手であればそのことを解決しなければならない。概して言えば、この9日間でチームは少々の休みを取ることになるだろう。

ヴィラの左サイドバック、マット・ターゲットが警告後にもピッチに立ち続けられたことはラッキーだったからだと思いますか?

君が言ったことにコメントするということは、審判のパフォーマンスについて私が評価をしなければならないといことなので、これ以上首を突っ込みたくはない。

アストンヴィラの2人のセンターハーフですが、どんな印象を受けましたか?そして彼らはリーズの「ファイナルサードでの難局」にどれだけ貢献していたのでしょうか?

既にこの質問には答えている。私がアストンヴィラに責任を持っているのであれば、彼らは非常によく守った。しかし今日起こったことについてリーズの監督という立場から言えば、対戦相手のことではなく自チームの長所を見極めるのが当然のことだ。これまで行ってきたように、我々には最後のところでのパスが足りなかった。最後のところで相手を崩す想像力に欠けていた。.ペナルティエリア内にクロスを入れるべきところでの正確性に欠けていた。通常の場合、私自身は試合で起きた特定の事柄について語ることは好きでない。特にそれらが相手の長所であるなら尚更だ。明確なのは、彼らが後半はよく守ったということだ