様々に指摘されている事項がなぜ修正できないの?
川崎戦のレビューを最後になかなかサイト更新をできない状況にいましたが、試合については全て観ています。
このリーグ5連敗もしっかりと自分の目で確認をしていますし、各種媒体でどのようにその敗戦が評されているのかも可能な限り目を通しています。
いつもは試合のレビューですが、今回はリーグ5連敗の背景にどんなことがあるのか、を自分なりに、4種とはいえどもコーチ陣を従え監督をしている身も踏まえて考えてみました。
今回の考察は「どうして各種媒体=外から見ている人間が一様に指摘しているポイントをチームが修正できないのか」という僕に内在する疑問に端を発っしたものです。
また、チームの選手起用などについて思う部分は除しています。
6連敗したら怒りに任せてぶちまけるかも・・・。
そんなことにならないように祈ってます。
縦長なチームバランス
各種媒体やファンの評価として言われている連敗の要因は「全体の陣形が縦に長い」ということです。
この点は僕自身も感じる部分です。
とはいえ、縦長になるとどんなデメリットがあるのか、について論じられたものを目にしたことがないので、自身の整理の意味も含めてまとめてみます。
縦に長い、というのは一般的にはDFからFWまでの距離が長いということです。
これによって、守備時にMFとDFが形成する4-4の2ラインでボールを絡め取ったとしてもトップまでの距離がないため、ボールホルダーはどうしてもボールの出しどころを探してしまうことになります。
その間に相手のカウンタープレスが開始され、苦し紛れなパスになり再び自陣でボールを奪われる結果となってしまい、どうしても相手陣内に押し込めない結果となります。
こういった問題はどんなカテゴリーのチームでも起こるものです。
ではこの解決はどうすべきかのでしょうか。
答えとしては非常にシンプルで、前線(FW)と守備陣(最終ライン)の距離を40m前後(いわゆるコンパクトな陣形)でプレー出来るようにトレーニングをすることです(ただでさえ長いのがさらに長くなるので、トレーニングメソッドについてはここでは言及しません)。
ただし、この場合いわゆる「ファストブレイク」と称されたカウンターを繰り出すには、前線の選手が走る距離がこれまでに以上に長くなり、相手DFが深いポジショニングを取っている場合は数的優位を築けないというリスクが立ちはだかりますが、長中距離のパスに比べると短距離のパスの方が成功率が高いことを考えれば、カウンターができない理由にはなりません。
縦長が修正できないのはなぜか
修正ポイントを指摘することは非常に簡単なのですが、実際にその修正を施すためには、意外と骨が折れるものです。
なぜならば縦長になってしまう理由には、それぞれの選手の意識が介在するからです。
では、その選手の意識を考えてみます。
守備面においては以下のような負の連鎖が起こっていると思います。
- 守備が硬い、という印象のFC東京が失点を重ねているがために、守備陣は失点をしないこと、が第一義になっている
- それが故にラインを上げることよりもしっかりとリトリートしてペナルティエリア前で最終ラインを形成することが最初の意識になる
- 失点をしないことが優先されるだけに、ゴール前を強固にすることに意識が行っているため、相手サイドのボールに対してのチャレンジがサイドバックまたはサイドハーフでの対応となっており、DF陣全体がボールサイドにスライドして守備ができていない
- 全体がスライドして守備をしていないため、いわゆる「ボールの逆サイドを捨てる守備」ができず、守備の横の幅も自ずと長くなってしまう
- 守備幅も広がることで、ピッチ中央部からサイドにあるボール自体に意識が行ってしまい、センタリングに対するペナルティエリア内の相手選手マークが甘くなりズレて失点機会に繋がる
- せっかくボールを奪ってもトップへのロングパスが通せずにセカンドボールも相手に吸収されてしまい、シュートまでに繋がらないので、ショートパスを繋ぐ意識が高くなり、さらにラインを押し上げられなくなる
守備陣が失点をしないように、しないように、と意識をすればするほどこのような負の連鎖が生じて全体のバランスが崩れることはよくみられます。
負けが込んでいるチームでは尚更です。
では、最前線であるFWや中盤の意識はどうなのでしょうか。
- 「ファストブレイク」の要である最前線からのプレスは実践しなければならない
- しかし、先述の通り守備陣のラインを上げる意識が希薄になっているがために、最前線がプレスをしてパスコースを限定しても相手中盤選手がフリーでボールを受けやすい状況となっている=いわゆるFWとMFでのプレスに連動性がなくなっている
- 連動すべき中盤の選手も守備意識を持つメンバーと、FWのプレスに追従するメンバーとが存在してしまうため、どうしても中盤にスペースが出来てしまう。
- そのため、相手選手が最前線のプレスを掻い潜るだけの余裕があるため、ポゼッションを求めないFC東京のサッカーとしては、さらにポゼッションが低下して苦しい状況に陥る
といったことが起こってしまいます。
つまりは、個々のポジションにおいて個々に割り当てられているタスクをしっかりとこなしてはいるものの、それぞれの意識差によって全体として連動できないという事態陥ります。
この事態によって、それぞれのポジションでは「余計なタスク」が増えることになります。
- サイドバックの場合
- 守備から攻撃までの長い距離を走り、攻守にサポートをすることがタスク
- 非コンパクトが故に最前線までの距離が長くなれば、必然的に走る距離は長くなる
- その長い距離をスプリントする、ということは体力的な消耗が激しくなる
- その上後方からのロングパスが相手守備陣に引っかかると、前に出ては戻る、という動きが増えてしまう
- FWの場合
- も守備陣がボールを奪った瞬間に動き出しを行い、攻撃の起点を作ることがタスクになっている
- ロングパスが届かなければ、距離的に一番近いFWの選手がプレスバックしに戻らなければならない
- そのため、本来のポジションから離れることを強制され、ボールを奪えた時にパサーからすると「会いたい時にあなたはいない」状態に
- 中盤の場合
- 守→攻への展開と前への推進力 がタスク
- 最前線と最後尾のギャップが広がると、そのギャップを埋める中盤の運動量も飛躍的に増加する
- 間延びしているために自分達も適切なポジションを取れずセカンドボールを拾えないがために、ボールを奪うことに必定以上の体力を使ってしまう。
- 守備に追われるために精神的にも守備面のタスクが占められてしまい、ボール奪取しても過度に攻撃への意識が働き無理なパスをトライしてしまう
こんな感じで各々のタスクに不要なタスクが付加されてしまい、本質的なタスクをこなすよりも目の前のタスクをこなすことに懸命になり過ぎてしまう、という状況に陥っているように捉えています。
現状では解決できないのでは?
と、ここまでみてきたように、メディアやファンが見ても明らかな縦長な状況についての解決策は何か、というと、それを修正するように選手の思考を解きほぐして、戦術トレーニングを積み重ねるしかありません。
ただ、それがこの5連敗の中で全く改善されない、むしろ酷くなっているということから考えると、「そういうトレーニングをしていない」というのが現実的な想像なんだと思います。
なぜできないのでしょうか?
恐らく、原因であるポイントを指摘し、トレーニングに落とし込めるコーチングスタッフの不足に行き着くかと思います。
なぜそういう考えに至るのか、というと、監督の特性というかキャラクターに起因する部分があると思います。
世界各国、色んなカテゴリーで監督という人はいますが、大別すると根元は以下の2パターンになるかと思います。
- 自身で戦術に基づいたトレーニングを仕切り、選手の動きにも細かく注文をつけるタイプ
- 過去のFC東京の監督で言えば大熊、城福、フィッカデンティ
- 大まかに目指すサッカーとコンセプトを定義し、具体的なトレーニングはコーチングスタッフに(ある程度)任せるタイプ
- 過去の監督では原、ガーロ、ポポヴィッチ(ポポヴィッチは両者の特性を持ち合わせているタイプかもしれませんが)
前者は選手とも直接的にコミュニケーションを取るタイプで、良いプレー、悪いプレーも選手に直接伝えるタイプです。
つまりは選手との距離感は割と近いタイプでしょう。
後者は選手との間に一定の距離を置いて、コーチングスタッフを通して自分の考えをを伝えてもらうタイプと言えます。
僕自身のイメージとしてですが、長谷川監督が後者のタイプと捉えると、必要になるのは選手と監督の間を取り持つコーチングスタッフだと思います。
カップ戦を勝った2020シーズンは安間、長澤コーチの両コーチがその役目を担っていたと思われます。
特にFC東京での経歴が長く、選手からの尊敬を集めていた長澤コーチは、練習後も選手と語り合う姿が見えたりと、選手に対してのアドバイザーとしての役目を担っていたように思います。
悪いプレーや失敗があればその原因を選手に説明し、居残りでトレーニングに付き合うなどのケアを行なうことで、選手個々の意識とプレーレベルをチームに必要なレベルに上げることに大きく貢献したと思います。
そういった、いわゆる「監督との間の緩衝材」となるコーチがいなくなった2021は、恐らく、恐らくですが、選手が監督に対して直接意見を言い難い環境になっているのではないかと思わざるを得ません。
そう考えると今チームに必要な要素は
- 選手のコンディションや意見について、上司である監督にしっかりと状況を報告し、対策を進言できるだけのサッカー観を持っている
- いわゆる上司である監督の視点を持って実直に討議ができる軍師タイプ(原監督にとっての倉又コーチ)
この軍師的存在がいない、というのは、試合と並行してYoutubeでキャストされている青赤Parkからも感じるところです。
当該プログラムでは羽生、石川の両氏もチームがうまくいっていない原因を直接的に言及しています。
フロントスタッフでもありますが、選手経験値も高い二人が言及しているにも関わらず、その指摘ポイントが数試合にわたって改善されていない、ということは監督までその意見が届いていないのでは?と思わざるを思えません。
よしんば届いていたにしても、長谷川監督自身が抱え込んでしまう形になり、結果的に判断を下すに際して孤立してしまっているのではないかとも言えます(いわゆる「管理職の孤独」という問題)
こう考えると、必要なことは監督交代という短絡的な対処ではなく、選手と監督の間にある見えない溝を解消する策だけでチームが立て直せるようにも思います。
もっと細かいことを言えば、5人となったブラジル人選手と日本人選手の関係性についても同様にパイプ役が不在なのでは、と思います。
解決に向けた想い〜監督交代よりも
ここまで述べてきたように、とにかく選手に対して問題を落とし込んで伝えられ、のかつ選手の声を拾えるコーチの採用または登用が必要になると思います。
現状のスタッフからすると、佐藤由紀彦コーチがその担い手なのかもしれませんが、イメージ含みで適任と思う方を想起すると、選手からも尊敬を集めてており、実績も兼ね備え、率直に意見を言える主将タイプかと思います。
そう考えると、適任は羽生氏でしょう。
忖度なく率直に意見を言う性格、オシムに鍛えられた戦術眼、代表での経験値は個々の選手に対しても、長谷川監督に対しても十分に説得力があります。
次点を挙げるなら、中村忠U18監督です。
長谷川監督とは6つ離れてはいるが東京というチームでの長きに渡る指導経験、及び自身の手で育てた選手も多いことからトップチーム選手の兄貴分になれると思います。加えて、DF出身でもあるので守備面での改善を的確に捉えて上申できる可能性もあるでしょう。
現状での監督交代のリスクを考えると、長谷川監督で乗り切るしかない
通常のシーズンであれば、監督交代という策に対して切れるカードはいくつもあるかもしれません。
しかし、コロナ禍のシーズン途中という状況を踏まえると、国内指導者に目を向けるしかないのが現状です。
その背景を考えると、現状の在野の指導者で長谷川監督以上の経歴を持った指導者はいません。
頼りのカードとして使ってきた大熊氏もFC東京から離れて久しいですし、過去の経緯を考えると再び戻ってくれる可能性は低いと思います。
現状を変えるカードは戦術変更もありますが、まずはチームの状況を変えられて、かつ失われているピースを埋められるカードを切ることでしょう。
また、プレー面を含めて批判を全身で受けることが多いですが、主将である東が今この状況でこそ主将としてどう振る舞えるのか、も試されているタイミングでもあります。
気づいていること、わかっていること、に対してFC東京というチーム全体が取り組んでいけるのか、が問われています。
とはいえ、今我々ファン・サポーターができることはこの球場から一日も早く脱してくれることしかありません。
やまない雨はない。
そう信じて諦めずに頑張りましょう。