Match Review 2021.3.21 FC東京 vs ベガルタ仙台

模索の続く両チーム

春の嵐の影響で朝から激しい頭痛に襲われました。
薬を飲み布団に横たわるだけの日曜日。
眠りに落ちて目が覚めたら16:11。「ああ、試合は終わってしまったな。」と思いながら再び眠りに落ちて、試合の結果を確認するよりも前にFC東京の2選手が内規を破って会食に参加したという残念なニュースを知りました。
これについては特に論じるつもりもありませんが、ただただ残念でした。

そして改めて22日の終業後にDAZNで観戦。
ベストメンバーを模索しながら2勝2敗1引分のFC東京、同様にメンバーを変えながら初勝利を求める1分3敗の仙台。
違う立場で各々のあり方を模索するこの試合、結果は分かりながらもどんな違いが出るのか、楽しみに90分間を観ました。

仙台 - 手をつけるべきは切り替えの意識か

手倉森監督が復帰した仙台。
3連敗と非常に厳しい状況でこの試合を迎え、「もう一度開幕を迎えるんだ」とコメントした通りなんとか巻き返しをしたい、という意識は見えました。序盤の失点を避けるために非常にコンパクトな陣形を保ったことがこの意識を表していたと思いますし、局地的に非常に強度の高い守備をすることからもその意識は手倉森さんらしいサッカーだな、と感じるものでした。

ただ、仙台の試合は開幕戦の広島戦しか観ていないのですが、どうにも守備から攻撃への切り替えの意識が統一されていないように感じられてしかたありません。
この試合でもDFラインでFC東京のボールを奪うシーンがあったとしても、守備と中盤の間に距離があるシーンが多く見られましたし、逆に攻撃から守備に転換する際も、中盤2枚が前線に取り残されてしまい、DFラインとの間のスペースをFC東京にいいように使われてしまっていました。
60分に真瀬がシュート打ったシーンのように、ボールを握れている際は全体がコンパクトになっていて、3人目の動きも多いので非常にダイナミックな攻撃を展開できますが、カウンターに対しての備えと自分達のカウンターチャンスでの切り替えの意識がツーテンポぐらい遅い感じがします。
特にこの試合のように3-4-2-1というか5-4-1のような3センターバック方式を採用する場合は、切り替えのタイミングで中盤だけでなく最終ラインもしっかりと上がって行かないと、どうしても引きこもり方の守備にならざるを得ず、バイタルを自由にさせてしまいます。

65分にDFでビルドアップしているシーンが非常に分かりやすいのですが、東京がボールを奪ってカウンターを仕掛けたところを上手く奪いましたが、DFラインでボールを回している時に戻ってきている中盤は1枚だけです。
結局その中盤1枚へのパスコースを防がれて苦し紛れにロングパスを出して、再び東京にカウンターを与えてしまったのは、全体の切り替えの意識とハードワークがまだまだ浸透していない証ではないかとも思えてしまいます。

仙台も選手を入れ替えながらなんとか自分達のサッカーを形作ろうと模索していると思います。
先にも述べたように、自分達のボールになった時の攻撃の形はやりたい事が見えるサッカーですので、後は攻守の切り替えのところでテンションが上がってコンパクトな陣形を保ち続けられるようになれば初勝利は遠くないように思えます。

東京 - 田川の意識の変化

今日は珍しく一人の選手にフォーカスして見たいと思います。

先制された直後の26分に田川が決めたゴールの形は先にハイライトで観ていました。
アタッキングサードでボールを持ったらゴールに対して最短コースを進む。
右サイドから中にカットインする形でドリブルしてからの見事なゴールでした。

このシーンの残像が残っている状態で試合を観てみると、これまでの試合とは違った田川の意識の変化に気づきます。

そのきっかけは5分の段階でも観ることができます。
このシーンは渡辺が中盤で奪ったボールをドリブルしファールをもらいました。
得点シーンでは森重とのワンツーで相手中盤の裏に飛び出すと、5分と同様にゴール前に入っていき左足を一閃しました。

この二つのシーンを踏まえると、FC東京に不足していた動きを田川が意識していることがよく分かります。
これまでの5試合では田川に限らずFC東京の選手はボールを受けると縦に縦にの意識が非常に強く、それがために相手DFが中心を固めてしまってクロスを入れられない、というシーンが続出していました。
しかし、この田川の動きというのは非常にDFからすると厄介で、斜め(ダイアゴナル)に入ってこられると、一発で取りに行って中にカットインされる可能性もありますし、左利きの田川が相手と考えると、DFから見ると奥の足でボールを持たれていますので、出した足が田川の右足に引っかかる可能性が高いので容易にはボールを取りにいけません。
プレスバックする中盤の選手にとっては、田川の後ろからボールを取りに行く形になりますので、これもまた簡単に足を出してFKを与えるわけにはいきません。
得点シーンにおいては5分のプレーが呼び水となっていることもあり、仙台のDFからすると対処を迷って田川に時間を与えてしまったことは悔やんでも悔やみきれないでしょう。

得点シーン直後の30分には、ディエゴ・オリベイラにボールが入った瞬間に、田川が追い越して真っ直ぐペナルティに入っていくことで、仙台DFはラインを下げざるを得ず、その隙に右サイドを上がった中村帆にボールが渡りチャンスを迎えました。
試合直後に田川が見せた動きが仙台DFに強い印象を与え、その後の同点弾はもちろんのこと、東京が得た数々のチャンスにおいてしっかりと効いていました。

このような田川の動きは、センターに入ったディエゴが仙台センターバックの間にポジショニングを取ることで仙台のDFと駆け引きをしてくれることで出来るギャップを突く、という新たな攻撃の形にも繋がります。
あまり目立たないプレーでしたが、40分に田川がバイタルでボールを受けてDFラインの裏に飛び出た三田にパスを出したシーンも、真ん中でディエゴが存在感を示しているがために田川が少しポジションを落としたところでプレーできるがために観られたシーンでした。

ディエゴと田川。お互いが付かず離れず、守備陣にとっては非常に嫌な距離感で質の違ったプレーをすることで、仙台守備陣を撹乱した良い連携が観られたことはこの試合での大きな収穫だったと思います。
レアンドロの状態が分かりませんが、田川はこの試合でポジションをしっかりと掴んだと思います。

東京はほぼメンバーが固まったか

よもやよもやのチーム・プロトコル違反で2選手が出場できなかったこの試合が怪我の功名となるか、ここまでの試合の中で最も良いサッカーを展開していたと思います。
前節のレビュー最後で、森重アンカーだと中盤は安部が当確としましたが、この試合で見られた三田と東のコンビが望外によかったと思います。
ボールを運ぶ事ができる三田の相手はボールを奪う力のある安部、と思いましたが、三田が動いて出来るスペースのマネージメントを東がきちんとこなしていましたし、その分そのスペースで東がボールを受けると、効果的に深い位置でボールを収めていました。
このコンビネーションに森重が絡むことで、仙台の攻撃を早い段階で潰せていたとおもいます。

攻撃陣も非常に良い形になってきたと思います。
この試合では田川、ディエゴが決めましたが、途中出場渡邊凌もいきな絶好機を迎えましたし、非常に良い動き出しとどのスペースに入るべきか、が良く見える選手だということを改めて示しました。
繰り返しとなりますが、レアンドロの状況がわからないこともありますが、ディエゴを真ん中に両ワイドを田川と渡邊凌でも面白いと思いますし、その交代でアダイウトン、永井というオプションもありでしょう。
ただ、渡邊凌の怪我はちょっと心配です・・・。

守備面ではセットプレーの守備が、と思いますが、そこは割と簡単に修正が効くポイントなので今回は言及せずにおきましょう。

双方模索が続くチーム同士の戦いでしたが、仙台はもう少し時間がかかりそうな印象を受けました。
一方の東京は恐らくはもうスタメン含めてゲームプランの基礎が出来たように感じます。

いずれにせよ、リーグ戦としては1週間以上時間が開く名古屋戦がそのお披露目であろう、という僕の考えは変えずにおきたいと思います。