不思議な試合
業務都合で60分からDAZNで観戦。
東京サイドから見れば失点、得点、得点、失点、と忙しない30分。
夜中にビールとハイボール片手に90分間を通して観戦しましたが、全体を通してみると(負け惜しみではなく)神戸が良かったわけでもないし、FC東京が悪かったわけでもない。
試合後ネット上各所ではフォーメーション、個人のミス、チーム戦術と批判が湧き出していたが、そんな要素というよりも、細かいズレが敗因に思えてならない。
神戸は上手にFC東京のミスを見逃さずに得点したし、FC東京は得点こそ2点だったがチャンスの数は多かった。
このサイトの根幹には「試合を観た人が100人いれば100人の意見がある」なので悲観的な意見を否定する気は毛頭ないが、もう少し違った角度で状況を見ていくこともできるんじゃないかな、と思いました。
神戸 - ハードワークをどこまで継続できるのか
冒頭にも言いましたが、僕個人の感想として神戸がとっても良い試合をした、とは感じられませんでした。
ポゼッションは56.7%とFC東京に比して多かったですが、FC東京自体がポゼッションを重視するチームではないことからも、この数字がそのまま神戸が試合を圧倒したということを表しているわけでもありません。
圧倒的に試合を支配していれば、ボールロスト(ポゼッションの終わりの回数)も相手ゴール前での割合が増えるものですが、神戸がFC東京ゴール前(ファイナル・サード)でロストし回数は全137回のうち42回(30%)で、FC東京のそれ(65/123)と比較すると、どちらのチームが相手ゴールを脅かしていたか、が分かるかと思います。
自ゴールに近いポジションでは37回(27%)のロストを引き起こしていることからしても、全体的には中盤でボールを保持して相手の隙を狙っていた、ということが読めてくるかと思います。
試合全体を通してみると、神戸の大きな強みの一つは山口とサンペールの強度の高い守備ができてボールを繋げる事ができる高い能力を持ったCMFが2人揃っている事でしょう。
そこに稀代のパサーでもあるイニエスタが加われば、より守備から攻撃へのトランジションがスムースとなり、自ずと相手陣内でのボールロスト回数も増えてくることに繋がる=試合を支配できることに繋がるかと思います。
そういった意味では、バルセロナ的なサッカー(ティキ・タカ)と言われるパスを繋いで相手を圧倒するサッカーよりは、この日の神戸は攻守に全員がハードワークしてボールを確保する、ということを目指していたかと思います。
結果的にも走行距離、スプリント回数のいずれもがFC東京を上回っていることからも、チームとしてハードワークを止めない、という事が読み取れます。
イニエスタという中心選手の存在は神戸にとっては試合の内容を左右することにもなります。
いるといないのとでは相手人内に攻め込む工夫も変わってくるし、守備の仕方も変わってきます。
この日の神戸はハードワークから相手のミスにつけ入る形で勝利を手にしましたが、イニエスタが入ればそのハードワークをより強固にしないといけない場面も出てくるでしょう。
新外国人選手含め、バルサ的で魅力的なサッカーが(良くも悪くも)期待される中で、このハードワークを継続させながらどう内容を昇華していくことができるのか。
この辺りがこれからの神戸のチャレンジになってくるのではないかな、と感じた試合でした。
東京 - ミスの積み重ねで3失点
前節セレッソ戦のレビューで、森重のアンカーというのはオプションなのかオプションじゃないのか、ということに触れました。
この日オプションをスターティング戦術として起用したことで、完全にオプションというよりは一つの選択肢としてチーム戦術に組み見込まれた事が理解できました。
色々なこの試合の感想を見ていると「森重のアンカーの両サイドを使われた」という意見を見ますが、実態そこを使われてゴールを奪われることに繋がったシーンというのはなかったと認識しています。
確かに4-3-3のアンカーシステムを採用した場合、アンカーの両サイドはスペースとなりますから、使いやすそうに見えます。
ただ、FC東京の場合は相手陣内またはそれに近いところでボールロストをすると、4-4-2に可変して守備を行いますので、実態として森重の横を使われるというよりは、森重の横に入るべき安部だったり東の戻りが遅い、または釣り出されてしまっているというのが正しい表現になるかと思います。
これを踏まえて考えていくと、失点シーンは全てミスの積み重ねです。
1失点目はクリアに失敗したことですので、中村帆がどうしてあんなキックしちゃったのか、という個人のミスはどうしても避けられないものなので、あまり追求しても意味がないでしょう。
(個人批判をしたいのであれば恰好の材料ですが)
2失点目も同様にミスと言えるのですが、4-4-2で陣形を整えていたにも関わらず、神戸が左サイドでボールを持ってバックパスした瞬間に、中村帆が自分のスペースを空けて食いつきに行ってしまいました。
そのスペースを酒井に使われて失点に繋がります。
このシーンでは、右サイドで守備に入るディエゴ・オリヴェイラの戻りが一瞬遅れ、神戸の2選手との距離が中途半端になっている事がわかります。
しかし、4-4-2で守備のバランスを整えたところで、スプリントしてまで中村帆が食いつきに行く必要性はほとんど皆無で、どちらかといえばディエゴに対して周りが指示をしてボールホルダーに寄せるようにさせる方がよっぽど自然です。
0-1と負けていた状況なので、中村帆としてもなんとかボールを奪い返したいという意図は分かりますが、0-1という僅差の状況下において、ハイリスクに自分の担当エリアを放棄して前に出たこのプレーが試合の出来を左右したと言ってもいいのではないかと思います。
どうしてあの判断に至ったのか、この点は非常に不思議でなりません。
3失点目に関してもそれまでにきちんと対応出来ていたFC東京の守備がずれています。
中盤での激しいボールの奪い合いが82分あたりから連続しプレーが切れる事なく両チームにとって厳しい状況が続きますが、流れは神戸でした。
83分に左サイドで森重がボールロストし神戸ボールとなったところを運動量豊富な安部が止めに入ります。
その後もルーズボールの回収も含めて神戸がボールを握るようになると、84分に神戸が中盤で拾ったボールを左サイドへ展開。
この時、FC東京は中村拓、安部、三田の3人で対応に入り、神戸はトップのドウグラスが顔を出します。
右サイドには選手が二人残っていますので、小川もオマリもボールサイドにはスライドできない状況でした。
これに引っ張られたことにより、渡辺が右に引き摺り出され、渡辺とオマリの間にできた距離を埋めるために森重が最終ラインに入ってしまいました。
(右サイドには神戸の選手が二人残っていましたので、オマリと小川もボールサイドにスライドすることは難しかったかもしれません)
これにより今まで森重が鎮座していたバイタルエリアに広大なスペースが出来てしまいました。
*DAZNで視聴が可能であれば、83分30秒ぐらいから84分08秒ぐらいまでの森重の動きを見てもらえれば分かりやすいです。
この時点では危機的な状況ではありませんが、結果苦し紛れな神戸のクロスの跳ね返しを拾いにきた郷家に対して誰もプレッシャーをかけられずミドルを打たれてしまい、決勝点へと繋がってしまいました。
あれだけサイドで起点を作られても、しっかりと4-4のブロックを作って対応していたにも関わらず、この場面だけ森重がDFラインに吸収されてバイタルを空けてしまったのは非常に悔やまれるポイントです。
恐らく、この試合で神戸がFC東京の守備陣形を唯一ずらしたシーン、と言ってもいいぐらいでしょう。
試合終盤でチーム全体に疲労の色が滲んでいたこともありますが、2-2の状況から勝ちに行くために自ずと前後分断の作戦に出て、スペースを埋められてなかったことに原因は尽きます。
ブラジル人選手であっても、しっかりと自陣まで下がり守備に参加させる規律があれば、事実ディエゴが郷家に気付いて遅れて対応していたことも考えれば、防げた失点と言えます。
この失点は個人というよりも、チーム全体でそのズレに気付くことも解消することもできなかったミスと言えるでしょう。
結果的には神戸のファインプレー
FC東京にとっては今後勝点を積み上げていく中では拾う勝ち点もあるでしょう。
そうやって勝点を積み上げていった結果、優勝という文字が見えてくるものですが、ミスで失った2点を返し、勝点1をすくい上げられそうな状況下で、守備に回らされる時間帯に全体の統率を取ることができなかったことは残念でなりません。
逆を言えば、上記の3つのFC東京のミスにしっかりと付け込んでゴールを奪った神戸が勝者に相応しかったということでしょう。
特に最後のシュートを放った後にもゴール前まで詰め切った郷家の姿勢が完全に勝敗を決したことから考えると、決勝点を挙げたということと同じくらいその姿勢を評価しても良いのではないかと思います。
FC東京は強力な攻撃力を有することで、前線で得点の問題を解決することができるのが強みです。
しかし、守備面が疎かになれば攻撃における破壊力が持つ意味合いも半減します。
攻撃に戦術的意図を持たせないのであれば、守備時には通常以上の戦術性と規律を持たせて当たらなければならないでしょう。
その意味でも、今一度守備時の役割とパターンをブラジル人選手も含めて整理してもらえたらと思います。