Match Review 2021.3.9 West Ham United vs Leeds United

似た者同士の異質なサッカー

一部ネット上では、ビエルサもモイーズも一流の監督として評価され難い。
それはどちらの監督もいわゆる一流と言われるチームで結果を伴っていないからだろう。
モイーズはマンチェスターユナイテッドで、ビエルサはアルゼンチン代表で。

とはいえ、両者ともに1.5流〜2流ぐらいのチームを率いさせると、世の中をびっくりさせるような結果を出す。
恐らくは両者共にチームに求める規律(ディシプリン)が非常に強く、その強度がチームから自由度を与えられるようなスーパースターには耐え難いものであり、全体的なチームのバランスが崩れてしまうのではないかと思われる。

そう考えると、二人の監督は非常に似たタイプであり、その似たタイプが全く違ったサッカーを志向するもんだなぁ。
90分を通して試合を観ながらそんなことを考えていた。

役割分担が明確なハマーズ

当たらない試合予想ではリーズが先制点を取られないこと、それからハマーズのダブルボランチに注目と述べた。
ある意味では展開と注目ポイントについては当たっていたのではないかと、結果が当たってもいないのに自画自賛するのだけど、ハマーズの守備戦術はなるほど上位には破られるが下位には破るには難しい守備だな、と感じた試合だった。

ウェストハムは守備時はDF4枚+中盤2枚がしっかりとブロックを作って相手の攻撃を遅れさせ、そこに遅れてトップ3枚のうち2枚が下がって最大8枚+GK1枚で守るのが基本。
試合を通して選手交代を行なってもこの基本が変わることはなかった。

DF4枚は横の並びを崩すことなくペナルティエリアの幅で守備をし、サイドについてはワイドのMFが下がりながらスペースを埋めて、中盤2枚と連携する形での守備は、コンパクトに陣形を形作るというよりは、いかにゴール前を固めるかという思想からによるもので、非常に強固な守備網を簡単に構築できる。
その一方できちんと勝点を重ねていくためには、ボールを奪われた際の帰陣の速さと、高い位置からプレスをかけて最悪でも中盤の底でボールを奪い切るという、ハイプレスな戦術も求められる。
ウェストハムというチームは、このハイプレスの部分でも非常に規律の取れたチームだ。

攻撃ではボールを奪うと前に残った3人に早く繋げて、その3人の個人力でゴール前まで運んでフィニッシュまで持っていくカウンター型。
守備と攻撃で役割を完全に明確にしながら、チームとしてはハイプレスをかけて、なるべく相手を自由にさせないという戦術は、高い技術力で2、3枚の守備陣を剥がしてしまうような選手が複数いるトップチームには破られやすいが、それだけの高い技術力を持った選手が複数いないチーム(=この日のリーズのようにラフィーニャしかいなチーム)に対しては、十分に対応できる力を持っている。
そのため上位には敗れても下位には敗れない、という中堅チームとしては必要十分な力量を備えているのがウェストハムと言えるのかもしれない。

前後の役割をしっかりと分担しながら、というと前後分断サッカーのように思われるが、自陣でボールを奪って攻撃に転じる際には、しっかりとフォルナルスやベンラーマが中盤まで下がってきて、攻守の繋ぎの役割を行う。
そのような中に動いてボールを受けられるリンガードが加入したことで、速攻のみならず遅行になった際でも繋ぎ切ってシュートを打って終わるところまで持って行けるようになったのは大きなポイントだろう。

モイーズがエバートンを率いた終盤、選手の入れ替わりはありながらもリーグ中堅としてのポジションを獲得していた時代、そんな安定感を持つチームに生まれ変わりそうな予感を感じる試合だった。

求むBox To Box MF

前節アストンヴィラ戦では「試合に不均衡を作れる選手が不足」としたが、この試合でも新たに不足が目についてしまった。

この試合では中心選手となるフィリップスが怪我から復帰し、中盤の安定感を取り戻したかに思われたが、怪我明けから騙し騙しで使ってきたクリヒの代役が必要な状況となってきた。
これまではアンカーにストライクを使ってみたり、4-1-4-1を4-4-1-1とフォーメーションを変えてなんとか乗り越えてきたが、フィリップスが復帰したこの試合では4-1-4-1でフィリップスをアンカーに据えた。
しかし、フィリップスがサイドに寄った際に、昨シーズン同様その空いたスペースをカバーするクリヒの帰陣が遅れてしまい、この日はベンラーマやフォルナルスに上手くそこを突かれてしまっていた。
クリ自身も腰の怪我で欠場後、復帰してからは交代するケースが多くなっており、年齢的にも怪我の影響からの復帰が遅れてしまう状況にもあるのだろう。
自陣から相手陣内まで、いわゆるBox To Box MFとして激しく動き回るダイナモの不調はチームの不調にもリンクしてしまっている。
フィリップスが復帰すれば万事OK、と言えるほどアマイリーグでもないため、このBox To Boxのポジションを誰が補えるのか、ここが今後のリーズのポイントにもなってくる。
事実、クリヒに替えて左サイドバックのダラスを中盤に持ってくると、前半とは打って変わってボールも人も動くリーズらしいサッカーが展開された。

結果としてはハマーズ最終ラインの組織的な守備を突破することができずに0-2の敗戦となってしまったのは、前節に見えたラフィーニャ以外の違いを産める選手と、クリヒの不調を補える選手の不足と言えるだろう。
限られた予算でのプレミア復帰初年度だけに、いきなり理想が叶うわけでもない。
この週末に行われる次節も調子を取り戻したチェルシー相手だけに敗戦の公算が高いが、まずはこの連敗から1日でも早く脱してしっかりと残留を決め、来期に向けた動きを取れるようにすることが大事になってくる。

とはいえ、ポジティブな話題がないわけではない。
この試合ではロドリゴが怪我から復帰し30分プレー。
相手バイタルでボールを受けたりと、「差を生むプレー」をいくつか見せてくれた。
ポストになる選手がバンフォードしかいなく、どうしても厳しいマークを受けて孤立するシーンが多くなっていたが、ロドリゴが入ることで起点が複数にすることができる。
守備面ではエイリングの疲労が心配な中で、ベラルディが長い怪我から復帰しバックアッパーが揃ってきた。
ラフィーニャも相変わらずの好調ぶりを見せており、厳しい相手となるチェルシー戦を前に好材料が揃ってきている。

コッホももうすぐ復帰できると言われているだけに、シーズン後半に向けて万全の布陣で残留とトップハーフの目標に邁進してもらいたい。

ファンとしては贅沢は言えない。
今は我慢の時だ。

2

0

得点

ジェシー・リンガード(21′)

クレイグ・ドーソン(28′)

得点

In/OutPos.WolverhamptonLeeds UnitedPos.In/Out
GKウカシュ・ファビアンスキイラン・メリエGK
LBアーロン・クレスウェルスチュアート・ダラスLB
CBイッサ・ディオップリアム・クーパーCB
CBクレイグ・ドーソンディエゴ・ジョレンテCB
RBウラディミル・コーファルルーク・エイリングRB
DMデクラン・ライスカルヴィン・フィリップスDM
DMトマシュ・ソウチェクエウデル・コスタLMOut(46')
Out(73')LAMモハメド・ベンラーママテウシュ・クリヒCMOut(46')
Out(87')CAMジェシー・リンガードタイラー・ロバーツCMOut(60')
RAMパブロ・フォルナルスラフィーニャRM
CFマイケル・アントニオパトリック・バンフォードCF
SubSub
GKデイヴィッド・マルティンエリア・カプリーレGK
GKネイサン・トロットリーフ・デイビスDF
DFファビアン・バルブエナガエタノ・ベラルディDF
In(87')MFベン・ジョンソンナイアル・ハギンスDF
MFマヌエル・ランツィーニエズジャン・アリオスキDFIn(46')
MFマーク・ノーブルジャック・ジェンキンスMF
MFアデミボ・オトゥベコジャック・ハリソンMFIn(46')
In(73')FWジャロッド・ボーウェンロドリゴFWIn(60')
イアン・ポヴェダFW