ミスした方が負けの典型的な試合
在宅勤務になって1年。
今までだと観ることの出来なかった18時キックオフの試合も普通に観れるようになったのは幸せと思う反面、やはり一日中家にいる生活というのは息が詰まるものです。
その中で爽快な試合が観たいな、と思ってもそうはいかず(苦笑)。
Jリーグ公式スタッツではシュート2本で1得点のFC東京が勝利。
双方のチームがレギューラー選手を温存し、お互いの色を出し合った試合は双方決定機に欠け、ミスをした方が負け、の流れの中で進んだ試合。
結果としては徳島DFのクリアミスを突いた田川のゴールでFC東京が勝利も、FC東京サポーター的にはもう少しピリッとして欲しいという辛口な感想の試合でした。
一画面に10人が映り込む徳島の色
ライター活動をさせて頂いていた7年前、徳島には何度も取材に行かせて頂きましたので、なんとなく思い入れ的なものは残っていたりします。
とは言え、現浦和監督のロドリゲス監督就任の遥か前ですから、当時の徳島サッカーと今の徳島サッカーは大きく違っていたりして、その辺も面白く眺めていました。
新任のポヤトス監督がコロナ禍で未だ来日の見通しが付かない中での徳島のサッカーは、ロドリゲス指揮下のサッカーを継承しながら新指揮官の到着を待つ流れにせざるを得ない状況ですね。
ロドリゲス時代に物凄く試合を観ていたわけではありませんので、詳細を語ることは出来ませんが、この日の徳島を観て感心したのは、守備時のその陣形の美しさとコンパクトさでした。
画面で見るだけでも必ず4-4-2の陣形をしっかりと組んで、その陣形がFC東京のパス回しに応じて前後左右と動く様は、チーム全体の意識が統一された素晴らしい規律が出来上がっているということの表れでもあります。
そのブロックをどう崩すのか、のアイディアはこの日のFC東京ではなかなか見られませんでしたが、あれだけ統率が取れた守備網を崩すというのは、効果的な縦パスを起点にワンタッチで連続してパスを通す、いわゆるティキ・タカ・サッカーかサイドチェンジを繰り返して陣形を横に伸ばすか、果てはメッシ(Jリーグ的に言えば川崎の三苫)のような個で突破できる選手を使って崩すしかやりようがないと思いながら観ていました。
悪い言い方になりますが、いわゆる昇格チームや相手に対して力が劣るチームが、引きこもるのではなくきちんと攻撃も視野に入れて失点しないことを考えた場合、コンパクトに全員で守り、規律を持って戦うという徳島のサッカーは非常に理に適っており、このサッカーの中に攻撃のパターンが増えてくれば非常に厄介な存在になりそうです。
攻撃面においては、特に先制された後はパスを繋げるもののサイドに押し出されてしまい、無理なところからのクロスに終始してしまい、FC東京守備陣に跳ね返されるシーンが多くなってしまいました。
そんな中でシュートには繋がりませんでしたが、終了間際に垣田選手が中盤からFWに当てた楔のパスは、FC東京守備陣を崩す起点になり得るもので、攻撃のスイッチを入れる、というよく言われる言葉を体現するパスでした。
ああいった縦パスを怖がらずに入れ、それを合図に4-4-2の陣形を可変させて2-4-4-、2-3-5と相手ファイナルサードに攻撃陣が雪崩れ込むような形にできれば、昨年J2で見せた旋風をJ1でも巻き起こせるのではないかと思います。
全国的には無名な選手の集合体としてのチームではありますが、ああいった規律が徹底されていけば、中長期的に十分にJ1で戦えるチームになり得るでしょう。
今シーズンはなんとかJ1に残留し、4年かけてロドリゲスと共に成熟させた徳島のサッカーをさらに昇華させて欲しいと思います。
迫力に欠けたFC東京
カップ戦初戦でもあるので、個人的にはある程度メンバーを入れ替えて臨むことは想定していました。
ですので、スタメンを見たときにはそんなに驚きがなかったのが正直なところです。
そんな中で僕が注目したのは2つのポイントで、1つ目はオマリのプレースタイルを改めて確認するということ。
これは過日の投稿でもあるBruno Uviniを知ってみようでスタッツ的に明らかになった前に出すパスの多さやロングパスというのがオマリからどれだけ出るのか、を改めて確認してみようという意図です。
結果、この日のオマリは個人平均を上回る10本のロングパスを出し50%の成功確率でした。前方へのパスも24本(成功は19本)と、やはりこの選手はDFラインから前にパスを出す選手なんだな、ということを改めて確認でき、スタッツを眺める面白さを改めて確認することができました。
2つ目のポイントは、青木をアンカーに据えた中盤から前の選手がどのように動いて徳島を崩していくのか、というところでしたが、ここに関しては「ブラジル人がいないときついな」と感じたのが正直な感想です。
41.16%のポゼッション時のパスの大半は自陣からミッドサード(中盤域)で、ファイナルサードに向けた縦パスも少なく、徳島のDFライン前で止められるケースがほとんどでした。
このようなメンバー構成の試合では、いわゆるサブメンバーの意地みたいなものが見えて、「この選手を次の試合に見たい!健太さん使ってくれ!」という気持ちを醸成したいものですが、どうしてなかなか、この日の東京イレブンではオマリ、青木の主力級の安定感ぐらいしかそういった気持ちを抱くことができませんでした。
ただ、僕自身はこの試合でやはり三田の持つ力量というのは苦しい時にFC東京を救ってくれそうだという期待感を持つことはできました(とはいえ三田も主力選手ですが)。
浦和戦で同点に追いついたプレースキックの質は当たり前ですが、90分間に渡って中盤を幅広く動いてボールを引き出す動きも多かったですし、縦に入れるボール、ペナルティエリアを狙うパスも多く見られました。
www.wyscout.comでのスタッツを見てみると、ボールに対するアクション回数は86回でチーム1。青木が81回、内田が76回と続きます。アクションの成功率を見てもそれぞれ53回(61.6%)、52回(64.1%)、36回(47.3%)となっており、三田のポジションが敵陣でアクションを起こすことが多いことを考えるとこの試合においては出色の出来であったことが分かります。
以下の図は、三田がこの試合で起こしたアクションの成否を表したwhyscoutのスクリーンショットです。
右サイドだけではなく、左サイドまで幅広くアクションを起こしていることが分かります。
ペナルティエリアに向けたパスも青木が4回(成功率75%)に次いで三田が3回(成功率66%)と、青木と三田でこの試合の攻撃を構成していました。
それぞれチーム内で与えられた役割がある、ということを前提に置いたとしても、こういった攻撃に絡むプレー回数が主力級選手だけで占められるというのは、逆を言えばそこに付け込む若手の力量と欲が少ないということにもなります。
ルヴァンカップはこういった若手が公式戦で活躍する姿を見せやすい大会ですし、そこをきっかけにリーグ戦のベンチ、スタメンを勝ち取るための登竜門でもあります。
まだ初戦だから、ではなくて若手選手には是非とも「この1回で次のリーグ戦のベンチを掴み取ってやる」という強い気持ちと欲望を持って臨んで欲しい、それこそがFC東京に必要な違いを生む力の礎になるものだと思います。
次なるチャンスは3月28日のヴィッセル神戸戦。
ここでは違った形で攻撃を形作る若い力の躍動を期待したいと思います。