固唾を飲むドロー
チェルシーはトゥヘル監督就任以降9試合m負けなし(6勝3分)、その内クリーンシートは7試合。
ランパード政権時代が一試合当たり1.25の失点だった事を考えると、トゥヘルが就任して守備から改善が成されたという意味では格段の進歩だろう。
リーズ同様にチェルシーも応援する僕からすると、この進歩は驚きと共に安心を与えてくれているし、何よりランパード解任時9位だった事を考えれば、CL出場権獲得目前の状態までチームが浮上したことからも、トゥヘルが就任後に植え付けた強烈な守備の意識には感心と同様に感謝しかないほどの思いだ。
そんなチェルシーを向こうに回して連敗中のリーズがどこまでやれるのか。
今回は時間がなくてすっ飛ばしてしまった当たらない予想では0-2のリーズ負けの単騎勝負!と思っていたが、いやいやどうして。
リーズもチェルシー同様にハードな守備で結果的には0-0のスコアレスドローとなった。
まさに固唾を飲む90分間。
新旧の戦術家同士によるこのドローゲームは何度でも観られると言える好ゲームだった。
豊富な駒を十分に活用するトゥヘル
前節エバートン戦からチェルシーは大幅に選手を入れ替えてこの試合に臨んだ。
最終ラインにはリュディガー、左右のウィングバックにプリシッチとチルウェル、中盤にカンテ、前線はツィエクとマウントを配し、エバートン戦は3-4-3だったフォーメーションを、リーズの4-1-4-1を嵌めこむ意味合いで4-2-3-1にして臨んだ。
とはいえ、両翼のプリシッチととチルウェルのポジショニングによってはこの並びも3-4-3(3-4-2-1)のような形となり、この流動性がリーズを押し込む形になり試合は進行。
前半は完全なるチェルシーペースで試合が進んでいった。
特に守備力も高いチルウェルを攻撃的に使うことで、リーズの右ウィングでキーマンともなるラフィーニャを自陣深くに押し込み、ラフィーニャを起点にカウンターを仕掛けようとしてもチルウェルがリーズ陣内で即時に対応して奪い返す、というゲームプランは非常に良く練られている上に、それを事もなげに対応するチルウェルの戦術理解度と対応力の高さはこのゲームのハイライトの一つと言っても良いものだった。
更には中盤の底でボールウィニングを主たる目的としてプレーするカンテも頻繁に攻撃参加することで、リーズ守備陣に対して数的優位な場面を構築。
運動量豊富なカンテに対応するためにリーズはダラスをマークに付けて縦横無尽に走らせることで対応。
これによりリーズの攻守交替のスイッチを奪い、より相手陣内でボールを握るという効率的かつ絶対的なサッカーを展開。
ダイナミックなゴール前への雪崩込み、技巧的なビルドアップと新チェルシーの魅力とトゥヘルがやりたいサッカーが全部入りだった前半とも言える。
しかしこの前半に得点を奪えなかったことがチェルシーにとっては勝点2を逃すことに繋がったとも言える。
特に7分、リーズ陣内でボールを奪い右サイドのプリシッチ、ゴール前へのハフェルツへと繋いだ決定機を逸した場面を初め、リーズDF陣の体を張ったディフェンスを掻い潜ることが出来なかったのが痛かった。
この試合前まではトゥヘル就任後のチェルシーは1.78本/試合でしか枠内シュートを許していなかったが、この試合ではリーズに4本を許している。
その点から鑑みると、本来はがっちりと守りボールポゼッションを上げてゴールに襲いかかるというゲームプランだったものが、想定を上回るリーズの逆襲で可変システムで嵌めに行ったシステムが守備的にならざるを得なかった、という事も言えるだろう。
いずれにせよ堅牢なDFを構築したチェルシー、今後豪華攻撃陣をどのように組み立てていくのかによってこういった試合でも相手守備陣の壁に穴を開けることができるようになるだろう。
Murderballの結実
「これだけのハイプレスをしていると後半にどう響いてくるか」
リーズのようなハイプレスかつマンマーキングで相手を追い回す守備をしているチームだとどうしても解説者からこういったコメントが出てくる。
事実リーズファンとして今シーズン全ての試合を観ている僕としても、この試合でのリーズの運動量は不安になるばかりだった。
しかしこの不安はまさに杞憂に終わった。
恐らくチェルシーファンの目線から見ても、この日のリーズの選手達の運動量は「どこまでついてくるんだよ!」を忌々しく思うほどのレベルだっただろう。
リーズ=ビエルサの練習というのは非常に特徴的と言われる。
よく言われるのはポゼッションの練習は全くせず、ピッチを細かく区切ってどこからどこまで動くのか、相手についた場合はどこまで付いていくのか、ムーブメントの練習が大半だという。
しかもそれを最大のスピードで最大の強度で行うという”Murderball”と言われる練習セッションだという。
それだけの練習をこなせば、自ずと心肺機能は向上しスタミナが補完されることとなる。
このMurderballの結果がこの日のリーズの運動量に結実したとも言えるだろう。
運動量という観点で特に目を引いたのは中盤に起用されたダラス。
元々はサイドバックを主戦場として左サイドのアップダウンを特徴とした選手だが、中盤もこなせるだけの器用さも持っている。
それだけにMurderballの結実の代表例とも言えるように、この試合でもカンテのマーク役としてピッチを左右にカンテをどこまでもつけ狙った。
その分いつもの攻守のスイッチ役を担う、という観点での仕事が不足してしまうこととなったが、当日のプレイゾーンを確認してもホットゾーンが存在しない、という点ではダラスがいかに縦横無尽にカンテを追い回したかが良くわかる。
同様に目立たなかったが左サイドのアリオスキも試合の間足を止めることがなかった。
普段は積極的なオーバーラップで左サイドを駆け上がる10番を背負うこの左サイドバックも、プリシッチを向こうに回して自陣に釘付けにされるケースが多かった。
アディショナルタイムも含めて94分という試合時間、リーズの選手は守備に奔走しつつも、数少ないトランジションでも前線を目指してスプリントを繰り返し、ボールロストすればリトリートすべく全力疾走。
人によっては部活サッカーなどと昔懐かしい言葉で揶揄するかもしれないが、リーズの戦術を凌駕するためにトゥヘルが用意した作戦を人海戦術という戦術で乗り切った、という点でもMurderballの結果がまた新たな魅力を見せた試合だったとも捉えられる。
この引き分けを転換点と出来るのか。
全く異質の相手となる次節フルハム戦でどんなMurderballを見せることができるのか。
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得点
得点
In/Out | Pos. | Leeds | Chelsea | Pos. | In/Out | |
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GK | イラン・メリエ | エドゥアール・メンディ | GK | |||
LB | エズジャン・アリオスキ | ベンジャミン・チルウェル | LB | |||
CB | パスカル・ストライク | アンドレアス・クリステンセン | CB | |||
CB | ディエゴ・ジョレンテ | アントニオ・リュディガー | CB | |||
RB | ルーク・エイリング | セサル・アスピリクエタ | RB | |||
DM | カルヴィン・フィリップス | ジョルジーニョ | DM | |||
LM | ラフィーニャ | エンゴロ・カンテ | DM | |||
CM | スチュアート・ダラス | メイソン・マウント | LAM | Out(79') | ||
CM | タイラー・ロバーツ | ハキム・ジエシュ | CAM | Out(69') | ||
Out(64') | RM | ジャック・ハリソン | クリスティアン・プリシッチ | RAM | Out(68') | |
Out(35') | CF | パトリック・バンフォード | カイ・ハヴェルツ | CF | ||
Sub | Sub | |||||
GK | キコ・カシージャ | ケパ・アリサバラガ | GK | |||
DF | ロビン・コッホ | リース・ジェームズ | DF | In(68') | ||
DF | ガエタノ・ベラルディ | マルコス・アロンソ | DF | |||
In(79') | MF | マテウシュ・クリッヒ | クルト・ズマ | DF | ||
MF | ジェイミー・シャクルトン | エメルソン・ドス・サントス | DF | |||
MF | ジャック・ジェンキンス | マテオ・コヴァチッチ | MF | |||
In(64') | MF | エウデル・コスタ | ティモ・ヴェルナー | FW | In(69') | |
In(35') Out(79') | FF | ロドリゴ | カラム・ハドソン・オドイ | FW | In(79') | |
FW | イアン・ポヴェダ | オリビエ・ジルー | FW |