コロナ禍に来てくれる助っ人を事前チェック
このコロナ禍ももう1年が経ちましたね。
外国人の入国が制限される中でも、新たにFC東京が獲得したブルーノ・ウヴィニ選手。
ブラジル年代別代表経験者で、サンパウロFCからヨーロッパへと渡り、その後中東でキャリアの中心を送り、この度サウジアラビアのアル・イテハドからFC東京へと移籍が決定しました。
今回はこのセンターバックの補強となるウヴィニ選手をキャリア平均スタッツから他センターバックと比較をして、その起用法を妄想したいと思います。
輝かしいキャリアから推測するその実力
まずはウヴィニ選手のこれまでのキャリアを見てみましょう。
パッと見ると長い経歴でいわゆる「渡鳥」と言われるキャリアのように見えます。
しかし、ここで重要なポイントが3つあります。
一つは1991年生まれのウヴィニが2008年(17歳)にGOオウダックスからサンパウロに移籍した点。
当時のオウダックスというクラブは14歳から17歳の子供達にサッカーをする機会を与えよう、という社会事業として運営されていたチームです(現在は完全にプロ化)。
そこからブラジルトップチームのサンパウロに移籍を果たしてプロとしてのキャリアをスタートしている点。
そして2点目は、そのサンパウロから一旦トットナムにレンタル移籍しているという点。この移籍には370万ユーロでの買取オプションが付帯されていた、とのことで、いわゆる青田買いの対象としてヨーロッパトップチームから注目をされていたということがわかります。
トットナムへの移籍は叶いませんでしたが、2012年(20歳)UEFAチャンピオンズリーグの常連イタリアセリエAのナポリへ5年契約で移籍します。
年齢的な面もあり、シエナ、母国サントスなどのチームで経験を積むためにレンタル移籍に出されますが、思うような出場機会を得るには至りませんでした。
3つ目のポイントは、2015/16シーズン(24歳)にオランダのトゥエンテへ移籍したポイント。
ここで34試合に出場し、ついにウヴィニのキャリアが花開きます。
ここからは推測ですが、レンタルで34試合出場しトゥウェンテの主力となりながらも翌年にサウジアラビアのアル・ナスルに移籍することになる背景には、ちょうどこのシーズンにトゥウェンテがライセンス剥奪・財政破綻の危機に陥ってしまい(のちに裁判でトゥウェンテが勝訴)、ウヴィニを獲得出来なかったであろうという推測が成り立つ点です。
これにより花開いたウヴィニのキャリアは、欧州の舞台から中東へと舞台を移すことになります。
その後中東で78試合に出場、トゥウェンテからの5年間で112試合に出場し、ユース年代で培った実力をプロとしてのキャリアに刻むことになります。
ここまででウヴィニが相当のバックグラウンドを持った選手、ということは分かると思います。
どんなセンターバックなのか?
では一体どんなセンターバックなのでしょうか。
今シーズン開幕前はオマリの去就も分からず、センターバックは主力の森重、渡辺の2人のバックアッパーは若手の岡崎と、優勝を口にするにはかなり心許ないメンバー構成でした。
そこにこのウヴィニ獲得とオマリの残留が決まり、主力級のセンターバックが一気に4人になりました。
これで森重、渡辺を休ませながらシーズンを進めることが出来ます。
とはいえ、4バック主体のFC東京においてどのような組み合わせが想定できるのでしょうか。
そもそもウヴィニはどんなタイプの選手なのでしょうか。
本稿の後に掲載しているYoutubeなどでそのプレーぶりはわかりますが、もう少し深く彼のプレーを早期することはできないか。
そこでここからは統計データを用いて紐解いてみたいと思います。
まずは一般的な選手としてのこれまでのキャリア平均値でセンターバック4人を比較してみましょう。
※公正に比較する意味でも、各選手のこれまでのデータ平均を使用してみていきます。
※掲載データは欧州およびJリーグでも使用されているwww.wyscout.comのデータを限定版として筆者が取得したものであり、公開についても同社に確認/許諾を得ています。
どんなセンターバックなのか?
では、サッカー選手としてよく比較材料とされる以下のスタッツを使って見ていきましょう。
少々見難い表組みですみませんが、上から一試合平均で、パス本数/成功率、ロングパス本数/成功率、ドリブル回数/成功率、デュエル回数/勝率、空中戦回数/勝率、インターセプト回数、イエローカード、レッドカードです。
パッとみると、渡辺と非常に似通った数値が並んでいるのが分かります。
その一方で森重とオマリが似通った数値です。
特に着目すべきは、ウヴィニと渡辺、森重とオマリの組み合わせを比較した際のロングパスの数とドリブルの回数です。
上記のスタッツからは、プレースタイルとしてはロングパスを出したり、ドリブルでボールを前に運ぶ仕事よりも、デュエルで相手を止める役割を担うタイプなのではないかということが朧げに見えてきます。
では、上記を踏まえて守備的なスタッツを見ていきいます。
こちらの表は、上から守備時のデュエル回数/勝率、ルーズボールに対するデュエル回数/勝率、スライディングタックル回数/成功率、ボールロスト回数/自陣でのロスト率、ボールリカバリー回数/相手陣内でのリカバリー率、クリア回数、となっています。
特筆すべきはディフェンス時のデュエル勝率が他の選手に比べ高いという点です。
また、ボールロスト回数が他二人に比べて低いのは、森重/オマリの両選手は中盤でのプレーがあるためその分が統計に含まれているという点もありますが、そこを押し並べて考えてみても、ボールを運ぶプレーが多い二人に比べてウヴィニはしっかりと後ろでデュエルに備える、いわゆるカバー型のセンターバックということが見て取れます。
このポイントは次のパスのスタッツを見ていただくとより明確になると思います。
こちらの表は、上から相手陣ファイナルサード(ゴール前)へのパス本数/成功率、相手ペナルティエリアへのパス本数/成功率、パスの受け取り本数、前方へのパス本数/成功率、バックパス本数/成功率です。
ここで注目して欲しいのは、ファイナルサード、ペナルティエリアへのパス平均値の差異です。
先に述べたように森重、オマリが中盤でプレーした経緯があるとしても、キャリアの大半はセンターバックの両者です。
彼らのファイナルサード/ペナルティへのパス平均値が7前後/0.8前後に比べ、ウヴィニはファイナルサードで30%程度、ペナルティエリアに至っては15%程度です。
また、前方へのパス本数という意味でも森重/オマリに比べると少ないことから、攻撃に繋がる最後尾からの役割よりも、先に述べたようにゴール前でしっかりと守りボールハンティングを行うということが想像できます。
また、ここまでの3つのスタッツを見ると、渡辺と非常に似通った数値になっている点もお分かりいただけたかと思います。
この点も非常に興味深いスタッツ分析となりました。
4枚のセンターバック組み合わせは・・・
ここまで読んでいただいた方には大方言いたいことは察しがついているかな、と思いますが・・・。
スタッツから見るに、ウヴィニの獲得は渡辺とのポジション争いになると想定します。
過去の2シーズン異なるタイプのセンターバックを組み合わせた森重/渡辺コンビが非常に良い結果をもたらしました。
しかしながらそのバックアップ確保が進まず、いずれかの選手が怪我をした際には守備力低下を懸念せざるを得ない状況でした。
昨シーズンはオマリが加入したことで、オマリ/渡辺を組み合わせ、森重をアンカーになどの新たな取り組みをすることも可能になりました。
今シーズンはウヴィニが加入したことでセンターバックのローテーション化が可能になり、森重/ウヴィニ、ウヴィニ/オマリという組み合わせを取ることがこの獲得の目的なのではないか、と推察しています。
この組み合わせであれば、更に守備強度をあげる目的として、ウヴィニ/オマリ+アンカー森重も可能です。
同様にウヴィニ/森重+アンカーオマリも可能です。
コロナ禍及びオリンピックでスケジュールがタイトになると負傷のリスクも向上します。
その点ではここまで無事是名馬で最後尾を支えてきてくれた森重/渡辺を適度に休ませ、ローテーションをする必要性が高くなります。
そこに渡辺と非常に似通ったスタッツを持っている上に、ブラジル代表経験、U20キャプテン経験、五輪経験と輝かしい実績を持つウヴィニをフリートランスファーで獲得出来たことは非常に大きいと思います。
ウヴィニの来日がいつになるのか、こればかりは政府の方針決定に依拠することになるので分かりませんが、合流してフィットネスが整えウヴィニと渡辺がポジション争いをしていくことになると思います。
その競争の中から、渡辺が新たな技術を身につける可能性がないとは言えません。
動画を見る限り、かなり吠えるタイプの選手でもあり、東京に不足してきたいわゆる軍曹タイプの選手になってくれる期待もあります。
ここまで示してきたスタッツを基に新たな東京ディフェンスラインを想像しながら、ウヴィニの合流を楽しみに待ってみるのも面白いのではないかと思います。