ゴールが生まれる気がしない反撃
Jリーグが開幕し、サッカーオタクの週末は多忙を極めることとなる。
何時からどの試合を診て、その次にはこっち、ご飯を食べて子供と遊んで、風呂に入れて寝かしつけたらこっちとこっちの試合を・・・。
そうやって週末に4~5試合をフルタイムで観ていると、なんとなく試合の流れが予知できるような能力が身につく。
この日はFC東京、リーズユナイテッド、ラツィオと応援しているチーム全てが同じ展開になり、更には興味で観ていたFC琉球vsジュビロ磐田でもジュビロが同じ展開になった(特にジュビロを応援しているわけではないのだけど、元J1覇者がJ2というのは寂しく少々肩入れしてみていた)。
全てのチームが先制され、うちリーズ、ラツィオ、磐田は前半早々に、それを追いかけて圧倒的なボール支配で攻撃を仕掛ける。
ボール支配を行わなかったFC東京だけがセットプレーから追いつき、他の3チームは試合を支配しても最後まで追いつくことは愚か得点すらあげられなかった。
見ていると自然と口走る。
「あー、相手がこれだけブロックを作っては単純にクロスを上げるだけじゃダメだ。」
「シュートも苦し紛れに遠目からになりがちだよ。」
なんとか追いついて欲しいものの、見れば見るほどピッチ上の選手の必死さとは逆の精神状態に陥る。
「ダメだこりゃ。このままじゃゴールは生まれんよ・・・。」
上手く穴を突いたヴィラ
キックオフ直後はアストヴィラペースだった。
通例通り4-1-4-1でスタートしたリーズに対してアストンヴィラも4-1-4-1の布陣を敷いた。
通常通りの4-2-3-1だとどうしてもトップ下のバークリーがストライクにマンマークで付かれてしまい攻撃が手詰まりになる、という判断なのだろう。
合わせ鏡のような形で序盤の主導権を握ると、両ワイドのトラオレ、エル・ガジがストライクの脇にできるスペースに飛び出し、そこにラムジーやマッギンの両セントラルミッドフィールダーが絡んでいくことで、リーズ守備陣はマーキングを見逃さざるを得なくなった。
特にエル・ガジの動きは秀逸で、サイドに張るばかりではなくトップ下の位置に入ったりと、本来のマーカーであるエイリングを混乱させ、最終ラインから上手く引き摺り出すことに何度も成功していた。
アーセナルに4-2で敗れた時も同様だが、マンマーキングで対応するリーズの守備を混乱に陥れには、こういったスペースにワイドの選手がダイアゴナル(斜め)に走り込んでボールを受け、シンプルに次のパスを出すことを繰り返されると、対応するディフェンダーは行き先に迷い混乱が生じる。
その虚を突いてゴール前に選手がなだれ込む、というのがリーズ攻略の最も効率的な手段だ。
この日のヴィラも同様の形で容易にリーズゴール前を陥れ、ビエルサは意図したゴールではないと記者会見で評したが、いずれにせよ自由自在に動かれたエル・ガジのボックス内侵入を簡単に許し、ゴールを演出されてしまった。
この日のヴィラにとってはこの早い段階での先制点で十分だったのかもしれない。
試合前予想でも述べた通り、アストンヴィラの前後半でのクリーンシート率は高く、失点数もマンチェスターシティ、チェルシーに次ぐ26失点でリーグで3番目の少なさだ。
得点数が上がればトップ5入りも狙えるだけの守備力を持っているだけに、先制さえ出来れば守り切れるという公算はあったかもしれない。
ディーン・スミスは地味な監督ではあるが、守備から計算してチームを上手く構築していると思う。
守勢に回らせると非常に厄介なチームであることをこの試合で改めて表現しつつ、しっかりとリーズの穴を突いて勝点3をもぎ取っていったことは悔しいが当たり前の結果であったとも言える。
不足が浮き彫りになったリーズ
開幕前、そして冬の移籍市場においても中盤の攻撃的な選手の補強が噂をされては実現しなかった。
その不足がこの試合でも露呈したと言える。
これまでの敗戦はどちらかといえば「リーズらしい殴り合い上等」の戦い方で評価を上げてきたが、この試合のラストパスの精度の著しい低さはこの補強ポイントを改めて中盤の質向上を表現するものだった。
無論クリヒもロバーツもいつも通りよく走り、タフにデュエルを挑んでいた。
しかし、アストンヴィラに2ラインのブロックをしっかりと構築され、両者が中央からペナルティエリアを目指すパスは完全封鎖され、完全にバンフォードが孤立を強いられる形となった。
リーズの期待は個人技に秀でたラフィーニャだけとなり、チームのラストパスが通らなければ通らないほど、ラフィーニャのドリブル力に期待を寄せるばかりに。
もはやビッグクラブのターゲットとも噂され始めたラフィーニャの力量を認識しているアストンヴィラ守備陣はラフィーニャに対して3人をぶつけ止めに掛かる。
それでもなおラフィーニャはその状況を打開してしまうのだから頭が下がるのだが、残念ながらその後のパスもヴィラがゴール前に展開した城壁を破るには至らなかった。
懸命にサイドから、中央から崩しにかかるリーズだったが、ラフィーニャ以外にビエルサがいうところの「守備の不均衡」を引き起こせる選手がおらず、ただただクロスもパスも弾き返されるばかりだった。
ボールロスト総数102回のうち実に半分の51が相手ファイナルサードでのものだというデータから考えても、ビエルサが記者会見で繰り返し述べたように、このファイナルサードでの正確性を欠いたことは明らかだ。
攻め込んでいても入る気がしない。シュート総数12に対してオン・ターゲットは3本のみ(アストンヴィラは7本で4本が枠内)。ポゼッションしての攻撃回数が38回のうちシュートまでいった攻撃は4回(アストンヴィラは19回で4回)。
いかにポゼッションという数字や主導権を握る、ということだけでは価値に結びつかないかがよくわかる試合だった。
0
1
得点
得点
アンワル・エル・ガジ(5′)
In/Out | Pos. | Leeds | Aston Villa | Pos. | In/Out | |
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GK | イラン・メリエ | エミリアノ・マルティネス | GK | |||
LB | スチュアート・ダラス | マットターゲット | LB | |||
CB | リアム・クーパー | タイロン・ミングス | CB | |||
CB | ディエゴ・ジョレンテ | エズリ・コンサ | CB | |||
RB | ルーク・エイリング | アーメド・エル・モハメディ | RB | |||
Out(53') | DM | パスカル・ストライク | マーヴェラス・ナカンバ | DM | ||
LM | ラフィーニャ | アンワル・エル・ガジ | LM | Out(88') | ||
CM | マテウシュ・クリヒ | ジェイコブ・ラムジー | CM | Out(79') | ||
Out(71') | CM | タイラー・ロバーツ | ジョン・マッギン | CM | ||
Out(64') | RM | エウデル・コスタ | ベルトラン・トラオレ | RM | ||
CF | パトリック・バンフォード | オリー・ワトキンス | CF | |||
Sub | Sub | |||||
GK | キコ・カシージャ | トーマス・ヒートン | GK | |||
DF | リーフ・デイヴィス | ニール・テイラー | DF | |||
DF | ナイアル・ハギンズ | ビョルン・エンゲルス | DF | |||
In(53') | DF | エズジャン・アリオスキー | トレゼケ | MF | In(88') | |
DF | チャーリー・クレスウェル | モーガン・サンソン | MF | In(79') | ||
MF | ジャック・ジェンキンス | ドゥグラス・ルイス | MF | |||
In(64') | MF | ジャック・ハリソン | ロス・バークリー | MF | ||
In(71') | MF | パブロ・エルナンデス | ケイン・ケスラー・ヘイデン | MF | ||
FW | ジョー・ゲルハート | キーナン・デイヴィス | FW |